日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年11月20日(月)17時00分~17時20分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

先週末、生保協会の宇野会長が会見などで予定利率問題について、予定利率引き下げというのも選択肢の一つということと、あとその前に大臣と会談された時に、生保の経営改善のための方策を当局としても考えて頂けないかということを依頼されたそうなんですが、現在、その予定利率の引き下げを含みまして、金融庁で生保の経営改善に向けた検討課題というのはどんなところにあるかと考えてらっしゃるのか、お伺いできますか。

答)

先週の17日ですか、相沢大臣と生命保険協会の宇野会長との間で意見交換の機会がありまして、その際、生命保険業界のおかれた大変厳しい経営環境などについてお二方の間で幅広い観点からの話し合いが行われたというふうに承知しているところです。ところで大変厳しい経営環境の下で、生命保険の不振を解消するためにどういう方法かというお尋ねですけれども、ご案内の通り現在、生命保険会社の経営状況は引き続き保険契約高の減少などに見られますように、厳しい経営環境にあるものというふうに認識しております。特にご案内の通り、歴史的とでも言っていいような低金利による運用環境の悪化がもたらしておりますのが、多くの生命保険会社において、実際の運用利回りが契約者に保証した利回り、いわゆる予定利率と呼ばれているものですが、契約者に保証した利回りを下回るという状態が続いているわけでございます。この運用環境が改善しない限りはこうした状態の解消には一定の時間がかかることは避けられない面があるというふうに思います。ちなみに生命保険会社の平均予定利回り、運用利回りを見てみますと、平成11年度の全社の平均ですけれども、平均予定利率が3.72%、運用利回りが2.40%ですから、1.32%の逆ざやにあるということになります。こうした状況の下で生命保険各社は様々なリストラをはじめとした経費を抑制するなどの努力に努めているわけですけれども、金融庁と致しましては生命保険各社に対して、こうした一層の経営の効率化、あるいは自己資本の充実、あるいはまた多様な業務展開などを通じた十分な経営基盤を構築していくことを期待しているところでございます。同時に金融庁と致しましては、検査、あるいはモニタリングの実施などによりまして、生命保険会社の財務内容や業務の状況の的確な把握に努めますとともに、必要がありましたならば、早期是正措置の発動など監督上の措置を適時適切に運用して参りたいと思います。そして生命保険会社の経営の健全性の確保に努めていきたいというふうに考えております。

予定利率引き下げ問題の検討状況についてでございますが、今申し上げましたように、いわゆる逆ざやなどによります生命保険会社の厳しい経営環境を踏まえまして、大臣からは既契約の予定利率引き下げの問題について検討するよう指示を受けておりますので、金融庁としては、平成7年改正時の経緯であるとか、過去の事例などについて、事務的な調査を始めているところでございます。いずれにしましてもこの問題を考えるに当たりましては、かねてから申し上げておりますように財産権との関係、あるいはまた契約者の保険業に対する信頼をどのように考えていくかといったように、幅広い観点からの検討が必要であろうと考えているところでございます。

問)

政局に関連してお伺いしたいのですが、今回の政局の動きで補正予算とか、その他重要法案の審議にいろいろ影響が出始めるのではないのかと見ているのですけれども、この辺について政府の一員として長官はどのように見られているのかということと、あと一点、加藤派の中で加藤派出身の政務次官などが辞意を表明する動きもあるようなのですが、確か総括政務次官は加藤派だと思うのですが、これについて何か政務次官の方から長官の方にお話があったかどうかということを確認させて頂きたいのですが。

答)

国会情勢については申し上げるまでもないと思いますけれども、行政府である私の立場から何かコメントを行うということは差し控えさせて頂きたいと思いますけれども、現在国会でご審議頂いている補正予算案などにつきましてはできるだけ早期の成立を期待しているところでございます。自分のところだけ言って大変恐縮ですが、金融庁は小さい役所ですけれども、6億7,960万円の追加の補正予算をお願いしているところでありますので、できるだけ早く成立するということを期待しているところでございます。

