柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年4月10日(火)9時19分~9時46分)

【閣議案件等】

おはようございます。今朝の閣議ですけれども、食料・農業・農村白書が発表された旨、報告がありました。ご承知の3品目についてのセーフガードの暫定措置が発動されることが決まったようです。以上の報告がありました。

閣僚懇に移りまして、一つは京都議定書気候変動枠組条約ですけれども、これについて4月に国連の会議、7月にフォローアップというのでしょうか第6回の会議が予想されるわけですが、アメリカがこれから抜けるという動きがありまして、非常にこれから困難が予想されますので、各閣僚とも是非この条約の維持のために協力を願うという発言がございました。

二つ目に2005年の愛知万博が近づいているので、閣僚はバッジの、何と言うんですか、帯用というのですか、私何にも付けてないのですけれども、お願いしますということで、意識を高揚してくださいという話がありました。

対露漁業交渉が行われたわけですが、真鱈の漁獲量について所期の成果が上がっていないので、減船の必要が生じてこようということで、これまた関係閣僚が協力してくださいというお呼びかけがありました。以上です。

【質疑応答】

問)

総裁選に向けた動きなんですけれども、堀内派の方から堀内会長が出馬を検討されているという報道もあるのですが、大臣ご自身としてはその点についてどのようにお考えかお伺いしたいのですが。

答)

私どものグループですけれども、やはり今回総裁選におきまして、特に生まれたばかりのグループなものですから、とかく主体性が希薄になるということを避けなければいけないということで、しっかりした対応をしていこうということが、我々のほぼ全員の意向でもあります。そうした中で、今指摘のあったような動きが出ているのではないかと。ちょっと私、このところ行っていないので、具体的な動きについてコメントできないのですが、そうした延長線上であるというふうに理解をしております。

問)

まだ、具体的な動きというのは起きてないということですか。

答)

そうですね。ですから、今日、明日というような格好でいろいろな相談を我々することになろうと思います。

問)

先日、経済再生に向けてしっかりした考えを持ったお方という形で次期政権についてお話をされたことがあると思うのですけれども、いろいろ名前が上がったり、出馬表明をされている方もいらっしゃるのですが、その点についてのお考えを改めて伺えればと思うのですが。

答)

もちろん、現下、世紀も改まって、我が国が直面している問題というのは多岐に渡っていることは明らかなことですけれども、当面といっても、かなりの期間ということでしょうけれども、日本経済の建て直しということがメインのテーマであることは明白だと思います。先程もこの会場に来る時に、広報室長が持っている英字紙の見出しを見てもですね、「Japan harming US and world economy warns Greenspan」(フィナンシャルタイムズ4月5日付)と書いてあってですね、こういうことでございますから、一人、日本の国の問題でないのみならず、この話が当たっているか、当たっていないかというのは、また別の問題であるのでしょうけれども、しかし、やはり日本経済、世界第2位の規模を持つこの経済が早く不調を克服するということは明らかに世界への貢献への最大のものなんですね。そういうことを考えます時に、新しい総裁・総理が日本経済の再生が最大の課題ということで取り組まれるというのは必至だと思うのです。

そういうことで、私は申し上げているわけでございまして、これに結局2つ考え方があるのだろうと思います。一つは伝統的な需要管理政策という手法を主に用いていこうという考え方と、どうもそういう需要管理政策ではですね、日本経済の、何と言うか、停滞の要因を克服できないのではないかということで、日本経済の構造の改革、これに完全にフォーカスを合わせてやらなくてはいけないのではないかという考え方、これがずっとあるのだろうと思うのです。あるんだと思って、皆ある程度両方に配慮しながらやってきたということだと思うし、特にデフレスパイラルの時には文句なしに需要追加ということも必要だと思うのですけれども、その懸念が一応消えたという時には、これはかなり眦決して構造改革に焦点を合わせるというような考え方が一つあるのだろうと、こう思うのですね。そういうようなことを巡って、これから候補者の間で論戦が行われて、誰が支持をされるかということで、日本の国の、少なくとも自由民主党の政策が決定されるということがいいと思います。

