柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年3月16日(金)9時12分~9時41分)

【閣議案件等】

おはようございます。今日は月例経済報告がございました。それぞれのところから話があったわけですけれども、主な発言としては、日本銀行の金融政策に対して、デフレの状況を克服するための金融政策というものについて、一段と何か工夫はないのだろうかというような問いかけがありまして、日銀総裁からは、現在の採っている金融政策の報告があったと、こういうことでございました。

それから貸出、日銀の金融政策が緩和されているにも関わらず、それが実需の企業まで流れて行ってないのではないかというような話がありまして、これについては、一つは金融庁の検査がきついということの反映で、特に協同組合形態を採る金融機関等からの融資が細っているのではないかとか、あるいは中小企業向けの金融も需要がないわけではないのではないか、何となれば、特別保証枠、あるいはこれからの保証枠を使う機運というものはまだ衰えてないわけで、そういうような状況を受けて、もうちょっと疎通をするようにすべきではないかというような意見がある一方で、そもそも貸出ができないのは、相手があまり芳しくない状況にある、その中には不良債権を抱えているので、不良の資産、あるいは不稼動資産を抱えているので、そこを切り離さないと、なかなか銀行側も貸出しできないというようなことがあって、それは今私のところでやっていることで、その政策はそういう意味で進めるべき政策ではないかといったようなことで、貸出金が伸びないことについての若干の論議がありましたが、別にそこで何かが決まったわけではありませんでした。

それからセーフティネットの話に関連して、雇用がますます厳しくなる恐れもあるので、事後的なものではなく、どういう仕組みなのかまだ勉強しているというのですね、雇用の確保のためのネットをどうして作ったらいいかというのを労・使・政でもって、少し勉強したいというようなことを考えているんだというような発言もございました。大体そんなところが月例経済報告を聞く会の話でした。

それから、閣議がありまして、時差通勤・通学計画の推進というのをまだやっているそうですが、私もちょっと驚いたのですが、官房長官からそれをもっと推進するんだという話がありました。平成13年度から5カ年間の第7次交通安全基本計画というものが閣議決定されました。それから、春闘の情勢についてご報告がありました。回答は昨年と大体同様、まだ途中ですが、一時金については昨年を上回るような状況も出ています。次いで、インド、ルワンダ、ペルーに対する緊急援助の話がありました。

閣僚懇に移りまして、ミールの破片の落下について報告がありました。3月21日プラス・マイナス2日のこの時期に軌道離脱操作というものが行われて、それで自然落下か、何か最終噴射かが決まって、場合によって40分ほど日本の上空を、その結果通ることがあるので、何回聞いても良く分からないわけですが、その緊急の事態に備えておくことをやるんだということでございました。

それから、官房長官から昨日ありました緊急経済対策本部第1回会合の事後報告がございました。それから、ワールドカップの関係で、昨日ASEANの大使が国土交通大臣のところに来て、空港のことを陳情されたけれども、そもそもワールドカップについて関係閣僚の協議機関がないのもおかしいのではないかというようなことで、雑談のうちに、いずれそういうふうになると思うのですけれども、受入体制ということで、もうちょっと本格的な取組みが必要ではないかという感じのことが各閣僚から出ました。以上です。

【質疑応答】

問)

昨日の緊急経済対策本部の初会合で、その経済対策に出ている株式買上機構について、損失が生まれたら財政で面倒を見ても構わないというような、見ることも考えながらスキームを作ったらどうかという宮澤財務大臣の発言がありましたが、これを受けて柳澤大臣として、この株式買上機構について、今後どのように進めていったらいいか、あるいは考えていくべきでしょうか。

答)

いずれにしても、これは民間の、元々アイディアも民間の一部から出たようですが、民間の機構として考えるということでありまして、それの幾つかの点についての問題というものを、私がその場で指摘したわけです。

その場では私は、一番の問題は、もし仮にその資金の造成が行われる時に、金融機関の融資が行われた場合には、そこへの貸付金はやはりリスクを勘案して、片方で引当金を積まなければいけないというようなことで、非常にまあ、またもう一度引当金を積むような資金を片方で抱えるというようなのはどうだろうかというようなことがあると言ったら、そういうことだったら、引当金は積まなくていいようにしたらどうかという意味で、ちょっと財務大臣から助け舟が出たわけですが、

その直後に私、参議院の財政金融委員会で答弁したのですが、その時にはもう一つのことを申し上げたのですね。つまり銀行に溜まっているこの保有株が売り圧力で市場にプレッシャーになっているということもあるけれども、それはどこかに移しても同じだということでございますから、これはいずれ最終の投資家に持ってもらうという段取りが必要だということを、昨日もちょっと申し上げたのですが、そういうことの見解として、どういうふうに民間側が仕組むのが一番ベストと考えるかというようなことで、その辺りは、商売というか、取引の問題でもあるので、まず第一義的に民間側のいろいろなアイディアというか、そういうものを聞いていくのがいいのではないかなあと、こういうように思っています。

