柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年3月13日(火)9時32分~9時54分)

【閣議案件等】

おはようございます。今朝の閣議ですけれども、特別交付税の話。それからモザンビークとコロンビアに対する緊急援助の話。それから、20日の閣議が21日に繰延べされる話等がございました。

閣僚懇に入りまして、総理から、3月10日の会談の概況の報告に加えて、心を一つにして重大案件の処理という任務を全うしていこうというお話がありました。

松尾元室長の逮捕について外務大臣、官房長官からお詫びの言葉がありました。

以上でした。

【質疑応答】

問)

平均株価が12,000円割れの状況で、株価下落に歯止めがかからない状況が続いているのですけれども、これについて大臣のお話をお伺いしたいのですが。

答)

そうですね、アメリカの株式市場が非常に昨日、芳しくなかったというようなことを受けて、アジア全域でのマーケットで株価が振るわない状況になっているということです。株価が振るわないこと自体、今の日本経済のことを考えると、何と言っても国民の意識を、国民の心理を暗くするので望ましくないというように思いますし、特に皆さん関心の深い金融機関については、期末がどうこうではないですけれども、いろいろな意味で芳しくない影響があるということで、あまり良いことだとは思っていません。

望ましくはないのですが、ただ、今お話が出かかったのですけれども、私はかねて申し上げているように、ここでバタバタと何か一喜一憂して、び縫策をとるというようなことではなくて、本当に中長期的にまず株式市場の厚みを増やすよう、特に個人投資家のウェイトを増すように各方面での努力をしていかなければいけないというように思います。また金融機関等もあまりこの株式の相場の変動で一喜一憂したり、あるいは現実に業務に影響が出るような体質というものは早く改善をしておかなければいけないと、これはいずれも中長期的に取り組めばいい話だと私は思っております。じっくり腰を落ち着けて本当に力の強いそういうマーケット、それからそれを支えるインフラ等というものを作り上げていくことが大事だと、このように思います。それは4月以降、我々はやりますから。新しい年度になりましたらですね、それに取り組むということです。

問)

4月以降、取り組まれるということなのですが、具体的にはどういったことでしょうか。

答)

先程言ったように各方面でということはですね、まず第一に発行体の経営者、これらももっともっと株主を重視した活動、特に財務面での経営判断というものをしていくということが大事でしょうし、それからまた証券市場、特に証券会社がそういう個人の投資家を育てていくような気持ちでこれに接していくというようなこと。それからまた、かねていろんなところで議論のある株式に関わるいろいろな税制、こういうようなものについても本当にリスクマネーの供給者としての株式の投資家というものに対して、これまでちゃんとした税制を敷いてきただろうかというような観点で見直さないといけないだろうと私は考えています。

問)

証券税制というか税制の面なのですが、自民党の税調の方では早期の見直しということに対しては消極的な立場をとっているのですけれども、改正については、そういう見直しについては急務というお考えでしょうか。

答)

これは、山中最高顧問なども株価対策というのでいろいろバタバタとやりたいということについては、そういうことはすべきでないという考え方に立ってお話があるわけですね。

私どもも、そのことは全く同じで、別に短期的な意味で株価対策に役に立つからというようなことで税制を見直そうということでは全くないわけで、そういう意味だと逆にどれほどの効果があるかというのは、いろんな論議があるわけですから、私はそういう株価対策云々の観点ではなくて、本当に個人の投資家の、先程言ったように保有割合だとか、あるいは場合によってはそれを反映した売買取引の中での割合だとかというものを、もうちょっと然るべく位置づける、そういうものとして本当にそれをバックアップするのに適切な税制かどうかと、こういう観点でもう一回見直しをしたいということであります。

