日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年10月30日(月)17時00分~17時30分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

私の方からは明日、10月31日ですが、全国の財務局の検査事務を統括する検査監理官等を招集し、検査の実施状況を把握するための「臨時財務局検査監理官会議を開催することと致しました。今般、この会議を開催することと致しましたのは、財務局において現在行われております集中検査が既に過半数の信用組合に対し、実施されるまでに進捗してきたことを踏まえたものでございます。この会議では、現在財務局が実施している信用金庫、信用組合に対する検査における様々な問題点について、意見交換を行いますとともに、金融検査に当たり、金融機関の規模や特性を十分踏まえ、金融検査マニュアルの機械的・画一的な運用に陥らないよう、改めてその運用に当たっての認識を再確認することとしております。また、会議におきましては、午前中、信用組合業界との集中検査に係る意見交換も併せて、この会議のメンバーとの間で実施することとしております。これが私の方からの今日のご案内です。

問)

「検査監理官会議」ということで、先日、相沢委員長の方が信組の集中検査は機械的・画一的にならないようにということを会見で仰っていたのですが、そういった相沢大臣の意向を加味して開かれるということなのでしょうか。

答)

この会議の趣旨といいますのは、今も申し上げましたが、現在財務局において実施しております集中検査が過半数の信用組合に対し実施されるまでに進捗してきたことから、今後の検査に活かすために、財務局が実施している信用組合や信用金庫に対する検査における様々な問題点についての意見交換を行うために開催することとしたものでございます。会議におきましては、先程も申し上げましたけれども、金融機関の規模、特性を十分踏まえ、金融検査マニュアルの機械的・画一的な運用に陥らないよう、改めてその運用に当たっての認識を再確認することとしているわけでございます。

そこでただ今、先日の相沢大臣の発言を受けて開催することにしたのかというお話ですが、今回のこの会議では、信用組合の集中検査が過半数の信用組合に対して実施されるまでに進捗してきたことを踏まえまして、これまでの検査における様々な問題点についての意見交換等を実施するために全国の財務局の検査事務を統括する検査監理官を招集して、開催することとしたものでございます。また、大臣から検査においては、機械的・画一的なマニュアルの運用に陥らないよう指導を徹底する旨、ご指示を頂いたことも踏まえて、開催することとしたものでございます。検査マニュアルにもありますように金融機関の規模や特性を十分に踏まえて、検査を行うように指示するものでございまして、何か特定の業態に対して、検査を甘くするように指示するようなものではございません。

問)

先週、全国信用協同組合連合会が信用組合の資本増強支援策みたいなものをまとめたんですが、これに対する長官のご見解と一部広島県信用組合がこうした動きを受けて、資本注入の申請に前向きではないかという見方があるんですが、その辺のところはどう思われますか。特に伝えたいことはありますか。

答)

今お話がありました全国信用協同組合連合会、略して全信組連と呼んでおりますが、ここでは先週今お話がありましたように、金曜日ですか、個別の信用組合が発行する優先出資の引受けを行うなど、資本増強への支援策を固められたというふうに聞いております。皆さんご案内の通り、この6月には金融再生委員会から「協同組織金融機関の資本増強についての基本的考え方」というものが公表されておりまして、このくだりの中に「全国連合会等…による増資等への協力や支援を期待する」と、こういう文言が含まれているわけですけれども、この全信組連の今回の固められた支援策というのは、金融再生委員会が公表された考え方を受けたものだろうというふうに考えられますが、こういった全信組連の取組みには金融庁としては、大いに期待しているところでございます。今後、各信用組合が自らの経営判断によりまして、全信組連による支援策と、それから公的資金による資本増強制度、これはちょうど車の両輪のようになるかと思いますけれども、これを有効に活用して、経営基盤の強化を図ることにより、地域における金融システムがより強固なものとなることを期待しているわけでございます。確か先週発表された、発表されたというか、お決めになったところによると、経営の存続が可能かつ全信組連の支援を償還する収益力がある先に対しては、4%達成に必要な額まで支援を行うと、これを超える自己資本比率を確保したい信用組合は、公的資金の受入を申請するものとすると、こういうふうな支援策の概要であるというふうに承知しております。