それから二番目の(ご質問ですが、)宮本総括政務次官からは何のお話も私は聞いておりませんということを付け加えさせて頂きます。

問)

今日、ずっと決まらなかった日債銀の社長に丸山さんという方が正式に就任すると決まったわけなのですけれども、かなり時間がかかって決まったのですが、ただ丸山さんという方は銀行経営に対する手腕、まだ未知数なところがあると思うのですが、社長が決まったことを受けて、長官今どんな感想をお持ちかお聞かせ頂けますか。

答)

本間前社長がちょうどお亡くなりなったのが、2カ月前の9月20日だったわけですね。ちょうど2カ月目でようやく新社長が内定したということも何か因縁のようなものを感じますけれども、今、銀行経営についてのお話がありましたけれども、人事というのは何というのでしょうか、よく言われることですけれども、最もそれに相応しい人は案外相応しくないということがあるもので、全くむしろそういうことをやっていない人の方がフレッシュな感覚で仕事ができるということではないかということもあるわけです。今後はこうやって内定したわけですから、丸山新社長の下で日債銀が新しい経営体制を速やかに軌道に乗せて、業務を着実に実施されるということを期待しております。ただ、本間社長時代はご案内の通り、本間さんは日銀のご出身で主要株主の構成メンバーではなかったわけですけれども、今回は主要株主出身者がそれぞれより重要な役職を担うことになりますので、私どもとしては機関銀行化を防止する観点から関心を持っておりまして、ご案内の異業種から参入の運用上の指針で定める監督上の留意点を踏まえた上で、新生日債銀、あおぞら銀行の健全性確保の観点から適切な監督を行っていきたいというふうに考えております。これは本間さんの時代に既に出来上がってましたけれども、経営健全化計画におきましては事業親会社グループ等の取引に対する特別監査委員会などによるチェック体制でありますとか、あるいは厳格な与信管理とか、あるいは取引条件の監視の実施などが明記されているわけですけれども、これは新社長の新しい経営体制の下においても、本間さんがお作りになったこれらの各種施策の着実な実施を通じて、引き続き新生日債銀自らが機関銀行化を回避していくことを徹底して頂きたいというふうに思っているわけです。私どもとしては日債銀のこの新しい経営陣が常に銀行経営の健全性を、何と言っても最優先の課題として、つまり株主から独立した経営判断を行う経営体制が確保されているかどうかという点も踏まえた形で、先程申し上げましたように、異業種からの参入に関する運用上の指針で定めております監督上の留意点を踏まえて、経営健全化計画のフォローアップなどを通じて、新生日債銀の健全性確保の観点から適切な監督を行っていきたいというふうに考えております。

問)

保険商品の銀行窓販の問題について、扱う保険会社の対象を広げるとか、商品の対象を広げるとか、いろいろと報道が出始めているのですが、銀行窓販についての現時点の金融庁の検討状況というのを教えて頂けますか。

答)

銀行等による保険の販売につきましては、販売チャネルの多様化などの観点から保険契約者の利便向上というメリットがある一方で、預金等の金融商品と異なる保険商品の性格、危険の選択とか、あるいは長期にわたるアフターケアの必要性などを踏まえて、契約者保護の観点から慎重に対応すべきであるという指摘が平成9年6月13日になされております保険審議会の報告で述べられているところです。ちょっとくどいようですけれども、読ませて頂きますと、銀行等の預金取扱金融機関による保険販売については、販売チャネルの多様化・効率化等が図られるとともに、ワンストップ・ショッピングのニーズにも対応し、利用者利便の向上につながると考えられる一方、銀行等がその優越的地位や影響力を行使することにより、顧客保護、競争条件の公平性確保等の観点から弊害が生じるおそれがある、あるいは、預金決済などにより得た情報を流用するおそれがある、との指摘がある。こういったメリットと弊害を比較考慮した上で、メリットが大きいと考えられる住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険を認めることが適当だと、かつ2001年を目処にして銀行等がその子会社、または兄弟会社である保険会社の商品を販売する場合に限定した上でという限定付きですけれども、そういう保険審議会の報告が平成9年6月13日になされているわけです。こういった考え方を踏まえまして、私どもとしては、契約者の利便向上、適切な契約者保護という観点から検討を進めて参りたいと考えております。この保険審議会の答申と併せて、規制緩和3カ年計画、これではそれぞれ銀行等による保険商品の販売とその範囲拡大について住宅ローン関連の長期火災保険及び信用保険については、弊害防止措置等を講じた上で遅くとも平成13年までに銀行等による販売を認める、上記以外の保険商品についても、銀行等による販売対象とすること及び銀行等の販売する保険商品はその銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて、引き続き検討を行い平成12年度中に結論を得る。これは規制緩和3カ年計画の方ですけれども、3カ年計画では平成12年度中に結論を得ることとされていますが、出来るだけ早く結論が得られるよう鋭意検討を進めていきたいというふうに考えております。

