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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年1月21日(月)17時33分~17時57分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

先週末にダイエーの再建策がまとまったのですが、一民間企業の再建策とはいえ、その成り行きによっては金融機関にもかなり影響が出てくると思われますし、金融当局としてもかなり関心を持っていらっしゃると思うのですが、今回まとまった再建策についてどういうふうに評価されるのでしょうか。

答)

仰る通り、大変大きな関心を持って見守っておりました。関係者の努力によって、とにかく新3ヵ年計画というものがまとまったことについて、非常に良かったというふうに思っております。

計画自体の中身については、これは銀行の借り手企業の計画でございまして、銀行の計画ではないわけで、我々は銀行を監督しておるわけでして、そういうことで、その借り手企業の再建計画そのものに対してコメントする立場にはないと思っておりますけれども、基本的には市場をはじめ国民の評価を得るようなものがスピーディーに出されることを強く期待していたわけでございまして、そういうことで、関係者の努力によって先週末の時点であのような発表をなされたことは良かったと思っております。

銀行側はそれを受けて、詳細を今後検討するとしつつも、新3ヵ年計画への支持をコミットしておりますし、前向きに検討することも約束しているというふうに聞いております。

問)

今も触れられたのですけれども、市場の評価という点なのですが、今日の株式市場を見ますと、ダイエー株がストップ安と、銀行の株もどちらかと言うと下がる傾向にあったようなんですけれども、この市場の評価について、市場がこういう動きをしていることについて長官はどういうふうに受け止めていらっしゃいますでしょうか。

答)

これは皆様がご承知の通りであり、私もいつも言っていることですけれども、個別の銘柄の株価の毎日毎日はいろんな要素によって上がったり下がったりするわけでございまして、仰った銘柄の株価も先週はほとんどストップ高になったわけで、今日はストップ安になった、まあ利益の確定売りが出たというふうに言われておりますけれども、毎日毎日の上がり下がりというよりも、少し中期的に見て、市場の評価が得られるということが重要ではないかと思っておりまして、そういう意味において、むしろ少し中期的な目で眺めて行くべきものだというふうに思っております。

問)

今回の再建策をまとめるに当たって、官民挙げての再建策というふうな受け止め方があるのですけれども、今回、実際に金融庁としては何か銀行側に要請されたこと等があったのか。あるいは、経済産業省等との他省庁との連携などはあったのか、その辺についてご説明ください。

答)

金融庁が、言わば借り手企業の具体的な再建策作りに直接関与するということはあり得ません。ただ一般論として、市場から厳しい評価を受けている借り手企業につきましては、当該企業の再生に向けて思い切った施策を迅速に実施して行くことによりまして、市場の信認を回復して行くということが金融機関にとっても非常に重要なことでございますので、そういう意味におきましては、特にメインの銀行に対しまして、市場の評価の得られるような再建策を早くまとめるべきだという示唆は行っておりました。

ただ、その中身については、銀行及び借り手企業双方の経営判断の問題でございまして、直接我々が関与すべき問題とは思っておりませんので、それに対して触れることはいたしませんでした。ただ、先程申しましたように、早いタイミングで市場が評価するような再建策を立てるべきだという示唆は行っておりました。

最後に、経済産業省との連携でございますけれども、それは当然事務方同士いろいろな情報の連絡等はしております。

問)

この問題は不良債権の処理の問題とも絡んで来ると思うのですが、ダイエーがこういう形で再建されるということになったことで、今後、法的整理みたいな形よりも、こういう銀行と借り手企業の話し合いで再建を目指すような方向が強くなるのではないかという見方もあるようなのですが、この辺りについては長官はどのようにお考えですか。

答)

これは、これまでもいろいろ柳澤大臣も申しておりました通り、構造改革を進める、金融セクターの方の構造改革と、言わば企業側の構造改革、再生、これは車の両輪として一体的にやって行くべきだと、柳澤大臣も仰っておられるし、我々もそういう考え方をとっていたわけですけれども、そういう意味で、いわゆる柳澤大臣の仰る「ミシン目を入れる」、つまり不採算部門の切り捨てを大胆に行って、収益性の高い部分に集中する、そういうことが重要だということは予て、緊急経済対策、骨太の方針、改革先行プログラムを通じて我々の一貫した考え方でございます。そういう意味で、今回の再建策というのは、まさにそういう面を強く持った再建策でございまして、金融庁が言っていたことも、整合性の取れるような処理の仕方、処理と言いましょうか、再建の仕方だなあというふうに感じております。

