日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年11月13日(月)17時00分~17時14分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何か。

答)

特にございません。

問)

予定利率問題なんですけれども、破綻前の予定利率の変更という問題で最近関心を集めているのが、以前平成8年施行の新保険業法に破綻前の予定利率変更の部分が削除されたわけですけれども、保険審議会でどういった議論を経て、その下で削除されたのか、その経緯に非常に関心が集まっているのですが、現在分かっている範囲で削除の経緯をお聞かせ願いませんでしょうか。

答)

平成7年に保険業法が大幅に改正されたわけで、それまではカタカナの保険業法だったわけですけれども、それ以前、カタカナ法の時代には大蔵大臣…、主務大臣ですね、古い話をしますとあれなんですけれども、この法律は戦前にできた法律で、当時は大蔵省の所管ではなくて商工省の所管だったんですね、保険というのは。戦後大蔵省の所管になりましたが、主務大臣が大蔵大臣でありまして、大蔵大臣の行政命令によって、今お話になった保険金の削減であるとか、あるいはカタカナ法の第10条第3項というところに書かれているのですけれども、カタカナで「現に存する保険契約についても、また将来に向かってその変更の効力の及ぶものと為すことを得」と、主務大臣がですね。そういう規定、あるいは相互会社における社員自治による定款の定めに基づく保険金の削減を可能とする規定、これはそのカタカナ法の第46条で「相互会社は定款をもって保険金額の削減に関する事項を定むることを要する」ということで設けられておりました。これらの規定につきましては平成7年5月に改正された保険業法、現行の保険業法といってもいいかと思いますけれども、これは平成8年4月に施行されましたが、ここでは削除がされているわけです。そこで、この保険業法の改正、カタカナ法が現在の平仮名法に変わるにあたっては長い間、当時の保険審議会で議論されたわけですけれども、問題の大蔵大臣の行政命令による保険金の削減等の規定につきましては、いろいろ議論がありましたけれども、大きく分けて2つの議論があったようでございます。一つは予定利率の引き下げによって、保険契約者の保険料を引き上げることは不利益変更を既存の契約者に及ぼすこととなり、不適当ではないかという議論が第一であったようです。それから第二には、今度は一方そもそも契約を守れないような保険会社は解約が増加することによって、結局契約者を維持できないのではないかといったような議論があったようでございます。まあいろいろ議論があったようでございますが、この予定利率の問題に関しては大きく分けると、この二つの議論があったようでございます。そして、こうした議論を受けまして、平成6年6月の保険審議会の報告が出されたわけですが、ここでは旧保険業法第10条第3項、先程申し上げましたが、これは削除することとすると、それからやはり先程申し上げました第46条も、これも削除することとすると、こうされましてその後保険審議会の答申を受けて、法制化する過程でこれらの規定が削除されたというふうに承知しております。

問)

ちょっとくどいようなんですが、その平成6年6月の報告まで、予定利率の問題というのは、相当議論は何回とかですね、数回にわたって保険審議会での重要なテーマとして取り上げられたというご認識でしょうか。

答)

いろいろな議論がありまして、前回にも申し上げたと思いますけれども、保険審議会の答申がなされたのは平成4年6月であったわけで、平成元年4月に保険業法の抜本改正に向けた審議が開始されて、平成4年6月にこの答申がなされたわけですけれども、先程申し上げたように答申の中で変更命令権の規定についてどうするかとか、あるいは保険金の削減が受け入れがたいものとなってきているというふうに考えられるという議論があったことから、法制的な検討が行われる必要があるということで、専門的な検討を行うために、この審議会の下に法制懇談会というのが設置されたわけです。この法制懇談会で平成4年7月から平成6年5月まで31回にわたって審議が行われて、平成6年6月に法制懇談会の報告書が保険審議会の総会に報告されて、これが了承されたと、こういう経過のようでございます。これが保険業法全体の中にどれだけの比重であったかということは、ちょっと今のところ私も詳らかにしませんけれども、しかし少なくとも、予定利率の問題に関してはこのような議論があったし、それから法制懇談会でもいろいろ議論がなされた結果、こういうふうな削除された結果になったと、こういうことだというふうに承知しております。

