柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年1月23日(火)10時30分~10時58分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日の閣議ですけれども、冒頭、麻生太郎国務大臣の就任と額賀大臣の辞任の認証を求めることの閣議決定が行われました。閣僚発言では海外視察の報告。それから26日(金)の閣議は9時30分から官邸で行われるお話でした。平沼経済産業大臣海外視察で私がその間臨時代理を務めるという発言がありました。

閣僚懇に移りまして、有珠山の視察を伊吹防災担当大臣がなさったこととの関連でいろいろな話がありました。国勢調査は避難場所でやったけれども、基準財政需要等の算出に当たっては、本来の住所というか、そういうものを補正して算定してもらいたいというようなことの話がございました。以上でございます。

【質疑応答】

問)

KSD絡みの額賀大臣の辞任についてなのですが、1月6日の省庁再編からまだ1カ月経たないうちに大臣が辞めてしまう。また森内閣から見ると、3人目だと思うのですが、こういった事態ですね、折角省庁再編をして政治主導といってきたものの、一方で大臣の椅子が軽くなっているのではないか。そのように見られてしまうのではないかと思うのですけれども、大臣ご見解をお聞かせください。

答)

大臣の椅子が軽くなっているというのは、そういうことがあってはならないというように思います。背負っている責任、それから委ねられている職務の重大さからいって、そういうことがあってはならないというように思います。額賀大臣とは個人的にも非常に親しくて、閣議の席も隣合わせでありまして、お互いしかも所掌の事務が経済問題であるということで、閣議での発言、あるいは閣僚懇での発言の他にも二人でいろいろ連絡を、その機会を利用してし合っていた関係なものですから、個人的にも極めて残念に思っている次第です。

ただ、こういう今政治家に厳しい倫理が求められているという中ですので、我々が行政を進めていく際に国民から些かの疑惑もかけられて仕事を遂行するということはやはりできないと思いますので、その点については止むを得なかったと、辞任も止むを得ないだろうとこのように考えております。以上です。

問)

株価対策なのですけれども、昨日、与党の方も株価対策の会合を開きましたが、その中で今、金庫株の解禁については方向性が出て来ていると思うのですが、公明党などから、その関連として、持ち合い株の等価交換について、市場を通さないという意味での問題という意識みたいなものが出たようですが、そういった意味での大臣の方の等価交換も含めてのお考えと、それから証券取引の監視という観点での課題についてご見解をお聞かせください。

答)

金庫株そのものについては、私、これを株価対策という見地から問題を取り上げるということには些か、何と申しますか、すっと腑に落ちない話だというふうにかねて申し上げてきましたけれども、いわゆる資本市場をもっと厚みのあるものにしていくという諸々の政策の一環として、そういうものを取り上げるということについては、これはまあ理解できるということでございます。その上で今、株の等価交換という話が出ておるということでございますけれども、私の方は些かテンポが遅いのかもしれませんけれども、まだ実は我々の検討というのもそこまで、少なくとも私の段階では進んでいないというのが正直なところでございます。

今、証券市場監視の観点からどうかという話がございましたけれども、これは金庫株については、そういう等価交換を云々という話になる前にも、これはいろいろ注意しなければならない取引ということがあるわけですから、嫌が上にも公正な取引と公正なマーケットを作るということと、それに反しないようなことに十分留意していかなければいけないというように思うのです。従って、等価交換というようなことになれば、尚更いろいろな問題がそこには出てくるだろうというように考えるのが普通でしょうから、更に一層、我々としてどういう問題があるか、それを本当にルールで持って潰しておくことができるのかというようなことについて、今後検討を深めていかなくてはいけないだろうと、こういうように考えております。ちょっと聞いただけでも、私、元は税制をちょっと勉強した立場からいっても、法人税の譲渡益の課税などはどうなるのかなあという感じがすぐに頭に浮かぶというのが、私の今申し上げられることであるということでございます。

問)

今日、一部報道で大正生命の問題で、ソフトバンク・グループと大和生命が共同出資で受け皿会社を作るということが出てましたけれども、大臣、どれくらい把握していらっしゃるかということと、その点をどう評価されるかということをお聞かせください。

答)

ちょっと度々釈明みたいな答弁になって、私自身も格好が悪いなあという感じがしますけれども、この点についても私の段階にまだ何の状況の説明等の情報が上がって来てないということでございます。更にそういう事務当局の話以外に、私がここで話すことは全て事務当局の情報に基づいてやるということばかりではないものですから、そういう意味で個人的なレスポンスができるかということですが、ややこの問題は込み入った問題かなという感じがしますので、ここではそうした個人的な見解を申し述べることは控えたいと、このように申し上げます。

問)