その場合に大事なのは、そういうことで選ばれた総理がやることを、党のまた政策の担当者もですね、気持ちを合わせてやっていくということが非常に大事じゃないかなあと、こういうように思います。新総裁が選ばれて、どちらかになるんでしょうかわかりませんが、国民、党員の支持を得たものを遂行しようとすると、違うラインの話で党からいろんな意見が出てくると、どちらかクリアな政策展開が出来ないということになると、これはあまり望ましくないというふうに思っています。

問)

亀井政調会長の方も出馬の意向を示されたようなんですけれども、その点についてどう思われますか。

答)

まあ、個別の金融機関のことについては触れないということを金融担当大臣として申し上げて参りましたけれども、同様、個別の候補者について、私が今ここで現職閣僚としてコメントするのは適当ではないと、このように思います。

問)

株式取得機構の件ですけれども、金融審で検討していくということになって、これに関して大臣としてはもう始めから今通常国会での株式取得機構の設立はほぼないというふうに受け止められるのですが、そういうふうに考えてよろしいわけですか。

答)

まあ、先のことを私が答える立場にあるのかないのか、これが就任の会見でしたら、私いくらでも自分の考えを申し上げますが、今日は閣議後記者会見でございますので、ちょっとやや時間の長い展望のことについて、やはりコメントをするのは差し控えたいと思います。「可及的速やかに」ということでやってくれるだろうと、このように思います。

問)

銀行の自社株の消却が難しいということで、再建計画を見直す中である程度、自己資本比率のターゲットを出していきながらとかですね、何かおそらく考えておられると思うんですけれども、少しこの際、ある程度何と言いますか、ロングランといいますか、そういうお考えがもしあれば出して頂くとありがたいと思うのですけれども。

答)

ちょっと今、趣旨が分からないのですが。もう少し付言して頂けますか。

問)

自己資本比率の規制が銀行の場合厳しいものですから、自社株を減資したり、持ち合いの株式を落とすということは非常にやりづらいというのが銀行の体質なのですが、とは言っても、ある程度はそういうことも想定していかざるを得ないと、そういう中で当然再建計画といいますか、返済計画といいますか、公的資金の返済計画のところにも影響は及んでくると、そこのバランスを出されるといいますか、それが行政のガイドラインといいますか、そういうところなんだろうなあという感じはするのですが、いろいろお考えだと思うんですけれども。

答)

どうも世の中の、今のちょっとご質問も、そういう感じも受けたのですが、経済を非常に静態的にとらえて、いろいろこれを、こう引き算すると、こういう答えでというふうにやる向きが多いなあというのが私の感じなんですね。私もそんなに能天気な、楽観主義者であろうなどとは思っていませんけれども、私どもが不良債権の処理をするということも、実は金融機関の収益性を高めると、そして自己資本を早く充実したものにする、その中にはもちろん公的資本で今代替されている部分も自分の資本で、自分が稼ぎ出した収益でもって埋めていくということをしないといけないじゃないかということが一つありますし、方々、日本経済の構造改革を進めて、そしてもっと収益が上がってくる体質にしていくということの中で、今言ったようなことも現実のものに、より確からしさをもって実現されると、こういうことが我々の想定でして、あまり事をスタティックというか、静態的に考えていないですね。もっとダイナミックに考えて、この問題を処理する以外には、私は実は処理の方法というのは非常に制約されてしまうと、そういうふうに考えているので、今言ったようなことについては、私ども王道を歩いていこうと、こういうように思っているのです。

問)

不良債権処理の破綻懸念先以下のところで、再生委員長の時に出された基準がありますが、病院とかですね、ああ言うのは一部酌量するというかそういう規定があったと思うのですけれども、今回はその辺を公共的にやっていく病院とか学校とかその辺はどういう扱いになるのですか。

答)

どこを仰っているかということですが、多分債権放棄であれを進める時に、社会的な影響という件を念頭におかれているのかなというようにも思います。いずれ今度のガイドラインというものの中にも、そういうものが含まれくるということで、学校、病院というようなものについて、一定の配慮をしていくというものは、これは当然のことだというふうに思います。

