日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年12月18日(月)17時00分~17時26分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

週末に関西興銀と東京商銀、2つの在日韓国人系の信組の破綻がございまして、関西興銀の方は訴訟を起こす趣旨の会見をしておりますし、かなり今回職権で破綻処理ということに抵抗があるという態度を表明しております。あと、在日韓国人の民団なんかも、今回の措置について不当な措置であるとか、かなり強い態度で抗議姿勢を示してますけれども、このような反発があるということを金融庁として、まずどのように受け止めているかということについてお願いします。

答)

関西興銀は昨年3月末基準に基づく検査を近畿財務局がずっとやっておりまして、かなり長い間検査が行われたと思うのですが、その結果、単に時間を費やしたというだけでなくて、大変慎重に関西興銀の方の言い分もよく聞きながら、検査をした結果、債務超過というふうなことで検査結果を通知したわけでございます。検査の結果を踏まえた本年6月末の財務状況につきましては、何回ということは申し上げませんが、累次に亘り、近畿財務局によって報告徴求が行われたわけですけれども、関西興銀からは検査結果と大変大きく異なる自己査定に基づく財務状況の報告をなされたわけでございます。その結果、検査結果を踏まえた必要な償却引当をもし適正に行ったとするならば、大幅な債務超過であるというふうに見込まれたわけです。そういうことで財務局の方は債務超過を解消するための自己資本充実策等につきまして、これも累次に亘り、報告を求めてきたところでございますが、関西興銀側はあくまでも債務超過ではないとして、検査結果通知から既に3カ月余りを経過しているのにも拘わりませず、具体的な、実現性のある自己資本充実策が提出されて来なかったわけでございます。そういったことで金融再生委員会として、去る(12月)16日に金融整理管財人による管理を命ずる処分を行ったものというふうに聞いております。累次に亘り、報告徴求を求めてきましたし、それから自己資本充実策等について報告を求めてきたわけですけれども、関西興銀側は独自の解釈によって、本来引き当てるべき債権について、引当率を非常に低く見積もったということが、結局近畿財務局の方の検査との間の大きな違いになってきたわけですけれども、そういうことで金融再生委員会が処分を行いまして、既に金融整理管財人が選任されて送り込まれているわけですので、金融整理管財人が預金者等の保護、あるいは善良な貸出先について十分配慮されて、これから運営していかれるということを期待しているわけであります。

問)

後段の部分で在日韓国人社会に、更に反発が出ているという点をどう受け止めているかということについては如何でしょうか。

答)

関西興銀は日本の国の法律に基づいて設立されている信用組合です。そういった意味で日本の法律、法令に従って頂くということは私どもがいつも申し上げていることですが、内外無差別ということでございますので、これはどんな方であろうと、日本の国の法律に従った処分ということについては、一つご理解を頂きたいと思っているわけです。ただ、ご案内の通り、この信用組合の設立の経緯をずっと見てみますと、やはり在日(韓国人)の方々が日本の金融機関からは受けられないような、そういった融資、そういうことを目的にして、もともと作られている信用組合でございますので、こういった信用組合が破綻によって、仮に将来受け皿が見つからないといったようなことになると、信用組合を構成しているメンバーはもちろんですけれども、この信用組合から貸出を受けている善良な借り手の方々も、大変塗炭の苦しみを受けることになりますので、その心中は大変お察しするものがあるわけです。私どもとしてはできるだけ早く金融整理管財人によって資産の査定、あるいは責任の追及ということをやって頂くのはもちろんですけれども、受け皿が一日も早く見つかると、とにかくペイオフの期限がいよいよ2002年の3月末ということで迫ってきておりますので、それを徒過してしまいますと本当に今度は預金者まで保護されなくなりますから、それまでの間であれば、出資金は破綻によって0(ゼロ)になるわけですけれども、少なくとも預金は保護されると、あるいは善良なる借り手はいろんな意味で保護されるということですので、今私が申し上げたようなことを十分に理解して頂きたいなというふうに思っているわけです。

問)

そのお話に関連してですが、これから2つの商銀、それから管財人を派遣された朝銀、それぞれ民事、刑事の責任追及が行われていくかと思うんですけれども、ここでこれまで通り厳正な対処が行われるかどうかという点について確認という意味で長官のご見解を聞きたいと思います。

答)

現在まで金融再生委員会、若しくは都道府県知事、これはご案内の通り、今年の4月に移管されるまでは都道府県知事の権限だったわけですが、これによって管理を命ずる処分がなされた金融機関の数というのは33ございます。そのうち銀行が5つ、信用金庫が1つ、信用組合が土曜日に9つありましたので27、合計33の金融機関について金融整理管財人が派遣されているわけですけれども、この中で現在までに民事訴訟が提起された金融機関の数は6つございます。そのうち4つが銀行で、2つが信用組合でございます。また、刑事告発に至った金融機関は5つございます。このうち3つが銀行で2つが信用組合でございます。これは申し上げるまでもないと思いますけれども、これからこの金融整理管財人が資産の内容を点検しながら、民事上、刑事上の責任追及をすべきものがあるとするならば、それは厳正に対処されることになろうというふうに思っております。繰り返しになって恐縮ですけれども、これは我が国の金融機関でございますので、あくまでも我が国の法令に従って適正に対処されるということでございます。

