日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年11月27日(月)17時04分~17時24分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

(自民)党3役と政府側が株価対策について会合を持ったということなんですが、その中で外人売りと銀行の持ち合い株解消の動きが拡大するといったような話が出たみたいなのですが、長官ご自身は現在の株安対策について、(株安の)原因はその2つの点にあると思われているのかと、持ち合い株の解消についてはどう思われているのか。この2点をお伺いしたいのですが。

答)

今ちょうどこの会議に出席した次長からどんな会議だったかということを聞いていたものですから、ちょっと遅れたということです。ご質問の株式の持ち合いにつきましては、かつて大変強固であったメインバンク制というのが、近年だんだん緩やかなものへと変容しつつある中で、株式の持ち合いを解消する金融機関も出てきているというふうに承知しております。おそらく最近の商法をこれからまた抜本的に改正しようとする動きが現在あるわけですけれども、これもやはりこういったことに関連しているわけで、従来はメインバンクとしての金融機関がコンプライアンスであるとか、法令遵守といったようなことをやっていたわけですけれども、それがだんだん緩んできていると、現在の商法というのはそういうことを前提にしたような商法だったものですから、それが緩んでくると、いろいろ法令遵守とか、コンプライアンスの面でそれぞれの企業の監視役が結局いなくなるわけですから、従来の監視役に変わって誰を監視役にしようかということをおそらくこれから商法の改正などでは議論しなければならないのかなというふうに思います。ちょっとそれは余分なことですけれども、そういったことで現在お話のように株式の持ち合いを解消するという金融機関も出てきているところですが、市場関係者の中にはこういった株式の持ち合いの解消が需給関係の弱さの一因となっているという指摘があることは承知しております。一方で株式の持ち合いを含む構造改革の遅れが、株価低迷の一因だという指摘もございます。ご案内の通り、株価というのは様々な要因を背景に市場において決定されるものですので、その要因について何であるかと、いろいろな社会事象がこの世の中にはあるわけですけれども、何が株価を決定する要因になるかということを、私が申し上げるということは差し控えさせて頂きたいと思いますけれども、いずれにしましても株式市場が持ち合い株式の解消売りを消化するためには、株式市場に持ち合い株式がどんどん放出されるということになると、誰がそれをこれから担っていくのかと、受け皿と言いますか、どこが消化先になるかということを考えると、これは個人投資家など、幅広い投資家の参加を期待しなければならないわけで、そういったことによって株式市場の活性化が必要になるというふうに考えているわけです。今後とも金融庁としては適切に対応して参りたいというふうに考えているところです。

問)

今、仰った個人株主を育成していく、活性化させていくということは大切なことなのですが、ただ(自民)党3役の方は早急に外人売りとか、持ち合い株解消による株安に歯止めをかける策を検討しろというようなことを指示したと言っているようなのですが、何か方策はございますか。

答)

私、直接その会議に出ていたわけではございませんので、その会議に出席した人が記者会見などによって報告されることが非常に正確ですので、そちらの方に譲りたいと思いますけれども、私が会議に出席した者から聞いたところによると、今日の会議では確かに現在の最近の株式の動向について、政府や日銀などと一緒に会議をやったと、外人の売却動向であるとか、あるいは持ち合い株解消への対応を検討するとか、更に税制面での対応をするように関係方面といいますか、(自民)党税調などを含めて、そういうところに強く要請をするということとか、特にこれから年末を控えてますので、年末に向けて中小企業に対する金融が円滑に行われるよう政府において、万全の対応をするように要請するとか、そういったことだと聞いております。ただこれはあくまでも伝聞ですから、正確なことはその会議に出席された方に直接聞いて頂きたいと思いますが、私が会議に出席した人から聞いたところによると大体そういったところだったというふうに聞いてます。

問)

大手行の(中間)決算がほぼ先週末にまとまったんですけれども、不良債権の処理額が当初予定をかなり大幅に上回ったり、あとはそれを株式で埋めて決算を作るというような印象があるんですけれども、長官ご自身は今回の銀行の中間決算をどのようにとらえられていますか。

答)

主要16行ですね、新生銀行と日債銀が除かれますので、16行の9月期の中間決算につきましては、各行から順次発表されているところでありまして、連日のように新聞等にも報道されているところですし、当局と致しましても現在まさにこれを集計、分析をちょうど行っている最中でございます。決算内容は各行それぞれ区々ですけれども、これを概括的に申し上げますと、まず第一に銀行の本来業務の利益を示す業務純益ですね、これにつきましては前年同期、平成11年9月期と比較すると1,300億円減少して、1兆5,000億円というふうになっているところです。昨年の9月期は1兆6,300億円、これは一般貸倒引当金控除前の数字ですけれども、今年の9月期は1兆5,000億円という数字、本当にこれは粗々の数字ですけれども、ということになっています。

第二に不良債権の処理のことですが、これはその時々の地価の動向とか、あるいは経済状況、それから個別債務者の業況の変化などによって大きく影響されますけれども、今回の中間決算におきましては、1兆4,900億円実施してます。先程、業純が1兆5,000億円と申し上げましたが、その内数ですけれども非常に近い数字で1兆4,900億円、この金額は昨年の9月の中間期と比べて、1,000億円減少しております。しかも先程申し上げたように、業務純益の範囲内に止まっております。それから私どもは金融機関の不良債権の問題を考える場合に必ず考えなければならないリスク管理債権、それから金融再生法開示債権のこの9月末の残高について見ますと、これらは今年の3月の本決算に比較して減少していることが認められます。中間決算の不良債権の処理額というのは、今年の5月に各行が見込んでいた金額の8,900億円を約7割弱上回ることになりましたけれども、その要因は最近の取引先企業の財務内容の悪化でありますとか、あるいは大口の債権放棄の要請であるとか、あるいは地価の下落などの影響によるものではないかなあというふうに考えられているところです。

