森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年5月21日(月)17時01分~17時29分)

【質疑応答】

問)

長官からは特にございますか。

答)

特にございません。

問)

不良債権の問題からお尋ねしようと思うのですが、ここのところ全銀協、あるいは経団連とでいろいろと協議があるのですけれども、どうもしっくり進んでいないのではないかと、緊急経済対策の中での大きな柱である不良債権処理がきちんと進むのかどうかというのがちょっと心配な情勢ではないのかという気がしているのですが、現状の議論の検討の進捗状況についてご説明下さい。

答)

今、ご質問になった記者の仰いました通り、緊急経済対策が発表になってから、ああいうガイドライン作りというものを是非、民-民でやって頂きたいというお願いを致しまして、爾来、全銀協も大変汗をかいて、検討の場の立ち上げにご苦労頂いているという認識でございます。いろいろトップ同士の会談も既にもたれておりまして、理解も深まって来つつあるのではないかなあというふうに思っております。まあ、私と致しましては、不良債権の処理と企業側の再生というのを一体的に図っていくという考え方から銀行界と産業界が検討の場で、ガイドライン作りをおし進めて行って頂きたいという期待を持って、全銀協、産業界の方にご理解を頂いている今の動きを見守っているというところが、正直な現在の状況でございます。

問)

しばらく見守るということなんでしょうけれども、これが更に長引くようなことになってくると、もう少し金融庁側が深く関わるような形でガイドラインの具体的な中身について、策定を急がせるといいますか、そういう動きをとる可能性はあるのでしょうか。

答)

いや、それはございません。これはあくまでも民-民のガイドラインでございまして、敢えて言うならば、そこに金融庁が差し出がましく案を出すとか、あるいは前に出ていくということであるならば、それならば行政がガイドラインを作ればいいじゃないかという議論にもなるわけでございまして、それは我々にとっては本意ではないのでございます。仮にそういうガイドラインが出来たとしても、なかなか民間にとっては使いにくいガイドラインになるわけでございまして、これはあくまでも民主導のガイドラインになって欲しいと思いますし、そして使われるガイドラインになって頂きたいと思いますので、我々の方から何か考えを示すとか、そういうことは一切考えておりません。あくまで全銀協を中心に致しまして、民の方でお作り頂きたいという気持ちでございます。

問)

これも不良債権の処理の問題なのですが、債権放棄の関係で、この間の国会でしょうか、大臣が2度目の債権放棄に金融機関が応じる可能性について、再編を条件とするならばというようなニュアンスで答弁されたようなんですけれども、長官としてその金融機関が2度目の債権放棄に応じる条件というのは何か考えていらっしゃることはあるでしょうか。

答)

大臣は大臣のお考えをお述べになられたと思いますけれども、金融庁と致しましては先程申しました通り、そうしたケースも含めまして検討の場で白地でご議論頂いてガイドラインを作ってほしいという気持ちでございますので、当方の方から何か、そうしたケースについての考えを示すというようなことはございません。

問)

それに絡んだところなのですが、5月15日(火)の衆議院予算委員会の話なんですけれども、小泉首相が不良債権に伴う金融機関の経営責任について答弁されまして、現状は甘すぎると、刑罰も軽すぎるということを仰っていると。この辺について金融庁としての考え方といいますか、監督官庁としての考え方というのは何かございますでしょうか。

答)

そうしたご質問のあったこと、また総理がそうした一般的な考え方を述べられたということは承知しております。ただ、これは皆様ご承知かと思いますけれども、経緯的に申し上げれば、いろいろな業法の刑罰強化という一環で、平成9年に罰則を整備・強化する改正が一括法の中で定められた経緯があるわけであります。勿論、その際には業法間の刑罰のバランス等も十分に検討された上で、平成9年に、例えば銀行の虚偽報告についての罰金刑で申し上げれば、個人については50万円以下から300万円以下へ、プラス新たに懲役刑1年以下を加えましたし、同時に法人に対する罰金の水準を50万円以下から2億円以下に大幅に引き上げた経緯がございます。

平成9年から既に4年経っております。我々としては、国会におけるそうした貴重なご意見に耳を傾け、またいろいろ世の中のご意見にこれから注意深く耳を傾けて、そうした方向の改正が更に必要か否かということについて、慎重に見守っていきたいというふうに思っております。

問)

先程の不良債権のガイドラインの話ですが、経団連が自分たちは不良債権を抱えているわけでもない業界なのに、なぜ我々がガイドラインを作らなければいけないのかということなんですけれども、その辺りに関しては長官としてはどういうふうに受け止めていますか。

答)

