柳澤金融担当大臣初閣議後記者会見の概要

(平成13年4月26日(木)23時31分~23時54分)

【閣議案件等】

この度、また引き続きまして皆さんにお世話になることになりました。どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。

本日の初閣議ですけれども、これは官房長官がまとめて会見でご報告になるということでございますので、私からは申し上げないことにしたいと思います。皆さんの方から質問等あれば、あるいは冒頭、私から何か少しお話し致しましょうか。

【質疑応答】

問)

それでは閣議の中で大臣に対して、新首相の方からの何か特別なお話というのはあったのでしょうか。

答)

これはありません。ありませんし、正直言って、金融担当大臣を命じられる際にもですね、これはもうよくご存じのことだから、何も言うことはありませんということで、それぞれの大臣に何か個別に指示をなされた大臣も、再任の大臣の中にもいらっしゃったようですけれども、私の方については、総理は何も仰らなかったわけです。

ただ、書いたものを見ますと、やはり経済を自律的回復軌道に乗せるためには、金融システムの安定に万全を期していくことが不可欠で、不良債権の問題の解決に全力を尽くすとともに、活力ある金融資本市場の構築に努められたいという趣旨の指示があったわけですが、これは一般的な指示でございましたので、敢えて私、最初の記者会見の際には触れなかったという次第でございます。

私としてはまあ再任ではありますけれども、また決して手練というか、マンネリに陥ることなく、また新しい内閣の一員として改めて気分を引き締めて、新たな決意でという気持ちで問題に取り組んで、少しでもお役に立つように頑張りたいと、こういうように思う次第です。

問)

その中で緊急経済対策の一つの不良債権処理についてなんですが、ご自身で作成された枠組みを実際に今後、実行されていくような形になると思うのですけれども、その点についての改めての抱負というか、意気込みというか、そこら辺をお伺いしたいのですが。

答)

そうですね、これは私が初めて問題を提起させて頂いて、これがこれからの道行きの中で、非常に国政上の高いプライオリティーを持った事項として位置付けられているわけですけれども、それに呼応して実際にこの問題の解決にあたる金融機関の方でも、例えば前全銀協会長の西川さんの会見などを見ますと、自らの銀行のことに引き寄せてではありますけれども、不良債権の全貸出に占める割合というようなものをアメリカ並の1%台に持っていくように努めたいと、努力をしたいというようなことを言って下さっておりまして、私はあれを聞いて非常にありがたい発言だと、率直に言って思いまして、この前全銀協会長の志というものをですね、全金融機関の経営者が持ってくれることを強く祈るような気持ちで期待を持ったわけです。

そういうことで私どもも、これは計画経済ではもちろんないわけなのですけれども、仲間内のサーべイランスというか、そういうプレッシャーの中で、これは悪い意味でのプレッシャーという意味ではなくて、良い意味でのプレッシャーの中で、西川前会長が自行について言ったようなことを念頭に置いて、是非取り組んでもらいたいと、こういうように思っております。

ついては、もちろんガイドラインというものの具体化が急がれるわけでありまして、これはまあ先般、たまたまイングランド銀行の理事でロンドンアプローチというものに、今のINSOLの基になっているスキームのようですけれども、このロンドンアプローチスキームというものの取りまとめに長く携わった方が苦労話を交えて、たまたま訪日をされる機会に、そういうことを事務当局にも言ってくれたようです。私もちょっと是非、事前に会わせて下さいということで、これはごく短時間でしたけれどもお会いしてですね、私なりのちょっと問題意識も投げかけてみたのですが、非常に的確な応答を頂いて、大変感心をしたのですけれども、そういうこともこれありですね、どんどん具体化のために論議を積み重ねてもらいたいと、こういうように思っております。そういうことを早く成案を得ることによって、我が方の責任というか、やるべきことは為していきたいと、こういうように思っているわけです。

問)

小泉首相の政策の中で不良債権処理を進める上で、ある程度マイナス成長も仕方がないだろうというような考え方も示された点もあると思うんですけれども、経済成長がそういう形で不良債権を進める中でデフレ圧力が高まる懸念もあるのですが、その点について大臣もそういう形で進めることも辞さないというようなお考えもお持ちなんでしょうか。

答)

これは先程の官邸における記者会見でも言ったのですけれども、総理の心意気だと私は思うのです。そのぐらい構造改革というものの大事さというか、そういうものにつき厳しい認識に立たなければいけないということだと思うのですね。ただ、私としてはデフレというのは非常に怖いんですね、率直に言って。私は怖じ気づくぐらい怖いものだという認識なんですよね。そういうことの中で物価が下がり、経済成長が下がるということについて、私、大臣としてそれが許されるというか、そういう考え方を持つのは臆病かもしれませんが、何と言うか、そこまでの蛮勇というのでしょうかね、そういうものを持ち合わせていないわけですね。やはりデフレスパイラルは非常に怖いというふうに思っておりまして、細心の注意はしながら、しかし徒に経済を需要拡大政策でプラスの成長にもっていくということではなくて、ぎりぎり目一杯ゼロ成長というか、マイナス成長がない形で構造改革を進めたいと、それでプラスの成長を勝ち得たいという気持ちが、正直言って私には強いのです。

つまり、もう少し申しますと、そんな抽象的なことではなくて、確かに我々がやろうとしている不良債権の処理ということをやった時に、具体的に言えば失業者も出るかもしれない。一時、ひょっとしたら、企業の売上高も縮減するかもしれないと。しかし、それはちょっと時間を広げて考えれば、必ず売上高が増え、また雇用の場が確保されるというか回復するというようなことを期待しながら、そしてまた経済というのは非常に心理的な要素が強いので、確かに不良債権の処理はそういうデフレ圧力を作るものなのだけれども、これをやることが将来の成長につながるのだというようなことについて、私よく言わせて頂くのですが期待が経済を動かすわけですから、そういう期待を持たせるような、そういうものであるようにやっていきたいというのが私の気持ちなのです。