それは、もちろん折角、財務大臣が気を使ってくれているので、そのことも、その検討の時には念頭においてやれるわけですけれども、そういうふうに考えてます。

問)

昨日、UFJのグループが今年3月期の決算を赤字決算にして、不良債権の処理を進めるというふうに発表されましたが、大臣としてこのような動きについてどのようにお考えでしょうか。あるいは他の大手行、あるいは銀行としてはどうようにお考えでしょうか。

答)

UFJの問題は、UFJが3行統合するという、結局そういうことでございますが、そういうことに伴うものがまたかなりあるわけですね。それはどういうものかと言うと、前これは国会でも私議論したと思いますが、やはり同じ債務者貸出先企業に対しても、必ずしも同じ債務者区分なり、そういうものをしているというわけではないわけですね。評価がちょっと区々なんですね。それが3行統合となるとどうなるかというと、やはり一番厳しいところに合わせるということになりますね。そういうことの結果、今までちょっとそれよりも緩やかに見ていたところでは、引当金の増額が必要となるような側面です。

それから、もう一つどうも中身を聞いてみると、直接償却を想定して、それに必要な引当を積んでおこうということがある。あと若干、もちろん通常の経済状況、あるいは貸出先の業況というものを反映したものが、当然ありますね。

それはまあ、そう特殊なものではないと。1番、2番に言ったことがかなり大宗を占めているようですね。そういうようなことで、そういうものをずばり処理をするということになった結果ですね、赤字ということになったということでございます。

これをどう評価するかということですけれども、特に第2番目に言ったところは、私は来期以降でいいのではないかと思っていたわけですけれども、声をかけるとですね、分かったというような感じもあってですね、そういうようなことをしなければいけないというのは、やはり分かっているんですね。だから、それにすぐ、即座に反応した処理をしているということで、私はプラス、積極的に評価しておりますね。

だからと言って、他も皆そうやれなんて、そういうことは考えていません。それは私ども、また自分たちのやるべきこともその前にあるということもよく承知しておりますから、そういうことですね。

それから、何と言うか、そのことによって、さあ本当にそういう決算が組まれた時にどういう処置を採るのですかというようなことについては、決算が出た後、もう一度、概略の新聞発表で今言ったようなことだということを側聞したわけですけれども、もうちょっとよくそのデータを見ながら、何が故に赤字になったのかと、本当にその赤字になったことによって、市場の信認というものに逆に合った措置なのか、今、昨日の株価などを見れば、市場は信認してくれているようですが、そういうようなことをチェックした上で、我々が健全化計画に基づく、フォローアップを適切にしていくと、こういうことになろうと思います。

問)

買取機構に対して財政面で負担をするということなんですが、大臣は損失の穴埋め的なことは適当でないということを前に会見で仰っていたと思うんですが、この辺は宮澤大臣の考え方との違いというのはどういうところなのでしょうか。

答)

何と言うか私は、基本的にこれからは市場原理が最も全ての問題を解決するのに適切な物事の処理の原則なんですね。従って、私はできるだけ公的なものが出ていくということは慎むべきだというふうに基本的に考えているわけです。

従って私は今回のことについて、まだこれは全く何と言うか、スキームがどういうスキームになるんだというようなことも雲を掴むような話というか、まだ姿が見えてきていませんので、あんまり軽々に物を言うつもりはないのですが、私の気持ちとしては、もう宮澤財務大臣にお世話になることも最小限にするようなスキームを考えたいと、こういうような基本の考え方を持っています。

何かダーッと財政資金に寄り掛かるようなことはやはり避けるべきだと思います。基本は市場原理、だけど市場原理でやりきる時に、もうちょっと何か支えてくれることが、ちょっとでも支えてくれることがあればいいなあというようなことであるのがベストかなあと思っています。むしろ市場原理を活かすような、市場原理の処理を活かすような、そういうことをサポートしてくれると、そういうものが仕組めればいいなあと、こう思っています。

問)

それは要するに、株式を動かすことによって損失が発生したとしても、それは自己責任としてしょうがないということですか。

答)

それを自己責任というのは、誰が自己だという問題がまさに問題なんですね。

私は敢えて「溜まり」と言わせて頂くと、溜まりは誰のものなのかということですね。溜まりの主宰者の責任だということが自己責任ということになるんだけれども、それは一体誰なのかということですね。だけど、溜まりをそもそもあまり長く持っていなくて最終の投資家にどんどん引き渡していくような仕組みができればですね、それは溜まっている間というのは短時間で終わるということでしょう。

