柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年3月23日(金)9時45分~10時15分)

【東京生命関連】

問)

初めに東京生命の件からお願いします。

答)

おはようございます。東京生命保険相互会社につきまして、ただ今から談話を発表させて頂きます。

―金融担当大臣談話「東京生命保険相互会社について」―

以上です。

問)

今回の東京生命の破綻では、株式市場の低迷というのが、含み損の拡大という形で出てきたと思うのですが、他の保険会社への影響はどうなんでしょうか。

答)

詳しくは後で監督局長の方から説明をさせますけれども、昨今の株価低迷というものが、直接、ストレートに反映したというよりも、かねて厳しい経営環境の中で、保有株の言わば取得原価を益出しをすることによって、高めてしまっておったというようなことが反映しているようであります。従って、何と申しますか、簿価が高まっていた、簿価を高めてしまっておったということと同時に、最近の株価ということが影響しているというような見方、双方の見方をするのが適切な見方ではないかと、このように考えています。

問)

去年、大正生命、千代田生命、協栄生命と破綻して、その段階で一旦区切りがついたかなあと思いましたが、また東京生命という形で生保の破綻ということが起き始めますと、業界に対する信頼というものもまた揺らぐと思うのですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。

答)

本当に、私どもも今回の東京生命の破綻というものは非常に残念なことだったと、このように思っております。今日辺りの一部報道にもございますように、もともと当該生命保険会社につきましては、その存立について、かなり基盤の強化を図らないと、なかなかこれを維持できないというような状況にございました。そこで、何と言いますか、親密先の銀行、国内の銀行、更にこれから提携をしていく外資系の関係の会社との間で下交渉をしておったわけでありますけれども、その交渉がなかなか合意の形成に至らなかったということを反映して、今回の更生の申し立てということになったわけでありまして、同様の状況にあるところが他にあるかといいますと、私どもの知るところでは、他にはそういった経営基盤の存立に向けての格別の努力がなされなければならない状況にあるものは存在しないということでございまして、是非その点で、非常に残念なんですが、もともとこういう状況の下で、自分たちの存立が協議の俎上に乗っておったと、こういうことでご理解を賜りたいと思います。

問)

東京生命のまさに親密な関係先であった大和銀行が、今回、この東京生命を言わば支えきれなかったということで、その大和銀行に対する影響といいますか、信頼性といいますか、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。

答)

詳しくは大和銀行、そういう名前も既に挙げられたので、私からも敢えて申しますけれども、そちらの経営判断というものがあったわけで、その経営判断の内容については、どういう背景であったかと、それは当事者に尋ねて頂いた方がよろしいのではないかと、このように思います。

そのように思いますが、大和銀行への影響ですが、これからの更生計画の内容にもよりますけれども、これまで大和銀行が出捐をしておった基金への資金等は、それと劣後ローンがありましたけれども、そういうものについては影響を受けざるを得ないというふうに予想されるわけでございますが、しかしそれが大和銀行そのものの、何か経営に重大な支障が出てくるというふうには、私どもは見ておりません。

大和銀行としての経営判断はお聞き頂くわけですけれども、何と言うか、かなりそれ以上のことについてやるとなると、また更にリスクの拡大ということが考慮されたのではないかと、このように考えております。

問)

千代田生命、協栄生命の破綻までで、とりあえず更生計画の場合は保護機構のお金を使わずにやってこれたわけなのですが、次にまたこうやって破綻が起きますと、今回も使わないで済むかどうか分からないわけで、公的資金の枠に達するという可能性が極めて高いわけですけれども、この辺についてはどう思われますか。

答)

これはまさに、今のご質問の中でも仰られた通り、更生計画の内容如何によるわけで、あまり予断めいたことは差し控えなければならないというふうに思いますけれども、現時点で、しかし、それにしても何か言えと、こう言われれば、あまり影響がそこにまで及ぶということはないのではないか、その程度がむしろ浅いのではないかというような、何と言うか一つの見込みみたいなものは持ってますけれども、これはまあ、いずれにせよ、更生計画を決定したその結果を見ないと、何とも申しかねるということであります。

問)

昨年の11月、半期報告の直前に、協栄生命、千代田生命の破綻を受けて、金融庁の方で、一旦、生保各社の財務状況を確かヒアリングして、あらあらの数字もちゃんと取った上で、当局として把握されていると思うのですが、その後半年経たずに、こういう事態が起こると、それほど環境の変化が激しいと、一番何が、激しかったのでしょうか。

答)

これは千代田生命、協栄生命の後ですけれども、もともと何と言うか、更生計画決定前の枠組みの中ではなかなか存立が厳しいと、ですから経営基盤を固めるための努力の取り組みをするようにということが、監督当局からの彼らへの言わば勧告であったわけです。そのことはそういう取り組みをするようにと、言わば指示を出しておって、その指示に従って、そういう取り組みをしておったわけであります。それは先程申した通りです。その取り組みの先が、先の合意というものが、遂に達成できなかったということから、今日の事態を迎えたということでありまして、何も今までは我々としてはそういう存立について、何ら問題もないという認識もないし、客観的にそうであったのに、急激にこういうことになったということではないということで、ご理解頂けるのではないかと思います。

