柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成13年4月20日(金)9時44分~10時08分)

【閣議案件等】

本日の閣議ですが、厚木の米軍基地の周辺の大気汚染問題が、施設の撤去ということで片付いたことに伴う、予備費の支出を始めとするいろいろな報告がございました。次に中小企業白書が発表される旨の報告がありました。踏み切り事故防止対策について新しい計画が始められる旨の報告がありました。緑の募金運動が月曜から始まる報告がございました。

次いで閣僚懇に移りまして、副大臣会議の報告が二件行われており、これをそれぞれの役所において、その施策に反映させるよう指示がございました。その中に不法滞在者対策という項目があって、よく言われる入管、イミグレーションの職員の増強が謳われることについて特別の発言がございました。公務員倫理法の見直しが副大臣会議である程度論議されたのか、法律そのものではなく運用について留意しようという話があった旨の報告がありました。厚木基地の大気汚染の問題についての閣議での報告について更にいろいろな懇談の形での発言があったということでございます。以上でございます。

【質疑応答】

問)

自民党と与党のそれぞれの税制調査会でですね、証券について譲渡益、長期保有の株式の譲渡益について、少額の譲渡益について非課税とするという方向になってきまして、金額については最終的に調整しているようですが、それが今回の税制改正の柱ともなるようになってますが、もちろん他にも老人のマル優の問題とかもあります。今回の税制改正の議論についてここまでのところで大臣としては、どのようにお考えでしょうか。

答)

緊急経済対策に証券市場の活性化のための施策ということで、諸々載っておったわけですが、まず今指摘のあったような項目、細部は会長一任という格好で、会長のところでの調整に委ねるということになりました。それからその他の問題、例を挙げますと分離課税、申告分離の場合の税率の引き下げ、更には譲渡損が出た場合の損失の繰り越しの問題などが主なものと心得ていますけれども、これらについては更に今後ですね、引き続いての検討に委ねられるということになったというふうに聞いております。従って、この24日までというように言われておったわけですが、当面の前倒しされた税調での論議というものについての答えというものが今ご指摘のあったようなことであったと、こういうことで、その他のものについては却下とかそういうことではなくて、今後において更に引き続いて検討すると、こういうことになったというふうに理解をしておりまして、そういう理解の上で申し上げれば、それは政府側としても理解ができるというふうに申し上げてよろしいかと思っています。

問)

先日、民主党が要注意先以下の債権について非分類も含めると151兆円に上るというようなデータを発表されてですね、鳩山代表は、不良債権が150兆円ある、公的資金の再注入もシステミックリスクがある時は、やぶさかではないというような趣旨の発言をされましたが、この数字についてと鳩山代表を含めた民主党の考え方に対して大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

答)

予て民主党では、不良債権問題について専門のPTを立ち上げて、この問題に取り組んでおられたようで、その論議を踏まえてのいろいろな質疑応答というものも予算委員会、あるいは各ハウスの財政金融に関する委員会で随分と論議を重ねてきた問題であります。そういうことなのですが、今回の議論というのは、当方に資料要求があってですね、そしてそれに対して、資料を作成して向こうに回答を申し上げたことについて議論が行われているというふうに理解をしております。

150兆円ということですけれども、要するに要管理以外の要注意先のものを入れますと、150兆円になるとこういうことでして、それは計算上そうなるということは、これはもう間違いがないということで、当方の資料から、そういうことが読み取れるということでございます。

要は、私も直接いろいろお話をまだ各委員会等で聞いておりませんので、どういうお話の筋かということを確実に捉えているとも言えませんが、まあ不良債権というものをどう捉えるかということだろうと思います。我々の方は不良債権というのはですね、やはり国際的な基準、特にアメリカのSEC基準でアメリカの金融機関も公表しているものと同じような定義に従ったのが適当だというふうに考えていまして、我々としてはリスク管理債権、これはアメリカ型に言うとノン・パフォーミング・ローンということなのですけれども、これを不良債権というように考えるのが一番適当だろうということで、これまでも国会等の論議はその考え方に従って展開をしてきたということでございます。それでは足りないというか、それでは適当でなくて要注意先もこれを含めて不良債権と心得るべきだというご主張だと思うのですけれども、ご主張はご主張だというふうに考えています。我々は、そのご主張は適当でないと考えているということに尽きるわけです。

