日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年12月11日(月)17時00分~17時25分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

金融審議会の関連で、金融審議会と言いますか、生損保の問題なんですけれども、この間の金融審議会の第一部会で銀行の保険商品の窓口販売の問題で、平成9年に決まった方針を見直して、その範囲を拡大してはどうかという意見が第一部会で多かったようなんですが、この辺に対する長官のご見解と、平成12年度中には結論を出さなければいけない問題なので、どういった形で方針を出す時期はいつ頃をお考えですか。

答)

今お話になったように改正保険業法が平成13年4月1日に施行されるわけです。その中で何人も保険募集は行えないわけですけれども、保険募集を行うことができる人が(保険業法)第275条に定められておりますが、その中に銀行に代表される金融機関の場合は保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合として、内閣府令で定める場合に限って、保険募集を行うことができると、こういうふうに来年の4月1日に施行される保険業法第275条に定められているわけです。そこで、本年度中にはこの内閣府令、つまり保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合として、府令で定める場合を決めなければならないというのが現在の課題になっているわけでございます。

そこで、これは俗に保険商品の銀行窓販と呼ばれている問題ですけれども、先日行われました、7日ですが、木曜日でしたでしょうか、行われた金融審議会の第一部会におきまして、今お話がありましたように、いろいろ議論が行われました。その概要については既に第一部会長や、あるいは事務当局から説明があったものと承知しておりますが、その第一部会後に行われた記者会見の概要として第一部会ではどういった意見があったかということについて要約されていたと思いますが、一つは保険契約者保護の観点などから子会社・兄弟会社限定ということが謳われていたわけですが、それは限定すべきだと、それから商品限定ということも謳われていたわけですけれども、この二つの点を遵守すべきだという意見がある一方、金融商品販売法の制定などを踏まえて、保険商品の銀行窓販に道を開くべきではないかといったような意見もあったというふうに聞いております。金融庁と致しましては、この部会におきまして、契約者保護は大変重要なことなんですが、しかも先程から申し上げているように、保険業法第275条には「保険契約者等の保護に欠けるおそれが少ない場合」というのを考えなければならないわけで、契約者保護が大変重要なんですが、これまでの平成9年の保険審議会の報告にあるような子会社・兄弟会社の限定、あるいは商品の限定、商品はつまり住宅ローン関連の長期火災保険と、それから信用生命保険というふうに限定されているわけですが、こういうふうな形でリジッドに扱うことによって、実質的に銀行の保険商品の窓販が行われないようにするということは、来年4月1日から施行されます保険業法の趣旨に反するのではないかという問題提起を行ったわけでございます。部会長からは、お聞きになった方もおられると思いますけれども、保険に限らずフェアな市場を作ることが大事なんで、規制を十分踏まえた窓販の拡大が適当と考えるけれども、公益、これも一方では重要であるといったようなご意見をお持ちだというふうに承知しております。現在第一部会での議論を踏まえまして、事務局におきまして現在検討を行っているところでございますが、必ずしも今までのところ検討に時間がかかっているというわけではないのではないかなと思います。別にそうだからといって、来年の4月、3月末までにというようなことを申し上げるつもりはありませんけれども、この問題については、第一部会でのご議論にもありますように、一方で利用者利便の向上という観点、もう一方で契約者保護の双方の観点から検討を進めていく必要があるのではないかというふうに考えているところです。いずれにしましても、鋭意検討を進めて、できるだけ早く結論を得ることとしたいと思っております。また、明日も第一部会があるようでございますので、そこにどういう形で、この問題が乗るかどうか判りませんけれども、それを見極めていきたいというふう考えております。

問)

柳澤金融再生委員会新委員長がですね、金融再生委員会のシステムというのは非常に良かったと、それで省庁再編後も決定機関ではないんですが、合議制システムみたいなものを残して、金融政策に反映させていきたいというお考えがあるようなんですが、だた一方で、金融庁には金融審議会などもありまして、なかなかどうやって整合性をとるのか難しいと思うこともあるんですが、新委員長の合議制システムを存続させたいというお考えに対して長官はどう見てらっしゃるかということと、長官にはこういったお話はもう相談に来ているのかという、この2点お聞かせ願えれば。

答)

