日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年7月10日(月)17時00分~17時20分)

【質疑応答】

問)

7月から信用組合に対する一斉検査が始まるかと思うんですが、具体的なスケジュール等についてお伺いしたいんですが。

答)

今お話がありましたように、信用組合に対する検査実施状況について申し上げますと、既に平成11検査事務年度では7つの信用組合に対して検査を実施しているところです。お尋ねの本年7月以降の平成12検査事務年度で集中的に実施することとしておりますが、これまで、今日現在ですね、56の信用組合に対して検査の予告をしているところです。この結果、先程の7つと12年度の56を合わせて合計63の信用組合に対して検査を実施しているというところです。

今後のスケジュールですけれども、この検査は集中検査ですけれども、今後の存続可能性を確認するための資産の健全性を見るもので、破綻した信用組合は対象となりませんけれども、この実態把握を速やかに行うために来年の3月末までには立入検査が一巡できるように、鋭意取り組んでいるところというところでございます。

問)

次に、もう一つスケジュール的な問題なんですが、金融審議会の開催の目処と今後の進め方についてお伺いしたいのですが。

答)

ご案内だとは思いますけど、金融審議会の現在の委員の任期は、今年の7月29日でちょうど2年の任期が切れるわけです。今後、この委員については、金融再生委員長による任命手続きが必要になります。一方、その審議会の方ですけれども、これから新たに諮問を行って、ご審議をお願いしていくこととなりますけれども、現在どのような事項をご審議頂くか、今後の進め方について、現在金融庁の内部で検討しているところでございます。審議の開始時期ですけれども、先程申し上げましたように7月29日で任期が切れますので、改めてこの委員の任命手続きが必要となりますので、任命手続きのあと、できるだけ早く、ご審議を開始していただけるように事務局・金融庁としては、鋭意準備を進めて行きたいといふうに考えているところです。

問)

「そごう」の債権放棄の問題で、今日、自民党の政調の方で、議論が大分出ているかとは思うんですが、世論がどうも芳しくないんですけれども、「そごう」の債権放棄の問題について改めて金融庁の見解なり、長官のお考えなり、お伺いしたいんですけれども。

答)

ご案内の通り、「そごう」に対する国の債権、つまり預金保険機構による債権の放棄の問題というのは、基本的にはこの金融再生委員会と、それから預金保険機構の所掌に係る問題なわけです。しかし、金融庁も金融行政を担当しているということで今お尋ねになっているんだろうと思いますけれども、先程申し上げましたように、基本的には金融再生委員会と預金保険機構の所掌だということで、その前提であえて申し上げるわけですけれども、私どもが聞いているところでは、本件はこの「そごう」という私企業の救済を目的としたものではないと。長銀という破綻金融機関の処理過程、ずっと長い一昨年の夏以来、ずっと長い経過を辿ってきたわけですけれども、その処理過程でですね、最終的に、結果的には、国つまり預金保険機構に帰属することになった債権の回収、2000億円ですか、それの回収をどうやったら極大化できるか、どれだけ多く回収できるか、言い換えますと、国民の負担をどれだけ少なくすることが、最小化つまりどれだけ少なくすることができるかという問題に帰着するのかなあというふうに思います。これもお聞きしているところですけれども、金融再生委員会と預金保険機構はですね、それぞれ金融再生法に定められている、ご案内の費用最小化の原則ということがうたわれているわけですけれども、これに則って、もし法的処理をした場合どうなるか、それに比べて債権放棄の要請を受け入れた方が法的処理、つまり会社更生法であるとか、あるいは破産法であるとか、そういった処理を行った場合よりも、国としてその債権の回収が極大化すると。従って、その国民の負担が最小になるというふうに判断してですね、更にまた、経営責任の明確化というようなことも、そういった状況もいろいろ考えられた上でですね、さる6月30日に「そごう」から受けていた債権放棄要請を受け入れることとなったというふうに承知しているわけです。

こういった対応はですね、金融庁、あるいは当時は金融監督庁でしたが、金融監督庁の所管、あるいは金融庁の所管として何かコメントすべきものでは、今申し上げたこと以外に何らかのコメントをすべきものではないと思いますので差し控えたいと思いますけれども、いろんな議論がおそらくなされたんでしょう、金融再生委員会では。その上で、苦渋の決断をされたというふうに聞いております。

これからこういった問題が起こった時にどうするかということでしょうけれども、金融再生委員会は、今後については国による債権放棄というのは、安易に行われるべきではないのは当然でありますし、慎重の上にも慎重に対応すべき必要があるという認識で一致しておられるというふうに、当庁としては承知しているところでございます。

問)

銀行を監督する立場の金融庁としてお伺いしたいんですけれども、公的資金を注入されている銀行が債権放棄に応じる場合に、再生委員会の中でいろいろと原則があるわけですけれども、この中で株主責任について全く触れてないんですが、株主の責任を問わない、株主の責任が問われないような債権放棄を銀行が実施することに関して、どういうふうな対応をしていくのですか。

答)

仰る株主というのは、債務者の方の株主ですか。

問)

債務者というか、銀行の方のです。銀行の取引先に対しての債権放棄です。

答)

銀行の債務者に対する…。

問)

銀行の債務者である企業の株主のことです。

答)

