柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年2月27日(火)9時15分~9時35分)

【閣議案件等】

おはようございます。本日の閣議は事務的な案件のみでした。

閣僚懇に移行しまして、有明海の海苔の不作のための調査に対して、いわゆる第三者委員会というものが発足するという報告がありました。次いで、ハワイのえひめ丸の事故対策のために官邸に調整室を置くという話がありました。関係の役所は、外務、防衛、国土交通、農水、文部科学、経済産業、官房ということであります。以上でした。

【質疑応答】

問)

まず不良債権の直接償却の問題についてお伺いしたいのですけれども、大臣はかねがね引当てという備えは十分できているという環境の中での直接償却の必要性というのは、ひとえに収益体質を硬直化せさせてしまうことになりませんが、不良債権額の残高が経営の足かせになるんだろうということだと思いますが、では今、30兆円ぐらいあるリスク管理債権がどのくらい減ってくると海外の金融機関と競争していけるような収益体質になるのかと、どういったイメージを大臣はお持ちでしょうか。

答)

ちょっとそのシュミレーションは、何と言うかいろんな条件があるものだから、なかなか簡単には出ません、正直言って。従って、まだ私の頭の中のイメージもないのですけれども、とにかくリスク管理債権というのは、利息が予定通り入らない債権という意味なんですよね。そこからもう明々白々で、この利息が予定通り入る債権にしないと、そういう利息が予定通り入らない債権をたくさん持っていて収益が上がるわけがないというふうに今考えているというのが現状です。

問)

引き続いて、その影響ということで言えば、不採算部門の切り離しにしても、法的整理にしても、ある程度の失業者ということは想定されまして、雇用問題というものが大事になってくるかと思うのですが、今、失業率は5%目前ですけれども、構造改革と引き換えに失業率が5%を超えることもあるぐらいのある程度の失業というのは止むを得ないというふうにお考えでしょうか。

答)

かねて言っているように、雇用の問題というのは我々の経済政策の中で、最も重視すべき目標のわけですよね。雇用はトッププライオリティーの我々の経済政策の目標だと、こういうことはまず押さえておかなければいけないと思いますね。

それで、そういうことの下でどう考えるかということなんですが、直接償却という言葉が私はすごく、何と言うか広まっているわけですけれども、もっと言ったらオフバランス化なんですね。

オフバランス化という言葉が横文字なものだから、なかなかうまく言う表現がなくて直接償却という言葉になっているんだろうと思いますけれども、私の整理で申し上げれば4つあると思うんですね。

一つは売却というか流動化ということですね、証券化も含めて。いずれにしてもそういうふうに流動化する場合であると。二番目は、再建計画というものの下で債権放棄をするということですね。それからもう一つは、これは相手には伝えるのか伝えないのか、その辺が定かではないのですけれども、担保で保全しているもの以外の債権を、もう見込みなしということで償却する、いわゆる部分償却というものですよね。それから第四番目には、その経緯というのはともかくとして、相手が何らかの法的なと言っていいと思うんですが、整理をするということの中で、司法の下で債権の償却をせざるを得ないという形でするという、大体この4つのパターンではないのかと、こういうふうに思います。

そういうことの中で、基本的に僕らの考えていることというか、その中心は、やはり全然動いていない資産があって、あまり稼いでいない不稼動資産というものと稼動資産というものがあると。それを分けて不稼動資産に関する部分については整理をすると、そして稼動資産でもってどんどん収益を上げていくという、そういう実体経済の側の話とタイアップした格好で我々がオフバランス化を図っていくという、まあ敢えて言えば二つ目に言ったタイプだったと思いますが、そういうものが中心なんですよね。そこにまたそういう技術的にどうしたらいいかといういろんな問題があるんだろうと思っているけれども、今既に不稼動の資産になって、あるいは不稼動の事業部門、事業になっているというところで、そんなに雇用というものを抱えているだろうかと、今現にですよ、そういうことを考えます。

ですから、一つは倒産がどんどん増えるということを言う人もいるんだけれども、まあそういう会社の、私が言うと不稼動事業と稼動事業とを分けて、そこに整理をするということが倒産という言葉に当たるの当たらないのか、これはもう人によって違うのではないかと思うしですね。それからまた、それによって例えばすごく雇用に影響が出てくるというのは、今そういう不稼動事業部門でも、ものすごく雇用を依然として維持しているというところがあるとすれば、それはまあ影響がないとは言えないけど、会社の実態から言ってそういうものなんだろうかと、そこにものすごく雇用が溜まっているんだろうかということについて、私はまだちょっとなかなか理解、分からないというのか、こういうことであります。

問)

金融機関の中では、どうせいつかは直接償却するのであれば、ゼロ金利で株も高かった、去年の方が良かったななんていう声もあるんですけれども、まあ株の方はもうどうしようもないのですけれども、動かしようがないのですが、金利の方ですが、金融政策という意味で余地は少ないですが、不良債権処理の直接償却のために金利はもう少し低い方がいいと、その辺についての大臣のご所感は如何でしょうか。

答)

うん、まあね、我々がやろうとしていることをまず固めることが大事でしょうね。ある程度動くことも大事でしょうね。

そういう中でどういう影響が出るんだということの見通しが出てくると思うんですね。その時にいろんな理解ある方々がそれに対して対応してくれるということを、必要ならば私は期待したいと、こういうふうに思っているということですね。

問)