問)

今後、保険会社に限らず、同様な経営破綻がまだ続くということでなんでしょうか。

答)

今の日本の金融機関がおかれている立場というのは、長引く経済の低迷、それから特に近時における、昨年の年末辺りからの株価の急落、こういうようなもので経営環境が厳しいものになっているということでございまして、それに対して、日本の金融システムに対する信頼を守るために、何をすればいいんだということを考えて、私どもとしては基本的にまず金融機関自体の収益力を上げること、これが第一だと、それから、それがたまたま同じことにつながるのですけれども、日本経済の再活性化というものにまず貢献しないと駄目ではないかというような意味で、不良債権問題に取り組もうと、こういうことを行っているわけです。

それから、株価の問題については、やはり株式市場の厚みがないということがこういう株の急変動を起こすわけで、もうちょっとなだらかな株価の変動を確保するには、これはもうちょっと投資家の幅を広げると、特に日本の場合に非常にシェアの少ない個人投資家の参加というものをもっと拡大するということが必要だというようなことで、問題提起をし、それに向けて政策当局のいろいろな努力をしてもらうように働きかけていると、こういう状況でありまして、我々としては、そういうオーソドックスな手を、今後とも追求して、本当の金融が動揺するなどというのではなく早く本当に信頼されて、役に立つようなプラスの存在になるように早く持っていかなければならない、こういうようにやっているということでございます。

問)

私の質問の趣旨は、今後似たようなケースが起こり得るかどうかということなのですが。

答)

これは我々としてはそういうことを想定していないと、こういうことです。

問)

それと関連しますけれども、直接処理の自己資本償却を進める上で、例えば銀行の自己資本を崩して不良債権に充てると、そうした銀行に対しては公的資本注入をして財政基盤を強化するというような方法は検討されているのですか。

答)

何と言うか、不良債権の処理に対しては、その原資はとりあえずは引当金という格好で準備されているわけですね。あとはオフ・バランス化に伴って、更に増えるということはありますけれども、それらは確かに業務純益で賄えない、あるいは何かちょっと以前だったら、株式の売却益で賄えないということになれば、それは確かに資本というものに影響を与えるわけですけれども、何かそれが今すぐに公的資金による資本増強が必要だというような程度に至るかと言えば、我々はそういう事態を想定していないと、こういうことです。

問)

総代会の直前にこうした結果が来るというのは、いわゆる社員である契約者にとっても知らないと唐突なことと映ると思うのですが、一度、支援姿勢が示されていたお金が土壇場で入らないと、金融当局というか、大臣としてもこれは意外というか、唐突なことだったのでしょうか。

答)

正直言って、私も不本意ですよ。私の本意とはおよそ違う事態になったということであることは申すまでもないわけです。しかし、そこに銀行側の経営判断があったということであれば、それはそれとして、私、認めざる、受け入れざるを得ないというように、私、別に強制できるわけではないのでそのように考えます。

それではもうちょっと時間的な余裕があったかと言えば、皆さんご承知の通り、総代会というものが既にセットされているわけで、それは別の方向の内容を決定するものとしてセットされておりました。従って、その議事の内容が変わったからといって、それでは総代会を中止するとかというようなことになれば、これはいたずらな不安が発生してしまうということでありますから、我々としてはぎりぎりの判断、これを受け入れて、むしろそれを総代会にかけて頂くと言うほかないと、こういうことになったということでありまして、それがどうかという意味で、敢えて言えば不安が起こって、混乱をある程度招いた上で、最終的な更生になるというよりは、そういう混乱がないという意味では、若干の、あるいはルーマーに基づいて、いろいろ不安心理を掻き立てると、あるいは得な人と損な人とが出てしまうというようなことはむしろなかったという意味で、その辺に不本意だけれども、若干の救いを見出し得るかということだと、これは敢えて付言すればということですよ。

問)

今回の破綻は逆ざやも大きな原因かと思うのですが、予定利率の引き下げ問題に関しては、どのようなお立場ですか。

答)

これはかねて、我々は逆ざや問題というのはそもそも保険会社によって、その影響するところというか、そのマグニチュードというものも随分違うわけでございますけれども、いずれにせよ、保険会社の経営の在り方については、業務面、財務面それからガバナンス等、いろんな面から総合的に検討しなければならないということは感じておりまして、もう金融審でも3月以降、これをご審議頂いているということですから、そういう意味では粛々と、その方向に進んでいくということで対処したいと、こう思ってます。

問)

政府が相次いで経済対策を発表した直後のこういう破綻ということで、景気とか、消費者への心理何かへの影響というのは、どういうふうにお考えでしょうか。

答)

