森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年3月19日(月)17時12分~17時39分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

民間による株式買上機構の設立構想で、宮澤大臣が財政支援に対して前向きな考えを表明されているんですけれども、その点ついて長官のご見解をお伺いしたいのですが。

答)

これはもともと与党3党で議論されました緊急経済対策に盛り込まれている事項でございまして、民間ファンドによる株式買上機構の創設という項目が与党3党の緊急経済対策の金融再生と産業再生の実現という中の1項目として採り上げられているということでございます。

目的とするところは、先般申し上げました通り、銀行が株というものを多く保有してますと、株価によって、特に時価会計の導入後は、その経営に影響を受けるということで、これまでも金融機関、自主的に持ち合い株の減少に向けて、2、3年努力されてきたと思うのですけれども、このように株価が低下して参りますと、その保有のリスク、銀行に関わる経営のリスクというものが懸念される、そういうことから与党3党がこういうご提案をされたと理解しておりますし、その方向性については金融庁と致しましても、同じ懸念をシェア、共有しているわけでございます。

ただ、基本的には、金融庁と致しましても、市場原理というものを尊重しながら、こういう問題も解決していくべき問題であると考えておりまして、銀行も、もちろんこのリスクに対する懸念は、我々と同様共有しているわけでございますので、何とか民間のイニシアティブによりまして、こういう機構ができればと思っています。

これはあくまでも民間のイニシアティブでございますので、当方の考え方を説明して、現在民間の方のご意見を聞いているところでございます。

そうした中で、先般の緊急経済対策本部の第1回会合におきまして、財務大臣がそのようなことを仰って頂きまして、前回の私の会見で、どういう味付けがあれば、民間金融機関がこういう構想に向けて、立ち上げられるのかということをここで申したと思いますが、その言わば味付けの一つとして、宮澤大臣の仰ったことが、それになるのかなあというふうに思います。ただ、先週の木・金に民間からのヒアリングを続けておりますけれども、まだ明確にそういう宮澤財務大臣の、何と申しましょうか、構想を作るための手助けのようなものに対して、民間がどう考えるかというところについて、まだ確たる民間の感じは掴めていない状況でございまして、今後も民間と話し合って行きたいというふうに思っております。

問)

金融庁としての(株式買上機構への)関与の仕方なんですけれども、先程民間のイニシアティブをということですけれども、具体的にどういう形で関与していこうかというふうにお考えでしょうか。

答)

民間の方からこういうような買上機構を作りたいという話が出てくることが、まず第一だと思うのですね。それを作るに当たって、宮澤大臣の仰られたようなこと、これは財務省マターでございますが、それも一つの味付けになるかもしれませんし、それ以外に行政上の何か法律改正を要することとか、そういうことがあるのならば、金融庁マターでございましょうから、それについて当方は当然関与をしていかなければならないと、こういうふうに思っています。

しかし、それが何かというところが、今はっきり分かっているわけではございません。

問)

柳澤大臣が閣議後の会見の中で、買上機構の公的資金の投入については極力最小限というような形の認識を示されたんですけれども、その点についてはどうですか。

答)

それは大臣のお考え、事務方の考えも同じなのですけれども、先程私申しました通り、やはり市場原理を歪めるようなものというものは、なかなか今の時代、フィージブルな案にはなりにくいわけでございまして、そういうものの考え方から、大臣はそういうお言葉を使われたのではないかというふうに考えております。

問)

UFJグループの今期の決算で、不良債権の処理を前倒しして、赤字決算にすることを発表されたのですけれども、その点についてのご見解をお伺いしたいのですが。

答)

今、ご質問になった記者の方が前倒しという言葉を使われましたけれども、私は必ずしもそうは思っていないわけでございまして、不良債権の処理と言いましょうか、債務者区分であれ、引当てであれ、チューインガムのように伸びたり縮んだりするようなものでは、私はないと思っております。ただ、今仰られている記者の方のお気持ちは、私もよく分かるわけでございまして、そういう精神の下でやられた決算だということは、私もそのように考えております。