昨日の森長官の会見の話の継続で恐縮なのですが、まだ上位行の株持ち合いについてかなり行政的に持ち合い株の解消はやめて下さいという指導はなさっているのですか、そうではなくて、銀行が自主的に放してないといいますか、引当てを積んでくれということになると、また4月から放さなければならない、そうした事態の可能性があるものですから、ここはどういう感じなのでしょうか。

答)

これは就任の時にも、私申し上げた通り、私の就任直前に年末の中小企業金融の円滑化協議会ですか、そこで相沢前大臣からそういう発言をされ、そして全銀協(全国銀行協会)の西川会長の方からもそれは十分心得ておりますというような発言があったと、こういう経緯ですよね。それ以後別に何かがあったということでは全くないというように考えていまして、その発言を読んでみても、両方とも当たり前のことを言っているなというのが、私の印象だったということでございます。

問)

金庫株の話でもう少し大臣の方がご存じであればお伺いしたいのですが、銀行が金庫株や等価交換で自社株を保有した場合に、特に減資扱い、償却しなくても減資扱いになるのではないかという話があるのですが、一方で特例を設けて、凍結している間は自己資本比率が下がらないという考え方もあるようですが、BISの問題とかいろいろ絡んでますけれども、この点についてはどのようにお考えですか。もしその辺についてご存じであればお願いします。

答)

これはご存じか、ご存じでないかという問題ではなくて、やはりポリシーの問題だと思いますね。ポリシーの問題であると同時に、何と申しますか、何を大事に考えていくかということだと思うのですよね。私はやはり銀行の場合には自己資本比率というものが、非常に他の産業とは全然違う扱いで、それが重視すべきものということになってますので、ここで言ったかどうか記憶が定かではないのですけれども、非常に銀行の場合に自社株の取得ということにはトリッキーな面が実はあるのですよと申しているのです。他の産業でしたら、ROE(株主資本利益率)が上がるとか、むしろメリットの方が多いわけですけれども、銀行はかねてから申しますようにROEは上げなければならない、しかし、自己資本は潤沢に持たなければならない、自己資本比率は高いレベルで持たなければならないという非常に難しい立場に立つ作業としてあるということなのですね。ですから、非常にこれは難しい問題かなあというように思っています。ちょっとタッチーな問題なのであまりここでちょっと私、これ以上立ち入ったことは申し上げない方がいいと思います。

問)

株価対策に関連して、株式譲渡益の課税について仰られたのですが、昨年の党税調では…。

答)

いや法人の(話)ですよ。つまり、先程の話は等価交換をした時に法人の譲渡益課税は一体どうなるのかなあということが頭に浮かびましたということを申し上げたわけです。

問)

個人向け譲渡益課税については、実は繰り越しとか、合算とか通算とか案が出ているのですが、昨年末の党税調の結論との整合性を指摘する声もあるようですが、今年度中に何か出来ることがあるという見通しですか。

答)

これは党税調という大変権威のあるところでの結論が一度出ているわけですけれども、同時にまたそれは国会の何か決定と言うか、法案という形での一種の決定があったというわけでもないのですね。それは政党の問題ですから、政党でどう判断していくかということ、どういうポリシーを採っていくのかという問題だというふうに思います。私は個人的には、この点については、ではこれからすごく年度内にみんなで議論をして、それは法案としては一体何時成立するかという問題、提出して成立させるかという問題はあるわけですけれども、なかなか法案としての成立まで視野に置くと難しいわけです。

しかし、この際、鉄は熱いうちに打てであって、日頃の税制改正もどちらかと言うと、年度改正を前にして12月に一週間か、そこらでやるということで、この期間では難しいというようなことが起きがちなのですね。ですからこの際は、初めての試みかもしれませんけれども、法律としての改正は仮に明年度の税制改正で行われるにしても、この鉄は熱いうちに打てでですね、この際少し時間をとって、そうした資本市場関連税制みたいなものを根本から考えてみるとか、そういったようなことがあってもいいのでないかと、むしろそういったことをお願いできれば有難いなと思っているのが現状です。

問)

昨日の日銀の月報で興長銀の新発債の利回りと国債の流通利回りが幾分拡大しているという指摘があったのですけれども、これは銀行の方の信用リスクを懸念しての動きとお考えか、あるいはそこまでという点ではどうですか。

答)

昨日の日銀の月報の話としては、むしろ景気判断がどういうワーディングになったというところについて、若干注意を払ったということで、今の興長銀と国債の流通利回りの乖離幅が広がったというところまではちょっと注意が行き届きませんでした。

しかし、一般論として言えば、これはあまり情報としての意味はありませんから、言わなくてもいいことですけれども、そんな深刻な問題ではないのではないかと、あまり言うと、またこれは失言になります可能性がありますので、これはちょっと注意しないといけないのですが、そういうふうに思います。

問)

先程の税制のお話なのですが、法律改正自体は、これは今年度にこだわる必要はないということなのでしょうか。それとも出来れば、それも今年度内にということなのでしょうか。

