森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年4月2日(月)17時00分~17時30分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

新年度を迎えまして、新しい金融グループが生まれているのですけれども、その点についてのご感想、期待等をお伺いしたいのですが。

答)

今日から新年度ということで、いわゆるメガバンク・グループとして、三井住友、UFJ、三菱東京がスタートを切りました。また、地銀レベルでは、ご承知のように、札幌北洋ホールディングスというのがスタートを切りましたし、更に損害保険の分野では、ニッセイ同和損害保険、あるいは日本興亜損害保険、あいおい損害保険の3つが誕生しているわけでございます。いずれも、この厳しい時代に、いかに収益を上げていくかということで、この統合による効率化を図る、財務基盤の更なる強化を図るという目的で統合が図られたものだと認識しておりますが、まさにその効果を発揮していくのは、これからの統合の1年というものが、非常に重要だろうと思っております。各行、眼じりを決して、収益の向上、更には財務基盤の磐石化、健全性そういうものを追求して行かれると思いますし、大いに我々もその成果を期待しております。

問)

公的資金の注入なんですけれども、申請の期限が終りましたけれども、その点についての評価をお伺いしたいのですが。

答)

確かに、早期健全化法に基づく資本注入の申請期限は3月31日をもって終えました。そして、この早期健全化法による資本増強ということで、どれほどの銀行が資本増強を申請し、当方がそれに応えたかと申しますと、既に承認したベースで申し上げますと合計29行でございます。申請額の合計は8兆4,932億円でございます。但し、三菱信託銀行が3,000億円を返済して参りましたので、差し引きの現在の資本増強額は8兆1,932億円でございます。これに3月末までに申請があった銀行、これは今後審査をして資本注入されるかどうかが決定されるわけでございますけれども、これに3行、つまり承認ベースから抜け出て、既に申請がある銀行は3行でございます。それがどれほどの申請をしてくるかということはまだ分かりません。分かりませんけれども、大まかに私なりに掴んでいえば、この3行を足すと31行。それに対する資本増強額というものは8兆3,000億円ぐらいになろうかなあと、31行、8.3兆円ぐらいになろうかなあと、このように認識しております。

これは公的資本増強による増強でございまして、その間において多くの地銀がこの資本注入、公的資本増強の動きに触発され、それぞれの一層の健全性の確保のために第三者割当増資を行っていった結果、平成11年3月から12年3月をとって見ても、大体自己資本比率が2ポイントぐらい上がったということは申し上げたと思いますが、つまり地銀で8%から10%、第二地銀で6%から8%程度に上がっているということ、これは確かにそういう地銀に対しては、公的資本は注入致しませんでしたけれども、十分、公的資本増強のそれぞれの動き、あるいは当方金融当局からの、これからの厳しいペイオフを1年後に控えた中で、より一層健全性を増し、預金者の信認を得ておかなければいけないという信号は、十分に発しましたし、また、各地銀において、それを正確に受け止めて、そうした自力調達の動きが起こったものだと思っております。そういう点から見まして、私は早期健全化法の目的というのは概ね果たされたのではないかというふうに考えております。

問)

一方で信組の資本注入がこれからになると思うのですけれども、その点については如何でしょうか。

答)

まだ、具体的に申請してきているところはございませんけれども、一方において当方に申請する前に、いろいろ自力調達、更に全信組連による、全信組連の資本増強のメカニズムを利用した資本増強、そういう動きはいろいろ出ております。そういうような動きを当方としても歓迎しております。もちろん、更に資本増強をしようということで、当方に申請が、まあ財務局を通じてあれば、当方としても、もちろんそれを真摯に受け止め、審査をしていきたいというふうに思っております。

問)

金融機関の不良債権処理の問題なんですが、金融庁として素案というか、概成というか、そういう形で柳澤大臣の方に先週の金曜日に報告をされたと思うのですけれども、例えばその内容の骨格とか、具体的にどういったことを報告されたのか、お話頂ければありがたいのですが。

答)

どういうふうに行政機構を考え、つまり意思決定メカニズムをお考えになっているかよく分からないのですが、柳澤大臣とはもう早いうちに何遍も意見の摺り合わせといいましょうか、ご指示も仰ぎますし、また、それに対する当方の意見も言って参りましたので、何もどこかで報告とか、そういうような感じとはちょっと違って、柳澤大臣との間では基本的にこういうものだということについての、まあ大臣のお言葉を使えば、概成ということでございましょうか、私ちょっと初め「概成」というのが何の意味だか分からなかったのですけれども、むしろ記者の皆さんから教えて頂きまして、概成はされているのは確かでございます。

