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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年1月7日(月)17時01分~17時20分)

長官) 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

今年初めての会見ですので、まず今年について、特にペイオフ解禁を挟んで向こう半年くらいの間、金融庁として、どういった点に特に力点を置いて金融行政を進められるお考えなのか、お聞かせください。

答)

まず、世の中でも注目されております銀行の不良債権の処理、これにつきましては、ご承知のように、昨年緊急経済対策、骨太の方針、さらに改革先行プログラムにおきまして、不良債権の最終処理に向けた具体的な施策を相次いで策定し公表させていただいたところでございますが、今年、まさにこうした施策を着実に実行いたしまして、出来るだけ早く不良債権問題を正常化したい、これが第一の課題かと思います。

これとの関連もあるわけでございますけれども、今年の4月にはペイオフ解禁を迎えるわけでございますけれども、予定通りペイオフを解禁し、かつ、またその際に、国民の皆様が金融機関に対して不安を持たないような状況を、何とかそれまでに確立しておきたい、それも大きな課題ではないかというふうに思っております。

さらに言えば、これまでの骨太の方針等、あるいは改革先行プログラム等でも申し上げました通り、我が国の金融システムは諸外国に比べますと間接金融が大きなウェートを占めているわけでございますけれども、これを直接金融の方にいかにシフトして行くか、とりわけ自己責任の下で投資を行う個人投資家をどう育成して行くかと、そういうことも大きな課題ではないかと思っております。

また、これとも関連するわけでございますけれども、今度の通常国会に法案を提出して目指そうとしてます証券決済システムの改革、これも先般の国会でCPのペーパーレス化を実現したわけでございますけれども、これをCPから社債、さらに国債、そういうものに広げて、言わばペーパーレス化の下での決済システムの改革というものを目指して行きたい、そんなようなことでございまして、まあいずれにいたしましても、金融庁が取り組むべき課題は多岐に渡っており、非常に厳しい一年の船出にあるという認識を持っております。

問)

年末から年始にかけて、小泉総理をはじめ政府首脳や与党の幹部から公的資金の注入の可能性について、かなり踏み込んだ表現の発言があったのですけれども、一連の発言をお聞きになって、これまでの金融庁の方針と何か変化があるのか、それともこれまでの金融庁の方針と同じ考えに沿った発言なのか、どのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

答)

官邸とは同じ認識を共有していると思っております。即ち、我々は改革先行プログラムの中でも既に申し述べていると思うのですけれども、金融危機のおそれが生じるような状況になれば預金保険法102条があるわけでございまして、小泉総理が仰るように「必要な状況になれば大胆かつ柔軟に対応する」という小泉総理の仰ったこと、これはまさに当庁の柳澤大臣のお考えと軌を一にしているというふうに認識しております。

問)

今も触れられたのですが、その金融危機という言葉が、いろんな人が発言されるのですけれども、今一つ具体的にどういう状況になったら金融危機なのかというのは、これまで金融庁もあまり具体的には説明されていないと思うのですが、具体的にどういうふうにお考えになっているのかお願いします。

答)

これはなかなか具体的に、何か数値基準を設けて、ある数値基準を満たさなくなったら金融危機だとか、そういう簡単なものではないと思うのです。もちろん、預金保険法102条にある要件としては、「国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障を生ずるおそれがあると認めるとき」と、これに尽きるわけでありまして、これをどういうふうに判定するかとなれば、それはいろんな要素があるのだろうと思います。各銀行の流動性も含めた、そういういろんな要素については、我々はオフサイト・モニタリングを始めとして、常に万全の把握に努めておるわけでありまして、そういう中での判断で我々は機敏に動きたいというふうに思っているわけでありまして、個々具体的に何かある数値基準はどうかということは、なかなか申しにくいことをご理解いただきたいと思います。

問)

今のに関連するのですけれども、例えば、昨年末にかけて、一部大手銀行の株価が非常に低下したような場面がありましたけれども、こういうケースというのも公的資金注入を検討する対象となり得るのか、あるいは具体的に何か検討されたりしたことはあるのでしょうか。

答)

今言ったいろんな要素の中の一つには、当該銀行の株価、これは当然市場における信認という意味で我々は見逃すことが出来ない一つの要素であることは仰る通りでございまして、そういうものも注目しておりますけれども、ただそれだけではもちろんないわけでありまして、総合的に見て、現時点において、今お聞きになった記者の方の仰るような状況にはないという認識にあります。

ただ、世の中どういうふうに動くかというのは分かりませんものですから、我々は毎日毎日緊張を持って金融機関のいろんな要素をモニタリングし、判断しているわけでございまして、今後もそういう緊張した姿勢に変わりはございません。

問)

先日、静岡県の中部銀行が早期是正措置の発動を受けて資本増強を図るという発表をしたのですけれども、中部銀行の経営状況について長官としてはどういうふうにご覧になっていますでしょうか。

答)

