森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年2月19日(月)17時05分~17時35分)

【質疑応答】

問)

それでは長官の方からよろしくお願いします。

答)

私の方から特に申し上げることはございません。

問)

民族系の信用組合の問題で、韓国系の方で特に最近受け皿銀行を作る動きですとか、あるいは報道で韓国政府が出資を考えているというような報道がありますけれども、金融庁に対してはこういう受け皿先を進めている段階で韓国政府サイドから何か強力な要請ですとか、相談ですとかあるのか、また、大阪商銀の受け皿の期限も押し迫っていますけれども、今後金融庁としてはどういうふうに対応されるお考えなのか、お聞かせください。

答)

まず、韓国政府から言わゆるGGベースということで、当金融庁に何かということは全くありません。ただ、当方と致しましても、もちろん在日韓国人社会における、こういう新しい銀行を作るという構想につきましては、深い関心をもって見つめておりますし、そういう相談窓口としては各財務局、あるいは財務事務所がいろいろ意思の疎通をしておりますので、その動きにつきましては、逐一私の方に報告は来ております。この問題は基本的には、今記者の方は、2つの銀行構想と仰られましたけれども、在日韓国人社会におけるコンセンサスを早く形成致しまして、必要な資金集め等がスピードをもって行われるということが極めて重要だと思っております。ただ、その間において行政側がそれに関与する余地というのはございませんので、我々としては注意深く見守っておりますけれども、それについて関与しているという立場ではございません。

大阪商銀、確かに6月初めに破綻して2年という期限がくるわけでございますので、またその大阪商銀をどこが救済金融機関、受け皿金融機関として出てくるにしても、営業譲渡という方式でなされるのが通常であるとすれば、そんなに確かに時間に余裕があるわけではございませんので、金融庁と致しましては、在日韓国人社会でのコンセンサス形成が一刻も早くとれられるように期待している次第です。

問)

週末に開かれましたG7で共同声明で日本について、金融部門を強化する努力を拡充するべきであるというような文言が盛り込まれていますけれども、この共同声明について、長官はどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。

答)

認識につきまして、全く同じにしておるというのが結論かと思います。すなわち、柳澤大臣が記者会見でいろいろ仰っております通り、現在の日本の金融機関の状況を申しますれば、確かにリスク管理債権である不良債権が30兆円前後のところで横這いになっていることは事実でございますけれども、これにつきましてはきちっとした引当て等において手当てがなされておりますので、今の金融機関において不安があるということではないと思います。ただ、間接処理という形での、すなわち引当てという形での不良債権の処理というものをいつまでも続けてますと、その分については言わば不稼働資産になって収益を生まないという問題があるということから、もう少し直接償却を進めていく、これが日本の金融セクターを評価するポイントであるということを柳澤大臣は常々仰っていると思いますけれども、それはその通りだと思いますし、そうした認識がG7のステートメントの中でも述べられているというふうに思っております。

今回、金融セクターの強化というところが新聞等で大きく取り上げられておりますけれども、私の方でチェックしてみましたところ、去年の9月のプラハでも、例えば金融部門と企業部門における構造改革が継続される必要があるという文言が入りましたし、更に半年前の去年の4月のワシントンでのG7声明でも金融セクターのリストラクチャリングを促すため構造改革は継続されるべきであるという文言が入っておりますし、また2000年1月の東京でのG7会合におきましても、金融システムを更に強化する措置及び構造改革は引き続き重要であるという文言が入っております。すなわち、ここのところ残念ながらG7声明には必ずこの点が取り上げられているということでございまして、いろいろな要因はございます。

しかし、現在金融庁としても、不良債権の抜本的な処理という面で更なる努力をしていくべきであるというステートメントはその通りであろうというふうに思っております。

問)

今、長官これまでのG7の宣言でもそういう金融セクターについての言及があると仰ったのですけれども、これまでの財政面とか、あるいは日銀の金融政策等、他の部分でかなりまだやれる選択肢があるのではないかという部分があったと思うのですが、どうも今回のG7の議論を聞いてますと、財政はかなり厳しいと、日銀の金融政策についても、まだゼロ金利に戻るという余地はありますけれども、逆にこれまで財政・金融いろいろやってきて、なおかつ日本の経済が良くならないのは、どうも最大原因はやはり不良債権の問題ではないかという議論がかなりなされたようなのですけれども、今後ともこのG7でかなり注目されている不良債権問題について、金融庁としてはどういうふうにメッセージを出されていくお考えですか。

答)

