森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年6月4日(月)17時08分~17時34分)

【質疑応答】

問)

長官からは何かございますか。

答)

特にございません。

問)

生命保険会社の決算が今日発表されたようですけれども、もし把握していらっしゃるようでしたら、総括を頂けましたらお願いします。

答)

まだ、決算数値というものが今、集計中ということで、最終的なものが提出されているわけではございませんので、まだ詳細な分析ができるような状況ではございませんけれども、これまでのところ速報値として聞いている限りで申し上げますと、保有契約高は引き続きマイナスになっているというところは昨年と変わりございませんけれども、新契約、新しい加入ですね、新契約と転換純増額、既存の契約からの乗り換えですね、その中で契約が増えた分だけを足したものでございますが、それがプラスに転じてきているというところが一つの明るい材料かなあというふうに思っております。

それから、これまで当会見でも申し上げてきましたとおり、今年の3月の決算から、まずソルベンシー・マージン比率の出し方について、時価評価を加味した厳しいものにしたわけでございまして、一つはその結果がどうなったかということが注目されたわけでございますけれども、その新しい新ソルベンシー・マージン比率で見ましても、例えば大手10社をとってみても、総じて500%を超えているということで、生保の契約者にとっては安心できる状況になっているのではないかなあというふうに思われます。

もう一つは、言わば銀行で言えば業務純益に当たる基礎利益というものを公表してもらうことにしたわけでございますけれども、これにつきましても大手10社を見て、100億円を割るようなところはない。百数十億円から6,000億円ぐらいまでバラついてはおりますけれども、大手10社におきまして、それなりの業務純益といいますか、収益力の差はいろいろついてございますけれども、総じて安心した姿になっているのではないかと。そして全社、つまり43社計でいきますと基礎利益の合計は約2兆2,000億円でございます。こうしてもちろんその中身を見ますと基礎利益がマイナスになっているような生保会社もあるわけでございまして、今後こういう数字が公表される中で、そうした生保会社に対しては一層の収益力の向上というものを求めていきたいというふうに考えております。以上です。

問)

生保に関連してですね、公表されている逆ざや額の算定の定義が各社によってマチマチだったり、三利源を公表していないとか、そういう情報開示の面での問題点が指摘されておりますけれども、その点については如何でしょうか。

答)

そこは協会の問題で、これまでも協会ベースで逆ざやの公表をやってきたわけでございます。それは一定の定義で出来たわけでございまして、保険契約の中で利差損は発生していて、かつ費差・死差の配当を加えてもマイナスになるものだけをとって公表逆ざや額としていました。これを今後どうするかという問題があるとは思います。それはもう問題点ははっきりしているわけでございまして、今後協会が決めていくことではないかというふうに思っております。

当金融庁としてはあくまで、言わば三利源に相当する、厳密に言いますと三利源には、簡単に言えば貸出金の引当金みたいなものは引いてございますけれども、業務純益と言った場合は貸引前の数字でございますから、そういうものを足し戻して考えて基礎利益というものを出すわけでございますけれども、そういう若干の、そんな大きな差ではございません、三利源合計ではそういう差がありますけれども、我々、金融庁がこれまで発表していますのは、各生保会社の健全性をより正確に契約者の皆様、国民の皆様にディスクローズするために、一つはソルベンシー・マージン比率をきちっと修正するということと、もう一つは基礎利益を出すということでございますので、その二つは今回きちっと当方から公表させて頂きたいと思いますが、それ以外のいろいろな業界の慣習とかに関わる部分については、業界の自主的判断でやっていくべきものだというふうに考えております。

問)

私的整理のガイドライン作りがこれから話し合いが始まるとか、スケジュールが出ているようですが、金融庁サイドとしてはどのようにされると言いますか、ご意見を述べるなり、お考えはございますでしょうか。

答)

前に申したかと思いますけれども、全銀協と経団連との間で合意に達しまして、近々のうちに第1回会合が開かれるという、そこまでやっときたということです。これは非常に関係者の努力を多としておりますし、有り難いことだといふうに思っております。これからは残された時間はそんなに多くあるわけではございませんので、精力的に作業を進めて頂きたいと思います。

いずれにしても民-民で、民間中心にガイドラインを作って頂き、民間が使いやすいものにして頂きたいというのが我々の考えでございます。ただ、金融庁としてもオブザーバーとして、求められればいくらでも労を惜しむつもりはございませんので、その精力的な作業に積極的に貢献していきたいというふうに思っております。

問)

大臣が先週の閣議後の記者会見で、再三に渡って批判していたUFJの相談役の問題なんですが、事務当局に対して何か改善措置なり意思表明はあったのでしょうか。

答)

もちろん、大臣とはいつも意思疎通をしておりますので、大臣のお考えはよく私も承知しております。大臣も私も一致していますのは、まず今の銀行で何が一番求められるかと言えば、それは収益力の向上でございます。不良債権処理をするに致しましても、その収益性を増していかないといけないわけでございますので、まずそういう大前提がございます。