不良債権の思い切った処理を進めれば、銀行によっては赤字決算を組むことにもなると思いますし、大手行の中には資本注入を受けて経営健全化計画を出して、それが未達という問題が出てきます。その時に、経営責任というものがある程度生ずるというふうに大臣はお考えでしょうか。

答)

どういうことをイメージされるかは知らないけれども、まあ、さっき言ったように、ある企業に貸し出しをしていると、それがかなりの部分に不稼動な事業部門があるということのためにファィナンスのリターンがないということなんですよね。私はそれをここのところの膿を出して切り捨てなさいと、そうすれば順調な事業部門からしっかりした収益が上がってくるからちゃんとしたこっちへのリターンもあるはずだと、こういう仕組みにしようというわけですよね。

その時に、ではそういうことをやるこっちの不稼動な、あまり収益の上がらない事業部門を切るということをやった時に、我々はちゃんとした引当てをしていますと、こう言っているわけですよね。それにプラスの損失が生まれないとは、私はそこまで言うつもりはないですね。ないですけれども、そのプラスして生ずる損失の金額が、いわゆる処分損を激増させるような話なのかというふうに考えると、そんなに激増というようなことはないのではないのかというふうに思うんですよ。

つまり、今までのペースの処分損というもののオーダーを変えてしまうようなそんな影響が出るんだろうかと。ちょっと考えにくいのではないか、あるいは出るところもあるかもしれない、今までの処分損にまたプラスαが出てくるということなんだけど、まあそれは銀行にもよるんだろうと思うんですね。だけど、我々が今まで考えてきた、あるいは言ってきた文脈からすれば、そこでえらいこと処分損が出て健全化計画に大いに触りが出るということまで考えるのは、ちょっと今なかなか自信を持って言えないところですねということなんですね。

だから、ないとは言えないからその時どうするかというお話だというふうにすると、まあ一つは30%下振れ、これはまあ単にそういうしっかりした事業の建て直しみたいなものがあれば、それはストレートに業務改善命令にはつながらないよという制度になっているし、そういうようにしっかりしたことで30%下振れがあったとしても業務改善命令は出ないよという時に、いや経営陣だけはアウトだよという議論というのはちょっと難しいのではないかというふうに思います。

問)

銀行の直接償却を進めるに当たって、税制面の問題が出てくるかと思うのですが、今、無税償却する際に破綻先の企業については無税償却できるというふうになっていますが、さっき仰った、今生きている企業の債権放棄をするに当たって、その部分を処理するには基本的に有税償却という形になっているかと思うのですが、その辺の基準を徴税当局の理解を得て緩和するということも、それを促進する上で必要かと思うのですが、その点についてのお考えは如何でしょうか。

答)

その前にちょっとさっき言った第二パターンのみというふうに理解はしてもらいたくないんですよね。我々が考えてきたプロセスでもそういう考え方が中心でありましたよということを言ったというふうにご理解頂きたいので。では流動化のことは考えていないのかといえば、それは考えているんですね。これは銀行の収益性を高めるということですからね。その他のことも考えていないかといえば、それは考えて、当然我々本来のことですから考えてます。そういうことで、それだけというふうには受け取らないでもらいたいと思います。

それから今のお話で税務の面で何か配慮してもらうところがあるのかといえば、それはまあ配慮してもらうところが出てきそうだなあという予感はしますよ。だけど、あまり、まだ具体的に考えていません。今日、話をしたのは、何か誤解があって次々倒産が起こって、次々失業が出るというようなそういうすごいことを言う人がいるものだから、私としてはそうなんだろうかなと思っていますよということで、ちょっと言ったんですがね。

その他のスキームについては、まだ3月一杯に概成すると言ったんだから。ちょっとまだ早いのではないですか。

問)

先程の不稼動部門というか収益性の悪い部門ということなんですけれども、いわゆるオールド・エコノミーと言われているような中では、一番本業であるところの部分が収益性がどうしても低かったりするという部分があるかとも思うんですけれども、この場合というのはどういうふうに考えればよろしいのでしょうか。

本業で一番、例えば人、先程、そういうところに人を抱え込むかということを仰いましたけれども、そういう部分について。

答)

今は、主が構造的不況業種。まあ、経営の多角化を図ってもらうんでしょうね。そういうところについては、まあ皆さんのご想像というか、皆さんの推論が当たる部分が多いかもしれませんね。

問)

こうした大変革をやる、「大」とは付かないと仰るかもしれませんが、今の内閣の支持率、1桁台の内閣の支持率ですが、やはりこういう大きな変革というのはリーダーシップというのが大事だと思うのですが、ある意味で今仰られたようなところですと、血を流さなければいけない部分があったりするかもしれませんが、そういうものをこの低支持率の内閣で推進するのは難しいとは思われていませんでしょうか。

答)

まあ政権の何と言うか支持率との関係を、私はそういうことではなくて、要するに初めから低支持率だったんですよ、この内閣は。そうでしょ。だから、それをどうしますかと就任の時に皆聞かれたんですね。その時に我々が言ったことというのは、自分達がこれから担当することになる部署部署でですね、ベストを尽くしますと、そういうことによって内閣の支持率が上がることを我々としては期していくんですという答弁をその時に皆しました。私もそういう覚悟でやりました。だから、その所信というか、それを今実行しているということに尽きるんですね、尽きるんです。だって、非常に高いところから下がったのだったらこれはどうしようということかもしれませんが、初めから低いところにいて、ちょっとその低さがまた低くなってきたという程度の話で、我々の努力がむしろ足りないということですね。

(以上)

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