森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年6月18日(月)17時04分~17時28分)

【質疑応答】

問)

長官からは何かございますか。

答)

ちょっと私の方からお知らせすることが一つと、もう一つ感想めいたことでございますけれども、一つは明日、19日付で不良債権問題についての調査を行うことを目的と致しまして、当分の間ということで監督局総務課に「不良債権問題調査室」を設置することに致しました。これは言わば訓令室でございます。メンバーとしては室長に木下銀行第2課長を任命致しまして、その他課長補佐クラスを中心に約8名、合計9名配置することを考えております。その目的とするところはご推察の通り、不良債権問題というものが、いろいろ焦点になっているわけですけれども、それに対しまして当金融庁は本来ならば調査課というところがあってしかるべきで、調査課がそれに対応するわけでございますけれども、そういうものが金融庁の組織の中にございませんので、訓令室として、調査室というものを作りまして、そこで一元的に対応すると。ただ、メンバーは当金融庁の中でも最も不良債権問題に詳しい課長補佐を集めるわけでございますので、当然各課に跨がって、そういう課長補佐は本来の自分の仕事と調査室の仕事との両方やると、当面そういう緊急的な対応でやっていきたいというふうに思っております。

もう一つ私の方から申し上げたかったのは、先程担当課の方からブリーフィングがあったと思いますけれども、本日、国際証券に対します処分を発表させて頂きました。処分の内容は皆様ご承知の通り、全店73店の全ての業務の3日間の停止ということでございまして、3日間ということを取れば皆さんどういう感じを持つか分かりませんけれども、国内大手・準大手を含めまして、全店の業務停止は戦後初めてのことでございます。それほどの厳しい処分をさせて頂きましたけれども、もちろん取引一任勘定の問題であれ、あるいは検査忌避の問題であれ、それだけの重いものに相当するものと考えての処分でございます。

ここのところ、これに限らずEB債絡みの処分がございました。更に世の中には日経225リンク債絡みの噂もいろいろ飛び交っております。私と致しましては、これから間接金融から直接金融中心の市場に変えていかなければいけない、あるいは個人をこの直接金融市場にもっと引き込まなければいけないという時に、この直接金融市場の担い手の責任というのは大変重いわけでございます。そういう直接金融市場の担い手の責任を強く求めますし、そういう担い手が個人の方々、投資家の方々等から本当に信認を得られなければ、税制面であれ、どんな面であれ、そういう個人投資家の市場への取り込み策をいくらやっても真に個人投資家中心の市場というものにしていくには程遠いのではないか、そういう気持ちを持っております。従いまして、今後、この直接金融市場の担い手の方々には本当にギリギリ個人投資家の信認を得るような責任ある行動を求めていきたいというふうに思っております。

昨日、柳澤大臣がタウンミーティングで経済事犯についての罰則強化というようなお話をされたようでございますけれども、もちろんその仰られている背景は、この問題に限らず、もっといろんな幅広い問題、破綻金融機関の経営責任の追及の問題も含めまして、いろんな問題をバックグランドしながら、大臣が仰ったことだと思いますけれども、そのうちの一つは私が今言ったようなことが背景にあるのではないかと思います。私からは以上です。

問)

冒頭、長官からご紹介頂きました不良債権の特別の調査室ですか、正式な名称をもう一回お願いします。

答)

「不良債権問題調査室」です。これを監督局総務課の中に置きます。

問)

具体的なミッションの内容とか、将来的に例えばどんなことをやるのか、もう少し詳しく教えて頂けますか。

答)

それは基本的に不良債権の実態調査、海外調査等を含めまして、通常どこの役所にも調査課というものはあるのでしょうけれども、そういう不良債権に関連した調査に関わる事項は全部ここがやるというふうに思って頂いて結構です。

問)

具体的には銀行から聞き取り調査をやるということでしょうか。

答)

それはちょっと話が違うので。聞き取り調査となりますと監督局銀行第1課なり、銀行第2課なり、対象銀行と常に相手がいるわけですから、そういうところが聞き取ったデータを基にして、いろいろ不良債権問題の分析をするということでございまして、調査室が直接銀行から何か不良債権問題をヒアリングするということは絶対あり得ません。

問)

その分析を行った上で何らかの処方箋を出すとか、そういうことはあるのですか。

答)