先程の答えに尽きるわけでございまして、今の記者のご質問の中でいろいろ不良債権問題が議論されたと仰られましたけれども、ここは私は同行者に確認したところ、不良債権問題そのものが議論されたことはG2であれ、G7でもなかったということは明確でございます。すなわちもっと金融セクターの強化という面が議論されたというふうに聞いております。ただ、そうは申しても別に金融セクターの強化の必要性を何も私が薄めようとしているわけでは全然ございませんで、それはその通りしなければいけないというふうに思っておりまして、具体的には今年の3月期が終わると、当然決算を組まれる、その決算の過程においてちょうど決算短信が出る頃でございましょうか、その辺りから精力的なフォローアップ作業というものをしていくことになろうかと思いますけれども、そうした中で各資本注入行に対しまして、不良債権の処理がきちっとされているかどうかということも見たいと思いますし、不良債権の処理の中での直接償却というものが、直接償却の努力というものが、どのようになされているのかというのも見たいと思いますし、更に直接償却することに何が要因になってためらいになっているかということも分析していきたいと思いますし、そういう不良債権に焦点を当てたフォローアップというものを進めていきたいというふうに思っています。

問)

そのフォローアップというのは決算発表の後なんでしょうか。

答)

13年3月基準のフォローアップということになろうかと思います。もちろん現在、12年12月基準の定性的フォローアップをしておりますので、何もそれまで手をこまねいて何もしないというわけでございませんけれども、数量的な面まで含めたフォローアップということになると13年3月期のフォローアップということになろうと思います。あまりそこを細かく詰めることは意味のないことかと思います。12年12月期も、あるいは13年3月期も両方同じような気持ちでやっていきたいと思ってます。

問)

それは直接償却をすれば、赤字決算というか、当然配当の問題という具体的な話になると思うのですが…。

答)

それは結果としての問題だろうと思います。そういうことがあるからといって、何も不良債権処理に手心を加えるような銀行があるとは思えません。やはり不良債権の処理をしっかりすることが、当該銀行にとって信用を高めるポイントだというふうに我々は思っています。

問)

柳澤大臣が一部新聞のインタビューで直接償却を促すために再生委員会が決めた行政処分の内容を緩和してもいいのではないかというような発言をなさっているようなんですが、その点については長官はどういうふうにお考えですか。

答)

大臣とも今日、一般的に不良債権の問題、G7のああいうステートメントが出たこともあり、意見交換はいろいろさせて頂きましたけれども、あまり私と大臣が食い違っているところはないと思います。申し上げたいのは、今のご質問で言えば、例えば計画上の収益と実績が相当程度、相当程度の目安として3割という目安を既に発表しているわけですけれども、乖離している場合にどうするかと、今、行政処分という言葉をご質問された記者はお使いになりましたけれども、よくルールを読んで頂きたいのですけれども、そういうふうに3割乖離すれば現在でも行政処分ということにはなっておりません。

すなわち3割以上といいましょうか、相当程度乖離している場合にはその理由とか、代替措置等の報告、公表を求めるとか、あるいは必要に応じ、社外流失抑制策の報告、公表を求めるとか、そういうことをまずする。つまり公表を求める、あくまでこのフォローアップの基本的なルールというのは自己規正でございまして、自ら公表して世の中のプレッシャーを受けるということにポイントがあるわけでございまして、何か沢に外れたら、すぐにペナルティを課すというふうに今のルールもなっておりません。

行政処分というのは、今お聞きになった方は業務改善命令ということを頭においてのお話かと思いますけれども、そこまでいくまでにはどうなるかといいますと、更に市場の信認が低下したと認められる場合でございますね。3割以上の乖離があって、更に市場の信認が低下としたと認められる場合には、まず第一に、速やかに市場の信認を回復させるための効果的な措置の報告、公表ということが、まずあるわけです。更に抜本的な収益等の改善計画の提出、実行命令、この実行命令、計画を提出させて、それに対する実行命令を課す、これが業務改善命令でございます。

そこまでいくには何がポイントかというと、市場の信認の低下でございます。市場の信認の低下というのは株価とか、いろんなところで計れると思います。ただ、ここで私が申し上げたいのは、徹底的な不良債権処理をした結果として、例えば当期利益が赤字になったとしても、私は市場の信認が低下するとは思えません。むしろ、逆の場合、利益が黒字であっても不良債権処理が甘かった場合に市場の信認が低下するんだと、私はそう思っております。

問)

今日、宮崎で第三セクターでフェニックスリゾートという会社が会社更生法の適用申請しましたが、メインバンクは、一勧(第一勧業銀行)で1,800なにがしの債権があるわけですが、銀行に対する経営の影響、あるいは今仰った不良債権処理との関連で、今回の会社更生法を申請することになったことについて、どう見てらっしゃるか、感想をお聞きかせ頂きたいのですけれども。

答)