答)

もちろん出来ればそれでいいですね。出来ればそれでいいですが、既に私の知っている情報では前税制調査会長と宮下小委員長は、税制改正の中身は、本年度分についてはセットしたというようなそういうスタンスなものですから一応それを踏まえての発言に、先程させて頂いたということであります。もちろん、それも早ければ、早いほどがいいわけですけれども、やはりかなり根本的な議論が必要だろうと思いますので、なかなかそこまでは、つまり予算関連法案は提出期限も、もう間近ですよね。そういうことを考えますと、それに巧く乗せてとかいうことは出来ないのではないかなと。それから日切れ法案について、違う趣旨の内容の法案を同時に審議仰ぐというのは、やはり政府としてどうかなという感じもありますね。

ですから常識的にみて、タイミングとしては今申したタイミングかなと今申し上げたわけです。ただ、問題はいつもこうして検討項目に並べてもらっても、そうかと言って前広の議論というのは、なかなか期待し難いというのが今までの例ですから、そうであったら、今、鉄は熱いうちに打てで、ここの辺りで根本的な議論を始めて頂ければ非常に有難いなというふうに考えて、我々もそれには全面的に協力していきたいなと思っているところです。

問)

それは税調の方で、資本市場の税制について根本的な議論を進めてもらうというイメージなのでしょうか。

答)

いずれにせよ、税調の審議を経ないで、政府だけで案は決められますけれども、最終の案は今までは税制調査会との協議の上、両者の合意の上で出来上がってきたということですから、それはこれまでのレールに乗った考え方をしているということです。

問)

鉄は熱いうちに打てというのは、そういう意味では議論をしてですね、例えば、5月、6月を目処に骨格なりが出来て、それを来年度の税制改正に載せるということですか。12月の1週間でやってしまうのではなくて、議論として…。

答)

そういうイメージです。

問)

市場では、極論ですが3月末まで株価が持てばいいという議論がありますけれども、そういうことを避けるというお考えもあるのですか。

答)

そういうことではなくて、私は予て、やはり銀行だけが何もかも世の中の経済的なリスクを全部背負いこんでやっていくと、経済を運営していくということはですね、やはり無理だというふうに考えているわけですね。これはずっと皆さんの前でも申し上げてきたことだというふうに心得ていますけれども、もっともっとリスクマネーの供給のマーケットというものを充実してもらわなければ、日本経済そのものが弱くなってしまうのではないかと思うわけです。そういう観点から、やはりもうちょっと直接金融のウェイトを高めてもらいたい、それにはどういう制度というか、インフラというか、そういうものが必要なんだという根本的な議論をして頂いて、そちらの方向での政策の決定が望ましいと、欲しいと、こういうことを申し上げているわけです。

問)

亀井政調会長が一部紙のインタビューで、もう一度税調を開いて議論してもいいのではないか、というご趣旨のことを仰っているようですが、大臣、今そういったお話をされましたけれども、党内でそういう意見というのは出てきているのでしょうか。

答)

税調関係者からは、逆に出ていないわけでしょう。先程紹介したような話で、無理ですからねみたいな、若干そういうニュアンスの発言があったということです。しかし、我々が強く要望して、検討項目にはそこのところをきちっと、議論をしなければならない課題なのだということになっているわけですが、そこは、ちょっと1年ほど前倒してもらうということも十分考えられるのでないだろうかと、こういうように思います。3月が越せればなんていう、そういう話では毛頭ありません。そんな短期的な話ではないのではないかと、この話はそういうふうに私は思っているのですね。

問)

額賀さんの問題に戻ってしまうのですが、これを機にして、また国民から政治に対する不信感というのが高まると思うのですけれども、信頼を取り戻すために何が必要とお考えか。それから、こういう場合にいつも出るのですけれども、首相の任命責任についてどういうふうにお考えなのですか。

答)

どういうふうに信頼を回復するかということですけれども、やはりこのところいろいろな形で、厳しく特に政治資金関係については、規正していこうと、そういう制度改正がかなり矢継ぎ早に行われているわけですね。それで、私は、そういうことをやはり自分達が審議して、自分達が決めているわけですから、従ってそのラインに沿った、自分が活動をしていくということを、もっときちっとやっていくということだろうと思うのですね。私なんかも、なかなか全部が全部自分がやっているわけではないものですから、そういう仕事をやってくれている人には常に注意を喚起しているわけですけれども、いずれにせよ、そういう政治家及びそれを補助してもらう職員、あるいは秘書というような人達が同じような認識のレベルで間違いのない活動をしていくということに尽きるというふうに思います。

任命責任についてはちょっと具体の話は、私十分に情報がないわけで、ここでその問題について論じるということはちょっと適切でないというふうに思っております。

(以上)

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