問)

週明けの営業状況ですが、関西興銀、東京商銀それぞれ大口預金の流出など、預金の払い戻し等で混乱がなかったかどうかという点と、それから全信組連、日銀特融などの資金支援が実施されたかどうかについてお願いします。

答)

昨日、管理を命ずる処分がなされた関西興銀、東京商銀につきましては、金融整理管財人の下で本日月曜日から始まる業務に向けた準備が、円滑に進められたというふうに聞いております。こうした準備を踏まえまして、現在のところ、各地から…、各地と申し上げたのは朝銀の方も含めてですけれども、平常どおり開店、閉店しておりまして、特に混乱は生じなかったというふうに聞いております。なお、具体的な金額は個別の金融機関の取引でございますので申し上げられませんけれども、本日は全信組連が中心となって必要な資金が手当てされているものというふうに承知しております。日銀特融につきましては、これは金融庁としてお答えできる立場にはございませんので、この点については日銀にお尋ね頂きたいというふうに思います。

問)

破綻した2つの信組の旧経営陣からは辞表の提出は既にあったのでしょうか。そして、管財人への経営移管というのはスムーズに行われたのでしょうか。

答)

関西興銀、東京商銀の経営陣の辞表の提出につきましては、現在金融整理管財人がその辞表を取りまとめている最中であるというふうに聞いておりまして、まだそれ以上のものについては承知しておりません。いずれにしましても、昨日17日に金融整理管財人に対する業務の引き継ぎの方は円滑に行われたというふうに聞いております。申し上げるまでもないと思いますが、金融再生法第11条第1項の定めによりまして、金融整理管財人が信用組合を代表して、業務の執行及び財産の管理及び処分を行うことになりまして、これらの権利は既に金融整理管財人に専属しているということになるわけでございます。

問)

朝銀の方ですが、これは受け皿に対する検査というのが既に終わったということで、検査結果の通知も全て5つとも終わっているということでよろしいのでしょうか。

答)

受け皿になっていたのは、ご存じの通り13の、既に破綻を表明している13の信用組合の受け皿は4つですね、プラス1ということでその5つの信用組合に対する検査結果の通知は既に終了しております。

問)

昨年までに破綻した13の朝銀の内の残りの6つの朝銀に対する金融整理管財人の派遣を含めた処理なんですけれども、こちらの方は年内に行われるということでよろしいんでしょうか。

答)

先日行われた7つの信用組合に対する金融整理管財人の派遣というのは、従来からもう一つ前の段階になりますと、13の信用組合に対する金融整理管財人の派遣は今まで行われて来ていなかった非常に大きな理由というのは、受け皿の信用組合があるという、こういうことを前提にしておったわけですけれども、一方で適格性の申請も行われて、それがペンディングであったわけですね。受け皿となる信用組合に対しては、それが受け皿足りうるかどうかということについての意味も含めて、集中検査の一環として検査が進められてきたわけで、今回検査結果の通知も行われたわけですが、今回金融整理管財人が送られた7つの信用組合の受け皿となる信用組合2つは問題のない信用組合であるということが判ったわけです。そういたしますと、今度はいよいよ適格性の認定をする必要が生ずるわけですけれども、それに当たりましては、やはり既に破綻している信用組合が国の検査を受けておりません。破綻した信用組合について、破綻した金融機関については敢えて国が検査をするということはしませんので、既に行われている都道府県の検査しかないわけですけれども、その検査だけで果たして、適格性の認定ができるかどうかということになると、やや既にその時間もかなり経過していることでもあり、新たにやはり金融整理管財人を派遣して、その金融整理管財人の下でしっかりした資産の内容をチェックして頂くということが必要だろうということで今回の議決が行われたというふうに承知しております。あと残りについてはどうかということは、個別のことですので、何とも私の方から、これは金融再生委員会がお決めになることですから、何とも申し上げられないわけですが、ちょうど2週間前のこの記者会見の場だったでしょうか、できるだけ早くどうするかということを決めて頂きたいという気持ちは持っておりますけれども、どういうことになるかということは再生委員会がお決めになることですので、これ以上のことは申し上げることはできませんけれども、今までの経緯を考えて頂くと、それからどういう結論が出てくるかということは、皆さんの…、まあ何と言いますか、ご賢察に待ちたいというふうに思っております。

問)

受け皿の4つについては検査が終了してて、内容も把握されているでしょう。そのうち2つについては問題がないということが判ったと。あとの2つについての判断というのは、これはどういうことでしょうか。

答)