ちょっと口幅ったい言い方をしますとね、そういうものを資産性所得と言うんですよね。特に配当なんかは資産所得とも言うのですけれども、これもシャウプ勧告以来、日本の税制のイデオロギーであった包括所得税理論というか、総合所得の理論というか、そういうものと分かちがたく結びついているんですね。この前あたりでもちょっと国会の議論を聞いてますと、民主党の菅さんなんかはですね、すぐ納税者番号制との関係とか、あるいは土井社民党党首なんかもすぐ二言目には言うしですね、自民党税調の大幹部も多分にそういう考え方なんですね。ところが、最近における租税理論、私はまあずっと自分の個人的な関心もあって租税理論をずっとフォローしてますけれども、最近は公正・中立・簡素と、こう言うのですが、その中立の中身として、あまり経済の活動に影響を与えてはいけないということを言ってまして、だからちょっとした課税がどれだけ影響されるか、弾力性という捉え方もできるでしょうけれども、そういうものが多いところ、高いところにはあまり課税してはいけないんだということですね。つまり、課税すると中立性を乱すわけですね。

そういうところから最適な課税というものは、それぞれにどうあるべきかと、それぞれの背景の違った所得に対する最適の課税というのは、つまり最も中立的な課税というのはどうあるべきかという最適課税論というのが最近非常にまあ、何と言うか租税理論の中で力を増してきているんですね。そういう最適課税論という租税理論に立った時は、資産性所得については分離課税というものには固有の論拠、理由があるんだという考え方をしてます。その辺りのことのフォローアップが十分ではないというか、その租税理論が十分にまだ市民権を得てないとか、あるいは普及していないということが背景にあると思うんですが、逆に言うと一般の人の、一般の立法関係者の勉強不足も否めないと思いますが、いずれにせよ総合所得税論というのが、馬鹿の一つ覚えとは言いませんが、何十年前のお経を唱えていることが租税立法者あるいは企画・立案者の、何と言うか信仰みたいになっているのは、もうちょっと勉強をする必要があるというふうに思っておりまして、最近私は国会では2、3回、この最適課税論を展開していることは、あるいは傍聴してくださっていてお分かりかと思います。随分最初から口火を切っているんですけれども。

問)

与党の経済対策についてですが、先週末に出ましたけれども、その辺の評価をお伺いしたいのですが。

答)

先週末に投げ込みというのですかね、そういうことがあったようでした。いろいろ考えてくださっているということで有難いと思っております。今言ったような点についても触れていらっしゃるし、行き届いた案だというふうに思っています。

問)

九州の銀行の統合問題なんですけれども、これに関連して当初3行で県境を越えて統合していこうと、こういった話があったんですけれども、ここに来てもう1行加わって2グループに分かれるのではないかと、こういうような観測もあって、現地では実際に親和銀行というところがそういう方向だということで発表しているわけなんですけれども、これについてのご感想と地域金融機関の再編ということで一定の評価をされているのではないかなあと思いますので、こういった部分についてお伺いしたいのですけれども。

答)

具体的な個々の銀行の動きについてはコメントはしないということで、これまでの慣例を守らなければいかんと、こう思いますが、今言ったようなご質問も一般論でということでありますので一般論でお答えすれば、そういう再編の動き、再編もただ形の上の再編ということではなくて、それぞれが一つのビジョンを持って経営の強化、それから効率化を図っていくということは歓迎をすべきことだと考えています。

問)

昨日の長官の会見では、民間の株式買上機構について、安定的に受け手としてそういう機関ができるのならということで仰いまして、まあ行政として味付けの部分について聞いてみたいと思っているというふうに仰いました。この味付けの部分と言いますか、新年度になればある程度定期的に含み損を抱えている持ち合い株式について具体的な政策をやっていくといったようなアナウンスメントをですね、まあそれは株価の状況によるんでしょうけれども、やっていくということは十分に考えられるという要請だと思うんですが、この辺りは如何お考えでしょうか。

答)

