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森金融庁長官記者会見の概要

(平成13年11月19日(月)17時01分~17時28分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

週末のIMFCで再び銀行セクターの改革というところが指摘されましたが、こうした海外の指摘について、金融庁の現状認識、あるいは意見等々をお願いいたします。

答)

週末の国際通貨金融委員会ですか、昔の暫定委員会ですか、そこのコミュニケにおきまして、日本については銀行部門とコーポレート・セクター、企業部門のビゴラス(vigorous)な改革、まあ力強い改革を指摘されているわけでございますけれども、ご存知のように、骨太の方針、あるいはその前の緊急経済対策からそうでございます通り、銀行の不良債権処理とその裏側にございます企業の過剰債務問題、この一体的な解決というものを金融庁は指摘して来たわけでございますけれども、まさにそれと、我が方が目指す方向と一致する方向のことが、このコミュニケに書かれていると認識しております。

今後、銀行部門については不良債権の最終処理の取り組みを、先般発表いたしました改革先行プログラムに沿って進めて行くわけでございまして、そうすることによりまして、集中調整期間終了後には、日本の金融機関の不良債権問題というのが正常化されるというふうに持って行きたいと、その方向に向かって、最大限の努力をして行きたいというふうに金融庁としては考えております。

問)

それとの関連もあるのですが、今年度の大手銀行の不良債権処理が、年度当初の3倍程度の5兆円を超える規模になるというようなことがありますが、この要因あるいは背景というものについて伺いたいということと、2~3年での正常化との絡みの中で、これだけ計画値を上回る不良債権が出て来ることが、2~3年の正常化との目標との関連で、どのような影響が出て来るのか、大幅な前倒しが可能なのか等々を含めて、金融庁の見方をお願いいたします。

答)

確かに仰るような報道がなされていることは承知しておりますけれども、ご承知の通り、大手行の中間決算発表は今週木曜日と来週月曜日に分かれてなされるわけでございまして、今の時点で各主要行がどの程度の通期の見通しを持っているかということについてはコメントを差し控えたいと思います。

ただ、一般論として申し上げれば、足元の景況は非常に悪いわけでございまして、各銀行とも当初見込んでいた、通期で言えば今年の確か5月、6月くらいの段階では1.9兆円と見込んでいたと思うのですけれども、そういうものが増加するということは理解出来ることでございます。ましてや、既に特別検査が入って、いろいろ三者協議をやっているところもあるわけでございまして、そういうことを各銀行とも、特別検査の目的を十分踏まえて、不良債権の処理の見直しということも当然行っていると思いますし、そういう観点からも増加することになるだろうと、足元の景況の悪化と併せて、そういうことは理解出来ることでございます。

後半の質問、即ち、3年後には正常化ということに対して、これだけ出せばもっと早まるのではないかというご質問に対しては、これはあくまでも集中調整期間をどれほどと見るかということ、我々が出した、皆様方に発表したいろんなシュミレーションの一つの結果を皆さんにお示ししたわけでございますけれども、あれも集中調整期間が3年程度あることを前提とした一つの仮定に基づいた試算でございまして、今後、どれくらいの速さで不良債権問題が正常化するというのは、基本的には今後の景況の改善がどのように進んで行くかにもよるわけでございまして、今の時点からは最も悪いシナリオで考えて、3年後には何とか正常化して行きたいという、この前提を変える必要が何か出て来たかというと、そういう新しい予測が出て来たとは思っておりません。

問)

三井生命の経営基盤の強化策について報道がありますが、金融庁としての事実関係の認識をお願いいたします。

答)

そういう報道がなされていることは承知していますけれども、具体的な施策が決定されたとは聞いておりません。まあ今仰られた生命保険会社に限らず、いろんな保険会社が、この厳しい状況の中で懸命な努力をして、いろんな経営の効率化策とか、あるいは経営基盤の強化策というのは練っているわけでございまして、それは仰られた保険会社に限らないわけでございまして、そういうことを懸命に今模索している状況ではないかと思いますし、そういうことは当然我々も努力を促しておりますし、結構なことだと思います。そうした中から具体的な良い施策が出て来ることを強く期待しております。

問)

今日発売された一部週刊誌に、金融庁の記事が出ておりますが、これに関する事実関係、あるいは週刊誌への対応を含めて、現時点で何かお考えがあればお願いできますか。

答)