ただ、この問題、緊急経済対策として政府・与党緊急経済対策本部から、言わばそれぞれの項目の具体化を命じられている問題でございまして、言わば今はその具体化と申しますか、具体的な内容の詰めをやっている段階でございます。まあ日程的なことを申し上げれば、今夜も更に明日も各省との詰め、その他をした上で第2回の政府・与党緊急経済対策本部が明後日でございますか、水曜日にあるわけでございますので、それまでには何とか固めなければならないということでございまして、明日一日の間に与党の方もいろいろお考えがおありでしょうし、そこら辺との摺り合わせというのも今夜から明日にかけてされることになろうかと思います。そんなことで現時点におきましては、大変申し訳ないわけでございますけれども、こういう会見の席で内容について、どういう項目立てをしているのかも含めまして、一つご容赦のほどお願いしたいと思います。

問)

株式買上機構についてもですか。

答)

同じでございます。

ただ、買上機構について一つ申し上げたいのは、買上機構そのものというよりか、銀行が株を保有していることに伴うリスクというものは前々から金融庁としては検討課題として考えていることでございます。そういう銀行の株式保有制限のようなことというものは、やはりこれから考えていかなければいけないというふうにかねがね思っている問題でございますというところは言えると思います。

問)

経済財政諮問会議の方でですね、預金保険機構を財源に、受け皿にしようという提言があるというような報道があったのですけれども、金融危機勘定の15兆円を使ってですね、買上機構を作れないかというような提言があるや否やという報道があるのですが。

答)

私は、本当に記者の皆様には敬意を表しているわけですけれども、ここ一週間二週間の緊急経済対策に関連する記事を集めると大変なアイデアが一杯あるわけでございまして、そのうちの一つに預保の活用というのも確か何処かに出てたと思うのですけれども、そういういろいろなアイデア、アイデアという言葉はちょっとあれかも知れませんけれども、いろいろな案を全て潰しながら結局何がいいかということを最終的に詰めていくわけでございまして、大変優秀な記者の方々がいろいろ取材の中で、お組み立てになられる案、それぞれメリットがあろうと思いますし、一方において案というのは必ずデメリットもあるわけでございまして、そういうところを総合的に勘案して詰めていくということに尽きるかと思います。

問)

先程、銀行の株式保有の制限について言及がありましたけれども、ドイツなどでは、資本金の6割までという制限がある。与党では資本金の範囲一杯までいいのではないか、そういう意見もあるようですけれども、大体どのようなイメージでそういう株式保有制限を考えていかれるのか。その辺のイメージはおありでしょうか。

答)

ちょっと誤解のないように申しますと、株の保有と言いますか銀行の保有する株式の価格変動リスクというものをどう抑制していくかと、敢えて言えば銀行のリスク管理能力の範囲内にどうやって収めていくかという問題だと思うのですけれども、ドイツについて今60%と仰られましたけれども、確か議決権を10%以上保有する株を集めてそれは自己資本勘定でしたか、Tier1+Tier2でしたか、私もちょっと自信がございませんけれども、その6割ということでございます。実はドイツの銀行の自己資本勘定を単純に、全部足したものに対して、ドイツの銀行はどれ程の株を持っているかというと、150%を超えております。ですから日本の銀行はそういう全国銀行ベースで同じ比率でものを申しますと、商法上の自己資本勘定のどれくらい持っているかというと、確か120から130%だったような気がします。そういう面では、ドイツよりかは日本の銀行の方が株の保有比率が小さいかも知れません。だからと言って果たして全国銀行のトータルの数字でございますので、ドイツより少ないからいいじゃないかというわけでもない。一方においてアメリカのように保有を一切認めない、今回グラス・スティーガル法の見直しを行いまして、ある一定のルールの下で、持ち株を認めようという逆の動きもあるわけですね。そういう中で、そういうグローバルな目標の中で日本の銀行の保有株のもたらすリスクをどの程度制限すべきかということについては、慎重にやはり検討を要することだと思っております。

問)

それにも絡むのですが、税制の議論というのはどういうふうに、これから進んでいくとお考えですか。

答)

税制の議論というのは、いろいろな税制の議論がありますね。何と絡めての税制の議論ですか。

問)

今回の不良債権処理もそうですが、出来れば持ち合い株式の今回の新しい機構についての税制の議論というのは、詰められるのでしょうか。

答)

正直言って、もし買取機構と世の中で言われていることと絡めての税制の議論でしたら、そのところまで正直言って議論は、私は進んでいないと思います。

問)

内部のいわゆる税制の議論としては、いろいろな形で進んでいるわけですけれども、そこはどういう感じですか。

答)

