日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年8月21日(月)17時00分~17時26分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かありますか。

答)

特にございません。

問)

2001年度予算の概算要求作りも大詰めなんですけれども、金融庁が計画している要求の重点について聞かせて頂けますか。金融大学校の創設関連とか、情報化推進関連など、力を入れていらっしゃるんではないかと思うんですけれども。

答)

平成13年度の予算の概算要求につきましては、8月31日の要求書の提出に向けて、あと10日あるわけですけれども、現在詰めの作業を行っているところでございまして、現時点ではコメントを差し控えさせて頂きたいと思いますが、その概要につきましては、これは例年どおりなんですけれども、今月末に別途記者レクを行うことを予定しております。

お尋ねの金融大学校、それから情報化推進関連など、いずれも要求するかどうかについては現在検討中でございまして、現時点でコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。

今お話にあったことについてその狙いと言いますか、若干申し上げるとすれば、前にお話したことがあると思いますけれども、現在IT革命が進行しているというか、デリバティブとか、証券化等の技術を利用したハイブリッドな金融商品の出現であるとか、情報通信技術の発達等によって金融取引が多様化していることとか、業態の垣根を越えた金融コングロマリットが出現しているとか、金融を取り巻く環境というものが、近年急激に高度化、複雑化しているということは、皆さんも同じような認識を持っておられると思いますけれども、私どもといたしましては、こういった変化に的確に対応していくためには私たちがやっている検査や監督といった観点からの、そういった最先端の金融分野の研究を行っていくと、そして研究の成果を今度はフィードバックするというか、利用して、効果的でかつ効率的、両方必要なわけですけれども、そういった監督手法を開発していきたいと、それを行政の実務に反映させていくことが大変重要だろうというふうに考えているわけです。更に研究の成果というのは、そういった行政実務のみならず、職員の研修…今日も私、市ヶ谷の研修所に行って、今日から始まった全国115人の検査官に対して講話を行ってきましたけれども、これから1カ月研修が行われるわけですけれども、そういった個々の職員の専門知識とか能力の向上を図っていくことが必要なわけで、先生も例えば私が行って、一般的な話をするだけなら格別ですけれども、先程申し上げたような先端技術の話をするということになると、日々行政実務に追われている課長とか課長補佐がなかなかレクチャーをする時間的余裕も大変難しいわけですし、そういった研究をした人がその研究の成果をそういう研修の場に出ていって、今度はレクチャーして皆さんにフィードバックするということが必要なのかなあというふうに思うわけです。

また、こうした仕組みを構築することができますと、例えばの話になりますけれども、我が国のこの数年間の深刻な金融不安の発生メカニズム、歴史的なことですから、ああすれば良かったとか、こうすれば良かったとか、いろいろ過去のことを評価することはなかなか難しいわけですけれども、その研究ができるだろうと、そうするとその研究を基にして、これからの効果的な監督手法が開発できるのではないかなと、そうすると我が国の監督手法に止まらず、例えばODAなどを通じて、途上国に紹介することもできることになるのではないかと、そういうことによって国際貢献にも繋がるのではないかというふうに考えておりますし、実際問題としてそういった要望が途上国、developing countryの方から寄せられているということも聞いているところです。

従いまして、結局その研究を誰がやるかということになりますけれども、民間からとか、あるいは海外からも招聘したり、あるいは高度な研究成果を研修に反映していくことができる仕組みを整えることが大変大事で、是非とも必要だと、このため、前から申し上げているように設立を検討しているところなわけです。

それからもう一つお尋ねの情報化推進関連の予算要求の具体的な内容についても現在詰めの作業を行っておりますので、コメントは差し控えさせて頂きたいと思います。これは公にされていることなのでご承知だと思いますが、当庁における行政情報化の推進につきましては、藤原審議官が委員長になって、各部の筆頭課長等で構成する「金融庁行政情報化推進委員会」というのがありまして、そこで当庁における情報化推進の基本指針を定めた「金融庁行政情報化推進計画」に基づいて、計画的に進めているところでございます。それを付け加えさせて頂きたいと思います。

問)

第一生命保険が生命保険契約の転換に際して、一部不当な勧誘行為が認められたということで行政処分を行ったわけですが、生保各社に対する点検・監督の強化等に関しての対応はどうでしょう。

答)

既にお知らせしているように第一生命につきましては、当庁による立入検査の結果、保険の募集に際しての不適切な行為が確認されましたので、先般、保険業法の規定に基づいて、業務改善計画の提出を命ずる処分を行ったところでございます。今回の処分は、保険の分野においても規制緩和が進んで、自己責任原則の徹底が求められる中で、保険会社においては、適正な保険募集を行うことが強く求められていると思います。そういうところであるのにもかかわらず、法令に違反する不適切な募集行為が認められたことからこの行政処分を行ったわけですけれども、今後とも、今年の6月に発出した「保険会社の検査マニュアル」に基づく検査の実施等によって、今後とも保険会社各社の業務実態を的確に把握して、問題があれば法令に則って適切に対処していきたいというふうに考えております。いずれにしても、保険会社各社いずれも適切な業務運営に向けて、今後とも努力を継続していってもらいたいということは強く望んでいるところです。

