柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年1月19日(金)10時44分~11時07分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日は、私と致しましては閣議の前に月例経済報告を聞く関係者の会議に出席致しました。月例経済報告の内容についてはそれぞれ担当の部局から発表があることと思います。二、三というか一人の人ですけれども発言がありまして、その中に株式市場から個人投資家が少なくなっているということについては何か制度の枠組みにおいて欠陥というか、そういものがあるのかといったようなことを巡っての質疑応答もございました。関係のないところ、点についてはまたそれぞれのところで発表があろうかと思いますので、そちらからお聞き取りを頂きたいと、私に関係するところは今申したところです。

続いて閣議がございました。通常国会は1月31日が召集日ということで決定を致しました。斉藤防衛庁長官、橋本国務大臣が海外視察にいらっしゃるということがございまして、その間の臨時代理がそれぞれ指名がございました。外務大臣から海外視察のご報告がありました。財務大臣から政策投資銀行の総裁の人事についてのご発言がありました。

その後、閣僚懇に入りまして、阪神・淡路大震災6周年の行事について出席をした大臣からご報告がありました。それを巡って総理の方から我が国の危機管理の体制というものについては、この阪神・淡路に学んで着々と諸制度が整備されているけれども、なお不足のところがないかということを、官房長官、伊吹大臣の間でよく協議してもらいたいといった発言がありまして、これが契機になりまして各大臣から諸々の質問、発言がございました。非常にいろいろ興味深いというか、我々が参考にすべき発言があったと、私自身も聞いた次第です。

次いで私から冒頭触れました月例経済報告の際に、額賀大臣の方から昨日の経済財政諮問会議での総理の発言のご紹介がありましたので、私もこの閣僚懇で発言しておきました。これは総理の発言というのは資本市場の制度的な枠組み、インフラといっていいと思うのですが、そういったことについてはこれから検討に努めていきたいと、こういうことであったというふうに伺いますと、これは直接の所掌は私でありますと、従って私もこの点については総理のご発言の方向で考えていくべきことだと考えているけれども、それがこれから検討を進めていく場合に、実は私だけで何事もできるということではなくて、例えばの話ですが、基本法である商法とかいうようなことであれば、法務大臣の所掌であると、それからまたもし税制にわたるようなことがあるとすれば、それは税法ということになって財務大臣の所掌であるので、そういうことが問題になるというか、俎上に乗る暁にはそれぞれの関係の大臣にご協力お願いしたいということを申しておきました。以上でございます。

【質疑応答】

問)

それでは最初に資産公開についてご説明頂けますか。

答)

私の資産は、土地、建物は今住んでいるところがそうであるということでございます。これは選挙区が変わったことで、浜松から引っ越してきたわけでございます。それから金融資産については定期預金、郵便貯金が合計1,800万円ほどあると。それから株式は、これは浜松にいた当時の友人の会社ができる時に出資を求められてしたものであると。それから借入金は前の自宅用の土地を買う時にローンをしたものであると、それの残高であるということです。その他の資産はございません。それから、家内の、配偶者の資産も建物について、私と共有の関係になっているということ。定期預金が1,000万円ほどあるということ。その他はないということを以上を公開している次第です。

問)

今、ご説明があった資産ですが、ご自身で評価といいますか、ご感想をコンパクトにお願いしたいのと、それから公開制度自体について透明性を高める観点で改善工夫する点というのはあるとお考えか、罰則規定を設けるべきだという意見もございますが、その点について如何お考えかお聞かせください。

答)

自分の資産については簡単だということが私の感想でございます。あまり思い悩むこともないということでございます。それから制度につきましては、私はとにかくこういう格好で継続をしていくということが非常に大事だというふうに思っていまして、制度の改善というようなことがあるとすれば、別に反対することはないと思いますけれども、私としては現在の制度であっても継続をしていくということが最も大事なことであるというふうに考えています。

問)

株価対策ですが、昨日自民党の方で特命委員会というのも初会合を開きまして、様々なメニューが出ておりますが、その中で公的資金の返済を銀行が保有株でやってもいいのではないかという、そういう意見が議員の方、あるいはシンクタンクから出ております。これは金融行政に直結する話ですので、その点について是非見解をお願いします。

答)