まあ私も朝報道されているので見てはおりますけれども、週刊誌の書いていることにコメントする立場にはございません。ただ、そういう事実は私は全く聞いておりませんし、無いものと考えております。

問)

明日の経済財政諮問会議の集中審議ですけれども、不良債権問題に関して金融庁はどういうような説明を考えていらっしゃるのでしょうか。

答)

これは大臣がどうご説明されるかですけれども、私は大臣とお話している限りでは、改革先行プログラムで金融庁が行おうとして、既に皆様には発表していることを粛々とやって行くと、もうそれ以上でも以下でもなく、改革先行プログラムの施策を粛々とやって行くということをご説明されるというふうに理解しております。

問)

金融検査で、非協力的な対応を金融機関がとった場合、金融庁としてどういうことを考えているかについてお願いします。

答)

一部の新聞にそういう記事が載っていまして、むしろ私共はびっくりしたのでございますけれども、基本的には当たり前のことでございまして、特にここに来て、そういう検査忌避的なことに対する対応を変えるということは聞いておりません。検査忌避的な対応に対しては、従来より厳しく対処しておりますし、これからもその姿勢に変わりはない、検査局のその姿勢に変わりはないものと思っております。

問)

先般、金融庁が不適切な営業行為ということで日本生命に出した業務改善命令を受けまして、生命保険業界の中では契約者を誤解させるような営業とか、他社を誹謗・中傷する類の営業というのは違法行為だという認識が広まっているようなんですけれども、他面におきまして、、そのことを意識するあまり、営業の現場で、いわゆる自社の商品と他社の商品の比較すらままならないと、結果として消費者への情報提供に支障も出かねないというような指摘も業界の中では出ているようです。この自由競争の時代に消費者の利益を保つという観点から、生命保険会社の比較営業及び比較情報の提供のあり方について、金融庁としてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。

答)

仰られているようなことが業界でもし言われているとしているならば、ちょっとそれは過剰防衛と言いましょうか、考え過ぎなのではないかと思いますけれども、ご承知の通り、保険募集に当たりまして、比較情報の提供や比較営業については、情報が正当に提供された場合は、保険契約者等の保険商品選択に役立つわけでございますので、保険業法上も全面的に禁止しているわけではございません。禁止されているのはあくまでも、保険契約内容の比較について誤解させるおそれのあるものを告げたり表示したりする行為、さらには保険契約等に関する事項であって、その判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、誤解させるおそれのあることを告げたり表示する行為等が禁止されているわけでございます。

従って、客観的事実に基づかない事項または数値を表示することや、保険契約の契約内容について正確な判断を行うのに必要な事項の一部のみを表示することによって、他社の商品との間で比較を行うこと、あるいは他の保険会社の信用または支払能力等に関して、その劣後性を不当に強調すること、こんなことは禁止されているわけですね。ですから、各社の財務諸表を素直に並べて、こうなってますということを比較する資料として見せること、あるいは与えることは何の禁止行為でもない。何かそこに対して、A社がB社の「ここが劣ってますね。」、「これは不安ではないですか。」と、そんなようなことは、それはまさに誤解を与えるというか、不当に劣後性を強調するということになるわけであって、その辺の比較情報の提供について、どこまでが違法性があり、どこからは違法性がないかということは、一つは常識で考えれば分かることではないかと思います。

要するに一言で言えば、足の引っ張り合いみたいなことをすべきではないと思いますし、そういうことに対しては今後も厳正に対処して行きたいというふうに思っております。

問)

週刊ポストには抗議はされたのでしょうか。

答)

まだ何もしておりません。

問)

(抗議を)されるおつもりはあるのでしょうか。

答)

それは、官房というか内部で慎重に検討しているのではないでしょうか。ただ、抗議と言ってもリーガルな意味で、どこがどうということについて、どう捉えるかと、名前が特定されているわけでもないですし、どういうふうに抗議するのか、まあ今よく検討させております。

問)

庁内で調査するということは考えていらっしゃいますか。

答)

それは、既に先程申しましたように、そういうことは聞いていないというのは、もちろん調査した結果聞いていないということでありまして、もう既に幹部となると数は限られているわけですから、聞いておりまして、そういう事実はないと、事実はございませんし、聞いておりませんし、また無いということでございます。

問)

大手行の不良債権処理が増えて、自己資本が目減りしたら資本注入が必要なのではないかと、こういうことが明日の経済財政諮問会議で議員から出た場合、どういうふうにお答えになるのでしょうか。