新聞で会社更生法申請のニュースは承知しておりますけれども、個々、具体的な件につきまして、また当該メインバンクについての影響というのは、やはりコメントを差し控えた方がよいと考えております。ただ一般論として申し上げれば、そういうような案件が、会社更生法の申請までいくには、それなりに関係者間の十分な議論、あるいは再建計画の策定ということで努力がされて来たのだと思いますので、その結果が会社更生法というのが最大のベストの策だということで、そういうことになったのだろうと推測されるわけでございまして、その結果メインバンク、あるいは協調融資銀行というものへの影響等については、もちろん金融庁としては関心を持って、今後見守って行きたいと思っております。

問)

保険会社のソルベンシー・マージン比率の計算方法の厳格化というのが先週発表になったのですが、その中で保険会社と銀行あるいは証券会社本体との意図的な保有とか劣後債の保有というのを規制されなかったわけですけれども、銀行本体と保険会社、特に生命保険ですけれども、その辺りの信用リスクというのは近づいてきたと思うのですが、長官自身はその辺りどういうふうなご判断で、来ているとお考えでしょうか。

答)

非常に難しい問題だと思いますね。なぜと聞かれればグローバルスタンダードにおいて、他国もそこまでダブルギアリングの規制をかけていないという面は、やはり結果としては、分かりやすく言えばそこは大きかったと思います。

要するに、この問題はリスクの同一性という問題と機関投資家としての生保をどう見るかという、そういう観点じゃないかと思うのですけれども、今のところはそのリスクの同一性ということで、保険会社なら保険会社同士のリスク、銀行なら銀行同士のリスクというものを、まずダブルギアリングの対象にしましょうと、まずはしておりますね。銀行と生保というそういう関係について言えば持分法によります、関連子会社になる。つまり人的関係があれば15%以上なければ20%以上というところで仕切りまして、今回銀行と保険も持分法による関連会社ならばダブルギアリングの規制をかけますよというところまでは、今回の新しい規制で盛り込んだところでございます。

今の記者のご質問は更に進んで、持分法による関連子会社でなくても、銀行と保険はいわば親戚同士なのでダブルギアリングにかけるべきかどうかというご質問かと思うのですけれども、そこは一方においては、生保については機関投資家という顔がありますから、それをどう見るかという問題があるわけでございます。結論から申しますと最初に私が申しましたように、今、グローバルスタンダードから見ますと、そこまではかけていないということも考慮に入れながら、今回の新しい規制では、持分法による関連会社までダブルギアリングの規制にかけるというところで止めたわけです。

問)

直接償却を進めていくという話ですが、この重要性というのは以前からも語られていたと思います。2年前公的資金を注入した時に、直接償却を進めて減資してから公的資金を入れるべきじゃないかという議論もあったかと思いますが、それは見送られたと。今回はそれは、世界からも言われているし、やらなければならないという気持ちも分かるのですが、状況というのは変わっているのか、政治的な状況も含めてですね、かなり痛みを伴う結果になるかと思うのですけれども、この2~3年で、直接償却のやりやすさというのは増しているのかどうかですね。やらなければいけないというのは分かるのですけれども、どういう手立てを金融庁として用意して進めてさせる方針ですか。

答)

これは難しい質問でございますね。よく世の中では、ハードランディング論、ソフトランディング論という問題にも絡む話だと思いますけれども、ただ私が申し上げたいのは、結局借り手の構造改革と貸し手の構造改革という問題ではないかと思いますけれども、私はやはり借り手、すなわち産業側の構造改革の動きに対して、金融側の構造改革、すなわち直接償却するとかしないとか、そういうものが受け身としてあるということだと私は認識しておりまして、これを逆に働かせて、金融庁から銀行に働きかけて、どこかの業種について、ここはここで生き残れ、ここはここで生き残る価値がないとか、そういうような形の話ではないんじゃないかなと、私は思っております。

具体的には、構造改革と言った場合に、金融界がやったように再編という道は確かにありますけれども、それ以外の借り手の方の産業の、どんな産業かを採ることによってそれぞれ違ってくると思うのですけれども、要するに不効率部門を、言わば切り離すとか、あるいはその部分を売却するとか、そういう形での産業構造改革というのはこれから、やはりどんどん進んでいくことになるのではないかなと。つまり得意分野に集中する、選択と集中ですけれども、得意分野に集中して不採算部門を切り捨てていくというような動きというのは既に産業界にも出ていると思いますし、それに従ってそれを受けた金融機関の側の構造改革、直接償却をどうするか、具体的には債権放棄ということになるかもしれません。