先程も申しましたとおり、緊急経済対策の目指しているところが単に銀行のバランス・シートの改善の問題に止まらず、その裏側にございます企業側の過剰債務の問題を同時に解決を図るということを目指しているわけでございますので、貸し手ばかりではなくて、借り手もそういう検討の場に当初より、ガイドライン作りの段階から加わっていた方が望ましいのではないのかなあというふうに思っております。その借り手側の代表として、どういうところが適当かという問題は、それはあろうかとも思いますけれども、ただ、どこの団体であれ、そこを我々は過剰債務者の代表だとか、あるいは債権放棄要請の潜在的な何かとか、そんな気持ちは毛頭ございません。ただ、銀行だけでございますと貸し手側の論理は分かっても、なかなか借り手側の論理というのには疎い面があろうかと思うので、やはりそこは借り手側の諸事情にお詳しい方にも検討の場に加わって頂いた方が適当ではないのかなあと、その程度の気持ちでございます。

問)

今のガイドラインの質問に重複するかと思うのですけれども、全銀協なりそれから経団連を含めた産業界とのその辺の手応えを伺いたいのと、今、民間主導というお話でしたけれども、実際に民間がテーブルに着く気がないと、まあ最悪の場合ですね、テーブルに着けないというようなシナリオになった場合はどうされるのでしょうか。

答)

まず、手応えの方から申しますと、私自身、正直言って一度もそういう話の場に出たことがございませんので、むしろ皆様の報道振りをお聞きしているだけでございまして、私自身としての手応えということはちょっとございません。

もう一つのワーストシナリオのようなことを、質問された記者の方が今、仰られましたけれども、私は必ず理解が深まって頂けるものと思っておりまして、今仰られたようなワーストシナリオは頭の片隅にもございません。

問)

期限というのは何時までなのでしょうか。対策の中には早急にと書かれていますが、1カ月以上経っても全く進んでいないと。期限があってないような話になっておりまして、当然ある程度の目安がありますよね。

答)

この目安を何処に置くかも、もちろん民-民の検討の場が立ち上がりまして、そこでの話になろうかと思いますけれども、政府としては早急にという気持ちに今もって変わりはございません。やはり、緊急経済対策の中で大手銀行を対象にし、破綻懸念先以下について、既往2年、新規3年という一つの不良債権処理のオフバランス化の目安を出させて頂いたわけですけれども、そういう目安が達成されるための、それを円滑化と言いますか、達成されるためには、やはりそういうガイドラインというものは必要だと思っておりますので、可能な限り早急にガイドラインを定めていって欲しいという気持ちでございまして、何時までにということを、先程も申しましたように金融庁はこういう案でお願いしますということも言いませんし、どうぞ民-民のイニシアチブでお願いしますという立場でございますので、何時までにと申し上げるのも僣越そのものでございますので、気持ちは焦れども、そういうことを申し上げるつもりはございません。

問)

経団連が検討の場に参加される場合ですけれども、資格なのですが、長官のイメージではやはり全銀協と同じ資格なのか、あるいは、オブザーバーなのか、違いはどのところに出てくるのでしょうか。

答)

私は、はっきりしていることは、お招き頂くなら我々はオブザーバーで、我々と申しますのは役所側はオブザーバーで、そこははっきりしております。しかし、全銀協と産業側代表が、どういう資格かというのは、これもまた我々が言うのは差し出がましい話で、全銀協と産業界の方の話ではないかというふうに思っております。

問)

長官、この間、珍しく海外出張されたそうなので、その時のお話を伺いますけれども、今アメリカとか欧州とかあるいはアジア諸国でもそうですが、銀行の信用供与がテレコムセクターにかなり急速に傾斜していて、その問題についてバーゼル銀行監督委員会のイニシアチブで協議するということが、今年に入ってから幾つかの金融監督者会合の場で協議されているかと思いますけれども、これについて先日何か議論があったのかどうか、あるいは金融庁として今何か対応していることがあるのかどうか。今日お答えのご用意がなければ来週でもいいですが。

答)

多分、今日答えようがなければ来週もないであろうと思うのですけれども、そこにスペシフィックに焦点を当てた議論はございませんでした。ただ、IT革命がいろいろ叫ばれている中で、また米国市場におけるIT株の動き等もある中で、これから成長を引っ張っていく重要な分野であるというものの考え方からも、そこに焦点が当たるのは当然のことかと思います。グローバルに言ってですけれどもね。

ただ、それにリスポンドしてですね、では日本において何か個別具体的に、そのテレコム分野についての信用リスクについて特に何か考えているかと言われますと、これから金融審の第二部会の中の自己資本比率WGでいろいろバーゼル関係の議論を先々週でしたか、第1回を立ち上げてこれから議論を煮詰めていくわけですけれども、そういう中で取り上げられるかも知れませんけれども、今そこにスペシフィックに焦点を当ててワーキンググループでそれを諮問しようという動きにまではなっていないということかと思います。