問)

金融審議会の審議開始ももうすぐなんですけれども、部会の編成とか、開始の日程などは固まられましたか。

答)

金融審議会は先日、8月4日の総会の場で今後の運営方針をお決めいただいたところでございまして、当方事務局としては、これに則って、会長ともご相談しながら、部会あるいはスタディグループのメンバーの選任、それから部会・スタディグループの開催に向けて、所要な準備を鋭意進めていきたいというふに考えております。今般新設致しましたスタディグループにおきましては、前に申し上げましたように、今後の我が国の金融システムの方向性を展望するための論点整理に向けて、幅広い視点に立った自由なブレーンストーミングを行って頂くことを期待しておりますので、そのメンバーにつきましては金融に造詣の深い有識者をメンバーとした少人数で、機動的・柔軟なご審議を頂くことを重視したいと考えておりますけれども、具体的な人選につきましては、今後会長ともご相談しながら進めて参りたいというふうに考えております。

従いまして、事務局として、現在、開催に向けた準備を鋭意進めておりますが、具体的な日程というのはまだ決まっておりません。スタディグループは先程申し上げたようなことで、タイムスパンにとらわれない息の長い議論を行って頂きたいというふうに考えておりますので、取りまとめ等の時期的な目処を何かお願いするということはありませんけれども、第一部会の方は異業種参入に伴う銀行法等の整備であるとか、他業禁止の緩和などの問題を議論頂くことになりますので、9月のできるだけ早い時期に開催できるように鋭意準備中でございます。また、第二部会の方は個人信用情報の保護とか、その利用に関する制度整備をご審議頂くことになると思いますので、これは政府のIT戦略本部における個人情報保護法制の検討状況も踏まえながら、9月中には開催するという方向で現在検討を進めているところでございます。

問)

今事務年度から、海外の国内金融機関の拠点とか、海外資本の本拠などを含めたコングロマリットレベルの検査を強化するという方針を出されておりまして、先週東京三菱銀行、東京海上火災グループに対する検査を通知された経緯があるわけなんですが、既にこれ以外の実施計画とか、そういった部分が決まっていればお聞きしたいのですけれども。

答)

前にもお話したように今年の平成12検査事務年度の基本的な方針としては、連結ベースでの資産の内容とか、グループ内の取引関係を的確に把握するために金融グループ・コングロマリットに対する一体的な実態把握に努めることとしているわけです。これは基本方針で掲げております。今お話がありましたように、先般8月17日に東京三菱銀行グループ、これは東京三菱銀行、それからその子会社の日本信託銀行、東京信託銀行及び東京海上火災保険グループ、これは東京海上火災保険、その子会社の東京海上あんしん生命保険ですが、これに対して検査を実施する旨を予告したところです。今後どうするかということですが、これはいつもお話していることですけれども、今後の検査計画について申し上げることは金融機関に対して予断を与えまして、私どもの検査の適正な遂行に支障を及ぼす恐れもございますので、これは差し控えさせて頂きたいと思います。平成10検査事務年度におきましても、既に外国金融機関等2グループに対してグループ検査を実施しましたし、平成11検査事務年度においては、本邦の金融機関3グループ、それから外国金融機関4グループに対してグループ検査を実施してきたところでございます。

問)

そうしますと平成11検査事務年度よりは多くなるんでしょうか。

答)

個別の金融機関というか、先程申し上げましたように検査の実施計画に具体的にわたることになりますので、そこは差し控えさせて頂きたいというふうに思います。

問)

予算要求についてですが、金融大学校についてですね、具体的にどれくらいの額とかは別にしてですね、現時点でこれだけ意義をお話されながら、要求するかどうか検討するというのは何か理由があるのですか。

答)

結局、予算とか人とか機構というものはですね、政府内で最終的に固まるまで色々お願いしなければならないところがございまして、いつもそうなのですけれどもそれまでの間に、何かもうそれが決まってしまったかのような受け取られ方をすると、私どもとしてもお願いしている査定官庁といいますか、そういうところに対して大変失礼なことにもなりますし、そこは一つご理解頂きたいと思いますが、私どもの希望は、先程申し上げたような趣旨は今言われたようなことで理解して頂ければと思います。

問)

要求を見送るということはないのか。

答)

そこは、要求するかどうかも含めて、こういった事柄の性格上要求するとか見送るとかいうことを申し上げるのは、つまり私たちだけで何か決められることなら、今すぐにでもパッとお答えできるのですけれども、何しろ大変怖い相手というか査定官庁がございますので、今、私どもの方からするとかしないとかいうことを言ってですね、そういうところに怒られたらいかんというのはおかしいが、つまり何と言うのか申し上げるのは今のところはまずいなということです。