ただ、学校と病院という看板が掛かっているところには、一切手をつけないのかと言われますとですね、これは個別ケースの問題ということだと私は思うのです。例えば、病院でも非常に経営の力が弱くて、これはなかなか存続が難しいのではないかと、誰が見てもそういうようなことがある、そういう経営不振の病院に対していろいろ周辺からむしろ働きかけもあるというような病院も実はあるわけで、そういうようなものについては、むしろそういう経営に不安があるというようなところを、うまく元気のある病院に経営を提携なり何なりで取って代わってもらうというようなことで解決するということがないわけではないでしょうし、学校にしてもですね、これだけ就学の児童、生徒、それから学生というものが少なくなってくる中で、全て存続をさせるということは、私は相当無理があるのだろうと思っております。そういうようなことも背景にあるということを念頭に置いてですね、個別の問題で適切な判断をする、いたずらに社会的な動揺というようなものを起こすつもりはありませんが、看板が掛かっているところには、何も手をつけないのだということはやはり適切でないと思います。

問)

一つ銀行の株式取得機構の件で聞きたいと思いますが、金曜日の記者会見では、その基本的な枠組みを9月までに作るというような方針をこちらでお聞きして、別に麻生大臣の方では、今国会中にも出す可能性が十分残っているという、ある意味で少しずれているような印象を受ける発言がありまして、それをどういうふうに解釈すべきかということと、もう一点これから枠組みを細かく決める段取りとして、どういうふうな政府とか銀行側と協議をしていくのかを宜しくお願いします。

答)

まず、私どもは、あるいは私と言ってもいいのですが、私の当初の考え方、あるいはそれを別に変えているわけではないのですが、やはり時価会計の導入ということを念頭に置いているわけです。これは、今度の文書でも時価会計の導入ということに触れているというふうに記憶しております。そうだとすると9月期が最初の期で、もっと決定的に言うと3月期なのですよね。そういうようなことなものですから、やはり9月期の決算というものを睨んでそれを念頭に置いて検討をするというのは、ごく自然のことだというふうに思うのです。そういうものを時期としてメンションする考え方を私は採っているわけですが、麻生大臣はそれに対して、「いや、そういうことかも知れないけれども、早く仕上がれば今国会でもいいじゃないか」ということを仰ったのだろうと、こういうように思っておりまして、そこに別に齟齬があるとか食い違いがあるとかというふうには、私は実は思っておりません。私どもは、私の考え方はあくまで自らの仕事の範囲でそういうことを言っているということですし、別に齟齬はないのであろうと、こういうように思います。

二番目のこれからどういうふうにやっていくかということについては、かなりこれは広範な見地から、多くの見地からの検討が必要だというように思っていまして、何と言うか、将来に大きな影響を与えるものだろうと、こういうふうに思っておりますので、なかなか関係者の意見はもとより、学会とか実務家そういうような方々の意見を十分聞いてですね、間違いのない制度を作っていかなければいけないというように思います。

今、お話は例の保有株の取得機構のお話だけをなさったようでしたけれども、私は保有規制と、理論的に言うと全然別の問題なのですよね。理論的に言うと全然別の問題で、それぞれが片方が極めて日本の経済構造を決定するような問題なのですが、片方はかなり行政実務的な問題ということがあって、別の問題として処理する、あるいは検討するということでもいいのかと思うのですが、ここまで来ると、やはりむしろ実務的には一体のものとして考えていくと、特にそういうことで規制の下でも、とにかくある程度取得機構に株を移転した場合にですね、最終投資家にどういうふうに出口のストラテジーというか、そういうものがどういうものが描けるかと、それがずっと川上の方の制度というか仕組みのあり方にも影響をしていくのではないかと思ったりしてまして、両面あるのだろうと、理論的な面と実務的な面と、その両者できちっとした検討をしていく必要があろうと、こういうふうに思っております。

問)

その関連で、これから経済がもし回復していく場合では銀行がこの数年間、どんどん買うようになった日本国債よりも株の方を持った方がいいという見方もありまして、却って景気が回復をし始める時に株を制限して銀行がより債券などを多く保有するようになると、却って悪影響を招くのではないかという指摘もありまして、もしそういうことに対して見方があればお願いします。

答)

だから、それはポートフォリオ・インベストメントの、やはりそれぞれの銀行の経営判断の問題なのですね。ですからそういう問題もあるということを、今ご指摘のような問題もあるということも念頭に入れて、考えていかなければいけないと思いますね。

(以上)

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