森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年1月15日(月)18時01分~18時34分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

私の方から申し上げることは、本日第1回の金融庁顧問会議を開催致しました。冒頭部分は、オープンに致しましたので、皆様お聞きになった方もあるかと思いますけれども、大臣からご挨拶を頂きまして、ポイントは私流にお話しすれば、基本的には、金融再生委員会が早期健全化法と金融再生法の運用という形で、2年間透明性の観点、公正性の観点から、ああいうやり方でやってきたわけでございまして、そして一定の評価を得られるだけの成果を挙げたことと思います。その金融再生法なり早期健全化法の権限が金融庁に移ったわけでございますけれども、その成果も踏まえまして、その運用に当たってもできるだけ同じ様な形でやって透明性の確保、あるいは公正さの確保というものをしては如何かという大臣のお考えの下で、金融庁顧問会議を設置し、本日第1回の会議を行ったわけでございます。従って、そこで顧問の皆様も委員をやられた4人の方になって頂いたわけでございますし、またその進行役もかつて事務局長として、私がやっていたのを、今度は金融庁長官として顧問会議のメンバーに加わりまして、また私がやらせて頂くという形で、できるだけ同じような形でやって行こうということでございます。ただし、権限と責任という観点では、もちろん金融再生委員会設置法に基づいてやった3条委員会と今回の金融庁顧問会議は違うわけでございまして、あくまで審議に参画して頂きまして、その意見を独任官庁である金融庁がその意見をあくまで尊重すると、こういう形をとらせて頂くということでございます。従って、審議する範囲というのは前回柳澤大臣が会見で仰られました通り、再生委員会の際に取り上げたことと同じでございます。ただし、せっかく金融庁顧問になって頂いたわけでございますので、それ以外の問題につきましても、自由討議という時間を毎回設定することによって、そこでいろいろな問題、端的に言えば、どんな例を挙げても、あまり今の世の中では挙げたくない例ばかりですから、内容は控えさせて頂きますが、いずれにしても金融行政にとって重要な問題は自由討議の場で議論すると、そしてそれは金融担当大臣のあるいは金融庁長官の行う行政の参考にさせて頂くと、こういうことでございます。

最初の議題として、お手元にあります「金融庁顧問会議運営要領」というものを、これは内部の規定でございますので、これは皆さん全員一致で異議なしということで決めて頂きました、ということで皆様にお配りする次第でございます。ポイントを言えば、会議は原則として第2・第4木曜日の10時ということにさせていただきますけれども、必要な際には臨時に開催させて頂くということです。会議の構成メンバーは、もう皆様ご承知の通りでございます。会議の議長もここにありますように、原則は金融担当大臣に議長になって頂きますが、止むを得ない場合は、副大臣が行うということにしております。議事録も金融再生委員会の会議規程に合わせてございまして、原則3年後に公表ということでございまして、公表の範囲というのは情報公開法に定める不開示情報以外のものを公表するということでございます。そして、また敢えて申し上げるのもリラクタントでございますが、情報公開法は今年の4月1日から施行になる、それとこの3年後とでは、どっちが優先するのかというご疑問を抱く方がございますが、当然のことながら法律の方が優先致します。それから設置期間は、お諮りする案件が再生法と早期健全化法ということでございますので、ペイオフ解禁までということにさせて頂いております。事務局は監督局総務課金融危機対応室ということでございます。なお、因みにメンバーは、事務方からは私だけでございますけれども、常時そこで出る意見というのは、監督局に深く関わることでございますので、原則として監督局長には同席して頂き、私が止むを得なく席を離れる場合は、監督局長に進行役をお願いするということを考えております。

これが金融庁顧問会議の最初の議題で採り上げました、言わばインナールールの内部の運営要領の話でございます。

本日はそれ以外に2件ございまして、一つは預金保険法に基づく適格性の認定案件。この2件について事務方からご説明致しまして、基本的に委員の皆様に異議がないということを確認させて頂きました。2件と申しますのは、一つは岡山市民信用金庫のおかやま信用金庫に対する事業譲渡でございます。これは確か皆様の方がお詳しいと思いますけれども、岡山市民信金が破綻いたしまして、それをおかやま信金が受け皿機関として事業譲渡を受けるというものでございまして、確か、おかやま信金自体が、玉野信金と岡山相互信金と岡山信金の3つが合併したものではなかったでしょうか。そこは、ちょっと皆さん確認してください。もう一つの案件は、なみはや銀行の大和銀行及び近畿大阪銀行に対する営業譲渡の適格性の認定についてお諮りし、ご異議がないということでございました。これはご承知のように、なみはや銀行の破綻、その受け皿として大和銀行とその関連銀行であります近畿大阪銀行が受け皿になっております。その営業譲渡について適格性の問題でございます。これが二つ目の案件でございます。