鳩山代表のご意見については、ちょっと正確な言い分というものを承知していませんので、私としては、この段階でいろいろコメント申し上げるのは差し控えた方がいいのではないかなとこういうように思います。システミック・リスクの時に資本注入が出来るというのは、現行の法律そのものでございまして、その限りにおいては間違っていることを仰っているとは思いません。

問)

債権放棄の件ですが、オブザーバーの立場ながら今後積極的にというニュアンスなのですが、なかなか民間の方は難しいといいますか決算を見てからとかいろいろ段取りがあると思います。ある程度の目安といいますか、9月までのスケジュール、頭の中にあるようなこと少し仰っていただけませんでしょうか。

答)

これは、言わば新年度に入って以降、オフバランス化を進めてもらいたいということを言っているわけですから、言わばもうその作業というものは開始されているという性質のものだということでございます。引当金のように年度末になって債務の状況等を見て、では幾ら引き当てるかということを決めればいいというものではなくて、期中を通じて取り組まなければならない問題だということでございますから、そういう性格のものだという認識がまず必要だと思います。そういうことをやるに当たってのガイドラインということでございますから、そうですね、ゆったりしたことでもないんじゃないかというように思ってまして、出来るだけ早く、特に下敷きがないわけでもありませんから、インテンシブに議論をしてもらいたいと、このように期待をしている次第です。

問)

先程の民主党の件ですが、今まで例えば昨年9月期の不良債権は大臣は32兆円と仰っていましたが、その資料では36兆円ということになっており、数字が変わってくるのですが、この辺りは金融庁としての試算の違いなのか、それとも何らかの今回は別の計算の仕方をしたと、そういうことなのですか。

答)

これは、前から申しているように不良債権というのは、リスク管理債権とそれから再生法開示債権があるわけですが、それに加えて特に今回の9月期の時からですね、参考というところに落としたんですけれども、各金融機関における貸倒引当金の計算の過程の自己査定というものを発表しておったわけですね。今度の資料というのは、そのものの展開、その三つ目のものを展開したものでありますので、元々が範囲、カバレッジは違うものでございます。そういうことで別に、32兆円が36兆円と、そういうようなものは、あと私ここでいろいろ言って間違ったりするとミスリーディングになりますので、事務当局に聞いて頂くのが一番適切だと思うのですけれども、元々数字の捉え方というのが三者三様違ったものでありまして、別に32兆円とピタリ合わないからごまかしがあったとか、そういう類の問題ではありません。

問)

今の経済、景気に対する大臣の実感とですね、それと補正予算の是非、この点に関してちょっとご見解をいただきたいのですが。

答)

補正予算まで私が言及すべき立場にあるのかどうかということは、ちょっと疑問なのですが、景気の状況についてですね、正直言って日銀短観等によるとですね、経営者の見通しというか、そういう観測みたいなものはですね、かなり弱気になっているなという感じはします。ただ、今日ですか明日でしたか景気の指標が発表されますね。要するに先行指標、一致指標、遅行指標の、あれを見て果たしてそういう予測がどういう現実の経済状況を踏まえて仰っているのかということが明らかになってくるであろうと、こういうように思います。何と言うか日銀短観の予測、経営者の予測は弱気になっているということでありますから、その限りでは景気というのが企業収益、企業の経営、今まで強かったと言われているところにも、これまでのようなかなり勢いのあるものに陰りが出てきたということなのかと。そうなるとですね、それは全体的に景気の改善のテンポが緩いというようなことではなくて、やはりやや今度の月例経済報告が言っているようなそういう状況になっていると、こういうことで政府全体の認識と、私の認識に差があるとは思いません。ただ私としてはやはり景気の、例の何本か20本近くのものを分けた指標を見たいという気持ちが非常に強いわけです。補正についてまでは、私、とてもそんな言及するようなそういう材料を今我々が持っているとは考えていません。