我々、内部で検討している税制の議論は、あくまで個人株主をどう株式市場に引き込んでいくかという観点からの議論でございまして、それは金融庁が昨年暮れから主張しておりますように、皆さんもご承知のように損失の繰り延べとか、あるいはキャピタルゲインの一定額までは税額控除にするとか、そういうようなことはいろいろ主張しておりますけれども、それ以上の何かに絡まった個々の議論ということにつきまして、当方の中で検討しているわけではございません。いろいろなことを皆さんの報道を介して与党の一部、あるいはいろいろなアイデアがあることは承知しておりますけれども、それにつきまして当方一つ一つについて税制という面で検討し、財務省に何か要望しているという状況ではございませんということを申し上げたかったのです。

問)

株式保有の制限について考えていかなくてはならないと仰られましたが、具体的にやるとなると銀行法の改正に発展すると思うのですが、そこら辺はどういうふうなイメージをお持ちでしょうか。

答)

いや、全くあなたの仰るとおりのイメージです。

ただ、非常に先程言いましたとおりですね、ドイツでもそうなのですが、株の保有制限といった時に、そもそも分母から除かなければいけない株がいろいろあると思うのですね。つまり政策投資的なものでございますね。例えば現在如何に間接金融から直接金融のシフトということが喫緊の課題になっていると思うのですけれども、さはされど日本が間接金融中心の国であることを否定は出来ないわけでして、そうなりますと地域レベルで言いますと、やはりそこの地域での間接金融というものをスムーズにしていくためにある程度、地元企業の株を引き受けなければならないと、そういう実態があるわけでございまして、そういう実態を無視して分母というか失礼しました分子、むしろ分子ですかね、その分子の中にどういう株を入れるかというところは慎重に考えなければいかん。つまり分母とか分子とかアンビギュアスなことを申しましたけれども、つまりまず自己資本勘定で考えるのか、これは商法上の考え方、あるいはBISのTier1で考えるとか、Tier2で考えるとか、いろいろまずメジャーが必要ですね。それに対してどれくらいを持つかという時のどれくらいという中から、こういう株は対象から剥がさなければいけないということは当然考えなければいけないような問題でして、ではどういう株は、剥がすのかということについては、やはり慎重な議論が必要であろうというふうに思っております。

問)

与党の方は、議員立法も辞さないみたいな感じなのですが、そこら辺はどうなるのでしょうかね。

答)

今の話は初めて聞く話で、なんともコメントしようがございません。

問)

基本的なことなのですが、民間の金融機関が株式買上機構はいらないよとか言っている中で、政府としては強引に押しつけていると、他方で更に株の保有制限まですると、これはどういう論理からそれが可能というように考えているのか、そこがよく分からないのですが。

答)

買上機構のことは、私は何も言っておりません。私が申し上げたのは株の保有制限の話でございまして、私はこれについて何も民間が異論あるというふうには聞いておりません。

問)

株の5%の今までずっとやって来たわけですよね、5%ルールで。そこも取り 外しましょうと。他方で、今仰ったような…。

答)

それは両立する議論で、5%ルールは一株についての話でございまして、その話とトータルな話は全然違いますから、それは全然私は矛盾しない話だと思っております。かつ今までそういう保有制限がなくてもですね、この2、3年銀行は計画的に持ち合い株を縮小減少するよう努力してきたわけでございます。だから方向性は私の言ったことと各銀行がやっていることとは、全くコンシステントだと私は思っております。

問)

長官仰ることも分かるのですが、ただ全体の流れとしては今の株の保有制限と買取機構とは一体化して議論が進んでいるわけですよね、別々のものでは無いですよね。

答)

ですから、それについては、では今どういうふうな政府案かというのは、こういう微妙な時期なので、コメントは差し控えさせていただきたいということを最初に申し上げたわけです。ただし、株の保有制限の話については、何も今回新しい話ではなくて、元々金融庁として持っていた問題意識ですということを、敢えて言えば余計なことを私ちょっと申し上げたかと思うのですが、そういうことを言った次第です。

問)

その保有制限の時に、持ち合いの銀行株だけを別な扱いにするということも想定されておりますか。そういうことではないのですか。例えば、第二地銀の株式を都銀さんが持っていると、そういう分については銀行同士なのでどうだと言った議論は昔からあるようですが。

答)

申し訳ございません。そんなダブルギアリングみたいな話の所までですね、検討が進んでいるわけではございませんし、コンセプトとして、やはり銀行が株を保有しているリスクというものに対して、これから更に時価会計が導入されるのを睨みながら、やはりそういうものに制限をしていくという考え方は成り立つわけでございまして、そういう問題意識は金融庁として持っていましたと敢えて言えば余計なことを申しました。

(以上)

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