より具体的に言えば、やはり一つのポイントは、3行が4月1日から統合すると、そうした時に、端的に言えば、債務者区分、あるいは引当の貸倒実績率の計算の仕方なんかもそうかもしれませんけれども、いろいろな我々いわゆる会計上で言えば、皆さんご承知のように正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先とこうなるわけですけれども、金融機関はご承知の通り、もっと細かいレーティングと申しましょうか、格付けと申しましょうか、内部格付けと申しましょうか、そういうことをしているわけでございます。それは3行とも、それぞれ独自のものを持って、それについて各債務者区分について、比べ合って見た時に、一番厳格なものに揃えようじゃないかということで、基準の統一、格付けの基準と言っていいんですかね、債務者区分の区分付けの基準をそれぞれ最も厳しいところに合わす、そして、それぞれ自行の今年の3月期の決算を作るに際して、その一番厳しい基準を引き当てて見ると、5千数百億円の引当増が出てきたというように理解しておりまして、そのような極めて保守的な、これからの足元が厳しい経済状況下で、これから厳しい時代に立ち向かっていく上で、極めて保守的に厳しく自己査定されているというところは評価できると思いますし、また市場も評価されるのではないかというふうに思っております。

問)

今後なんですけれども、他の注入行が赤字決算という形をとられた時の金融庁のスタンスなんですが、これは如何でしょうか。

答)

もちろん、単に赤字決算だということが評価できるわけじゃございませんでして、なぜこの赤字決算になったのかということを当方としては、フォローアップしていくことになろうかと思います。

ただ、UFJにつきましては、その赤字決算をする場合における当方の見方でございますけれども、まず業務純益、ROEの達成状況というのを見させてもらいます。その場合に今度のUFJで言えば、私の記憶が正しければ、大体業務純益、計画上、約6,000億円でございましたし、今回の発表におきましても、約6,000億円で変わっていないと、すなわち業務純益力というのは変わっていないということは確認されたと思います。

2番目に我々見ると言えば、不良債権処理の内容、いわゆる具体的には不良債権処理への積極的な対応というのが見られるのかどうかと、これは先程申し上げましたように、それはUFJについては明確な内容になっていると、発表を聞く限りにおいてはそうだというふうに思います。もちろんこれからフォローアップしていきますけれどもけれども。

それから第3番目に今後の経営改善への更なる取組姿勢というのを見させて頂きたいと思いますけれども、その点に関して言えば、今回UFJを例に取れば、より一層のリストラ、具体的に言えば、店舗、従業員の追加削減、あるいは社外流出の抑制、すなわち配当を半分にしたと、それから役員数、報酬の見直し等も行ったとこういうことで、相当な追加リストラ策が採られたということも発表からは受け取られるのではないかと思います。

第4に、こうした、いろんなことに対する市場の評価を見させてもらいたいと思っています。これは正にマーケットの評価でございますから、先週の今日でコメントすることは差し控えますけれども、おそらくこうした厳しい先行きを前提とした、極めて保守的な、思い切った不良債権処理ということは市場で評価されるのではないかなあというふうに思われます。

問)

銀行の持ち合い株式の買上機構の件ですけれども、自民党亀井政調会長によれば、30兆円ある持ち合い株のうちの10兆円は買上機構に売る提案をしていますが、一方で他の案では、全てを買上げてその後銀行が直接の株を保有してはいけないような法律を作るという案もありますが、どこまでやるべきなのか教えて頂きますでしょうか。

答)

正直、今ご質問された記者の方の仰られたようないろいろなことが話として出ていることはよく認識しております。ただ金融庁はそれに対して今この案でいくべきだとか、この案は正しいとか、そういうことをまだ言う程よく心が定まっているわけではございませんで、いろいろそういう有識者の方のご意見、更に民間の意見を聞いているところでございます。ただ一般的に申し上げれば、私はやはり市場原理というものを尊重したいというふうに思っておるわけでございまして、一つの新グラス・スティーガル法みたいなものを創るというのも一つの案かも知れませんけれども、何かそれは私は民間の経営判断に国家が介入してですね、何かを強制するということが果たして出来るのかなという気持ちも持っております。