まあ森長官の言っていることでいいんじゃないかと、こう思いますね。要するにいわゆる民間ベースでですね、いろいろな工夫、その一つとしてそういうものがあるとしても我々はそれを否定すべきことだとは思わないので、いろんな発想が出てくるということは基本的に歓迎ですね。ただ、味付けというものがどういうものかちょっとよく分からないわけですけれども、何と言うか、もし間接的、インフラ的に手伝うことがあればそれは必要に応じて手伝うことはやぶさかではないということでしょうけれども、例えば損失を結果において公的資金で埋めろみたいなそういうお上頼りみたいなスキームということは、もうそれは私は適当でないと、もっと自立・独立の考え方で一貫していくと、それを貫徹していくという姿勢でなければならんだろうと、こういうように思っています。

問)

先程大臣は下落傾向に関する見方を仰ったと思うんですが、バブル崩壊後最安値を更新しているという、あるいは12,000円割れをしたという、このことに関してはどう受け止めていますか。それと、大臣としてはこういう最安値をどんどん更新していく状況に対してどういうところに原因があるというふうにお考えでしょうか。

答)

バブル崩壊後の最安値ということを仰っていますが、我々は日経平均が銘柄の入れ替え等をしてやや連続性という意味では問題があるということも聞いていますので、まあ仮にTOPIXで見ますと、そうするとまだ、まだと言って別に早く割れと言っているわけでも何でもないのですが、最安値という捉え方をするというのはちょっと当を失しているのではないかと、こういうように思っています。

いずれにしろ、決していいことだと思っていないわけでありますし、我々も極論して言うと買い時だというふうに個人的には思うんですけれども、またそういうふうに現実に言っている人が周囲におりまして、立場が立場なら買い時だなあと思っているわけですが、別に今どうこうできるわけではないので、ただそう言っているだけでありまして、まあマーケットのことですし、発行会社が飛切り何か悪くなるというようなことでは全くないわけですね、全くないわけなんで、よく落ち着いてもうそろそろ当然買いに入る時期ではないかと、こういうように個人的には思うわけですね。

まあ、これは率直過ぎるかもしれませんが思うわけで、あのバブル崩壊後の騒然とした日本の金融システムがグラグラしているという時とは全然環境が違うのではないかと、もっと落ち着いて投資家はこの辺からもう買いに出るというのが当然ではないかなあと思っています。別に、当然当然とさっきから言っているわけですけれども、そういうように思いますが、日本の場合はアメリカのナスダックの影響を受けるというようなこともありまして、特に日経平均はそうですが、あまり芳しいことではないというふうに思っています。その対策については、あくまで先程言ったように、私はバタバタすることはやはり適当ではなくて、もっと腰の入った不退転の決意での日本の資本市場の育成、厚みを増す方向でのステップというのをきちっととっていきたいと、こういうように思っています。

問)

金融派生商品でリンク債とか、あるいはEB債といったような投機的な側面が強い商品が今、出回っていますが、森長官はそういう商品を規制するお考えはないようですが、大臣としてはこういった投機的な商品についてどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。

答)

これは、いつかの記者会見でも申し上げましたけれども、そこに相場操縦的に自己が利益を得んがために相場操縦的な動きがあるというようなことであれば、これは不正の取り締まりというのはどこまでも厳正にやっていかなければいけないと、こういうように思っています。ただ、商品そのものを規制するかということに対して我々は慎重でなければいかんだろうと、こう思いますね。本当のことを言うと、気持ちの上ではそういういろいろな商品があってこその市場だと、市場というものはそういうものも受け入れられるようなそういうキャパシティーですね、本当の意味でのキャパシティーを持つのが望ましいと思っております。

ただ、我々のキャパシティーが今そういうものを何でもいいよというぐらいに受け入れられるだけの大きさにない時にこういうことがあるのは、非常にまあ若干眉をひそめるというか、困ったなあという感じは正直ありますけれども、ここでまたそういう直接の規制をしてしまうとやはり東京のマーケットというものに対する信頼というか、そういうもので中長期的に失うものも多いんじゃないかなあという気がしていますので、まあ今我慢していると、これが実態ですね。

問)

我慢の限界というものもあるのですか。

答)

我慢しているということに尽きます、今は。

(以上)

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