金融再生委員会は一昨年の12月に設立されまして、ちょうど2年になりますが、来年の1月5日で今お話になったように廃止されるわけですが、この間に果たしてきた役割というのは、非常に大きなものがあったのではないかというふうに思っているわけです。一昨年の6月に金融監督庁が発足した時には、そういった組織がありませんでしたが、秋に金融再生法が健全化法とともに制定されまして、そして12月から金融再生委員会、政治家で大臣たる委員長ほか4名の各方面の学識経験者、エキスパートの方々がお入り頂いたこの委員会は、大変な成果を納めてきたというふうに考えるわけです。廃止され、その機能はこの金融庁に来年1月6日から移行されるわけですけれども、金融庁としてもこの金融再生委員会が存在していたことによって、非常に大きなお助けを頂いてきたと、いろいろご指導頂いてきたという面もありますし、大変立派な組織で、前の相沢大臣もこの前ポストを去られる前に、自分は再生委員長になる前は、3条委員会というのは、行政にとってはある意味では大変な邪魔者というか、意思決定が遅いといったような見方を今までしてきたけれども、実際に自分がその金融再生委員会の中に入って、仕事をしてみて、これは大変に立派な組織だと、非常に日本の行政、なかんずく金融行政を発展させる上において、非常に大きな力があったというふうに思うと、お別れの際にも私どもにそういうお話をなさって、おそらく相沢(前)大臣は柳澤大臣にもそのことは仰って、引き継ぎをされたのではないかと思います。柳澤大臣は初代の金融再生委員長でもありましたし、金融再生委員会の言わば発足に当たっての、産み落とされた直後の委員長でもありましたし、また最後の締め括りの委員長でもありますので、金融再生委員会の果たしてきた役割というのは非常に大きかったということをお考えになった上で、これが廃止されて金融庁にうまく引き継がれるだろうかということを、やはりご心配になっておられるのではないかなというふうに思います。

実は私どもも大分前から再生委員会がなくなった後、金融庁が果たして、再生委員会が今までやってこられたような破綻処理であるとか、あるいは早期健全化法に基づく資本注入というのがうまくできるかどうだろうかということについては、いろいろ、別に特に何か検討会議といったようなものを開いたわけではありませんけれども、皆もそれぞれ1月6日に発足した後、うまく仕事を引き継いでやっていけるだろうかどうかという問題意識は職員全員が持っているわけです。そういったこともありまして、柳澤大臣からも私どもの方に再生委員会がなくなった後、うまく引き継げるようなことが、こういった何かものがあればいいがなあと、検討してもらいたいというお話がございました。ただ、よく考えてみるとなかなかこの3条委員会、1府12省庁というのが1月6日から発足するわけですから、3条委員会そのものもカウントされないことになりますので、結局3条委員会のようなものを作るのは、なかなか行政改革にも反することにもなりますので大変難しい。そうかといって、資本注入などをやる時に、これから独任制の官庁がやることになりますが、そういったことで果たしてオーソライゼーションされるのかどうかといったこともあります。ただ、そうかといって、一昨年の春に資本注入が行われた佐々波委員会のようなものといったようなことは別に考えているわけではありません。私自身としては、個人としては考えているわけでありませんけれども、何か今おられる委員の先生方がもう1月5日付でお辞めになって、後は金融庁のために何もしないというのではなくて、何かして頂けるとありがたいなという気持ちは持っております。ただ、それを何か法律で担保できるような組織にできるかどうかというと、これはまた難しい問題が先程申し上げたように行政改革との絡みもありまして、大変難しい問題もありますが、その形はどういう形になるか、これからいろいろ、まだ残されてきた期間も短いんですけれども、どなたにそういうことをお願いしたらいいかといったようなことも含めて、これから至急、大臣のご指示もありましたので、検討してみたいというふうに思っております。

問)

破綻した保険会社の受け皿の交渉が最終調整に来ているところもあるというふうな報道もあるのですが、特に第一火災と大正生命の受け皿との譲渡交渉の進展、また千代田生命とか協栄生命、これはどういう形になっているのか、これは更生特例法なのでちょっとアレかもしれませんが、どういった報告が来ているかお聞かせ願いたいのですが。

答)

ここ一両日、相次いで第一火災とか、あるいは大正生命の譲渡交渉について、いろいろな報道がございました。これはいつも申し上げていることで大変恐縮ですが、個別の破綻した保険会社の譲渡に関しましては、もちろん報告はいろいろ受けておりますけれども、それについて私どもの方からお話申し上げるということは、交渉それ自体に大変な差し障りになるということでございますので、現在確かに保険管理人によって、保険契約の移転先会社の選定や、あるいは移転計画の策定に向けた作業が鋭意進められているところでございますので、中身についてはコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思いますが、ただこれは一般論として申し上げると、いずれにしましても保険契約の移転が早期に実現されることが何といっても、保険契約者の利益になるというふうに考えられますので、私どもとしては、保険管理人において、早期に保険契約の移転計画を策定されて、実行されるということを強く期待しているというところでございます。

問)

源泉分離課税の選択制、廃止・延期問題ですが、事後選択を事前選択にすべきだということが金融庁の方からも要望があったと思うのですが、これがどうも見送られる見通しになっていますが、そのことについてはどうお考えでしょうか。

答)

まだ、どういう結論になったかということについては何も私の方には話が入ってきておりませんで、いろいろ今各方面において議論が行われているところだというふうに承知しております。ただ金融庁としては、最初から申し上げている通りの考え方というのがやっぱりベストではないかと、今お話になったのは受皿をどうするかということと直接関連するかと思いますけれども、私どもとしては当初から申し上げているプランを是非々々実現して頂きたいという、その一言に尽きるということでございます。

問)

消費者金融業界の顧客情報を、銀行系のローン会社とか信販系のローン会社に情報提供するテラネットという機関が今日から運用開始になりましたけれども、それに対して武富士とか業界各社の一部で、それはプライバシーの侵害にあたるということで情報の差し止めの仮処分を求める動きも出ておりまして、個人信用情報の保護という観点から、今のテラネットの在り方について金融庁としてどのような見解を持っていらっしゃるのかお聞きしたいのですけれども。

