森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年1月29日(月)17時04分~17時23分)

【質疑応答】

問)

それでは長官の方からよろしくお願いします。

答)

本日、私の方からはもう既にプレス・リリースをお配りしておりますので、皆さんご承知のことと思いますけれども、いわゆる「みずほグループ」の資産管理会社に対しまして、銀行業の免許及び信託業務の兼営の認可というのを行いまして、これで四大グループの資産管理会社については全て免許が与えられたということになろうかと思います。私の方からは以上でございます。

問)

昨日、テレビで自民党の亀井政調会長がペイオフの解禁の再延期に含みを持たせるような報道がされておりますけれども、この問題について現在、金融庁としてどういうふうにお考えか、あるいは最近この問題について自民党の幹部と意見を交換するような機会はあったのか、その辺も含めてお聞かせください。

答)

そういう報道があったことは、もちろん承知しておりますけれども、何も断定的に仰られたわけでもないと認識しております。いずれにいたしましても、政府としては協同組織金融機関を磐石な体制にするという観点から、当初案よりも1年は延期致しましたけれども、2002年4月からのペイオフ解禁というスケジュールを更に延期するという考えは毛頭ございません。政府と致しましてはペイオフ問題につきましては、財務省と共管でございますので、財務省も同じかと思いますけれども、2002年4月というペイオフ解禁に向けて、より強固な金融システムを構築するために、最大限の努力を払っていきたいという当初の予定に何ら変更はございません。

問)

株価対策の関係で金庫株の解禁を巡っては、自民党の方では次の通常国会でという声がかなり出ているのですけれども、一方で法務大臣は秋の臨時国会があればその時にというふうに仰っているようなのですけれども、金融庁としては、その問題についてはどういうスタンスになられるのでしょうか。

答)

金庫株の問題と申しますのは、株価対策というよりも、日本の株式市場のインフラ面における、そういう株式市場に厚みをつけるという観点からの提案ではないかというふうに認識しております。ご承知の通り、アメリカでもデラウェア州とかニューヨーク州においては、そういう金庫株が言わば許されているということも十分頭においております。ただ、日本におきましてもこれまで検討されてきているわけでございまして、その検討の過程においては、例えば相場操縦との問題をどう考えるかとか、あるいはインサイダー取引との関係をどう考えるかと、そういういろんな課題が残っているわけでございまして、更に言うならば、債権者を不当に害するのではないかというような考えもあるようでございまして、基本的にはこれは商法の問題というふうに認識しております。

問)

ノーアクションレターについて、金融庁も含めて他の省庁との政府間でやり方についていろいろ協議が始まろうとしておりますけれども、金融界の指摘では金融庁は何か及び腰だという意見もあるようです。この点に関して、金融庁として、ノーアクションレターは今後どのように推進していくのか、あとレターの公開については、どういうスタンスを採られるのでしょうか。

答)

この問題につきましては、既に大臣が会見でお話になっているのかと思いますけれども、当方としては時代の流れに逆らうことなくと申しましょうか、あるいは金融庁が掲げております明確なルールに基づく公正かつ透明な行政ということに戻ることなくと申しましょうか、前向きに取り組んでいかなければいけない課題だというふうに考えております。

ただ、具体的にノーアクションレターについてどういうふうにシステムを構築して、どういうふうに運用していくかということにつきましては、現在検討しておりますし、大臣からも早く検討するようにというご指示も頂いております。

ただ、ノーアクションレターというものの本質を考えてみますと、基本的には法令解釈についての基本的な当局の姿勢を世にきちんとディスクローズして、言わば監督に服する側の経営、あるいは戦略の安定性を確保するということにあるのだろうと思いますけれども、我々が何を考えているかと言うと、例えばポツンポツンと来るものに対処するということであればともかく、相当量の事務量になるという面も一つございます。それに対して現在ギリギリのマンパワーでどう対応していくのかということも一つ、これは事務的な一つのマンパワー上のネックとしてあるわけでございます。

それから事務的な問題とは別にサブスタンスの問題で言うのならば、ある法令の解釈をする場合に当然、その時の金融を取り巻くいろいろな環境の中で、どうこの法令を読むのかということであって、あるノーアクションレターに対するインクアイアリーに対して、今はこうであっても、未来永劫同じ解釈でなければいけないと、つまり一切ノーアクションレターで答えたことに対して基軸を変えてはいかんということを意味するならば、なかなかノーアクションレターというのは極めて抽象的なものにならざるを得えませんね。未来において何が時代の環境が変わり、その時においてどう解釈するのが合理的かというところまで束縛するのだったら、私はノーアクションレターの意味というのはあまりないと思います。だから、そういうことも考えて、どの程度の具体性を持ったものにするかというのは、ケース・バイ・ケースで相当違ったものになって来るだろうと思いますし、そういうものについては、十分国民の理解を得なければいけないと思っております。