そういうことをどうするかという動きが現れてくるのではないかなというふうに考えておりまして、結局今の記者のご質問、やりやすさについてですが、大手行へ資本注入してから2年経っているわけですけれども、2年前に比してやりやすいのか、やりやすくないのかということについては、なかなか先程私の言った考え方からそれに直接にお答えは難しいのですけれども、私はやはり産業側にそういう構造改革の動きというのは出てきていると思いますし、更に今後進んでいくというふうに考えております。

問)

世界のマーケットからの信用を回復する時間ですね、直接償却を進めていってよくやったと認められるまでの時間、あるいは銀行の収益力が目に見えて回復してくる時間というのはどの程度を想定しておられるのでしょうか。どの程度の速さでやらなければいけないと思っておられるのでしょうか。

答)

それは、日本全体の経済回復の速さとの関連もあると思います。不良債権処理だけの問題ではないと思いますけれども、いずれにしても時間がそんなに残されている話ではないと思いますが、今年の3月期、更に今年の9月期それぞれが大きな節目であるというふうに理解しております。いずれに致しましても、今年の9月になれば時価会計も導入されますし、日本の金融機関の収益力というものが表に出てくる話でございます。

そういうことを考えました場合には、現在の経営健全化計画も皆様ご承知かと思いますけれども、収益というのは何で見るかというと二つの大きな基準を設けております。一つは、業務純益、ROEという、すなわち資本勘定分の業務純益、これは金融機関の業純力と言いますでしょうか、儲けの力を計る指標ですね。

もう一つで当期利益を表してます。当期利益は何かと言うと、いくら業純力があろうが不良債権の処理だとか、あるいはその他のことで時価会計を導入すれば、含み損の処理だとか、その結果としての利益がどうなっているか、結局最後は当期利益の積み重ねで公的資金を返してもらうと言いますか、優先株というものを償還するということになりますので、業純がいくら頑張って下さっても最後の当期利益が全然溜まっていなくて困るという意味において当期利益というのも一つの指標です。この二つの大きな指標で見ているわけでございます。

今後もまたその二つの大きな指標で見ていきたいと思いますけれども、やはり業純力というものがこれから大きく各銀行試されるのではないかと思います。

さらに言えばOHR、オーバーヘッドレシオですか、すなわち業務純益分の経費率というようなものも、やはり大きな指標になるわけでして、各金融機関はOHRのような平均数値というのは大体業態ごとに分かっていると思います。そういうところよりかは、上回っているような金融機関というのは当然リストラによって分子である経費を落とすのか、分母である業務純益を増やすのか、そこら辺を真剣に考えて、いずれにしても収益を伸ばしていくことが、今後時価会計導入を間近に控えた金融機関にとってもっとも重要なことだというふうに思っております。

もちろん当然のことなので言い損ないましたけれども、時価会計導入以前に不良債権の処理原資というものが、しっかりと出来ていないといけないわけでございまして、私は、去年の9月期は不良債権の処理原資が業務純益の中に、何年振りでしょうか、初めて入ったみたいな時でございますけれども、今年の3月どうなるか、もちろん楽観しているわけではございませんけれども、当然、業務純益で不良債権を十分処理するぐらいの業務純益は上げてもらいたいなあというふうに思っております。

問)

直接償却をやるに当たって、税の問題があると思いますが、4分類にならなければ有税償却しなければならないとか、一方で企業の倒産を招きかねないという問題もあると思いますが、貸出の回収をやるわけですから、銀行の資本の減少という問題になるわけですけれども、直接償却…皆大事だと思いますけれども、実際、銀行は自分達で業績悪化を招くようなことを申請主義を前提にしている限りは、なかなか銀行からはやってくるところが出てくるとは思えないのですが、そこはどうなんでしょうか。

答)

金融セクターの強化というのは、柳澤大臣も仰っていますように、当面は不良債権というものを縮小していかなければいけないということでございますので、そういうことは、金融機関及びトップというのは十分意識しております。ですから、もちろん今の記者のご質問、いろいろ銀行によりけりだろうと思います。確かに債権放棄という形で、まず借り手部門がスリム化する。そのスリム化に併せて債権も放棄することによって直接償却を進めると、こうした場合に国税の方はですね、果たしてその再建計画は合理的であるかどうかいろいろチェックするのだろうと思います。そういう国税との関係というのは、今の記者が鋭くご指摘になったようにあることは私も承知しております。

しかし、そういうものを乗り越えて、自行の不良債権比率というものを下げていくことが、日本は6%くらいです、アメリカも少し若干最近上がったとはいえ1%台ですね、この違いというのは各金融のリーダーは意識しているということでございまして、6%という数字をどこまで下げるかというのは銀行の信認にもなることは十分各銀行のリーダーは腹に持っている話でございます。私は、確かに難しい面はあるのは承知しておりますが、それを乗り越えてやって行って欲しいと思いますし、やって行くことを期待しております。

(以上)

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