日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年10月23日(月)16時59分~17時24分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何か。

答)

特にございません。

問)

先立って更生特例法を申請しました協栄生命、あるいはそれに先立って破綻した大正生命について、スポンサーとして名乗りを挙げているところも幾つか出ているようですが、それについての現状をどのように把握していらっしゃいますでしょうか。

答)

破綻した生命保険と言いましても、大正生命の場合には保険業法に基づく処理であったわけですね、協栄生命の場合にはご案内の通り千代田生命と同じように会社更生法の適用の申請をしたということで、その後の処理の仕方というのが、適用される法律で違いますので、同じスポンサーと言いますか、受け皿と言うか、経営支援ということをかなり違った性格のものになってくるのではないかと思うので、一概に言うことは難しいのかなあというふうに思います。ご案内の通り、大正生命については現在、保険管理人が選任されておりまして、保険契約の移転先会社の選定など、移転計画の策定に向けた作業が現在鋭意進められているところですので、どこが受け皿会社になるかということも含めて、保険管理人が今鋭意やっておられるところですから、その交渉内容について私の方から何かコメントするということは差し控えさせて頂きたいなあというふうに思います。

一方、協栄生命の方ですが、これは千代田生命の場合にはかなり早く更生開始決定があったわけですけれども、更生開始決定に際しては、スポンサーというものが決められているわけですけれども、私どもとしては現在申し立てがあった段階ですけれども、いつ開始決定がなされるか、できるだけ早くやって頂きたいというふうに思ってますが、その中でスポンサーというものが実際に決まってくるのではないかなあというふうに思います。いずれにしてもこれは裁判所の監督の下で行われることですので、当庁として何かコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思いますけれども、いいスポンサーが現れて、この開始決定が早急になされ、更にはこの更生計画の策定が行われることというふうになることを私どもとしては強く期待しているわけです。更生計画を決定される中では私どもとしては、保険契約者の保護ということを一番に念頭に置いた、そういう更生計画が策定されることを期待しているわけでございます。大体そんなところですか。

問)

先立っての協栄生命の記者会見で生保各社の9月末現在の財務状況を調査する、報告をまとめるというお話もありましたが、具体的に今どのように進んでいますでしょうか。

答)

金曜日に記者会見の席でも申し上げましたように、生命保険各社9月末時点における上半期の実績の報告は、例年11月中旬から下旬にかけて公表しているところでして、現在その策定作業中でございます。本年は先日も申し上げましたが、11月27日と28日に主な生保会社が記者会見をする予定というふうに聞いております。金融庁と致しましては、前期末の決算の状況などを踏まえつつ、生命保険各社の財務状況等の把握に努めてきたところですけれども、千代田生命や、あるいは協栄生命と破綻が続いたことを踏まえまして、念のため生命保険各社の財務状況について、早期にご報告頂くように要請したいと考えていることは、先日も申し上げたところですが、具体的な時期とか、内容につきましては生命保険各社の事務処理の事情なども踏まえる必要もありますので、現時点では未だ確定はしておりませんが、いずれにせよ、あらあらのものとして貸借対照表、損益計算書、それから新規契約や解約等の状況、それからソルベンシー・マージン比率などについて、できるだけ早期にご報告を頂きたいものだというふうに考えております。報告頂いた上で必要があれば、ヒアリングなども行うこととなろうかと思います。

問)

日生(日本生命)、あるいは三井グループ関係等の金融再編の動きが先日新聞で出ておりましたが、こういった動きをどのように受け止めてらっしゃるか、所感をお聞かせください。

答)

従来から主な保険会社がいろいろな形で提携関係を結んできておりまして、本日午後4時からですか、この記者会見が今お話になった日本生命、三井海上、住友海上、それから同和火災の4社から行われたというふうに承知しておりますが、その詳細についてはそちらの方にお聞き頂きたいと思いますけれども、従来から行われてきた様々な提携、これは一般論として申し上げますと、金融システム改革の進展の中で各保険会社においては、利用者利便の向上、経営基盤の安定化を図るために業務面での提携などの様々な試みを行ってきているところと承知しておりまして、こうした取組みをされることは結構なことだというふうに思います。この4社の中でも既に三井海上と住友海上は平成13年10月の合併を前提とした全面的な業務提携に既に踏み切っておられることは、既に本年の2、3月にも発表しておられるところですし、それから日生の損保子会社であるニッセイ損保、これは既に同和火災との間で平成13年4月から業務提携を行われるということも既に決めて発表しておられるところですが、そういったものを今度は更に一層包括した今回の提携ということであろうかというふうに思います。

問)