私自身アメリカのノーアクションレターに対するレスポンスを眺めておりますと、非常に極端なことを言えば、「そのようなことについてはお答えできません。」と言うこともノーアクションレターの答えになっているわけです。つまり、それほど幅があるものだと私は認識しておりまして、そこら辺が皆さんの考えているノーアクションレターに対するレスポンスの対応と、私、相当開きがあるとするならば、なかなかノーアクションレターを実施する時にいろいろな誤解が生じるのかなというふうに思います。今ちょっと言った例は「お答えできません。」というふうにほとんど近いような例として言えば、インサイダー取引がありますね。こういうことがインサイダー取引に当たりますか、当たりませんかというようなものが大いに考えられるわけですね、ノーアクションレターで言うならば。そういう時に対して、インサイダー取引というのは、非常に個々…特にアメリカみたいにフロウド(fraud)、詐欺というような要件でインサイダーを規制している。日本のように証取法で、かなり具体的にインサイダー取引の規制を具体例で示している国とアメリカとは違うわけでございますので、そういうことを考えますと、あることがインサイダー取引になるかという時も、その時のいろいろな条件次第で、これはインサイダー取引に当たりませんと言ってもですね、非常に似たものがちょっと前提が違えばインサイダー取引になることもあり得る、そういうものだろうと思うのですね。そういう場合は、私はノーアクションレターに対する答えというのは非常に難しいと思いますし、抽象的なものにならざるを得ないと、一つの過程の話ですけれども、そんなふうに私自身は考えております。

問)

東京相和の譲渡問題なのですが、パソナ・ソフトバンク側が、国民負担がうちの提案の方が少なかったのでないかという質問を出す方向らしいのですが、それは開いておられるのかどうかと、それに対してはどういうふうにお答えされるのかということを聞きたいのですが。

答)

そういう情報が先程流れたことは、私承知しております。ただ、最後の「どうお答えになるか」ということにつきましては検討はしておりますけれども、私自身としては、そういうことにいちいち答える必要があるのかなというふうに思っております。と申しますのも、記者の皆様に申し上げたかと思うのですけれども、いくつか受け皿候補があった時に、どれにするかという時の判断要素というのは、もちろん国民負担最小の原則がございますから、国民負担の極小化というのは一つの大きな要素でございます。

ところが一方において、資本面でのチェックという、これも大きなものでございます。と申しますのも、いくら安い値段で買う買うと言ってもですね、例えばですね、これは一般論でございますけれども、今ご質問された方は、特定の候補名を仰りましたけれども、私の方は前から申し上げている通り、ここに決めたというところの企業名は発表致しますけれども、どこが候補だったかということについては控えさせて頂いておりますので、それを貫きさせて頂きますが、あくまで一般論でございますけれども、例えば極端な話、何百億安いと、仮にそういうオファーがあったとしても、ではそれについての資本面での確実性はどうなのかといった場合に、一般論の話ですが、その資本面の確実性にコンフィデンスが置けない場合に、一方においてはコンフィデンスが置けるオファーで、今仰ったような、例えば差はあるけれども確実だと、一方は安いオファーだけれども、果たして資本金がそれだけ出せるかどうか分からないといった場合に、総合判断として「いや、安い方が良いに決まっているから、一か八かで安い方にしよう。」と、こういうことにはならないわけです。

と申しますのも、もう一度最初の基本合意をした候補が白紙に戻り、一方において、東京相和の場合に、営業譲渡の完了をしていなければいけない日が今年の6月11日だと。営業譲渡というのは根抵当権の登記替え等々、大変時間がかかる話だということになると非常に受け皿を決めるまでに時間がないわけですね。従って私は、例えばということで申しますけれども、オファーで言っている国民負担の最小化だけではなくて、その資本調達の確実性というものにも重きを置かなければいけない。もちろん、それ以外に、これも記者の皆様に私は話をしたと思うのですが、受け皿が新しい銀行として発足した後の経営体制の問題とか、そういうような面を総合的に判断して決めている話でございまして、その一部を採って、こうこうということに対する回答と言われましても、我々は総合的に判断して結果として、ローン・スターを選びましたと。正確に申し上げれば、預保が、第一義的にこうこうこういう理由からローン・スターが一番良いと思うということがあり、それを顧問会議にお諮りした上で、金融庁としても預保の判断を了承したということが今度の件でございます。

問)

株価対策の関連で、インサイダー取引規制、セーフ・ハーバー・ルールの導入も含めて、証券取引法の改正を求める声が一部あるのですが、これについてどうでしょうか。

答)

先程も少し申しましたけれども、私は今の証券取引法のインサイダー規制というのは、ある意味で非常に細かく出来ておりまして、アメリカよりも遥かに細かく出来ておりまして、それを改正して何かといっても、今、何か具体的な案が出てくるとは思えないのですね。むしろ、その法の運用の問題として、どこまで企業なら企業人が、ここまでなら大丈夫なんだというふうに割り切って株を取引してくれるかどうか。私はどちらかというと、何もかにも何かするとインサイダー取引に引っかかるからというムードが広がり過ぎていて、企業人の方が無用に縮こまっていることの方が問題なのではないかなあというふうに、私自身は感じております。

問)

セーフ・ハーバー・ルールだけではなく、金庫株の自社株買いに関して、証取法でインサイダー規制そのものを強化するとか、強化しないとかの可能性というか、そういう部分も含めて証取法の改正については現時点ではどうお考えですか。

答)

今のところ、この金庫株の関連で商法の問題があることはよく承知しておりますけれども、それと同時に証取法改正しなければいけないかどうかと、そこは必ずしも私はリンケージしているという認識は持っていないのです。もちろん、何も証取法を改正したくないと言っている意味ではございませんで、具体的に金庫株とか、自社株消却とか、そういうことについて何か案がまとまり、それを実施するのに証取法も改正する必要があるというような話になるならば、我々はもちろん真剣にそういう部分も検討致しますけれども、今、何か具体的に証取法改正が念頭にあるかと言えば、特にございませんということでございます。

ちょっと訂正がございまして、先程、第一義的には預保が判断したというのは言い間違いで、預保を含む金融整理管財人が判断したということです。申し訳ありません、訂正させて頂きます。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る