三つ目は東京相和銀行の譲渡先の選定状況の現状につきまして、預保の松田理事に来て頂きまして、現状を報告して頂きました。これはウィルバー・ロスの率いるアジア・リカバリーファンドというのが一端、基本合意を結んだわけでございますけれども、これまで皆様にご説明してきた通りの理由によりまして、基本合意が一端白紙に戻りまして、それと同時に引当金入札方式に基づく入札を行ったわけでございます。社数にしてみれば、幾つになるか、ちょっと分らないのですけれども、グループとしては4つないし5つのグループが、今熱心に応札と言いましょうか、参ってきておりまして、1月9日でしょうか、最初の入札価格と言いましょうか、引当率ですね、一番のポイントは引当…、正確に言えば、債権の譲渡価格を入札するわけですけれども、簿価と譲渡価格の差額を簿価で割ったものが引当率でございますので、結局は引当率の競争ということにもなるわけです。ただし、通常の公共事業の入札ですと一発で決まるわけでございますけれども、こういう地銀を譲渡するという場合には、そう簡単に引当率だけで決めるわけにもいきませんし、引当率を入札する際には、通常はこれが最後ではございませんし、これで高ければもう少し安くしますと、どれだけ安くするかは言いません。それが分ったら初めから安くしてくるわけですから。安くと言うのか、引当率を引き下げることを検討しますと、こういう形で入札してくるわけでございますので、最初の入札結果で、全てが分かるというものではございません。そのような状況を松田理事に報告願いましたけれども、現時点の状況で、4つか5つかある候補先のどれが一番良いということが言える様な状況は、現時点にはなっていないというところが、正直なところでございます。引き続きと言っても、時間がないので、早急にまた松田理事及び二人の金融整理管財人の合計3人の金融整理管財人に、そうした応札先と懸命に交渉をやって頂きまして、なんとか良いパッケージのところを早急に探すべく、これから努力していくと、こういう段階でございます。私の方からは以上でございます。

問)

今日の金融庁顧問会議ですが、先程の東京相和銀行の再入札の件ですけれども、そのスケジュール感として、エンドは6月だと思うんですけれども、これは十分間に合うような範囲と考えられていますか。

答)

まさにザ・スナー、ザ・ベターというか、早ければ早い方が良いわけでございまして、かと言って拙速は避けるべきなので、どこがタイム・リミットだということはなかなか言えないと思うんですけれども、できるだけ早くということを考えておりますとともに、営業譲渡というのがなぜ時間がかかるかというと、根抵当権の移転だとか、主として登記関係で時間がかかるんですね、その辺は東京相和銀行に、どういうような債権、どういうような根抵当が付いていて、どういうものを登記の変更が必要かということはもう預金保険機構は熟知しておりますので、それに要する時間をできるだけ短縮するだけの努力を、努力といいますか、工夫ですね、工夫を預保がしているというふうに認識しております。従って、6月11日でございましたか、そこには絶対どこが選ばれようと間に合わすよう、頑張るということでございます。

問)

顧問会議の自由討議なんですが、この権限といいますか、ここで話し合われたことがどういうふうな形で金融庁の行政にフィードバックされるのか、議事録という形で残されて、どういうふうに職員の方に伝わるのか、どういう形で行政内部に反映されるのですか。

答)

原則はそこの部分は議事録をとりません。だから自由討議なんでございます。ただ、独任官庁である金融庁が行政をやっていく際に、やはり有識者の皆さんからどんな意見であれ、意見を聞いた方が、その最高責任者である金融担当大臣にとってはプラスでございますので、そういう面で金融庁の行政に反映していくということかと思います。

問)

株価対策ですが、今朝も自民党の亀井政調会長と相沢前金融担当大臣が会談されるなど、政府・与党や経済界で議論が活発になっておりますが、中には預金保険機構に銀行の株を買い取らせる案とか出ておりますけれども、長官の株価対策についての見解というのは現時点でどのようなものでしょうか。

答)