そういうアイディアというか、そういうものがあるということは十分承知もしておるし、そういうことも考えるかなあというようなことについては、まあ期待というか、それなりに理解というのは賛成するというニュアンスは全くなくて、ニュートラルに理解をすると、こういうふうなことを申し上げたいと、こういうふうに思います。ただ、何と言うか、実質で自己資本を充実させたいということについては、それなりの意味があることもこれもまたニュートラルな意味で理解しますけれども、自己資本比率というような計数的な面についてはいずれの方法でもやや低下するだろうという意味においてはあまり変わらないということですね。そういうことも指摘できるというか、しておかなくてはいけないだろうと、こう思っております。

問)

先程の閣僚懇で述べられています資本市場のインフラ整備についてなんですが、まあこれからだと思いますけれども、大臣の頭の中にはやはり個人投資家を呼び込むというのは、これが大前提にあるというふうな理解でよろしいのでしょうか。

答)

そうですね。個人投資家、要するにもうちょっと投資の層というものを厚くしないといけないというふうに思っておりまして、さしづめ今ご指摘のあったような個人投資家のウェイトが低いわけですから、これをもっと個人投資家に市場への参加をお願いしたいと、こういうことであります。ただ、それもいろんな方途があるわけで、すぐそうすると個人投資家が直接に株式に投資するということを私が頭で考えているかというと、もうちょっとバラエティがあるわけでありまして、投資信託であるとか、あるいは年金であるとかというようなものを通じての資本市場への参加ということも視野において改善すべきところがあれば改善していきたいと、こういうことでございます。401kなどについても当然視野の中に入るべきことであろうと、こういうように思ってます。

問)

ノーアクションレター制度の件なんですが、昨年末、金融イノベーション会議、NPOの方からも早期の本格導入の要望があったかと思いますけれども、ノーアクションレター制度への取組と、金融行政固有の問題点とか、そういうものがあるならば、それを教えてください。

答)

これはまず一般論としては、私は積極的に進めていかなくてはならないし、いくべきことだろうと、こういうように思ってます。これはルールに基づく公正かつ透明性のある行政ということを私ども謳い文句にしているわけで、その観点からもこれは積極的に進めなければいけないというように考えております。

金融行政について特別の問題があるかということですけれども、何と言うか、そんなにはないのではないかと、こういうように思います。思いますが、率直に言って、事務方はどっちかというと今までの流儀というものに慣れてきているものですから、ノーアクションレターというものを出す時に非常に慎重になってしまうということがあろうかと思うのです。ですから、ノーアクションレターを出すという前提として、事後法は絶対にやりませんので、事後的にそのノーアクションレターに基づいて何かやったことを、おまえこれは処罰されるべきことだと、こういうことは絶対やってはいけないわけですが、私はどうも話を聞いていて、前向きの変更ですね、変更した後に有効になるという大前提の下でという意味ですけれども、そういう変更についてはかなりジェネラスでないと、寛大でないといけないのではないか。日本の今までの役所の伝統的な事務処理の仕方というのは、ありとあらゆる可能性を考えて完璧なものを作ろうとするわけですが、この場合には、特に金融のようにいろいろな技術革新もあるし、商品開発もあるというような世界では、やはり何と言うか、ある程度変更については弾力的にこれは認められるべきではないか。事後法はしませんよ、さっき言ったように。それはそうなんだけれども、そういうことも前提にならないと、なかなか役所が今までの流儀で一旦決めたことは朝令暮改しないというようなことをあんまり重視すると、ノーアクションレターというのはなかなか出しにくいという面があろうと思っております。

問)

資産公開に関連してお伺いしますが、簡単だということで思い悩むことはないと大臣は仰ったわけですが、もうちょっと形を変えてというか…簡単というのは、やはり思ったほどないなあというご実感ですか。

答)

いや、そういうこととは関係ないです。多寡の問題ではなくて、資産の保有の形態が非常に簡単で、ある大臣などはどこに自分の資産があるか分からないというように、非常にそういう意味で正確を期するためにご苦労があるというふうな方もいらっしゃるやに聞くものだから、私の場合はちょっと見ればすぐ分かるという、そういう感想を述べたということです。

問)