問)

日債銀の社長人事の件なのですけれども、機関銀行化の点をいろいろ仰ってましたが、株主からの独立性が後退したという印象をお持ちなのでしょうか。

答)

代表取締役になられる丸山さんが、その点を十分に意識された上で、本間社長がお作りになった様々な機関銀行化防止のためのいろいろな体制、こういったものの重要性をよく認識されれば、仮にそれが株主の一角から出てきた方であっても、そこのところは十分にやっていけるであろうし、またやっていって頂きたいというふうに考えておりますし、また私どもとしても、そこは日銀出身の方ではなくて株主から出てきておられる方ですから、その点は十分にこの運用上の指針で定める監督上の留意点を踏まえた上で適切な監督は行っていきたいと考えているところです。

問)

それに関連してなのですが、今度会長になられる笠井さんはソフトバンクの常勤の取締役で今後も続けられると、それから岩下専務は非常勤ですが東京海上の取締役です。株主の企業の役員を続けながら日債銀の重要な役職に就くと、その点については如何でしょうか。

答)

少なくとも笠井さんについては、本来の方の仕事がございますので、日債銀の方は非常勤だというふうに聞いております。それと三つの大株主のうち、丸山さんは先程申し上げましたが、岩下さんは現在執行役員として執行役員全体を統括する立場におられる…、今度は昇格という言葉を使うのかどうか、代表取締役専務という形になるわけですけれども、この陣容ですと、ちょっと社長を補佐する体制としてはやや人がまだ足りないのかなと、その辺のところはおそらく日債銀もよくお考えでですね、あと何人かの常勤の取締役が欲しいところだなというふうに思います。兼職の問題は、むしろ株主の利益を相反するというよりも、株主の利益とそれから日債銀の利益の相反ということよりもむしろ、社長をどういう形でこれからサポートしていくかということの方がむしろ大事だというふうに私は考えておりまして、その社長が本当の意味で株主から独立した経営体制を確立していくためには、社長を補佐する何人かの常勤の取締役が欲しいところだなというふうに考えておりますし、執行役員も岩下さんが非常に大きな執行役員の中でも重要なポストですね、例えばリスク管理などをやられる予定だったと思いますけれども、その後任も大変大事なこれからの人事になってくると思いますけれども、ただこれは12月5日付けということですから、おそらく12月5日に臨時の株主総会、あるいは臨時の取締役会が開かれるまでには、今私が申し上げたように、まだちょっと未確定な部分が残っていると思いますので、そこが12月5日までに決まって欲しいなというふうに思っております。

問)

本間前社長のお亡くなりになった原因については、その後何か調べられたりしたのですか。監督上、懸念とか全くないのですか。

答)

お亡くなりになった原因については、その後は何も聞いておりません。それから、監督上の懸念と仰るのは、つまり先程から申し上げておりますように、本間さんはどの株主の代表でもなく、公正中立な第三者的な日銀からのご出身という立場で入ってこられたわけですから、そこは株主の一角から出てきた方とは違うことは事実だろうと思います。そういう意味で私どもも、運用上の指針に定められているような監督上の措置はこれからきちんと採っていかなければならないと考えております。

(以上)

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