今のご質問は国ではなしに、公的資金を注入されている銀行と、その債務者との間の関係ということでご質問だろうと思いますが、これは別に公的資金を注入されているかどうかに関わりなくですね、まずは基本的には個別の銀行の経営判断というものがまずあるんだろうと思います。つまり、債権放棄をしないことによって、場合によっては、貸出先が法的整理に陥った場合のリスクと、それから債権、全額ではありませんが、ある一定のその金額、パーセンテージの債権放棄をしたことによって、残余の債権について確実に回収できるだろうというふうに予想されるメリット、それを比較衡量した上でですね、おそらく経営判断といいますか、そういうことに基づいて、おそらくなされるでしょう。むやみやたらにその債権放棄をするということは、当該銀行にとってですね、経営者として、経営の経営者としての責任をですね、例えば、株主代表訴訟という形で起こされる可能性もないわけでもないでしょうから、そこはそれぞれの銀行がいろいろなことを総合的に判断して、債権放棄をなさるかどうかということをお決めになるんだろうと思います。その際、例えば、更にその上で公的資金の注入を受けている銀行としては、どういう場合にその債権放棄が許されるかということについては、かねてから皆様ご案内のとおり、金融再生委員会等から幾つかの原則が示されているところですから、そういった原則が更に要件が厳しくなるのではないかなあというふうに思います。

問)

それはその株主責任ということには触れてないんですけれども、減資とか…。それは必要条件とは考えられないんですか。いろんな利害関係者がいる時に、債権放棄一般に関して株主の責任を問うべきか問わないべきかということを伺いたいのですが。

答)

それはだから、債権放棄に当たっていろいろな債務者との間で交渉が行われるわけでしょうから、単に要請されたからといって、「ああ分かりました」と言っておそらく債権放棄をするわけはないわけであって、いろいろな意味での、何か債権者としての当然出すべき注文というものがあるんだろうと思いますね。その中には今ご指摘のその株主責任をどうしてくれるんだといったというような追求の仕方もあるでしょうし、全体の債権に占めるその債権放棄の割合であるとか、あるいは残余債権の回収の期間であるとかですね、他の債権者との優先、あるいは劣後の関係などなど、様々な条件についていろいろ話をされる、その中の一つとして、今ご指摘のような株主責任をどうしてくれるんだというようなことも当然、その中に含まれてくるだろうとは思います。

問)

経営者責任についてはどうお考えですか。

答)

どちら側の経営者ですか。

問)

「そごう」の経営者ですけれども。銀行に関して言えば、長銀にしても、日債銀にしても、他の破綻地銀にしても、ほとんどの経営者、ほとんどというか、まず全ての経営者だと思いますが、刑事・民事両方から追求されているわけですけれども、「そごう」の経営者に関して言えばですね、これはもちろん法的整理じゃないわけですから、当然といえば当然なんですけれども、今の段階ではそういう状況となっていません。ただ、置かれている状況において言えば、同じように公的資金が投入されて処理されるわけですけれども、この差というのはどういうふうにお考えですか。

答)

先程のご質問にも関連するかと思いますけれども、債権放棄をする際のいろいろな交渉ごとの中の一つとして、債務者の方の責任追求を当然、債権者として、行うべきだというふうにお考えになるのであれば、それはやるべきであろうと。つまり今お話のように会社更生法とか、あるいは破産法、特に破産法というようなものが適用されるような事態になれば、厳しく民事上、あるいは刑事上の責任が追求されることになるわけですから、そういった法的整理を行わない場合があってもですね、そこは債権者が、債権放棄をするという経営判断を行う場合に、将来それに伴う経営陣としてのリスク、それをどうふうに考えるか、つまり徹底的に債務者の責任を追求しないで、そのまま債権放棄することによって、おそらく将来、生まれるであろう様々なリスクをいろいろ、やはり考えた上でなさるべきことではないかなというふうに思いますけどね。

問)

異業種の件ですけれども、現在どういうふうになっているんでしょうか。

答)

運用上の指針案というのは、既に公表して、パブリック・コメントを求めたわけですが、6月30日が期限でございまして、現在のところ、約40の先から回答が来たところです。駆け込み的に6月30日にたくさん来たようですけれども。現在、事務方でそのコメントのとりまとめを鋭意やっているところです。今後では、こういった貴重なご意見を頂戴いたしましたので、このコメントの内容を踏まえた上で運用上の指針を確定していきたいと思ってますが、現在鋭意取りまとめの作業をやっているというところです。

問)

いつまでというのは、分からないんですか。

答)

ちょっと、いつまでということは、今やっている最中で、鋭意できるだけ早く取りまとめたいというふうに考えております。

問)

夏休み明けとか、そんなところですか。

答)

いや、そこは先を切るということはできませんが、金融庁発足したばかりではありますけれども、金融監督庁時代にご意見を求めたわけですから、間延びして、「何だ、今頃か」というようなことを言われないようにやって行きたいなあと思います。

問)

参議院に事務室を持っていますよね、金融庁は。

答)

今回、事務室というよりも昔の政府委員室、今は政府委員というのはなくなりましたが、昔の政府委員室というのが、参議院の本館の横に各省庁ともありまして、金融監督庁ができた時には、まだ本当にちっぽけな赤ちゃんみたいな状態で生まれたもんですから、なかなか広い部屋が確保できませんで、日銀の一室を半分お借りして、当時はまだ大臣もおられませんでしたから、何か我々が国会に呼ばれていくと、立ったまま待っているような、座るところもない状態だったし、それからコピー機も当初なくて、日銀の機械をお借りして、一枚についていくら、といって確か払ったというふうに記憶しています。そんな状態でしたけれども、今度いろいろ、だんだん組織もおかげさまで、こういうふうになってきましたので、かなり前よりは拡充した部屋が頂けることになるのではないかと期待しているところです。大臣や総括政務次官が、将来は副大臣ですか、来られてお待ちいただく時でも、そういうところで待機していただけるような状態になろうかと思います。

(以上)

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