今お聞きになられた記者の方の仰った銀行につきましては、昨年の12月28日に当庁の検査結果も踏まえた半期報告書を公衆縦覧に供しておるわけでありまして、それによりますと、自己資本比率が単体で3.05%、連結で2.63%と、そういう半期報告書を世の中に出し、かつまた、1月4日にその旨の中間決算の修正発表をしたことは承知しております。もちろん当局としてはルールに基づきまして、それに対して適切な対応をとっておるわけでありまして、当庁といたしましては、早急に健全な銀行に回復するよう強く期待しております。

問)

地方銀行、第二地方銀行については、特に第二地方銀行ですが、昨年末から福島銀行に対しても早期是正措置、あるいは石川銀行の破綻と続いているのですけれども、これはまだペイオフ解禁に向けて地銀、第二地銀の経営問題というのはまだまだ続くのか、ある程度見通しが立ってきているのか、その辺はどうご覧になっていますでしょうか。

答)

現時点において、確かに石川銀行は破綻いたしましたけれども、それと同じ様な銀行があるとは承知しておりません。

ただ、大臣が仰られているように、ペイオフ解禁の暁には、どこの金融機関もしっかりとしたものになってもらわなければ困るわけでありまして、そういう意味におきましては、先程ちょっと仰られた銀行のように、一部に健全性を増すための施策を講じなければいけない銀行もあるわけでありまして、そういう面では第三者割当増資なり、収益力の抜本的改善なりをして、今年の3月末までにはきちっと預金者の皆様に信頼される銀行になるべく当方としても適切な行政指導をしておりますし、そのようになるよう強く期待しております。

問)

確認でちょっとくどいようですが、総理大臣が先般、「大胆かつ柔軟な対策を準備している。あらゆる手立てを講じていきたい」と仰ったのは、これはあくまでも改正された預金保険法に書いてある手段の範囲内でということで考えて宜しいのでしょうか。

答)

私はそのように、102条の枠組みの中でということのように理解しております。

問)

そのように官邸あるいは総理とのやりとりの中でもそのような話になっているということですか。

答)

官邸との意思疎通の中で、当方からそのように説明させて頂いておりますし、総理大臣の御認識もそのようなものだと私は認識しております。

問)

日曜日の日本経済新聞の報道ですが、公的資金の注入の範囲について言及がありまして、大手銀行と有力地方銀行までというような表などが載っておりましたが、こういう注入に関しての運用の面について、このような決断というのはされておられるのでしょうか。

答)

当然、あらゆる事態に機敏に対応するためにはそれなりの準備はしておりますけれども、今、質問された記者の方が言及された記事も見ましたけれども、その記事に関する限りにおいては私は全くの推測としか申しようがありません。当該新聞の記者がいらっしゃる前で、ちょっと失礼な表現かもしれませんけども、私も初めて見る表でありました。

問)

大手企業の株価の低迷などに伴い、大手銀行の経営も負担が増える向きもあると思うのですけれども、現時点で大手銀行の破綻というのは想定できますか。

答)

いいえ、全く想定しておりません。

極めて厳しい足元の景況にあることはよく承知しておりますが、それを踏まえた上で、中間決算の発表の時に各銀行とも通期の業績予想修正を同時に発表しているわけでありまして、それによりますと、大手行全体で不良債権処理財源は6.4兆円、そのうち9月期までに2兆円使ったわけですけれども、4兆円以上の処理財源があります。そうした中で各行とも、あらゆるシュミレーションを働かせながらリスクに対応するものとして発表して その財源が4兆円以上あるわけで、私がそれを十分チェックさせて頂いておりますけれども、そう、そこから大きな上振れはしないのではないかなと思います。

そういうものを前提として、勿論時価会計導入の下での株価の問題は別に置きますと、それだけの処理をしても10%から11%程度の自己資本比率を確保しているわけでありまして、そういう面から見て、私は今仰られた記者の方の質問に対してはネガティブなお答えをさせて頂くわけであります。

問)

破綻どころか、資本注入も意味がないというふうに受け取って宜しいでしょうか。

答)

いや、それは今の状況の下で、つまり金融危機というような状況は、今そういう状況ではないと思いますけれども、こういう状況が続くのだったら、私は資本注入の必要はないと思います。ただ、どういう状況が今後起きるかと、先程申しましたようにいろんな要素をモニタリングしながら判断するわけでありますので、今から資本注入が必要ないとか、そんなことは言えないわけでありまして、どのような状況に対しても対応できるように備えておく、小泉総理も仰いますように金融危機を招かないように、あらゆる手段を講じる用意があるというのは、まさに我々金融庁としても同じ気持ちであります。

問)

日銀の速水総裁などが度々言うことなのですが、自己資本から税効果などを除いたコアの自己資本で体力を見るべきだという議論もあるのですが、そういった議論というのは資本注入論の中で評価すべきことかどうか、お聞かせ頂けますでしょうか。

答)

税効果、あるいは公的資金、そういうものについての評価というのは、それぞれの方がそれぞれお持ちかもしれませんけれども、どちらにしても、いわば私からすればグローバルな会計原則に合ったものでございまして、繰り延べ税金資産は除くべきだとか、そういうような物の考え方は金融庁としてはしておりません。

(以上)

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