今のご質問の最初の10兆円というのは、出だしの話なのか最後の姿なのか、それもよく分からないのでございますけれども、ただ一つ言えることは、例えばドイツは資本勘定の6割のような制限でしょうか、そういうことになっております。日本の銀行の資本勘定というのは、23~4兆円なのでございますでしょうか、私も確たる数字、自信を持って、間違っていたら申し訳ありませんけれども、それで平成12年の9月期に(銀行界の保有株が)40兆円くらいあったものが2割ぐらい、私はそんなに下がってはいないと思うのですけれども、下がったと仮定して32兆円。32兆円から少なくとも銀行界から、先程申しましたように銀行界も株を持っているリスクというものも考えてこの2、3年着々と減らすことに努力しているわけですが、どこまでという時に、ある銀行が言っていたのは、資本の勘定の100%まで持ってもいいという、例えばそういうようなものの感覚から言うと32マイナス24、約10兆ということになるわけでしょうけれども、そういうところが一つの目安として出てきた話なのかなとも思いますけれども、いずれにしてもちょっと余計なことをいろいろ言い過ぎましたけれども、最終的にはやはり私は日本の金融機関の経営者の判断の問題じゃないかというふうに思っております。

問)

赤字決算の件なのですが、民間で話を聞くと赤字決算に伴う4つの点がOKであれば、例えば経営責任を問わない、あるいは銀行が出していた公的資金の返済の目処みたいなものを出していたと思うのですが、そういうのが若干遅れることについても不良債権の処理を優先するのであれば、不良債権の処理を優先する方が優先されるというか、そういうふうな考えなのか、そこをちょっと明確にならないかなという声が出ているのですが、その辺はそういう理解でよろしいのでしょうか。

答)

まず第一に申し上げたいのは、如何にさっき申し上げた4つを満たしていたからと言ってですね、当方に提示されている経営健全化計画なるものをチューインガムのように伸ばすのをですね、我々が放置するというわけにはいかないわけでして、返済等の計画をそのように短期で一年一年みているわけではございません、すなわち、何年かに渡る返済計画全体の中で、狂いが生じるなら経営健全化計画の見直しを行ってもらい、提出のし直しもしてもらわなければいけないと思っております。

ただ、UFJの場合は会見をお聞きする限りは、最終的なところでは帳尻を合わせるということのようですので、基本的には早期健全化法第5条第4項に基づく報告徴求を課して、フォローアップをして、そしてそれを公表して皆様方のパブリックプレッシャーにかけたいというふうに思っております。

問)

赤字決算という形で不良債権の処理をすることですが、これで配当が無いという形になった場合、当然国有化とかそういう問題が出てくるかと思いますが、要するに普通株なんかの株の問題が出てきますね、それを結果的には国有という話も出てくるかと思いますが、その場合に配当が出来なくて普通株への転換ですね、その場合にはそういった事態というのは当然想定される話なのですか、それともそれはまた別の話なのですか。

答)

UFJの話をしているわけではないかも知れませんけれども、UFJの場合は普通株の配当を3月期は見送るというだけでございまして、当方が資本注入した優先株に対する配当は剰余金が十分あるわけでございますので、当方からすれば特にそういう問題は起こらないと思っております。

一般論で申し上げましてそういう剰余金が枯渇してですね、優先株の配当も出来なくなるというような状況を今想定しているわけではございません。ただ万一そういうところがあれば、これは商法の規定でございますから議決権株に復活する、そうすると国も議決権を持って株主総会に臨むということになる。その場合にどういうことを言うのかは、その時の問題として考えなければいけないと思いますけれども、今そういうような状況を頭に浮かべるような材料は私にはございません。

問)

買上機構というのはですね、大体いつ頃までにというのを目処としては考えておられるでしょうか。

答)

3党の緊急経済対策には、いろいろな項目があったわけでございますけれども、金融庁関係でいえばその中で、不良債権のオフバランス化に対する環境作りのための対策と、それからこの買上機構というものがより急ぐものとして分類されていることは認識しております。ただ非常に苦悩していますのは、何と言っても行政側が徹夜して何日までに作れるというものでしたら幾らでも徹夜致しますけれども、民間ファンドによる買上機構というコンセプトでございますので民間がどういう案を何時ぐらいまでにモティベイトしてくるというのでしょうか、そこら辺はなかなか見えないところございまして、今のご質問に対してなかなか何時までということは言えないのでございますけれども、出来るだけ早期に民間との話合いを進めて行きたいというふうに思っております。

(以上)

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