それから3番目ですけれども、株式の売却損益が9月期は益が1兆3,600億円計上されております。こうした結果、経常利益、これが昨年の9月、同期比1,800億円増加して、9,300億円となっております。

それから更に第4番目に、東京都と大阪府がご案内の通り、外形標準課税を導入することになっておりまして、これの影響もあるために、最終的な当期利益、これはあくまでも9月の中間期の利益ですけれども、前年同期比約200億円減益で3,800億円というふうになっております。しかし、この16行中、日本信託を除いて、15行が黒字となっております。なお、その中で増益が9行、減益が6行でございます。いずれに致しましても今、今回の中間期の決算の特徴を4つばかり申し上げましたけれども、当局と致しましてはこの各行の中間決算の内容について、速やかに詳細な分析を行いたいと考えておりますし、不良債権につきましても、検査・監督をはじめ金融行政の遂行にあたりまして、その適時適切な処理が行われていくように引き続き努力したいと考えているところです。

問)

(自民)党3役との会合を踏まえてなのですけれども、持ち合い解消の件で、亀井さんから一般的な監督権限を使って何かできないのか、ということを亀井さんは仰っていたみたいなのですけれども、そういうことは今後検討されることはおありなのですか。持ち合い解消による株価下落の歯止め策ですが…。

答)

私どもとしては、先程どんな感じだったかということは、直接出席された方が一番ご存じなわけですから、その方にお聞き頂きたいわけですけれども、私どもとしては、現実の問題として株式市場が現実の持ち合い株式の解消売りを行っているので、これを消化するための個人投資家などの参加による株式市場の活性化が必要だと考えておりまして、そのために何があるかということは、かねてから申し上げておりますように税制面での対応が必要ではないかというふうに考えているところです。

問)

会計とかいろいろと考える際に対応できることがあると思うのですが、今仰られた以外に検討していることはありますでしょうか。

答)

会計の問題は現在国際的な基準として、わが国がこれを今回の中間期の決算、まだ時価会計に入っていないわけで、実務的には平成13年からですけれども、もちろんそれを前倒しにする金融機関もありますけれども、これを今後戻させるといいますか、これを止めてしまうということは、国際的な信用を失い、わが国の金融市場あるいは株式市場がより一層低迷することになるのではないかなと思います。

問)

今日、午前の亀井さんのお話では自己資本比率を維持するために、株の含み益は株を処理するのを止めさせられないかという話があったようですが、その考えについてはどのようにお考えですか。

答)

直接お話を伺ったわけではありませんけれども、金融庁はご案内のとおり国際的な活動を営んでいる金融機関については、株式の含み損を計上すると、差し引くと、国際的な活動を行っていない金融機関についても含み損は控除するという方針を打ち立てているわけでありまして、この方針を変えるということは金融庁として考えていないわけです。含み益については、当然国際的な金融機関については、これは算入することになっておりますので、益がある場合には算入して、損が出たときには算入しないというような考え方は、ちょっと取り得ないと思います。

問)

現時点でご検討されている対応策というのは、税制面で個人投資家の参加を促すというような見直しができないかと、それのみと考えてよろしいでしょうか。

答)

いろいろ他の政府全体として考えれば、いろいろなことがあるかもしれませんけれども、金融庁としては今のところかなりの株式が持ち合い株の解消によって株式市場に出ていることは、顕著な事実ですから、これをどうやって解消していくかと、受け皿という表現がいいかどうか、これを買ってくれる人を捜すということが必要なわけで、これはやはり先程申し上げたように個人投資家が中心になるであろうというふうに思います。そうなるとやはり税制面での対応が、どうしても必要になってくるのではないかと思います。もっとも最近の数字をずっと見ておりますと、必ずしも売り越しだけが全部に強調されるわけではなくて、結構買い越しをしている金融機関もありまして、金融機関、それからその他の法人もあるところで、それに付け加えて個人が更に一層参加することによって株式市場が活性化するのかなというふうに思います。

問)

税制面での対応ですけれども、今度の税制改正要望に出されていたキャピタルゲイン課税のことを指していらっしゃるのか、あるいは他に何か抜本的なお考えがあるのでしょうか。

答)

今のところとりあえずは、今仰ったキャピタルゲインの課税、源泉分離の話を申し上げているわけです。もっといいアイディアがあれば、是非私も教えて頂きたいと思いますけれども、とりあえず今金融庁が打ち出しているものを、まず最初に実現しないで、次を追い求めるというのもどうかなと思いますから、まず目標として掲げたことを、まず第一に、これをなんとか実現したいなと思っております。

問)

自己資本比率のルールを緩めるとか、見直すとかということは、今お考えになってはないですか。

答)

ありません。

問)

年末の資金繰り体制に対しては、例えば金融庁の定例の懇談会のようなああいうところで中小企業金融の円滑化について要請されるのですか。

答)

去年もやりましたよね。一昨年が、小渕さんの発案で官邸で各金融機関の方々に来て頂いてやりましたが、去年も越智大臣の主導でやりましたし、今回も相沢大臣の下でそういうことをやってみたいなと思っています。

(以上)

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