先程の公的資金を株で返すという話ですけれども、基本的には問題があるという認識をお持ちなんですか、株で返すということについて如何ですか。

答)

いや、もちろん私はリスクを公的部門にこれ以上移すということについて、国民の理解が得られるだろうかということが、そこに基本的に横たわっていると思うのです。そういう大問題があるということの他に付け加えれば先程言ったようなことがあると。つまり、質的に言うと外国筋では日本の銀行の自己資本の構成の問題点みたいなものを指摘する向きがあって、その中には公的資金が入っているぞというようなことを言う向きがある。それを、まあある意味で払拭するというメリットは、それなりに先程言ったニュートラルな意味で理解できると、こういうことですね。しかし、では返済の方法によって自己資本比率というものに何か大きな差があるかといえば、これはもう計数の問題としてはあまりないということであろうと思っております。

問)

今の株価の情勢についてはどういうふうに見ておられますか。

答)

私は前から言うように、金融機関にとって株価が低迷するということは決して望ましいことではないと。これは株価の水準そのものについて言っているのではなくて、金融機関にとってということですね、それはもう皆さんもすぐ簡単に理解して頂けるだろうと思います。ということを、まあ考えているわけでございまして、私の立場から、その面から、つまり金融機関の経営という面からは、やはり株価というのはもうちょっと経済の実態が…何と言うか、今日も聞いたのですが、緩やかに回復ということだったら、そういう見方であって欲しいと、こういうようなことを考えているわけですが、なかなか株価というのは日本の経済だけで動くわけでもない、いろんな影響も受けるというようなこともあるものですから、まあ何と言うか非常に強い関心を持っていると、こういうことですね。その関心の中で私はインフラの整備ということについて考えていかんといけないじゃないかと。ただ、党がせっかくやって頂いているわけですから、私としてはそれとの関係というものを十分考えながら、その意味では慎重にやっていかなければいかんと、こう思っているところですね。つまり党との関係では慎重にやっていかなければいかんと、このように思っております。

問)

リスクマネーを個人が持つことに期待するという点なんですが、大臣もあまりリスクマネーとしてはお持ちではないということでしょうか。制度だけではなくて、やはり日本人の意識みたいなところがあるのかと思うのですが、その辺はどういったふうにお考えでしょうか。

答)

これは、あれですね、何と言うか、とにかく何も、公務員もやっていけない、政治家もやってはいけないというようなことでやっているということで、何か株式投資というものが不健全なことというような価値観がそういうことを規制することによって国民に出てくるとすれば、それは違うんじゃないかというふうに思いますね。ただ、まあ閣僚であるとか、あるいはこの問題を所掌する部署の職員であるとかというのは、これは昔からそうですけれどもインサイダー取引というか、そういうインサイダー情報というのに触れる可能性が一般よりもかなり高いわけですから、そういう人達についてはこれは李下に冠を正さずを実行しなければいけないだろうと。しかし、一般の公務員、一般の政治家…政治家といっても国政の人はどうかとかいろいろあるでしょうけれども、その辺りはやや緩やかにしてもらうと私の立場からはありがたいなあというのが率直なところです。

問)

先程、多寡の大きさではないということですが、ご自分の資産を改めて見つめてみて、水準としては多い方ですか少ない方ですか、どういうご認識ですか。

答)

何の感想もありません。こういうもんだということです。

(以上)


村井副大臣記者会見の概要

(資産公開関係)

(平成13年1月19日(金)11時12分~11時20分)

【質疑応答】

問)

では、副大臣の方からお願いします。

答)

私は調布市小島町に東京の自宅を役人の末期の頃に作りましたものを持っております。それと伊豆の熱川に別荘地を女房と共有で昔買ったのですけれども、あれは高い時に売り払ってしまえば良かったなあと思って、今非常に後悔しています。その辺は従来と全く変わりありません。

それからもう一つ不動産関係では、家内の方ですけれども、私が現在住んでおります松本の自宅でございますけれども、これは初めは借家で借りていたのでございますが、持ち主が倒産をいたしまして、自分の住んでいる家が突然競売される羽目になりました。それで女房の貯金を…女房は、実は私が役所を辞める頃まで働いていた経過もあるものでございますから、女房の名義で買いました。ちょっと土地まで買えなかったものですから、土地は親戚に持ってもらいまして、そんなことで借地という形になっております。そんなところが不動産関係でございます。