処方箋ということになりますと、例えばこれはもう過ぎた話ですけれども、緊急経済対策に2、3年と、皆さんご承知のように施策を講じたわけですけれども、おそらくこれが将来そういうものが、というかちょっと誤解を招くといけないので、調査室がその時あったならば、その施策を実現するに大変貢献できたわけですね、いろんな分析ができたわけですから。事実、今度の調査室のメンバーになった方々というのは先般、そういうことを作った時に戦力になっていたんです、もう各課横断して。ですから何か新しく作ったというか、実は今までも各課人手が足りないものですから、各課の課長補佐を集めてやっていたのを、きちっと「室」という形で、それでかつ辞令も出してですね、あなたが属しているのは銀行第1課かもしれません、銀行第2課かもしれませんけれども、その中で不良債権問題の分析というようなことについてはあなたが調査室の一員としての任務を持っているんですよということを今回はっきりさせたということであって、実体的にはもう実は今までも特に今年の2月くらいから緊急経済対策を練っていた時、あるいはもっと言えば今年の1月くらいに柳澤大臣がオフバランス化ということを唱えた時から、今度任命される人達がプロジェクトチームを組んで、それに大臣に対して応えてました。そのプロジェクトチームを言わば調査室という形で今回まとめたということでございまして、そういう面であまり目新しい、ただ、組織としてきちっとしたものを作っていくことが重要かと思ってやったということでございます。

問)

国際証券の今日の発表のことに関してですけれども、長官からもありましたけれども、数年前の証券不祥事を機にですね、証券各社、コンプライアンス体制の強化というのを全面に押し出してやってきたにも関わらず、準大手の筆頭格の国際証券がまたこうした事態に陥ったことについてのご所見というのをお願いします。

答)

一言で言って極めて遺憾でございます。ただ、かつて損失補填等のいろんなことがあった上で、今日直接金融市場の担い手としての証券会社があるわけでございますけれども、その証券会社全てに本日起きたような問題があるとは思っておりません。それは過去のいろいろな経験を生かして、大変コンプライアンス体制がしっかりしたものになってきていると、それは私はそう思っております。ただ、さはされどそうした中でも今回のような事件が出てしまったということを大変遺憾に思っておりまして、今後はこういうことが一切出ないよう、更に直接金融市場の担い手の方々に心を引き締めて頂きたいというふうに思っております。

問)

昨日、大臣がタウンミーティングで経済事犯の罰則の強化について言及されたのですが、事務方として何か具体的な検討とか、どんなことをやるかというのは出ているのでしょうか。

答)

正直言って、答えは全くそういう検討はございません。それは前も一度申したかと思うのでございますけれども、いわゆる経済事犯の罰則強化の意味においては平成9年の法改正におきまして、相場操縦について言えば、個人については300万円から500万円、あるいは法人に対しては3億円を5億円、更に懲役については3年を5年と、こういうふうに重科しておりますし、インサイダー取引につきましては、同じく平成9年の法改正におきまして、法定刑を懲役6カ月以下、罰金50万円以下から懲役3年以下、罰金300万円以下、法人に対しては50万円から3億円と、大幅に引き上げたわけでございますね。これは平成9年の改正でございます。この時に何も相場操縦とインサイダー取引だけに焦点を当てて法改正したわけではなくて、全般的にいろいろな法定刑のバランスを考えながら、当時法務省と熟考した末にバランスをとった形でいろいろ法定刑の引き上げをしたわけでございまして、今日そこから3年少し過ぎた段階で、もう既にバランスを更に崩してまで、重科しなければいけないのかということになりますと、更に慎重な検討が必要かと思います。

従いまして、大臣が問題に焦点を当てられたのは、我々事務方もよく承知しておりますので、今後の検討課題として念頭には置きますけれども、個々具体的に何か法務省に向かって作業を起こすべく検討をすぐ始めるというような状況にはないと思っております。

問)

不良債権問題の調査室をこの時期に立ち上げられた理由と、その分析で得た結果をどのように活用されていくのか、眼目ですね、これを教えて頂きたいのですが。

答)

今立ち上げたというのは、先程も申しましたように実体としては既にあったわけです。それをきちんとした訓令室という形で立ち上げた動機というのは正直言って柳澤大臣からのご示唆でございます。柳澤大臣から、監督局というのは、いろいろな金融機関と接触しながらいろいろなデータを蓄積しております。しかし、そのデータについてきちっと分析する課がないということにつきまして、大臣から「通常なら調査課というものがあるのではないかね。」と言われまして、ただ当金融庁というのは、財金分離の中で極めて白紙に絵を書いて出来た官庁ではなくて、そもそも課は、最大幾つしか考えられないという制約の下で出来た役所でございますので、なかなか直ぐ調査課というのは無かったわけですね。