問)

経済財政諮問会議に臨時議員ということで出られた感想と言いますか、今後もまたそこでということもあるのでしょうか。

答)

何かですね、今日の月例経済報告でもですね、不良債権問題というのが一つ項目になっちゃったんですよね。非常にこの問題に対しての関心が共通化しているというか、そういうことを感じています。益々、私として責任が重いし、この問題の処理のために頑張らないといけないということを感じています。

そもそもミクロの問題だと私はかねてから言っていたんですが、どうもミクロの問題なのにマクロ経済的にもこれを問題にせざるを得ないというかな、そういうようなことになってきているのかなあというふうに思います。

問)

産業再生法の見直しで、私的枠組みの改善というお話をされたようですけれども、それと中小企業の関係ということのようなのですが、相当かなり具体的にはもう展望があるという感じでしょうか、そこはどうでしょうか。

答)

まだね、正直言って事務当局の検討がそこまで深まっていないというか、私に対する事務当局の責任者の言い方はですね、「大臣、あまり失望しないでくださいよ。だけどなかなか難しいんです」と、こういうふうに私があまりがっかりしないように前置きをしながら問題の難しさを訴えているというぐらいに、まあかなり技術的にも実務的にもいろいろ込み入った面があるようなので、そういうようなものをこなしてスキームが出てくると、こういうことだろうと思うんですね。

ですから何と言うか、もちろん産業再生法もこれは経済産業大臣も協力すると言ってました。もう二度聞きましたね。経済財政諮問会議の席でも聞きましたし、昨日もちょっと何かそんなことに触れた発言があったように思います。ありがたいと思っています。

問)

経済財政諮問会議の中で、政府系金融機関の対応ということにも言及されたようですけれども、どういうことを想定して仰ったのでしょうか。

答)

諮問会議での私の報告ではですね、政府系金融機関が債権を放棄してくれないことが債権放棄の合意形成の障害になっているというケースもあるようですという現状報告をしたのと、もう一つ、むしろそういうことではなくて、政府系金融機関の中から、何と申しますかプロモーターというか、不良債権のオフバランス化のことの、ある程度のプロモーター役、行司役、そういう役を演じてくれるというようなことも考えられるんじゃないかと、そういうことを考えると、今のようにそこで止まっちゃうと、彼らが全然債権放棄に乗っかってこないので話が止まっちゃうというのは、180度違う話ですねということをちょっと私は愚痴をこぼしたということですね。

問)

さっきの株式買上機構の話に戻って恐縮なんですけれども、公的資金がかかると、やはり大臣の仰るように費用最小化原則というのが大事になると思うのですが、そういった意味で株式には必ず価値がなくなるリスクというのが付きまとうと思うのですが、基本的な質問で申し訳ないのですが、どんな株でも買上機構には移すことは可能なのでしようか。

答)

それを含めてもちろん、当然…そもそも私は今の質問で思いつきを言うと、全く溜まりの主宰者は受け身なんだろうかと、つまり向こうから売りたいですという、今の何と言うかRCCみたいに売りたいと言うと買ってくれるということなのか、貴方のところにこういうのはないですかと言って、こっちから働きかけてですね、あるんだったらちょっと我々は必要なのでちょっと入れてくれますかとかというような、そういうレシプロカルなものなのかとかですね、あるいは今言ったように断る、いやそれは必要ないんですよと、それは市場でやってくださいよとか、ということもその辺はスキームの問題なんですね、これから。そこはもう全くこれから検討して、どういうものを買うか、買い方はどうなのか、断ることができるのか、いろいろなバリエーションがあるので、それは今後の検討課題だと思います。

問)

与党の中には、そもそも銀行が株式を保有しているので株価が動くことによって経営が左右されると、いっそのこと法律で株式の保有を制限してはどうかというような意見もあるようですけれども、大臣はどのようにお考えですか。

答)

まあこれは一つの立場だと思いますね、そういうお考えは。それはそれなりに理解できます。理解できるんですが、世界の流れはどうかというと、やはりそれももう自由化しようというような動きにあることはご案内の通りですね。ですから、そこはもうちょっと中長期的な世界の潮流等も見ながら考えていきたいと、今この段階で、そちらに魅力を感じていますというほど私どもはいろいろ熟度を持った考え方を今現在まだ作り得ていないということですね。

まあしかし、いずれにせよ、今は持ち過ぎているというか、そのことはもう明白だと思いますので、これを解消していく、放出していくというものをどう受皿をとりあえず作るかということだろうと、こう思っているんですけれどもね。

(以上)

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