まあ、非常に話がまとまらなかったということは、先程言ったように遺憾であるということですが、遺憾であるということの中には、今言われたようなことも含めて、非常に残念ということですけれども、まただからといって、そういう会社を何のスキームもできないままに存続させていくことと、どっちがそれではベターかと言えば、我々の行政の姿勢というのは、やはり存続すべきものではないものについては退出をしてもらうと、それはいかなるタイミングであろうとも、そういうことをやっていくと、こういう方針ですから、そういう結果において、今、ご指摘のようなことがあったとしても、これはもう止むを得ないということで、我々としては甘受して、本来の行政の線を貫いていくと、こういうことです。

問)

大和銀行は公的資金注入行でもあるわけですが、先程、銀行側の経営判断というふうに仰いましたけれども、東京生命に対して、追加的な基金の出捐をすること、あるいは今回取り止めることについて、金融庁は本当に全く何も指示等はされていないのでしょうか。公的資金の返済等を考えて、いろいろ監督上、何か指示とかされてないのでしょうか。

答)

それはマグニチュードにもよるでしょう。そういうことを必要とするかどうか。私どもとしては、今まで出捐したものについて影響を受けるということ、それから更にそれに追加して出捐した場合に、それがリスクにさらされるというような観点からの経営判断があったこと、これについてはやはり経営判断を尊重するほかないですね。従って、この点についてはいろんな報告をその都度、監督当局としては受けているわけですけれども、その最終決断についても止むを得ないということで受け入れたということだと申し上げます。

【閣議案件等】

問)

今日の閣議、閣僚懇では、何かありましたでしょうか。

答)

閣議は、盛り沢山でございましたのですが、手早くご紹介しますと、アフガニスタンの被災民、タジキスタンの被災民、マルクの避難民というところへの援助、それから日米首脳会談の報告、地方財政白書、それから総合科学技術会議から総合戦略が第1号の答申として行われたということ。それから、独立行政法人が、いよいよスタートするので、そのヘッドが発令されるということ。地域振興整備公団の総裁が交替すること。それから24、25日総理の訪ロに伴って、その代理に福田官房長官が指名されたこと、以上が閣議案件でございます。

閣僚懇にいきまして、公務員制度改革の大枠を27日に閣議に提出しますということと、地価公示の発表がありました。全国3万1千地点での地価の公示がありまして、商業地が住宅地ともにまだ低下しておりますけれども、しかし都心の非常に条件良好な所については、横這いないしは、もう値上がりの状況が出ているといったようなことが話題になりました。以上です。

問)

今の地価公示の件ですが、今仰ったように都心部で一部逆に上がってきているということで、この点については、大臣はどうお考えですか。

答)

これは需給の問題というか、当然そういうような状況が出てくる全体の地合いというか、そういうものだろうなというふうに思います。

問)

不良債権問題というのは担保されている地価の下落、これが一番大きな背景になっているわけですが、下げ止まりの傾向が出ているということでですね、不良債権は拡大するのか、あるいはここである程度横ばいの方に行くのか、その辺りはどう見ていますか。

答)

よくですね、地価の下落によって不良債権が発生すると、だから地価が下落している限り不良債権がどんどこどんどこ出てくるのだという説があるのですが、私昨日、国会でそれを修正しておいたのですけれどもね、そういうことはないのです。

なぜないかというと、何と言うかまず地価が下がろうが上がろうが、事業をちゃんとやってですね収益が上がり、キャッシュ・フローがあるところはですね、こんなもの地価がいくら下がろうと不良債権じゃないのですね。例えばトヨタ自動車だとかソニーさんの品川の工場の地価が下がったからといって、ソニーさんへの貸付金が不良債権ということになりますか。つまり、貸付金の区分というのは資産に着目しませんということなのです。

まず最初に判定の着目点というのはフローの世界なのですね。つまり、今言ったように収益が上がっていますか、ちゃんと買えるだけのキャッシュフローがありますかと、こういうことですね。ですから、事業用の資産がいくらであっても、ソニーさんの使っている地価も下がっているのでしょう、おそらく。何も問題ないです。これは錯覚なのですね、地価が下がったら不良債権が増えるなんていうのは。そうじゃない、不良債権になると、フローの世界で問題が起こって、これはなかなか返らないなといって不良債権になると金融機関としては今度は資産に着目するという段階に移っていくのですね。それでその担保価値をアップデートする時に、それが地価が今現在どうなのだということで追い証というか、追加的な引当金が必要になるかどうかということであって、それは地価の下落というものが響くのは不良債権になってからなのです。ですから、よく大雑把な議論で、これはもう地価が下落している限り不良債権は発生するのだというのは誤り、完全に。大雑把な議論をすれば、それでもあれなのですが、もうちょっと我々は、地価下落と不良債権の状況についてしっかりした議論をしないと国民に不安を与えると思いますね、私は。

(以上)

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