非常に難しい問題ですね。年初来というか、昨年の終わりぐらいから直接的にはナスダックの相場の低調を引きずって、株価が低迷していることは十分認識しております。そしてまた、懸念を持って注意深く毎日の株式市場を見ているわけでございますけれども、如何なる株価対策であれ、市場に歓迎されないものはなかなか対策にも成り得ない、株価対策として成り立ちにくくございますし、あるいは場合によってはマイナス効果もあるかもしれない。そういうことで基本はマーケットに歓迎される対策が重要なんだろうと思います。

後は、もちろん今日の株の低迷についてはナスダックの影響だけではなくて、日本の市場の需給関係と言いましょうか、買い手が…、少しオーバーに申し上げれば、買い手不在という問題があるわけでございまして、そういう面からどういう対策を考えるべきかということでございます。少なくともグローバル・スタンダードの下で日本の株式市場のインフラ面で不足しているところがあるならば、積極的に検討すべきではないかというふうに思います。いずれに致しましても自民党の方で特別委員会を設けて検討が始まるということでございますし、その議論についても特別の注意を払って、見守っていきたいというふうに思っております。

問)

柳澤大臣が経済産業省と国土交通省の大臣に対して、金融と産業の再生を一体で進める連絡会議を新設するという報道がなされておりますが、これについての金融庁の関わり方、これはどういう関係で臨まれるおつもりでしょうか。

答)

今朝、一部の新聞で報道が出ておりましたので、私としても本日の会見を意識して、大臣のご真意をいろいろお聞きしたわけでございますけれども、基本的に私の考えていたことと大臣のお考えになっていることが齟齬がないということは確認したと思うんですけれども、これまでも産業界を所管している官庁との意見交換は頻度は多くなかったですけれども、時にはしていたと、私自身、前の事務局長として認識しているわけです。今後、不良債権問題、その不良債権を、最終的にはオフ・バランス化して、リスク管理債権そのものを小さく持って行くということが金融機関の健全性の究極の目的からいきますと、そういうことが必要なってくると思うんですけれども、そのオフ・バランス化ということになってきますと、産業界の構造改革をどういうふうに進めていくのかということと、金融機関の当該産業界、資金供給している元は銀行でございますので、その銀行との絡みというのが問題になってくるわけでございます。今後につきましては柳澤大臣の指示の下に、事務方で意見交換を密接にしていきたいというふうに考えております。具体的には、確かに不良債権の5割ぐらいは建設、不動産、流通、まあノンバンクまで含めればもっと大きな割合を占めるわけでございましょうから、そういうところを所管しております国土交通省なり、経済産業省なりと、事務方で密接な意見交換を行っていきたいと思います。ただ、それがまず第一でありまして、今のところ大臣同士、2大臣なり、3大臣がそういう意見交換の場を持つとか、そういうことは当面はお考えになっていないというふうに認識しております。とりあえずは事務方で意見交換をしていくということでございます。

問)

株価対策で何か大臣の方からご指示なりは、今のところ事務方にはないんでしょうか。

答)

今のところ、個々具体的にこういう問題を検討しろとか、そういう指示はございません。もちろん税制の問題も含めまして、その前から、こういう問題が起きる前から、キャピタル・ゲイン課税の問題であれ、取引投資単位の引き下げとか、いろいろ法務省との関係もありますし、税の問題は財務省との関係でございますし、そういう投資単位の引き下げとか、そういう問題はまた他省庁とも絡まりますので、幅広くインフラ整備という観点から何があるのかということについては当然我々の方としても勉強しているわけでございまして、それとともにグローバル・スタンダード、先程申し上げましたけれども、グローバル・スタンダードの下で日本として取り入れるべき施策と、ただ取り入れるべき施策といってもなかなか商法との関係とか、いろいろなもので、どういうところにどういう難点があるかと、そういうことを現時点においては、アイデンティファイしている段階でございます。

問)

顧問会議の運営と、特に資本注入なんかの決定のプロセスとの関係でちょっとお伺いしたいのですが、資本注入、増資の決定というのは今まで再生委員会がやった開催時期の間隔として、それはそのままだと、ちょっと間が出来てしまうと思うんですが、どのくらいの節目で、特に必要がある場合として臨時開催されるのでしょうか。

答)

それは裏を返せば、どれだけバンキング・ライセンスを持った金融機関が3月末までに手を挙げてくるかということと裏腹なわけでございまして、それが数によっては、当然頻度はこうした隔週に1回というわけにはいかないということは、よく私は認識しております。

問)