ところで、次のお尋ねは広島県の信用組合のお話がございますが、報道等によりますと、この広島県信用組合だけではなくて、大阪庶民信用組合ですか、ここも同じような公的資金による資本注入を申請するという報道がございましたが、これは個別のことになりますので、一般論として申し上げることになりますけれども、先程から申し上げておりますように、協同組織金融機関が自らの経営判断によって、公的資金による資本注入を活用して、経営基盤の強化を図ろうとすることは望ましいことというふうに考えているところです。ただ、個別の報道されているような2つの信用組合の事実関係については、まだ承知しておりません。ちなみに国におきましては資本注入のため、ご案内の通り、早期健全化勘定に今年度25兆円の政府保証枠を設定しているところでございます。これまで8兆円が利用されまして、現在残りの枠は17兆円でございますが、仮にこれは粗々の数字ですが、全国の信用組合が自己資本比率を、例えば2%上昇させるために必要な資金額がどのくらいになるかということを試算してみましたところ、現在の全国の信用組合、265信用組合ですけれども、このリスクアセットが12兆5,814億円ということになりますので、それの2%ということになりますと、約2,600億円という結果を得ております。従いまして、公的資金の残りの枠という面から言いますと、資本増強の要請には十分に応えられるというふうに考えているところでございます。もとより、公的資金による資本増強の申請を行うかどうかは、各信用組合が自らの経営判断によって決定すべきものでありまして、当該制度を活用して、経営基盤の強化を図ることによって、地域の金融システムがより強固なものになることを、私どもとしては期待しているところでございます。

問)

先程、個別のことは仰れないということですが、長官としては申請の時期は早ければ、条件に合っていれば早ければ早い程、地域経済として望ましいとお考えですか。

答)

先週の金曜日に基本了解は得られておりますけれども、まずはこの基本了解が正式に全信組連の方によって、公式な機関決定がなされてからということになりましょうけれども、私どもの考え方としては、例えば来年のペイオフを控えて、ペイオフというのはご案内のとおり、再来年ですけれども、来年の3月期の決算でご覧になった預金者の方々が、この信用組合はもうしっかりしたなと、金融システムが安定したなということが来年の3月期の決算によって、よくお分かりになるようなことが、私の方としては望ましいかなと思っています。そういう意味では大体そういったところが目処になるかなあというふうに思います。

問)

金融審議会のことをお伺いしたいのですが、異業種参入に伴う作業部会の作業がかなり進んでいると聞いているのですが、その辺のスケジュールと、あと大きな課題の一つの異業種参入の場合の親会社に対して検査権限を付与するかどうかということが一つの課題になっていると思うのですが、これについて長官ご感想は。

答)

金融審議会の審議の進捗状況は、大きく分けて3つに分けられようかと思います。折角の機会ですから、この際まず全体がどんな感じだということをまずお話申し上げた後、今ご質問の内容についてお答えすることにしたいと思います。まず第一部会につきましては異業種参入に伴う銀行法上の整備や他業禁止の緩和などについて、今年の末を一つの目処として、次期通常国会での法制化等を目指した事項を中心に、現在ご審議頂いているところでございます。この部会では、9月12日に第1回目の会合を開催致しまして、フリーディスカッションを行って以来、9月中は部会・ワーキンググループの合同会合でヒアリングなどを実施致しまして、10月に入りましてからは、ワーキンググループ会合での検討が行われてきているところでございます。ただ、ご案内の通り、ワーキンググループでの会合での検討は大変熱心に行われておりますが、未だ個別の論点について確たる方向性が示されているという状況にはまだなっていないというふうに承知しております。今後、まだ日程は調整中ですけれども、次回の部会におきまして、これまでのワーキンググループにおける検討状況が報告されるというふうな予定になっております。ご質問の内容につきましては、その後開かれるこの部会での議論を経て、更に検討が進められていくことになろうかというふうに思います。

それから第二部会の方ですけれども、10月3日に、金融庁に移管された後初回の会合が開催されまして、個人情報保護基本法制の検討について内閣内政審議室から説明を受け、質疑応答が行われましたほか、保険会社における金融商品の時価評価導入の問題につきまして、第二部会としての意見集約がなされました。今後は個人信用情報保護・利用の在り方に関しまして、個人情報保護基本法制の今後の立案作業の進捗状況を踏まえつつ、どのような追加的な措置を講ずる必要があるかという点について、ご審議頂くことになっております。第二部会の次回の開催は11月15日(水)を予定しているところでございます。