一連の保険を含めて、長期の貸出先が少なくなっているというか、非常に長期の貸出の担い手先がいないという面で非常に金利リスクが出てくるということがあると思うのですが、どうもクレジット・クランチと言いますか、そんな話もあるんではないかという見方もあるようなんですけれども、ご感想があれば。

答)

生命保険に限らず、現在銀行を中心とした金融機関もなかなか優良な貸出先、あるいは資金の運用先に困って、なかなか大変対策にいろんな形で検討されているということは良くわかっております。これは経済全般の状況とも関係するわけでしょうし、優良な貸出先、あるいは間接金融に頼らない直接金融といったようなものとの関係、それから生命保険会社に現わされているような金利の逆ざやの関係など、いろいろな形で、今良い貸出先がなかなか見つからないということはお話の通りだろうと思います。ただ、だからといって、それが直ちにクレジット・クランチに結びつくのかというふうにいわれると、私は必ずしもそんなことはないだろうというふうに思います。おそらく銀行を中心とした金融機関は預金はどんどん伸びているといった状況にありますし、これが少し経済が好転してくれば、良い優良な貸出先も見つかる、どんどん開拓できる、そういう情勢になるのではないかなあというふうに今思います。

問)

月末に行われますサンフランシスコでの日米金融協議ですか…、これは重要なポイントと言いますか、アメリカ側に要求する事項というのはあるのでしょうか。

答)

私も、今のところそれについての情報に接していませんので、何かお答えできるような材料を持ち合わせていません。国際課の方に聞いて頂ければありがたいと思います。

問)

協栄生命の破綻に関連してですが、協栄生命の会見で千代田生命の破綻発表後解約が倍増したということを仰っていたのですが、そういう状況にあったということは金融庁として把握されていたのですか。

答)

今のお話ですと、何か他の会社の更生手続開始決定後、そういう動きがあったかというお話のように聞き取れますけれども、私どもとしては、必ずしも千代田生命の更生開始手続、開始決定あるいは開始の申し立てというものが、直接そういったものに結び着くというようなことは聞いておりません。それはまた別個の会社の話ですので、たまたま9日と先週の金曜日というふうに、わずか11日か12日の間に2つのことが起こりましたので、何かこう関連があるかのように見えないこともないかも知れませんけれども、私どもとしては必ずしも両社の間に何らかの関係があったというふうに認識は持っておりません。

問)

千代田生命の破綻の影響で他の中堅生保の解約が急増していると、協栄生命に限らず他の中堅生保で急増していると、そういう認識は今のところないということですか。

答)

ええ。そういう認識はございません。

問)

更生特例法についてですね、たまたま1カ月に2社も、千代田生命、協栄生命と相次いで更生法の特例申請を行ったのですが、まあ企業再建の可能性があるという前提で、更生法申請をしたのかも判らないですが、いずれも外資が絡んで、アメリカなんかの発想でいえば更生特例法というのは、ややリストラ型の受け止め方もあって、受け皿として外資、どの外資かは特定はしませんけれども、要は更生特例法の適用を受けて更生計画を練って、例えばより予定利率を引き下げるとか、あるいは逆ざやの解消とか、そうやって身ぎれいになってから引き受けるような格好になると、外資に関わったりするところは、再建の可能性があるにも関わらず、むしろ何か煽られて結果的に駆け込み寺みたいに更生法にいっちゃうという感じも無きにしもあらずみたいな感じがしたのですけれども、そこはちょっと穿った見方でしょうか。

答)

会社更生法は、元々破産法と違いますので、会社の再建を図るためにですね、破産という手続をとらないで、あくまでも再建を目指すためにある法律で、それも特別法に特例法がなるわけですから、当然のことながら会社更生法の精神というのは、特例法にも100%援用されることになろうかと思いますけれども、会社更生法その特例法を適用して、どういうところがスポンサーになるかということは、先程申し上げましたように、裁判所がお決めになることではありますけれども、通常の会社更生法ですと、すべての債権がですね例えば一律にカットされたり、あるいはゼロになったりすることもあり得るわけですけれども、この特例法の場合には債権者の中でも、保険契約者の債権だけは特別に取り扱おうという精神で出来ているわけですね。特例法はなんといっても保険契約者の保護ということを念頭において出来ている、再建を目指すそういった法律ですので、その中で一般の債権は、つまり保険契約者債権以外の債権は、かなりカットされることになるでしょうし、劣後ローンとか株式なんか当然ですけれども、その中で場合によっては予定利率を引き下げたりすることも更生計画の中ではあり得るのかなと思います。ただ、一方スポンサーの立場になると、スポンサーとしては、その会社が株式を取得するか営業譲渡を受けるかは別として、私どもとしては、外資であるとか国内資本であるかについては、別に差があるわけでなくて、スポンサーになった以上は保険契約者の保護を念頭に置きつつ、会社の再建を目指してやって頂きたいということを強く期待しているわけです。通常の従来のような保険業法の適用だけでは、なかなかそういったことができなかったようなことを、先の国会で制定されたという趣旨もですね、そういうところにあったのではないかなと思っているわけです。