答)

今お話になったように、本日ですか個人信用情報の提供に携わっている各地の会社が出資して新たにテラネットという信用情報を提供する会社が設立されたということは承知しております。また本日業務を開始したようでございます。また先日、金曜日…12月8日ですか、東京地方裁判所に対して消費者金融会社21社から全国信用情報センター連合会というところに加盟している33センターのその一つであるジャパンデータバンク、今日から業務を開始したテラネットへの情報提供を差し止めて欲しいという仮処分を申し立てたということについても承知しております。

ところで、テラネットからは私どもは、テラネットの会員である銀行系の消費者金融会社あるいはクレジットカード会社がテラネットを経由して、33のセンターに登録された顧客に関する情報の提供を受けるためには、当該顧客から同意を受ける必要があるというふうに聞いております。このため、現時点では顧客の同意が全くないままに情報交流が行われるということは考えておりませんけれども、同意の有無というのは私人間の契約にかかる問題でもありますので、裁判所の判断を注視して参りたいと考えておりますが、これは一般論になりますけれども、信用情報の収集や与信業者への提供というのは、適正な与信を確保する上で大変重要な役割を果たしているということも事実だろうと思います。こうした業務を行うに当たりましては、信用情報がどのように取り扱われるかにつきまして、資金需要者などに十分な説明が行われるようにするなど、プライバシーの保護に配慮した適正な業務運営体制を整備し、資金需要者等の信頼を確保することに努める必要があるというふうに考えております。現在、個人情報保護基本法制の立案作業が進んでおりますし、また金融審議会における検討状況も十分踏まえまして、将来的には現行法にはない新しい規制がおそらく適用されることになるだろうということを業者の皆さんは十分に念頭に置きながら、適正な業務運営体制の整備を図るように留意していってもらいたいというふうに考えております。

問)

その顧客の同意という点ですが、新規に申し込まれるお客さんというのはテラネットへの提供があり得るという説明を受けられると思うんですけれども、これまで消費者金融とだけ取引していた既存の顧客については、テラネットがそういう幅広い情報提供をされるということを前提とされていない中で契約しているわけで、それで顧客の同意を取ったと言えるのかというところが一番問題になっているんですけれども、その点については。

答)

そうですね、そこはおそらく裁判所でそういった今仰ったようなところまでの同意かどうかと、つまり同意の内容というのはどこまで含んでいるかということがおそらく裁判所で議論の対象になるところではないかなあと思いますけれども、それは裁判所が判断されることになりますので、ちょっと私どもの方からのコメントは差し控えさせて頂きます。

問)

金融庁としての、その点についての見解は。

答)

ですから、今、同意というのは、あくまでも個人の、私人と私人の間の契約なんですね。その契約の内容をどういうふうに解釈するかということが今争われているわけですから、今私どもとして一方的に今お話になったように、その同意の内容を小さめに解釈するか、あるいは非常に広くもっと一般的なところまで同意しているというふうに解釈するのかどうかということは、これから裁判所においてお決め頂くことなのかなあというふうに思います。

問)

金融審の第一部会で議論されていますが、異業種の参入ルールについてなんですが、検査は5%から、それと救済義務は20%からと、そういうふうに段階的規制を設けたらというような話が行われているようですけれども、5%、20%という数字を銀行法に明記して固定してしまうべきものなのか、あるいはこれはかなりさじ加減でバルブのように開け閉めして参入を調整できるような気もするんですが、これはどのように考えていかれるのでしょうか。

答)

そうですね、今、金融審議会でいろいろご議論頂いているんですが、ご議論頂いているのでその内容について今のところ私の方から何か言うということは、私どもが諮問している立場ですから諮問している相手…先生方がご議論されていることについて何か言うというのはちょっと僣越だと思いますので差し控えさせて頂きたいと思います。ただ、今のご質問は、具体的なその後の立法作業ということに絡むので、いずれにしろ金融審議会のご議論が終結した暁には、私どもの方で筆を起こして法律案という形に書かなければならないわけですが、それは法律の書き方としてどういう書き方がいいか、まあ%(パーセンテージ)まで書くのがいいかどうか、例えば早期是正措置のように法律には書かないで、より下の政令とか規則に落とすのがいいかどうか、かなり技術的な問題もありますので、それはこれから法律案を作成するにあたって内閣法制局などともいろいろお話をしながら決めることになるんだろうと思いますけれども、ただ、今のところどういう結論になるかということはちょっと分かりませんが、ただ今お話がありましたように具体的な%(パーセンテージ)ということになると、法律の中にそういう%(パーセンテージ)そのものが事細かに書かれているというのは、法律の中自体に書くということは非常に大きな意味を持つことになりますね、むしろ逆に言うと。そう簡単には変えないぞと、独禁法の5%ルールもそうだと思います。それを政令や規則に落とすと、まあ比較的動きやすい法律になろうかと思いますが、その辺のところもこれからやっぱりいろいろ議論して詰めていかなければならない大変大事な課題ではあると思います。

(以上)

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