それからもう一つはスタディグループがございますが、これは金融の基本問題に関するスタディグループでございますが、10月20日に第1回の会合が開催されまして、我が国の金融システムの今後の方向性を展望していくためには、どのような事項をどのような視点、切り口、問題意識などで考えていくべきか、フリーディスカッションが行われたところでございます。今後は11月中には3回程度会合を開催致しまして、ゲストスピーカーをお招きしてのプレゼンテーションとそれを基にしたディスカッションを行いまして、その上で12月頃を目処にそれまでの議論も踏まえて、検討テーマの大枠及びその後の進め方について議論する予定でございますが、今後の議論の状況なども踏まえて、柔軟な運営が行われるというふうに聞いております。まだ現在のところでは報告書といったような取りまとめを行うことにはなっておりませんで、いずれにしましても、先の進め方も含めましてご議論頂くものと考えております。スタディグループにおきましては、我が国金融システムの今後のグランドデザインに資する、活気あふれた議論がなされることを期待しております。

そこで最初のご質問について、例えば検査の問題でありますとか、いろいろワーキンググループで検討が重ねられておりますので、これは活発にご議論を頂いているものと承知しておりますが、先程も申し上げましたように次回の第一部会におきまして、これまでのワーキンググループにおける検討状況が報告される予定になっておりますので、その部会での議論を経て、先程申し上げましたように、今年末を一つの目処として、次期通常国会での法制化を目指した事項を中心にいろいろご議論して頂きたいなあと考えているところであります。

問)

協栄生命の更生特例法申請についての会見の際、長官が9月末の決算ヒアリングを前倒しでやりたいと仰ったと思うんですが、その辺のヒアリングの進捗状況とその会見の席で保険業界の経営健全性を示すソルベンシー・マージンを見直しみたいなことにお触れになったと思うのですが、この辺どうやって検討していくか、その2点をお聞かせください。

答)

生命保険各社は9月末時点における上半期の実績につきましては、例年11月の中旬から下旬にかけて公表しておりまして、現在その策定作業中でございます。本年は11月27日と28日に主な生命保険会社が記者会見をする予定と聞いております。当庁と致しましては、前期末の決算の状況等も踏まえつつ、生命保険会社各社の財務状況等の把握に努めてきたところでございますが、千代田生命、協栄生命と破綻が続いたことを踏まえまして、念のため生命保険各社の財務状況について、早期にご報告頂くように要請しております。各社の9月末時点における貸借対照表や損益計算書、あるいは新規契約、解約等の状況、ソルベンシー・マージン比率などについて、粗々のものでもいいですから、できるだけ早期にご報告頂くように要請しているところでございます。その結果につきましては、行政の立場から粗々のものであっても早期にご報告頂きたいという趣旨でやっておりますので、私どもの方から公表できるものではございません。

それからソルベンシー・マージン比率の問題についてですが、現在のところ、その比率とそれからそれに対応した行政上の措置についての相関関係というものついて、特にこれを考えているわけでありませんけれども、比率そのものの計算の仕方については、今年の春以来、いろいろな角度から検討を重ねてきておりまして、その都度、必要に応じた見直しの作業を行ってきておりますし、今後とも必要があれば、その計算の内容についてはこれからも必要の都度、検討していかなければならない事項かなあというふうに考えております。

問)

全信組連による資本増強ですが、一方で信用組合の関係者、組合員はじめ関係自治体とか地域経済の方々が、そういった努力というのはどうなっているのでしょうか。全信組連がポンとお金を入れちゃうと、そうしたものがいらないのかなという感じがするのですが、その辺はどうなんですか。

答)

決して、地域経済の方々のご協力なしでポンといきなり全信組連が入れるという趣旨ではなかろうかと思います。やはり、協同組織の信用組合というのは、それぞれの基盤、地域的な基盤、あるいは職域的な基盤、いろいろありますけれども、中小、零細の方々を基盤にしているということから言うと、まずは基盤としている構成メンバー方々による支援と言いますか、自助努力と言うか、そういったものがあって、初めて全信組連の方でも、それでは自分の方も支援をしてやろうかという、こういうお気持ちになるのではないかなというふうに思います。そのことは再生委員会が公表された協同組織金融機関の資本増強についての基本的考え方の中にも、まずは相互扶助組織という特質を活かしつつ、それぞれのメンバーが自助努力によって、自力調達が行われているかを考慮すると、特に過少資本以下の自己資本の区分に属する金融機関については、こうした自助努力が十分に行われていることを前提にすると、こういうふうに謳っておられるところですので、全信組連がいきなり先程申し上げたように4%達成に必要な金額までを全信組連だけに頼るというようなことにはならないのかなというふうに思います。

問)

先程、長官がご披露された全国の信組の、2%上昇させるために必要な額なんですけれども、これは3月末の数字で作ったものなのか、もしくは今までの検査の結果を加味されているものなのでしょうか。あとそれから全国の信組ということだったのですが、いわゆ全国の信組を含めて、韓国系、北朝鮮系を全部含めた数字なのですか。