ただ、法的整理で行くのか、私的整理で行くのかというのは、これはもうケース・バイ・ケースの判断でございまして、しかも法的整理と言ってもご承知の通り再建型もあれば清算型もあるわけでございまして、それはあくまでケース・バイ・ケースの判断でございまして、今後全部がこっちになるとか、そういうことはなかなか言えないのだろうと。ただ我々は構造改革を進めて行く中で、出来る限り収益性がある部門を残しながらの整理というものを進めて行くべきだというふうに思っております。

問)

ちょっと話題が変わるのですけれども、現在アメリカのオニール財務長官と柳澤大臣が会談されていると思いますが、後程詳しいブリーフィングがあると思いますが、今日の会談で特に金融庁サイドからアメリカサイドに伝えること等ありましたらご説明ください。

答)

正直言って特に柳澤大臣と今日の会談を頭に置いて、どういうことをお話になるかということを私は相談も受けてませんし、私からもそれを話題にしておりませんので、大臣が何をお話になるか、あとで記者の方へのブリーフィングを聞いていただきたいと思うのですけれども。

ただ、おそらくアメリカに伝えることがあるとすれば、柳澤大臣の所管事項である金融セクター、これの構造改革というものを、こういうようなやり方で着々と進めているということをご説明されているのではないかなあというふうに思います。

問)

それからまたちょっと別の話題になるのですが、保険会社の東京海上火災と朝日生命の統合の問題について、東京海上が見直しを考えているというような報道があったのですけれども、この件については長官は何かお聞きになっていますでしょうか。

答)

統合の見直しという話は一切聞いておりません。

昨年ご承知の通り、朝日生命が東京海上を中心とするミレアグループに参加するということを、昨年1月のプレスリリース、さらに11月のプレスリリースでかなり具体的に踏み込んで発表していると思いますし、その内容については我々は報告を受けているのでございますけれども、何かそれと違った方向のことがあるならば報告があるだろうと思いますけれども、まだ一切そういうことは受けておりません。

問)

ダイエーの処理なんですけれども、銀行の不良債権処理という観点から、市場も私もそうなんですけれども、やはり先送りの面があるだろうという見方があると思うのですけれども、こういう見方について長官はどういう判断というか評価というか見方をされますか。

答)

私は範疇として言えば、私はそのいろいろ市場、プレスの皆さん、国民の皆さんがダイエーOMC除きで1兆7,500億円の有利子負債を抱えながら、大丈夫なのかというふうな懸念を持たれている企業、また少し前にはマイカルというところの破綻もあったということからの連想もあっただろうと思います。そうした中で、やはり一番のポイントは、有利子負債をどうサスティナブルなところまで落とすのかということに焦点があったのではないかなと。と同時に、収益力の向上、これは即ち不採算部門が収益力の足を引っ張っているわけですから、どれだけ大胆に不採算部門を切り捨てられるのかというところにも焦点が当たっていたのではないかなあと。

先程申しましたように、金融庁が個々の銀行の向こう側にいる借り手企業についてコメントする立場にはないのですが、今は言わば私個人の感じとしては、皆様方の報道等を通じてそういう認識を持っていたということです。

そういう意味では3年間で1兆円までということ、それからその他の不採算部門を切り捨てて、相当程度の収益力の確保ということを示したということは、やはり関係者の相当な努力の結果の相当程度の成果だろうなあというふうに思いますが、すみません、私の個人的な感想で、金融庁としては何度も申しますが、個別借り手企業の計画にコメントするだけの立場にはないのですけれども、今お話が出たものですから、私の感じとして言えばそういうことでございます。

問)

個人的感触として不良債権処理という観点からは進んだのではないかと、そういうことでしょうか。

答)

今は企業側の再建ということで物を申したわけであって、銀行サイドの話として言えば、今後、詳細を銀行側は検討すると言っているわけでございますし、例えば3,000億の中の詳細も決まっていないようでございますし、今後、そういう意味での銀行側としての銀行への影響とか、そういうものについて詰められ、詰められた後に我々に報告が来ると思いますが、そういう意味では今の時点において、これが銀行側にどういう影響があるかとか、そういうことはまだ言える段階ではないだろうと思います。

問)

先程の東京海上と朝日生命の件なのですが、違った方向のことがあれば報告があるだろうというお話だったのですけれども、統合に向けた準備が進んでいるという方の報告というのはあるのでしょうか。またそういうふうに受け取られていらっしゃるのでしょうか。

答)

これはですね、これまでの報告によると、どの段階で行政が関わってくるかと申しますと事業譲渡ですね、事業譲渡について認可という手続きが必要ですから。しかし昨年11月の報告ではその時期は3月末でございますので、そういう面ではまだ行政が関わるようなステージと言いますか、局面にはなっていないのではないでしょうか。あくまで経営判断としての両者の協議が進められているものだというふうに認識しております。