そして、ご質問にございました相談役問題ということで考えてみますと、大臣も私も同じでございますけれども、大臣が仰ることは、自動的かつ単に処遇面を考えただけのですね、相談役制度というのは適切ではないと。それは大臣も仰ってますように、結局収益力を低下させるものでございますので、まず経営陣がきちんと辺りは割切って頂きたいというのが大臣のご趣旨だろうと思いますし、それは事務方にしても当然だというふうに思っています。

大臣の国会での答弁等を踏まえまして、それでは何をしたのかということが、今のご質問の趣旨であろうかと思うのでございますけれども、現在、資本注入行については経営健全化計画の見直しと言いましょうか、リニューアルと言いましょうか、平成15年3月期を目標値にしたものを平成17年3月期まで延ばすわけでございますので、そういう見直し作業及びフォローアップと言いましょうか、この3月期の決算のフォローアップ、そういうものを精力的に各行とやっているわけでございますけれども、こういう相談役制度を設けているところにつきましては、一体どういう趣旨で相談役制度をとっているのかということを十分ヒアリングしております。今申しました、まず今の銀行には収益力の向上というのが求められていて、そしてもう一つ相談役制度が単に自動的かつ処遇的ものであってはならないという点につきましては、各銀行とも全く我々と認識の差がございません。

そんな中で、では今、相談役制度をとっている銀行はなぜとっているのかということについて説明を求めているわけでございますけれども、それは一言で言えば、どういうことで役立てているかと言えば、当該持株会社の経営戦略についての相談というものを相談役という役割を担っているだけではなくて、重要な取引先に社外重役として参加し、言わばその当該銀行とのリエゾン役を行っているとか、いずれに致しましても十分銀行のために役立っているというのが先方のお答えでありました。そうである以上、これは基本的にはそういう考え方が一致しているわけでございますから、その考え方に対して相談役を置くかどうか、特に会長職が今空席のところが相談役を置くかどうかという点につきましては、私は先程申しましたように収益力の向上という点と、もう一つ自動的、処遇的な相談役は置かないという点、この認識において一致している限り、後は先方の経営判断の問題だというふうに私は思っておりまして、金融庁の方から置くとか、置けとか、置くなとか、そういうことは言うべきではないというふうに私は思っております。

問)

先程、生保の基礎利益のところで大手のところでは100億円を割り込むところはないというふうに仰いましたけれども、この基礎利益を生保の健全性の指標として見た場合にですね、どういうふうに見たらいいのかと。例えば、100億円を超えているから概ね健全であると。基礎利益の水準をどういうふうに国民はその会社の健全性の目安として見ていったらいいのか、その辺についてのお考えといいますか、指標を示していただきたいと思うのですが。

答)

なかなか難しいご質問ですね。金融庁と致しましては、どの程度の基礎利益が適当だとか、どの程度以上の基礎利益がなければいけないとか、なかなかそれは言いにくい面がございまして、先程申しましたのも大手10社をとってみた場合に、たまたま一番低いところが100億円台だったもので100億台からと申しましたけれども、その次に低いところは、5~600億円近くになってますし、その次に低いところは、もう900億円くらいになっておるわけですね。非常にバラバラである。

その中で言えることは、少なくとも基礎利益がマイナスということはやはり契約者に不安を与えるのではないかと。そうであるならば懸命にそれをプラスの方向に改善する、それはリストラ等も含めてですね、改善していかなければいけないということは言えるわけですけれども。それ以上にソルベンシー・マージン比率がたまたま200%以上でなければいけないと、これを早期是正措置の一つのメルクマールにしておりますけれども、それと同じような意味で、今お聞きになった記者の方はそういうことかなと思いますけれども、同じような意味で、幾ら以上でなければいかんとはなかなか言い難いかなというふうに思います。

いずれにしても、契約者に不安を与えない水準というものを懸命になってリストラを含めて確保していって欲しいなというふうに思っております。

問)

また生保なのですけれども、10社ではなくて7社ですね、大手7社に限って見てみますと、契約保有高が全7社とも前年マイナスになりまして、ソルベンシー・マージン比率が厳格化した基準で見ても、前の期と比べても1社以外全部低下しているという状況ですが、先程長官の方は、生保の契約者にとって安心出来る状況になってきたと言っておりますけれども、契約高が下がっていてソルベンシー・マージン比率もどんどん下がっていると、これで本当に契約者も安心出来るというお考えでしょうか。

答)

時価をきちっと反映したソルベンシー・マージン比率に修正したわけでございますけれども、その時価自体が言わば時価を出すそもそもの経済環境そのものが下がっているわけでございますので、それは数字としては若干昨年度よりかは下がっているということはあるかと思います。