問)

金融審の絡みなんですが、長官は大正生命の破綻など受けて、異業種参入に関する保険業法の改正に関しては非常に前向きの立場だと認識していたのですが、一方で金融審の第一部会の方では、なかなか法的な部分で難しい、時間的に難しいというような見方もあるようですが、保険業法の改正に関して、現在の長官のご見解をお聞きしたいのですけれども。

答)

決して保険業法の改正について、金融審議会が何かさぼっているとかいうことではなくて、先日ご存じの通り、ワーキング・グループの報告が第一部会においてなされたわけですけれども、これはご案内のとおり、異業種参入に伴う銀行法等の整備・他業禁止の緩和等に関するワーキング・グループにおける意見(中間整理)です。この銀行法等の「等」は当然のことながら、銀行法以外の保険業法なども含むわけで、全般に関わる論点の中の意見の中にも、「異業種参入に関連する制度的手当てについては、保険分野でも喫緊の課題であるので、銀行との相違にも留意しつつ、同様な観点から検討すべきである」と、こういうふうに意見として述べておられるところです。こういった考え方を踏まえまして、今後引き続き保険の分野においても検討していくこととなると考えておりまして、必要な法改正事項については次期の通常国会で対応することになるというふうに考えてます。つまり異業種参入についての議論を今、主として銀行法についていろいろ議論を重ねて…、銀行の観点から議論を重ねておられますけれども、その検討が結実すれば、それはそっくりそのままとは申し上げませんが、銀行と保険との違いがありますので、その違いにも十分留意しつつ、その成果はそのまま保険業法の改正にも使えるのではないかというふうに考えているわけです。

問)

平成8年の予定利率引き下げの時に、保険審議会の議論の時に業界の方が(第10条第3項等を)削除するということに対して、どういうスタンスで意見を述べたのでしょうか。

答)

その当時のことは、ちょっと私も業界がどういうふうなスタンスで述べられたかは、詳らかにしませんけれども、いろいろ業界の間、ごく最近の業界の方々との意見交換会などで、私がいろいろお聞きしているところによると、この改正当時はもちろんですけれども、逆上ることの平成3年とか、4年とか、そもそも保険業法がカタカナから平仮名の法律に改正するというふうな動きが起こり始めた頃は、おそらく現在のような、これだけ大きな日本の経済の構造が変わってくるということは、おそらく誰も考えてなかったんじゃないかなと思います。ですから、その当時の業界の方々の議論というのは、必ずしも現在の行政に当てはまるかどうかわかりませんので、またその当時のことは私も詳らかにしませんけれども、先程申し上げましたように最近のことをいろいろお伺いしてると、これはやはり日本の経済社会における非常に大きな構造の変革の一つであって、全く逆の現象としては、例えば大変高い金利で借り入れた住宅ローンの問題をどうするかとかいうことなどなど、金利がこれほど下がる、あるいは右肩上りの経済がこういう状態になってくると、あるいは不動産価格が依然として低迷するといった、こういう経済の状況というのは平成の初めにはもう到底考えられなかったことでしょうし、そういったこれだけの大きな変革の時に、変えるとすれば、全体をおそらく見直す必要があるのではないだろうかというのが、業界の方々の私が最近いろいろご意見をお伺いしていると聞くところです。まあ、なるほどなあというふうに考えさせられる点も多々ございます。

問)

住宅ローンの高金利の借り入れとか、あといろいろな問題がありますけれども、予定利率みたいなですね、経済社会のいろいろな問題があると思います。だから全て徳政令みたいな形でやってくれと…、その中の一つとして、予定利率の問題を考えていると…。

答)

ワンオブゼムではないかというような感じを私は受けているわけです。ですから事が単に予定利率の問題に止まらず、いろんな問題について、おそらくその当時、先程住宅ローンの問題を申し上げましたけれども、いろんなところにそういった問題がやっぱり存在し、あるいは伏在しているんだということを業界の方々は非常に強く認識しておられるということを私は感じています。

(以上)

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