これは別に問題がないとかあるとかいうことを申し上げているのではなくて、いずれの場合もそうですけれども、検査が終了すると、単に検査結果を通知するだけでなくて、その検査結果の内容によって、先程関西興銀の場合でも申し上げましたけれども、報告徴求をとる場合もありますし、場合によっては資本充実策を求める場合もあるということです。これは一般論ですよ。本件の残りの2つについて申し上げているわけじゃありませんけれども、そういうこともありますので、検査結果を通知したからといって、直ちに次のステップに移れるというものではないということをご理解頂きたいなあと思います。

問)

とりあえず問題ないと、2つについては報告徴求とか資本充実策を求める必要はなかったということですが。

答)

私の理解しているところではなかったというふうに思います。

問)

関西興銀の検査結果で大幅な債務超過が出て、先方の主張と1,000億以上の差があるわけですね。3カ月間というやりとりがちょっと長すぎるような気もするのですが、その点はどのように考えているのでしょうか。

答)

内容については、あるいはもうご存じなので、私がここでどういう点について、いろいろあるわけですけれども、詳しくは申し上げませんけれども、ある債権について、既に破綻している先の債権について、その債務を重畳的に引き受ける、民法上は債務の併存ということになるんでしょうけれども、併存的債務と呼んでおりますが、併存的債務者が現れたというか、それを作ったわけですね。その併存的債務者に対して、更に追貸しをしたということですね。その追貸しをした1億5,000万くらいだったと思いますけれども、資金によってマンションを購入して、そのマンションの賃借人からあがる賃料によってその1億5,000万等の債務の返済に充てるという、そういう新しいスキームを作りまして、既に破綻している債務はもう破綻債務ではなくて破綻懸念先であると、一つ格上げされたということを主張してこられたし、貸倒損失の率の計算につきましても、従来の実績をちょっと長い期間をとって、その実績を計算したためにかなり薄まるわけですね、期間が長くなりますから。それによって低くなった貸倒率を掛けることによって、負債、引当償却すべき債権の金額が非常に少なくなったということです。なかなか複雑なスキームで、今一口で簡単に申し上げましたけれども、複雑なスキームなものですから、いろいろ関西興銀の方ではお考えになった上で、そういうことをやってこられたんだろうと思いますけれども、近畿財務局を中心とする金融当局の方としては、そういうスキームは単なる損失の、一口で言いますと損失の先送りに過ぎないと、こういう認定をしたわけですが、関西興銀の方は「いやそうじゃないんだ」と、これは立派な重畳的債務の引き受け、併存的な債務だから新しく債務が発生したということを主張されて、若干それで今お話になったように、3カ月という期間が長かったかどうかという点ですけれども、そういったこともありまして、回数は申し上げませんけれども、何回か報告徴求を求めて回答を頂き、またそれに対して報告徴求して、回答を頂くということが続きましたので、日にちがそれだけ過ぎてしまったということなんだろうと思います。

問)

途中、早期是正措置とかはなかったのかということを…。

答)

結局、早期是正措置を発動しようとしても、当局の認定は債務超過だという認定ですから、早期是正措置ではもう間に合わない、結局こういった破綻処理、当局の認定としてはそういう破綻処理しかなかったわけで、早期是正措置をやるという手だてはなかったと思います。

問)

金融検査マニュアルの画一的適用という話になるかと思うのですが、関西興銀側は貸出先に対して、焼き肉のタレの味で貸しているとかですね、そういうことをテレビを通じても主張されておったりしたんですが、債務者の会社の社長の信用力とか、そういうことは十分考えるということなんですが、信用組合といいますか、協同組織金融機関独特の、そうしたお金の融通ですね、それをどこまで正当と見るというふうにお考えられているのでしょうか。

答)

お話のことは度々この検査マニュアルに対するご意見として、私ども承っているところありますけれども、信用リスクを計る目安というのは、大きいところであろうと小さいところであろうと変わりがないと。ただ仰る通りですね、中小企業の場合には単に企業の業績に留まらず、例えばそこを経営している社長さんの資力であるとか、あるいは諸々の今お話になったような、いろんな要素をやっぱり加味するべきであるということは、私ども心得ておりますし、検査官もそういうことは十分に承知しているはずです。ただ、画一的に検査マニュアルを適用すべきでないということは、まさにその通りなんですけれども、本件の場合は、それもそうですけれども、それとはまた別のかなり大きなスキームを踏まえたわけですから、それに対する判断というのは、決して信用組合だからというよりも、むしろそのスキーム自体をどういうふうに評価するかという問題であったかなというふうに思っております。ですから信用組合そのものに対する検査に当たって心得るべきこととしては、私どもとしてはそれを十分に考えながらやったつもりであります。

先程、私が今回の受け皿の朝銀に自己資本充実策を求めていないというふうに申し上げたかと思いますけれども、これは個別のことなので申し上げられないというふうに変更して欲しいということです。そういうことにさせてください。

(以上)

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