それから、前回政務次官を辞めました時からの変化でございますけれども、実は私は株式がこんなに馬鹿に安いという状態は異常だと信じておりますので、それで先般、前に金融再生政務次官を仰せつかっておりました時期も、実は自らを示したかったのでありますけれども、残念ながら閣僚等の申合せによりまして、株を買ってはいかんということになっているものですから、辞めるなり直ちに中部電力を買いました。それで女房にも勧めまして、結局私が6,000株ですか、家内が3,000株買ったわけでございます。それで、買いましたらまた下がったものですから、もうちょっと買おうかと思ってやった結果がこれなんでございますが、本当のことを言いますとまだもう少し買ってもいいやと思ってましたら、また昨年12月に政務次官を、それから副大臣を仰せつかったものですから買えなくなってしまったと、非常に残念でございます。

以上が概略でございまして、まあサラリーマンとして夫婦共稼ぎで長いこと働いて参りまして、まあこんなところかなというのが私の資産全体につきましての感想でございます。

それから、資産公開制度につきましていろいろご質問があるようでございますけれども、私はやはり公職にある人間が自分の地位を利用して私財の蓄積に努めるごときは、これはかりそめにもあってはならないということだと思っておりますので、そういう意味で公職に就きましたものが、適切な時期に自分の資産を公開するということは、それは必ずしも悪い制度ではないと思っております。というか、やはり一つのチェックのシステムとして大切なのではないか、そんなふうに思っております。ただ、一つだけ付け加えさせていただきますと、預金は良くて株式は良くないとか、そういうようなところは如何なものか、やはり…どう言ったらいいのでしょうか、確定拠出型年金の議論などでも出て参りますように、資産運用についても自らリスクをとることを国民の皆さんに、ある意味ではお勧めするような状況になって参りますと、私は株式とかについての考え方、扱い方というのは、もうちょっと変わってきてもいいのではないのだろうかという気持ちは、率直に言って持っております。

ただ、それがインサイダー情報によるとかいうようなことになっては、これはいけませんから、もちろん所管業種に関わる株式の取得の時は、これはもう厳に慎むべきことだろうと思っているのは当然のことであります。とりあえず以上でございます。

問)

今、株式の扱いは変わってきてもいいじゃないかということですけれども、これは閣僚…大臣や副大臣にあるものであっても株式はやってもいいじゃないかというお考えですか。今、禁止ですけれども…。

答)

ええ、今は禁止です、というか自粛しましょうという申合せをしているわけですね。それはそれで私は是認します、その申合せ自体は。ただ、何と言いますか、他の資産に対しまして株式というのは、現在株式市場は非常に冷えていまして、私どもも非常にそこを懸念して見ておりますから、そういう意味でも株というものを何か非常に特殊なものと受け取るような受け止め方というのは、本当は如何なものだろうと。例えば、何を買ってどのように売った、どういう理由だったというようなことを適切に疎明することが、理由を説明することが機会として与えられるとか、そういうことであれば、私はもう少しそこは別の考え方があってもいいのかなという気は、あまり具体案はありませんが、ちょっと持っております。ただ、アメリカの場合でもご案内の通り、閣僚等につきましては株式は就任しましたら全部信託するという制度になっておりますから、これはやはり今の日本の制度はそれなりに妥当性があるのかなという気がいたします。ただ何となく、株式取引が非常に特殊なものなんだと、言っては何ですが悪いことのように受け取られるというのは、今のマーケットの状況なんかを考えますと如何なものかなあという感じは正直言ってあるということを申し上げたかったわけであります。

問)

確認ですけれども、大臣・副大臣が株取引をやらないという申合せについては妥当性があるということを思うけれども、それが一般の国民に対して株は何か悪いものだとかいう、そういう悪印象を与えることについては本意ではないということでしょうか。

答)

まさにその通りです。

問)

ご自身の資産の水準について改めてどう思われていますか。

答)

私はまあ、残念ながら子供がおりませんで、家内と二人で比較的健康に社会活動を続けることがこれまで出来て参りました。そういう意味では、これだけの時間が経ってみまして、まあ妥当なところかなという気がしております。

(以上)

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