問)

ダイエーの再建計画の中で、優先株の減資の部分でどれだけ減資するかという議論もあった中で全株を減資することになったと。この株主責任の観点も含めて、この優先株の減資について何か長官の方で評価があれば教えて下さい。

答)

結局はダイエーのバランスシート上の繰り越し損失、更に今後、不採算部門を切り捨てて収益力を飛躍的に上げるために予想される更なる損失、そういうものに見合ったものをバランスシート上でどう処理するかという問題の中で、そういう案が浮かんだということではないかと思います。

問題は、結局はダイエーが飛躍的に良くなって行けば、その減資に見合う、減資分の損失をはるかに越えるプラスがあるわけでございますから、減資だけを捉えてどうこうということはなかなか言えないのではないかと思いますけれども。

いわば見方によっては将来の大変なプラス、株価も含めてですね。それを生むための必要なツールだったと、手段だったというふうにも理解できるのではないかというふうに申し上げたいわけですけれども。

問)

ダイエーの再建策について、塩川大臣が、関係者の努力を多としながらも、もう少し早く対応できなかったのかと言及されたのですが、前回ダイエー、一昨年の11月に一旦、1,200億円の資本注入をしながら、再び1年後にこういう形になったということを踏まえて、銀行としての処理の仕方に問題がなかったのか、処理が遅過ぎたのではないかと、その辺に関してはいかがでしょうか。

答)

それは財務大臣のような見方もできるのかもしれませんけれども、私達、いろいろなこの再建策、交渉ですね、そういうケースをいろいろ眺めていますと、相当やはり関係者が多ければ多いほど時間はかかるわけでして、私はそんな中で最初、決算期は2月でございますから2月にもと言われていたのを、まああえて言えば1カ月早めて行ったと、この1カ月の重みは大きいと思うんですね。ですからやはり関係者の最大限の努力で、やっとここまで早められたのかなあというふうな見方もできると思うのです。

ただ、記者の方が仰るように一昨年からの、こういういろいろな流れの中で、ここまで出来るのだったらもっと早くという気持ちも、もちろん分からないわけではないのですけれども、非常にそこは問題を一杯含んでいたんだろうなあと、その中でよくここまで早められたという見方もできるのかなあというふうに思いますけれども。

問)

今後の、例えばゼネコンであるとか、いろいろなことを市場では言っているわけですけれども、ペイオフを前にしてということに皆、ちょっと具合が悪いのかもしれないですけれども、そこは長官としては今後どういうふうに…、まあ、ある程度同じようなケースが債権放棄で処理されるということで考えているということで宜しいのでしょうか。

答)

いろいろな問題企業の再建策というのは、メインバンクを中心に真剣に考えておられるものと承知しております。特に市場の評価、株価等の市場の評価の低いものについては、懸命な再建策が練られているものと思いますけれども、それがいつ結実してくるのか、我々はできるだけ早く再建策を必要とする企業については再建策が早く出てくることを強く期待しておりますけれども、今の段階で予断を持ったことはなかなか言えないなあというふうに思います。

問)

ダイエーの件で、私的整理のガイドラインの適用というか、そちらの運用を応用しようという考え方も銀行界の中にあったようですけれども、ダイエー自身としては高木社長も仰っているように、全金融機関の合意がなければいけないとかそういったいろいろな条件を勘案してみると、これは私的整理のガイドラインに沿った再建計画でないという判断をされていたようですけれども、このガイドラインの今後についてですが、問題企業の私的整理に関わる運用の際にどの程度有効活用されるのかどうか、一つダイエーの問題が出てきたことで現時点ではどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

答)

私的整理のガイドラインができた時も私、確かこの席であったか、あるいは皆さん方との懇談の席であったか申し上げたと思いますし、銀行界一般の認識なのですけれども、私的整理のやり方としてガイドラインとしてまとまったものが唯一のやり方だとは思っておりません。あの時、ですからもう我々は気を付けて私的整理という時にどういうふうにやるのかと、私的ガイドライン「等」と、「等」を必ず入れているわけですけれども、結局私的整理というのは民―民の合意でやるものでございますので、いろいろなやり方があるのだろうと思いますね。その一つが、ああいうかなりリジットな形でのガイドラインだったと思うのです。でもそれ以外のやり方というものを否定するものでは全くないということは当時から言っておりまして、今回の例は正に私的整理ではありますけれども、ガイドラインとは違った形での解決の仕方を求めたのではないかというふうに思っております。

(以上)

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