問)

この問題を拝見していますと、米国のマクドノー連銀総裁の提起による問題だと思いますけれども、米国では既にテレコムセクターへの融資のリスクというのを相当意識されてきていると。日本においては、まだそこまでは行かないと。これはITという産業の発展段階がやはり違うからなのか、あるいは日本政府の新たな信用リスクに対する警戒感が米国に比べて周回遅れになっているのか、これはどういうことなのでしょうか、どういうふうに理解したらいいのでしょうか。

答)

難しいご質問ですけれども、ただ言えることはどうなのでしょうか、日本の金融の信用リスクの問題はどちらかと言うと、日本の間接金融の相手方の主役はどちらかと言うとオールドエコノミーが主体でございまして、ニューエコノミーであるIT関連はどちらかと言うと市場でもてはやされている面もあって直接金融しやすい分野だということはそんな感じを私は持っておりまして、そういう面でこれからの問題としてはいろいろあろうかと思いますけれども、今までのところ日本の金融機関のテレコム分野への融資についての信用リスクという観点から、そこに焦点を当てた議論がこれからはともかく、今までのところではあまり金融機関の間でもされていなかったのかなという感じを持っております。答えになっていないかも知れませんけれども、すみません。

問)

もう一点伺いたいのですけれども、自己資本比率規制の問題でですね、長官仰られたのでついでに伺いたいのですけれども、バーゼルの委員会で話すこと、これを決めることの正当性についてですね、前回の会合ではなかったと思いますけれども、その正当性があるのかどうかという疑問というのか、そういう議論をすべきではないかという問題が日本の政府高官からあったというようなことも聞いているのですけれども、これについては金融庁としてはどういうふうなご見解なのでしょうか。

答)

そもそも8%というのは、導入された時、またそれ以降日本の世の中の声にですね、なぜ自己資本比率規制に、しかも条約でもないそういうBIS加盟国間のバーゼルアコードと言うのでしょうか、言わばボランタリーなアグリーメントと言った性格のものを銀行の健全性の基準にしなければいけないのかといった議論はされていることは承知しております。

これについて金融庁はどう考えるかというと、正直あまり金融庁として、これまでどれだけ議論をしてきたのかというのは私はよく承知はしておりませんけれども、私の考えからいうと、これは金融のグローバライゼーションと極めて密接な関係があるわけでございまして、条約であるかどうかは別に致しまして、世界の今や金融の健全性を測るメジャーとして、その共通の尺度になっているわけでございますので、日本だけがアイソレートした形でですね、うちの国だけが全然違う基準でやってますとした時には、なかなか日本の金融市場をグローバライズ、あるいは国際化といってもいいのでしょうけれども、国際化し難いし、また日本の金融市場に対する海外からの信認はなかなか得られないのではないかなというふうに思っております。

問)

生命保険の予定利率引き下げ問題について伺いますが、金融審の方でも議論が進んでいるというふうに聞いておりますけれども、金融庁としては、この問題について現段階ではどういうふうにお考えか、それと予定利率引き下げというのは大体逆ザヤ問題で語られることが多いのですが、この逆ザヤ問題の深刻性について現状はどういう認識でしょうか。

答)

予定利率についての金融審の審議でございますけれども、相当熱心に審議が進められていることはよく承知しておりますけれども、まだ予定利率の引き下げ容認とか、あるいは強制的引き下げは否かとか、そういうことも含めて議論が収斂して来ているという局面にまで、そういうステージまで来ているとは思っておりません。金融庁と致しましても、この問題につきましては、金融審の議論を注意深く見つめ見守り、そこでの中間報告というものを尊重していきたいというふうに考えております。

一方、今お聞きになられた記者の逆ざやとの関係で申しますれば、既に皆様に申し上げているとおり、この3月期から、まずソルベンシーマージン比率を時価会計に直したものを出すことにしている。それによって、より正確な各個社の健全性度合が決算時に分かってもらえると思いますと共に、言わば三利源に相当する基礎利益というものも発表したいと思っておりますので、私はこの三利源の内の一つの一利源の逆ざやの度合いがどの程度他の二利源によってカバーされているかということを皆さんにお示し出来ることによって、相当程度生命保険への信認というものが回復出来るのではないかなというふうに思っております。

ただし、私が今その数字を持っているわけではございません、まだ決算で作業の最中でございますので。ただ、そういう期待を持って、私は各個社の決算のヒアリング結果を待っているところでございます。

(以上)

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