問)

長官としては、今回はたまたま短期間に集中したけれども、それぞれ固有の企業の事情があって、やむを得ないものだという判断ということですか。

答)

先程、同じようなご質問がありましたが、たまたま10日か12日の間に、2社がこういったことになりましたけれども、これはそれぞれ偶然そうなったに過ぎないのであって、偶然というのは2つの間に何かあったわけではなくて、それぞれ会社の経営状況などから判断して、それぞれの会社が判断されたことであろうと思っております。

問)

予定利率の引き下げができないということは、保険業法に何か書いてあるのですか。

答)

数年前に、それまでは出来るようになっていたのを、出来なくしたわけですね。更生特例法の中で、やるかやらないかということは裁判所の判断で、更生計画の全体に関わることなのですから、予定利率の引き下げがあるのかないのかというのも含めて、更生計画を策定される中で、決まってくるわけですけれども、保険業法プロパーの立場からすると、先程申し上げたように、私どもとしては予定利率を強制的に引き下げさせるといったような権限はございませんので、そこは裁判所の行われるであろう更生計画の策定と大きく違ったところではないかなと思います。

問)

更生特例法も含めて、公的処理になる前に予定利率を引き下げるということが出来ないようになっていると思うのですが、それは民民の契約に政府がそういう保証を与えているというのはどういうことなのですか。

答)

それは、要するに約束したことを守るということは、契約ですから、契約してこれだけのものを支払いしますよと約束した以上は、その約束に縛られるということであって、最初から契約の中にですね、将来金利の変動によっては、この約束は履行できない場合があるとか、そういう約束にでもなれば別でしょうけれども、今そういう約束になっていないわけですから、少なくとも約束したことは守らなければいけない。それを何か行政庁がその約束を外から、この約束をこういうふうに変更しなさいということはできない。できるのはおそらく更生計画を策定する権限を有する裁判所が決めることではないかなと思います。

問)

約束したことを守るというのは、民民の契約で約束したことを守らない時は保証人がいるという話だと思うのですけれども、今の保険業法のスキームは約束したことを守るべきであるということを金融当局が保証した形になっていると思うのですけれども、そこのところがよく判らないのですけれども、どういうロジックになっているのですか。

答)

金融当局が保証しているというよりも、大前提として約束したことを守りますよということが先にあるわけであって、ただそれに対して行政当局としては、それを変更させたり、強制的に乗り出して行って自ら変更するという権限は私どもにはありません。あくまでも民民の取引で、約束した以上はそれを約束どおりにお支払いするという、そういうことに基づいて何万とか何十万という契約が、それぞれの保険契約者とそれから個の保険会社の間に成立しているわけですから、30万とか40万のですね、保険契約者の間で約束したことを特定の保険契約者に対してだけ守らないとか守るとかいうことはなかなか言うことは難しいのではないかなと思います。

問)

確認ですが2点よろしいでしょうか。約束したことを守られないという契約を、民間の保険会社が保険契約者とするという事実があるのですか。そういう契約を結ぶことは今可能なのですか。

答)

契約そのものは、どんな契約でも、例えば公の秩序とか、公序良俗に反する契約は結べないかもしれませんけれども、将来これだけの金額をお支払いしますという契約は何人も結ぶことができるわけであって、それについて、それが例えば公序良俗に反するということであれば別でしょうけれども、それでない限りは外から約束を変えなさいといったようなことはできない。保険会社は保険契約者とだけ契約しているわけではなくて、保険契約以外にも先程申し上げましたように一般の債権者もおりますし、例えば従業員の給料といったような問題もありますし、劣後ローン、株主といったようなそれぞれのいろいろな関係が存在しているわけですから、その中で特になぜ保険契約者との関係だけで、自らの債務を減ずることができるような特典が与えられるのであろうかという基本的な問題にもぶつかるわけですけれども、そこは約束したことは守るということが大前提にあるのはないでしょうか。

問)

保険各社に財務状況の報告を求めると先程お話があったのですが、それは今週中とか目処みたいなものはあるのですか。

答)

特に何日といった具体的な何日といったことを申し上げることは難しいのですが、先程も申し上げましたように、できるだけ早期に報告を求めたい。ですから保険会社各社が公表されるであろう記者会見の予定の11月27日とかですね28日とかそんな先のことを考えているわけではありません。

(以上)

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