問)

キャピタル・ゲイン課税の一本化についてですね、これを延期するべきではないかという声が自民党を中心に出ているわけですが、これは金融庁としてどういった見解ですか。

答)

金融庁が7月に出来て、これからやはり今お話のようなキャピタル・ゲインの課税のみならず、金融税制一般についてこれからいろんな観点から研究していく必要があろうかなと思います。例えば、ちょうど去年の今頃ですか、みずほグループの統合が発表されましたが、あれの統合に要する諸々の課税対象となる様々なものをそれぞれの金融機関は随分計算しておられたようですが、相当多額になると、分割にしろ統合にしろ、登録上の色々な課税が行われますので、そういった問題がですね、再編に当たって何か障害になるというようなことがあっては困るわけですから、私どももそういう一方で国の重要な政策として金融再編を考えている時に、それがスムーズに行われるような何か税制というものの在り方をこれから検討していかなければならないわけで、今お話のキャピタル・ゲイン課税の問題も同じことだろうと思いますし、また色々な報道もなされているということも十分承知しておりますし、現に駆け込み的にですね、既にかなりのそういったことが行われていることも承知しておりますけれども、私ども金融当局としてこれから直接金融というのが従来の間接金融に比して非常に大事になりますので、その市場を担っていく株式市場の役割を重視していくという基本的なスタンスにあるわけです。これは先程申し上げましたように、金融再編に対して私どもが取り組んでいる立場と同じようなスタンスにあるわけですけれども、こういうスタンスの下で、証券会社や投資家の声などを色々お聞きしながら、株式取引の実態とかそれから申告分離課税の一本化が果たして個人投資家の投資行動にどういう影響を及ぼすか、これはなかなか難しい問題だろうと思います。駆け込み的に何か売ったり買ったりするということも行われているようですけれども。それから金融商品に係る課税も、課税は本来中立的にあるべきですから、中立性であるとか、あるいは株式市場の動向ですね、こういったことも踏まえながら、現在平成13年度税制改正における、そのお話の課税に係る要望について、現在検討しているところでございまして、これも予算要求と絡むわけで、8月末のちょうどあと10日ばかりあるわけですが、その末に行われる要望の提出に向けて適切に対処していきたいなというふうに考えているところでございます。

問)

長官ご自身はどうあるべきだとお考えですか。

答)

先日も証券業協会との間の意見交換会でですね、そういった直接の声を聞きました。聞きまして、結局今お話しましたように証券会社の声も聞きましたし、投資家の声というか、投資家から直接聞くことはないのですけれども、そういった駆け込み的な行動が行われているということが一つの投資家の声だろうと思いますけれども。難しいのは金融商品に係る課税、つまり現在所持している、例えば、原価がいくらか判りませんけれども、原価に見合ったような高額の所得を得ることが得られるのかどうかとか、そういった法律の改正が株式市場の動向にどういう影響を及ぼすのか、色々今直接ここですぐお答えするだけの判断にはまだ足りていませんので、時期的にはそれほどないのですけれども、もう少し考えさせて頂いて適切に対処していきたいなあと思います。確かにお聞きしているとですね、そうかなと取得原価が判らないものを、今将来多額の税金を取られる人は場合によっては大変気の毒なことにもなるのかなというふうに思う一方で、課税の中立性ということも考えるとですね、何か不当に利得を得ることになるような方法も嫌だな、しかし場合によっては株式市場が冷え込むようなことになるのも困るなと、今色々思案して頭の中を巡らしているところです。

問)

金融機関の再編の障害になっては困るという前段の部分ですが、税制面でこれはどういったご提案を考えているのでしょうか。

答)

私も詳しくは知らないのですけれども、去年3行の統合が発表されたり、あるいは合併などがいくつか発表されましたが、その都度そういった関係する金融機関のトップの方々から話を聞いていると、なかなかそういうところに踏み出せないのは、それに動き出すと大変な課税が行われるのでというようなことを仰る金融機関のトップの方は結構おられます。具体的にどの位、例えば3行の統合が行われると、確かおそらく3行にお聞きになると判ると思いますが、相当な多額の課税が行われるようです。そういったものも含めて、一方で金融行政を進める立場から金融に関する税制がどういうふうにあるべきかということは、これからきちっとした研究をしていかなければならないと、金融庁にとっても大変大きな課題になるのではないかなと思っているわけです。今、ご質問されたのは、差し当たって目の前に迫っている問題ですからなかなか大変なんですが、長期的にはいろいろな課題がですね、金融税制に関する課題というのが、やっぱりこれから、ある種研究していかなければならない問題かなと思います。

(以上)

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