答)

先程申し上げたのは極めて粗々の数字で、現在信用組合のリスクアセットを12兆5,814億円と申し上げましたが、この全信用組合265組合、これは既に破綻した信用組合を除く信用組合ですけれども、現在破綻していない信用組合の数ですね。これの自己資本比率が2%上昇するために、最低必要な自己資本の額はどのくらいであろうかということを計算しましたところ、先程申し上げたように大体2,600億円で、これは今年の3月末の決算を基にした数字ですけれども、厳密に言うと2,516億円、これは平均しますと265で割ると約9.5億円ということになります。リスクアセットが12兆5,814億円×0.02すると、先程申し上げたように2,516億円、約2,600億円というような計算を申し上げたので、別に検査を基にしたわけではございませんし、破綻した信用組合がこの中に含まれているわけではございません。

問)

今後、全信組連が優先出資を発行すると、それを国が受けるというか、そういった形の全信組連そのものに注入といったような話は想定されているのですか。

答)

今のところ私どもで、まずは全信組連が優先出資だけではなくて、おそらく劣後ローンの供与もあるだろうと思いますが、現在先程から申し上げているような粗々の数字を前提として全信組連が先週金曜日に基本的な考え方を出されたものだというふうに聞いておりまして、特に全信組連が何か国から支援を受けるということを考えているというふうには聞いておりません。

問)

先程2%の上昇させるというのは、これは要するに3月末で平均何%が、2%上昇すると何%になるのでしょうか。

答)

それは、その時の決算を見てみないと判りませんけれども、平均の数字…、3月末の平均の数字はちょっと手元にないのですけれども、何%になるかは判りませんけれども2%上昇させるためにはこのくらいだと、仮に2%ということを申し上げているので、3%上昇させる必要があるとすると0.03をかけると、こういうことになるのであろうと、仮に4%上昇させることになるとそういうことになる。

問)

どうして仮に2%になんでしょか。

答)

いや、例えば4%から2%引き上げようとする時にどのくらい必要かと、つまり、まずは4%というふうに仰っていますので、4%から2%へ引き上げようとすると6%になりますね。仮に平均が4%だとしてですね、更にそこから2%引き上げて6%にするためには、どのくらい必要かということを仮に計算してみたというだけのことであって、特に2%ということに意味があるわけではありません。

問)

「検査監理官会議」というのは、ちょっと異例な感じもするのですが、今まで半数以上終わった検査で何か問題点というのが何か具体的に出てきたのですか。

答)

いや、名前は「臨時財務局検査監理官会議」ですけれども、今年の平成12検査事務年度の始めの7月にも開催しておりますし、それから平成11検査事務年度の締め括りであった今年の6月にも開催しておりますし、それから全国の理財部長会議をやる時には大体いつも検査監理官が出てきて一緒に付いてきておられるので、決して異例のものではないのですが、先程申し上げたようにちょうど折り返し地点に達してきて、いろいろなこれまで実施してきた検査においていろいろ問題点が把握されたわけです。局によってもそれぞれ問題点が違うところもありましょうし、やはり相互に横の連絡と言いますか、横の意見交換を行うことも必要ですし、それから中央である金融庁と縦のそういう関係での意見交換もこの際やって、折り返し地点を過ぎて、これから後半の検査に当たって万遺憾なきを期したいと、ちょうど業界の方との意見交換も折角の機会ですから午前中にやりたいと、こういうふうに考えているわけであります。

問)

その結果については、例えば終わってから何かあるのでしょうか。

答)

明日ブリーフィングを「検査監理官会議」の後ですね、ブリーフィングを行いたいと思っております。

問)

自民党に説明するとかということではないのですか。

答)

いやいや、皆さんにブリーフィングしたいと思っております。

問)

生命保険会社のヒアリングの件ですが、今のヒアリングの状況は、どの程度進んだのでしょうか。個別はいいとして、集まり具合はどうですか。

答)

集まり具合は、やはりそれはどのくらい集まっているかということは…。

問)

全社ほぼ終わったとか。

答)

ぼつぼつ出ています。厳密にいつまで出してくださいというものではなくて、前にも申し上げたと思いますけど、11月の27、28日ですか、正式に記者会見が予定されていますので、それよりも遅れるということもないし、それに限りなく近いということもないわけで、出来るだけ私どもとして行政として出来るだけ早く、9月末の時点の状況を正式にまとめる前に知りたいと、こういうことですから、ぼちぼち集まりつつあるということです。

(以上)

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