ただ、今まで何が問題だったかと言えばソルベンシー・マージン比率というものが、時価も反映しないで当てにならないのではないかと、従って200%以上と言っても当てにならないのではないかということが問題であったわけでございますので、そういう面ではきちっとした指標を揃え、指標の出し方を設定いたしまして、それに基づいて改めてはじいていただいたところ、先程申しましたように、500%は超えているということであるならば、私は安心出来る水準だというふうに思っているというふうに申し上げたのは、そういうことでございます。

問)

予定利率の引き下げについての金融審の議論なのですが、最近引き下げ容認が決まったかというような報道も幾つか見られるわけですが、審議の方はまだ必要性の有る無しのところでまだやっていると思うのですが、長官自身はどのように見られておりますでしょうか。

答)

全く今の記者の方が仰ったとおりであって、全くそういう方向性は出ておりません。先般の会見の席で申し上げたと思うのですけれども、いろいろな意見が出ているのは皆様お聞きのとおりでございますけれども、現時点において未だ意見が収斂してきたというふうに我々は認識しておりません。

今後、更に多岐に渡る論点を議論していただいて十分な検討もしていかなければいけないということでございまして、まだ第二部会、あるいはワーキンググループ段階でのご検討をお願いしたい、それを必要としているというふうに私は認識しております。

問)

不良債権問題についての質問なのですけれども、銀行の不良債権の最終処理は2~3年という方針がありますが、これを実施した場合の銀行の財務に対する影響について金融庁はどういうふうに見ているか教えて欲しいのですが。

答)

大臣の会見の席でも話が出ていたかと思うのですけれども、非常に難しい問題かと思います。例えば、2000年度一年間で見た場合には、不良債権処分損、処理額といいましょうか処分損はですね、ここ3、4年、相当減って来ておりますけれども、しかし業務純益等では賄いきれない9,000億円程、大手16行の合計で見ますと、まだ不良債権処分損の方が上回っている状況にあることは、その通りだと思うわけです。

ただ、今後、既往分の12.7兆円については、これから2年間、それは12.7兆円から4.4兆円くらい減りましたものですから、正確に言えば8.3兆円については今後2年間ということでございます。ところが、去年の9月から3.4兆円ほど新しく増えましたから、この3.4兆円と、これから出て来るものについては今後3年間というものの処分をしなければいけないわけでございますけれども、それについて業務純益にどれくらい影響度があるかというのは、今の記者の方のご質問かと思うのですけれども、基本的には引当処理はもう既に済んでいる、破綻懸念先ということであれば引当処理は済んでいるわけでございますので、敢えて言えばそれをオフバランス化した時の担保分がどれだけ毀損するかと、その毀損した分だけ更に追加損失が出るという状況かと思うのでございます。私は、今後破綻懸念先以下に落ちて来る不良債権というのはどの程度あるかということは予測し難いわけでございますけれども、一つ言えることはきちっとした引当はもう済んでいるわけでございますので、ある程度業務純益の影響というのは限定的かなということは言えると思うのです。

ただ、一方においては要管理から破綻懸念に落ちて来る場合には、ご承知のように新しい処分損がかなり出ることも事実でございます。これがどの程度あるのかという問題ですね。先般発表いたしました緊急経済対策との関係で言えば、そういうプラスマイナス関係ではないかと思うのです。

更に不良債権処理額一般で言えば、一般要注意から要管理にどれだけまた落ちるかというところは、恐らく引当率で言えば3~4%から20%近くまでいくわけですから、それの業務純益へのある程度のインパクトというのはあるのだろうと思います。

いずれに致しましても、いろいろなインパクトの要素はございます。それだけに銀行は収益力の向上に努めていただきたいわけですけれども、元に話を戻すならば、今の記者の方のご質問との関連では不良債権の最終処理2~3年というところに関連して言うならば、ある程度引当がしっかりしているだけに、それの追加損失というのは、ある程度限定的だというふうに考えております。

問)

本日、郵政事業の民営化に関する懇談会というものが立ち上がりまして、いろいろこれから議論が進んでいくと思うのですけれども、これは民間の金融機関も問題意識は強い問題で、あれだけ大きな巨大な公的金融機関の存在というのが、やはり大きな金融機関自身の体力強化とか健全化のネックになっているのではないかという議論がございます。こういう検討が始まることについてのご見解をお伺いしたいのですが。

答)

難しいご質問でなかなかお答えし難いと思いますけれども、基本的には官は民の補完でございますので、そういう全体の本来的な役割というものに止めるということだろうと思うのでございます。それをどの程度が民の補完としての官なのかということについての、それを郵政事業、あるいは当方との関係で言えば郵貯というところに焦点を当てて、これから議論が始まるわけでございますけれども、当方と致しましては、その議論の行く末には十分注視していきたいというふうに思っております。

(以上)

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