基本的なことなんですが、独任制で判断、独人というか、一人で判断できそうな時はその会議を開かないで、例えば破綻処理を決定することもあり得るわけですか。

答)

基本的に社会的、経済的と言いましょうか、非常に影響の大きいもの、例えば、破綻処理の話をしてまして、破綻処理についてはどこと、業態とかそういうことを私は申し上げておりません。基本的には社会的、経済的影響度の大きいものを事前に取り上げて、審議にかけますが、なかなか破綻ですから、皆それぞれ社会的、経済的影響というのは、もちろん大きゅうございます。大きゅうございますが、相対的にそれ程飛び抜けて大きくないものは事後報告にさせてもらいます。

一方、資本注入の方はどこが違うかと言われると、破綻処理の方はどちらかと言うとパッシブですよね。我々の方が破綻させるわけではないわけで、破綻してしまったものを預保法なり、再生法なりで破綻処理をするということで、そういう意味でパッシブだと。一方資本注入の方は確かに申請主義でございますけれども、国民の付託を受けたお金を注入するわけでございまして、金額の多寡に関わらず、これは公的資金は毀損させてはいけないという観点から、ここは大きさに関わらず、大きさと言うんでしょうか、例えば資本注入額の多寡に関わらず、全て事前にかけたいというふうに現在のところ思っております。

問)

今日は自由討議というのはなかったのですか。

答)

私、途中で退席したけれども、今日はなかったと聞いています。ちょっと時間が詰まりましたものですから、自由討議はなかったようです。

問)

銀行とか、保険会社の株の含み損が大分拡大してますが、金融機関の経営の健全性という観点から、銀行の株式保有についてどういうふうにして、頭の中を整理しなければいけないのですか。

答)

それは私の頭の中も、質問された方の頭の中も同じだと思うんですけれども、こういうふうに株価が低迷してくると、確かに大きな関心をもって見守らなければいけない問題であるということは確かでございます。そして、銀行自体が一番それを分かっているわけでございまして、ご承知のように、ここ2~3年持ち合い株につきましては、言わば銀行の構造改革という観点から徐々に売ってきて、徐々に手放してきて、今日の姿があるわけでございまして、2~3年前に比べると、相当そういう持ち合い株を持って、政策保有株を持っているということ自体が銀行のリスクだとすれば、その銀行のリスク自体は相当減っているのだろうと思いますね。ただ、ここのところに来て株価が極めて低迷している中で、東証の株主態別売買動向を見ますと、12月以降の長信銀、都銀、地銀の売り買いをネットした、売り越し、買い越しを見てますと、長信銀、都銀、地銀については買い越しているんですよね、12月の1カ月と1月の第1週。それで分かります通り、持ち合い株の解消は徐々に進めていくということを各銀行とももちろん言っているわけですけれども、単純に一部に伝えられているように、売り一方だというわけでもない。そこはいろいろ各銀行が考えながらやっているというのが現状ではないかというふうに思っております。各銀行、時価会計を、来年度からの時価会計を頭に置きながら、いろいろ工夫をして、工夫といいますか、その中での努力をしているわけでございまして、当面はそうした各銀行の努力を見守っていきたいというふうに思っております。

問)

自社株、一部株価が下落したことによって、ちょっと抑制効果が表れてきていると思うんですけれども…。

答)

言っている意味が分かりませんので、もう一度お願いします。

問)

今、12月から1月は買い越しになっているということですが、持ち合い解消が若干ちょっと…、株価が低迷しているんですね。やはりスピードダウンしてるみたいな…。

答)

結果としてはそういうことかと思いますね。長信銀、都銀、地銀、これは発表されている数字だと思うんですが、3市場合計、東京市場、大阪市場、名古屋市場、合計で見ますと、12月の第1週、これは週単位でいっているんですが、第1週こそマイナス16億、つまり売り越し16億ですけれども、次の週は買い越し100億、次の週は売り越し391億ですけれども、次の週は買い越し433億、そして1月の第1週は23億の買い越しと、こんなふうになっているわけでして、そこは去年の12月の銀行界等と金融再生委員会・金融庁との懇談の席で相沢前大臣が構造改革を進めるのは当然としても、売りのタイミングについては市場を良く見て、やるべきではないかといったような、確かサジェッションをなさって、それに対して西川全銀協会長が当然、もちろん株価の水準を頭に置きながらやっていきますと答えられた。その通りの結果が出ているのだと、私は思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る