問)

今の質問とかなり重なってくると思うのですけれども、森内閣で始められた不良債権の処理なのですけれども、森内閣における場合と明らかに構造改革ということを掲げられた小泉内閣で不良債権処理ということで、何か政策の位置付けなり、あるいは政策の性格なり、何か違いは出てくるのでしょうか。

答)

森内閣も構造改革ということを謳っていなかったわけではないわけです。しかし、今度の小泉内閣ほどには最前線に構造改革を持ってきているという立場ではなかったということ、これはプライオリティーというか、あるいは重点というか、その置き方というのは、これはまあ明らかに変わったということは、今、官房長官が会見している時に配布されているだろう資料等から、これはもう明白だというふうに思います。私自身手元には持っていませんけれども、そういう感じを持ちながら目を走らせていました。

そういうことだけに、もちろん金融の面については私どもがやる施策というのは明らかに構造改革だし、そのことを別に総理にご説明してですね、「それは困るよ。もうちょっと延ばしてくれよ。」とかいうことは仰いませんでしたから、私どものやることを認めて頂いていたと、こう思うのですけれども。しかし小泉内閣の下にあっては、むしろ、ちょっと背中を官邸から押されるような、そういう感じになっているということが言えようかというふうに思います。

先程もちょっと幹部だけ残ってくれておりましたので、そこでも言ったのですけれども、あれだけ不良債権を始めとする緊急経済対策というのを何回も総理から言われるとですね、更に本当に気を引き締めてやらんといけないということを私が感じました。このことを率直に幹部の皆さんには言っておきましたけれども、そういう感じですね。つまり、今まではこっちがイニシアチブをとって、これでようございますかという感じだったのですが、今度は逆に官邸の方が、「やったか、やったか」という感じになっているというように、ちょっとニュアンスだけですけれども、そういう感じに位置づけられているのではないかと思います。

問)

ちょっと答え難い質問で恐縮かも知れないのですけれども、大臣が再任を要請された理由はどういうところにあると思われていますか。

答)

どういうところにあるかということですけれども、まあ私今のような問題意識というか、何というか多分に過大な期待を寄せられているという感じかなあという気がしますね。今更ここまでもやって来てそんなことを言うというのは、全く適切ではないとは思うのですが、私は前もひょっとして言ったかも知れませんけれども、金融のエキスパートではないのですね、エキスパティーズはなかったのですね。そうなのですけれども、まあ事務当局からいろいろ話を聞きながら、自分なりの判断してきたのですが、若干それから時間が経ちましたので、依然として自分にエキスパティーズがあると、あるいは自分がエキスパートであるというふうには思いませんけれども、まあ何と言うか、若干何に騙されているのか知りませんけれども、そういう過大な期待を賭けてみようというような感じになって頂いているのではないのかというふうには思います。

問)

不良債権の現状認識でですね、ちょっと認識を異にされる竹中平蔵さんが入閣されたと思うのですが、大臣との激論は公共放送を通じて全国に広がっておるわけですけれども、その辺りの認識等をすり合わせ、あるいはお話し合いとかされる機会はあるのでしょうか。

答)

別段ですね、竹中さんと今日会っても、何かわだかまりのありそうな空気が両者の間に流れるということは全くなくてですね、むしろ二人ともニコニコしておったということです。まあ私も彼のやっている東京財団に全然違うテーマで出かけて行って、竹中さん主催の会で少しばかり話をしたこともあるというようなことで、あの放送の前にもですね、予て顔見知りではあったわけです。ただ、私はああいうことは、あんなところで言いたくなかったのですが、やはり国民が皆見ている前で、私があそこでちゃんとしたことをいわないと、やはり非常に結果において国民がミスリードされることがあってはいけないだろうと思って、ああ言うやや顔見知りの間にしては若干激しい言葉使いをしたかも知れませんが、これは勘弁していただけることだと思うのですね。

不良債権問題は、どこまでいってもですね、まずは透明性ということですね。そのことと的確な処理ということが、この二つのことが必要でありまして、透明性ということについては私も非常に気をつけて、事務当局も指導をしているつもりです。

ですから、これはちょっと若干エピソード的な話として受け止めていただきたいのですけれども、あまり重要なテーマ、事項ということではないわけですが、例えば民主党さんが言って来た資料についても、私は一も二もなく出しなさいということを言ったわけですね。透明性というのは、とっても必要なことなので、そういうことを言ったというのが経緯です。ただ、あの資料というか各金融機関の自己査定を集計したものについて、これ以上深入りした議論がなされるべきかどうかという質の問題がありますから、それが私が今先に言ったことが、即そこにつながっていくというふうには理解して頂かない方がいいと思うのですけれども。

何れにせよ透明性が非常に大事だということ、これはどうしても日本の金融システムに対する信頼を勝ち得るためには欠かせないことだという認識は、私は強く持っておりまして、竹中先生との間でもですね、必要ならば、またいろいろ専門家としての教えを乞いながら、実務家としての意見を申し上げるということは全く想定していないわけではないですが、当面は別にあれはテレビの前で、ああいう問題提起をされたことに対して、私がきちっとしたことを言わなければならない立場にあったということだというふうにご理解を頂きたいと思います。

では、またよろしくお願い致します。

(以上)

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