しかし、大臣からそう言われまして私も正式な課はなかなか作れない。それは恐らく何年越しかで、行政管理局というのは今は総務省ですか、総務省とやっていかなければいけない問題にしても、訓令室の立ち上げなら私の判断で出来るんだということをやったわけで、そういう面では何か新しいことを思いついてこういうものを作ったのではなくて、過去の経験つまり先程申しましたように、今年の1月からのプロジェクトチームというものをもっと組織的にきちっとしようということで立ち上げたものでございます。

従って、やることもこれまでやって来たものの延長でございますし、その面では目新しいものではございません。大臣のご示唆によってきちっとしたということに尽きるわけでございます。

これをどう使うかというご質問につきましては、今までもプロジェクトチームの成果というものは、緊急経済対策にお示ししたように使わせていただいているわけで、言わば総務課なり、銀行第1課なりあるいは銀行第2課なり、あるいは場合によっては金融危機対応室なり、そういうものがそれぞれ外に対して、施策を打ち出す時のベースとして、下支えとして調査室が働くということに尽きると思います。

問)

国際証券の業務改善命令で、人事の刷新ということが盛り込まれていますけれども、これはトップも含むものなのか、それともそこまでは含まないのか如何でしょうか。

答)

この言葉をどう解釈されるか、この処分を受けた国際証券の方が適切に判断されることだと思います。

問)

不良債権問題調査室なのですけれども、大臣が予て仰られたいわゆる新しい指針を作るのとは関係がないということなのですか。

答)

大臣の仰られた新しい指針を作ることについてのパーセプションに、皆様方とちょっとパーセプションギャップがあるのではないかなと思うのですけれども、それはさておきですね、当然そういうことと関係しますね。そういう指標とかそういうものは、本来調査課みたいなところが考えるべきことですから。ただ今お聞きになられたベテラン金融記者が知りもしないような指標が飛び出してくるかと思ったら、それは僕は違うと思います。今ご質問になった記者が考えつかないようなものは、どんな人材を集めても我々も考えつかないと思います。

問)

今のデータの話なのですけれども、分析というのは金融庁で入手出来るもの、要するに金融機関から入手出来るものに限るのでしょうか。

答)

そんなことはございません。

問)

関連省庁等からもですか。

答)

当然いろいろなものを材料にさせてもらいます。例えば、海外のアナリストの資料とか、正直申しまして海外調査というところまでヒューマンリソースの関係からとても手が回りませんでした。ヒューマンリソースが増えるわけでございませんで、手が回らないことは今後も同じなのですけれども、これだけいろいろ日本の不良債権に焦点が当たっている以上、例えば海外のアナリストが一体どういう資料を基に言っているかとかですね、そういうことも調査させていただきたいと、当然そういうものが入ると思います。

問)

先日の金曜日の閣議の後にですね、官邸に残って不良債権の問題を議論したと思いますが、その時に不良債権の処理の促進のために追加的な措置というようなニュアンスの言われ方があったかと思いますが、これに関しては長官としてはどういう認識をされていますか。

答)

まず、追加的な措置という意味においては、私は緊急経済対策で公表させていただきました既往の破綻懸念先以下については2年以内、新規については3年以内と、この施策がぎりぎりのものでございまして、狭いストライクゾーンいっぱいの話だと、私は思っております。

従って、そういう意味で実質的に何かこれ以上のものが、つまり、これ以上のものが何かあるかと聞かれますと、なかなか難しいと私は思っております。ただ、いろいろそれ程厳しいインパクトを持った措置であるにもかかわらず、なかなか世の中はそのように理解していない面もあると思いますので、説明の仕方等において、更にどういうふうに深堀した説明の仕方が出来るのか、そういうところはいろいろ考える余地があるのではないかと思っております。

問)

先の関係閣僚大臣の会議の場で、不良債権の処理が思ったように進んでいないという指摘があったということなのですが、不良債権の処理が進んでいないという認識については、長官はどのようにお考えですか。

答)

銀行は、まだ不良債権処理についての覚悟というのでしょうか、そういうものに対して甘いところがあるのではないか、というようなお話があったかのように新聞報道等で聞いておりますけれども、私は正直申しまして大手16行は真っ青になって、この問題に取り組み始めているというふうに思っております。

(以上)

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