答)

それは何と言いましょうか、まあ仮定の質問ですけれども、増えるというのがどの程度増えるかですね。私は今日の一部の新聞に出ている程度に増えても、自己資本比率へ与える影響は限定的だと、我々のシュミレーションからすれば限定的だというふうに思っております。

むしろ、不確定要因というのは、来年の3月の株価がどうなるかということで、各行とも9月末に9,774円という水準を経験し、今度の中間決算にはそれを反映させるわけですけれども、それ以上のことが考えられるかどうか、そこは不確定要因として残ると思います。

それは否定いたしませんし、我々は資本再注入について何が何でも資本再注入なんかしないとは一言も言っておりません。現時点の各行の健全性を示す自己資本比率の水準においては、資本注入の必要は今ないということを申しているわけでございまして、かつ必要のない時に資本注入をすることは自由主義経済において銀行部門だけ国家管理で持って行くということでは、決して良い効果は出ないと、むしろマイナス要因が大きい、まあいろいろな意味でモラルハザードが起きるとか、あるいは今、各金融機関が懸命になっているリストラ、あるいは自力調達、そうした努力というものが毀損されるとか、そういうマイナス要因はございますし、良い要因は私はないというふうに思っています。

しかし将来、金融システミックリスクが起こるようなことがあった場合には、金融庁としては改正預金保険法に基づきまして果断に資本再注入ということは当然しなければいけないと思いますけれども、今はそういう状況にないということを申し上げている次第です。

問)

現在のところの不良債権処理の積み増し程度であれば、配当原資の不足ということはあったとしても、自己資本比率が健全性の目安となる8%を下回るようなことは、大手行に関してはないので資本注入は必要ないと、そういうことでよろしいでしょうか。

答)

前提となるのは、まだ中間決算が発表になっておりませんけれども、一部の新聞に出ている数字、もちろん我々はいろんなシュミレーションをしているわけですから、そういう数字を前提にした場合には、株価を9,774円で固定した場合にはそういう必要はないということですね。

まあ株価もそれから1,000円ぐらい上がっていますので、評価損も相当、今の段階では小さくなっていると思いますけれども、しかし株価だけはどうなるか分かりませんのでコメントすべきではないと思います。

問)

ペイオフについてお伺いしたいのですけれども、不良債権問題が正常化するのは3年後ということですよね。不良債権問題が正常化しないうちにペイオフを解禁することの是非については金融庁はどのようにお考えでしょうか。

答)

平成8年に臨時異例の措置としてペイオフが凍結され、さらに一部の業態の国の検査というものが予定通りだとペイオフ解禁後になってしまうという事情もございまして、1年ペイオフ凍結解除を延期したわけでございますけれども、それにつきましても昨年の4月からと言いますか、主には昨事務年度の7月からの1年間で検査もし終えました。市場から退出すべき金融機関の処理というものも相当進んでいると思います。金融庁としては、そうした中で、こういう臨時異例の措置をさらに1年ないし2年とか延期するという理由はないと思っております。

逆に言えば、来年延長すると、こういう臨時異例な措置を延長すると、未来永劫もうペイオフ解禁というわけにはなかなか行かなくなる、いつの時代だって不安はあるわけでございまして、実際にペイオフ解禁後に何か金融システミックリスクに関係するようなことが起これば、金融危機対応会議の議を経て全額保護の措置もとれますし、制度としてはいろいろセーフティネットは張られていると思いますので、さらに延長するということは現時点においては金融庁としては考えておりません。

さらに最近の状況について申し上げれば、預金者側につきましても1,000万円超の定期預金は大幅にダウン、減っておりまして、いわば小口化・分散化の傾向が日銀統計でも見てとれますし、あるいは相殺特約につきましては今年度中にほぼ全ての金融機関が預金取扱規定の中に相殺特約を入れることになっておりますし、いろんな面での対応というのは預金者側においても進んでいるのではないかと、そのように認識しております。

問)

先程の週刊ポストの件ですけれども、幹部の数は限られていて、そういう事実はないということですが、長官ご自身に対する調査というのは金融担当大臣がされるのか、それとも任命権者である総理がされるのかということは如何でしょうか。

答)

自分のことは自分が一番良く分かっておりますので、私が私自身を調査するということかと思います。ああいう破廉恥な事実はありません。

(以上)

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