問)

今回の予算なしの緊急経済対策ですね、それの効果という問題だと思うのですが、当然政府内では予算を考えた対策を打つべきだという声がありますよね。他方で実際に動いているのは予算なき対策ですね、ここら辺りに関しての見解ということなのですが。

答)

これは、私ある程度皆さんに申し上げたことがあるんじゃないかと思いますけれども、そもそもあそこに盛り込まれたようなことを緊急経済対策というタイトルの下でまとめるということには、無理があったというふうに思っています。それはこれまで1992年以降ですね、ずっと経済対策を度々累次に打ってきているわけですが、緊急経済対策あるいは総合経済対策というようなもので打ってきてますけれども、私が知る限りは、そういうものは大体において補正予算絡みのものであったというふうに思います。今度のようにほとんど構造改革的なものを、そういうタイトルの下でまとめたということはおそらく初めてではないかと。細川内閣の時に規制緩和を緊急経済対策のトップに持って来たことがありまして、私の記憶ではですね、私はそれを予算委員会でも少し議論させてもらった記憶がありますけれども、これも随分な話だなというふうに思いました。やはり規制緩和がですね、そんなに今日規制緩和したから明日から効くとか、そういう即効性があるものと捉えるのはやはり無理があると思いましたので、私そういうふうに議論をした覚えがあるのですけれども、やはり緊急ということであればですね、それは措置自体が緊急を要するということに加えて、やはり経済状況に効果が現れるのが短時間ということを自ずからインプライしている言葉だろうと私は思ってますから、そういう意味では、少しチグハグだなという感じを当初から持っていました。

そういうことですから、やはりああいう所に書かれたことは、性質から言うと構造政策ときちっと位置付けてですね、周到な考え検討を加えた上でですね、具体策としてまとめると。そのこと自体から、すぐに今年度の経済成長に与える影響はどうだろうかと、景気に与える影響はどうだろうかというようなことじゃなくて、やはりその効果も中長期的に期待をしていくということが私は正しいんじゃないかと思っています。

従って、問題はですね、金目を盛り込んだもう一つの対策が必要かということになるわけですが、そのことについては、私の感じは、考え方は先程答えたとおりと、こういうことです。

問)

来週、週末からG7の会議が開かれますが、前回の会議の共同宣言の中に日本の不良債権の問題が書かれていまして、今度も同じように指摘される可能性もあって、それと緊急経済対策と一緒に日本がどういうふうに不良債権に対する動きを説明すべきなのか、どういうふうに世界が見るべきなのかを少しお願いいたします。

答)

不良債権の問題というものに対する世界というか特にG7先進主要国の関心というのが高いことは予て承知をしておりまして、先般のシチリア・パレルモにおけるG7でもそれが引き続いて謳われたということであります。

私は別にそうだからと言って、1月からこの問題を自分自身が提起したわけではないのですけれども、自ずからG7の関心に答えるという形になったわけでございまして、それはそれで私として別に何と言うか悪いことだというふうには思っていません。むしろ私がイニシアチブを持って提起した問題ではありますが、それが結果においてG7の関心に答えられたというふうに単純に言うと捉えております。

従って、今度G7でどうするかということでありますけれども、その時には、この間の緊急経済対策に、我々の考える不良債権の処理については、かなりしっかり書き込んだものが出来ているわけですから、それを説明するということで、そうした期待というか関心に答えていけば宜しいのではないかと、こういうように考えています。

(以上)

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