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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年2月18日(月)17時05分~17時32分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますでしょうか。

答)

特にございません。

問)

日米首脳会談が先程終わりまして、漏れ伝え聞いているところでは、構造改革ですとか不良債権処理の促進などについて話題になったと聞いております。こういった件について、金融庁として、より踏み込んだ政策に取り組むとすれば、何が今後考えられるのか。特に焦点とされている公的資金の再投入のことについてですけれども、竹中大臣が週末に「3月中にもあり得る」というような発言をなさったり、予防的注入もすべきだという声もいろんなところから出ておりますが、現段階での金融庁の見解をお願いします。

答)

まず日米首脳会談でございますけれども、具体的にどういうやり取りがあったかということについては、まだ私は承知しておりません。ただ、14時からの共同記者会見を皆様と共に聞かせていただいているわけでございますが、それによりますとご承知の通り、総理から不良債権の処理を含め、日本経済再生のための構造改革が着実に進展していること、また引き続き構造改革に断固たる決意で取り組んで行く姿勢に何ら揺るぎがないことを説明され、それに対して総理のそうしたご説明と断固たるご決意に対し、ブッシュ大統領から強い激励と支持が寄せられたと、そういうような感じの印象を受けております。

構造改革、これは金融庁にとってみれば金融セクターの構造改革、具体的に言えば不良債権処理の促進ということで、これはご承知の通り総理から柳澤大臣に対して、ご承知の通りの具体的な指示も出ているわけでございまして、今までも我々はその気持ちで取り組んで来たわけですが、一層総理の指示に従った取組みを懸命にやって行きたいというふうに思っております。

今ご質問になられた記者の方の最後の質問は、公的資本注入との関係を聞かれたと思うのですけれども、これまで柳澤大臣も何度か仰られ、それを踏まえて私もこの場で申して来たつもりですが、第一に、公的資金による資本増強を含めいわゆる預金保険法第102条第1項に規定されている措置につきましては、金融危機に対応するための措置でございまして、金融危機のおそれがあると認められる時に講ぜられるものと考えております。

第二に、現在主要行につきましては、3月末にかけて特別検査を含む検査を実施している最中でありまして、また株式市場を含む諸々の金融市場の動向を十分注視しているところでもございます。それを踏まえて、現時点において金融危機のおそれがあるとは認識していないわけでございます。

第三に申し上げたいことは、しかしいずれにせよ、今後、金融機関の健全性等に問題があり、法令に照らして必要があると判断される場合には、資本増強を含むあらゆる措置を講じまして、金融システムの安定の確保に万全を期して参りたいというふうに考えております。それが現時点における当庁のこの問題についての見解でございます。

なお、先程、経済財政政策担当大臣のご発言につきましての質問もございましたけれども、たまたまそれを聞いていなかったわけですけれども、先程の国会中継を見ております限りにおいては、当大臣は、何か必ず3月中に公的資金注入ということではないということで、明確に否定されているというふうに理解しております。

問)

デフレ対策として挙げている中にある特別検査の厳格化についてですけれども、厳格化することによって今年の3月期は、昨年の9月期に比べて不良債権処理額が1兆円ほど積み増しされるという試算が一部で報じられておりますが、この数字がそもそも正しいのかどうかということと、その数字が正しいのであれば、今までの自己査定が甘かったということにはならないのでしょうか。

あと、検査結果の公表について、現段階で検討されている部分について差し支えのない範囲で教えていただきたいと思います。

答)

質問されている方もお分かりになって質問されているとは思うのですが、相当誤解があるなという気がするのですね。7兆円とか、そういう数字は、昨年の11月でしたか、大手13行が昨年9月の中間決算の発表を行った際に、あくまで予想として、予想と言うのでしょうか、つまり今年の3月の自己査定がどうなるかというのは、去年の11月では分からないのですね、これは。そういう分からない段階で特別検査というのも十分意識しながら、どれくらいの引当準備金、あえて私は「準備金」という言葉を使うのですが、これは引当金ではないのです、自己査定しているわけではないのですから。今年の3月の自己査定を去年の11月には出来ません。従って、あくまでその引当金としてどれくらい必要だろうかということを各行がそれぞれ見計らった上で出した数字の合計が6.4兆円なわけでございます。

一方、通常の検査というのはバックワード・ルッキングなわけですね。つまり検査に入った時の時点からその前の直近の決算期、つまり今でございましたら昨年の9月の決算が果たして正しかったかどうかを見るのが検査なんです。

ところが、特別検査というのは、そういうことをしては時代に遅れると、時の激しい変化に遅れてしまうということで、市場の評価が著しく低下している企業等に着目いたしまして、そういう企業がその時点で、つまり検査に入った時点で3者協議、即ち銀行と監査法人と当検査局が議論して、今の時点で、つまりバックワード・ルッキングで9月の時点ではなくて、その時点で果たして債務者区分は何が適当なのかということを話し合って決めるのが特別検査なわけですね。

そういう意味におきまして、それを3月末にタイムリーに反映させる、これも特別検査の特徴ですね。

そういう時点で今の時点は何かというと2月の半ばです。今まさに3月末に向けて今の時点でこの企業はどういう債務者区分であろうかということを3者協議している最中のことでございまして、そういう時点で3月末の銀行の自己査定、これは当然3者協議の結論ですから、監査法人と検査局によって指示された債務者区分になるわけですけれども、それがどうなるかというのは今の時点では分かりません。その合計額が一体何兆円になるのかということは分からないわけでございまして、ただ、13行が一応準備金として備えているのが6.4兆円だということは分かっているわけです。果たしてそれがどれだけ上振れするのか、あるいは上振れしないのか、そいうことは今後分かる話であって、今の時点で仰られた記者の方の質問のようなことに答える準備は、当然銀行もありませんし、我々もございません。以上です。

問)

特別検査の公表の時期と方法については、いろいろ検討されていると思いますが、今の段階でまとまっている分というか、どういうような方向性でということについて仰られる範囲で結構ですのでお願いします。

答)

先程も申しましたように特別検査というのは、基本的に3月決算に反映させる債務者区分を、いわば3者協議で決めるのが特別検査でございまして、いわば特別検査の対象になっている企業、いろいろ複数企業あるわけですけれども、そういうものについて一つ一つ潰していく作業というものがいつまでかかるのか、非常にリアルタイムで判定するというのならば、3月末に極めて近いところになるわけですね。

しかし、その少し前で3者が合意してしまうということも考えられます。ですから、それを今からいつであろうかということを予測することは、私にとっては非常に難しいことでございまして、ただ、3月中のいずれかの時点では、そういう特別検査の対象になっている債務者企業についての債務者区分は決まるのだろうと思います。それを集計しまして、まさに何らかの形で公表する。公表の意義というのは、柳澤大臣も申されていたと思いますけれども、金融庁の検査に対する国民の信頼、ひいては不良債権処理に対する信頼の確保でございますので、これはやはりやらなくてはいけなというふうに我々は思っております。

ただ、やや二律背反的な面がありますのは、一方において特別検査というのは一定の条件を満たす債務者に着目して実施しているものでございますから、対象債務者企業を風評リスクにさらすことはどうしても避けたいと、これはもう前から言っていることでございます。この2つのやや矛盾した要素を何とかナローパスをすり抜けながら皆様に公表する。タイミングとしては検査結果が出次第出来るだけ早くということは言えるわけですけれども、どういう形でということになりますと、現在その2つの相矛盾する面をも含んだ要素を頭に置きながら、どういう形が良いのかというのを現在検討している最中で、まだ皆様にこういう形でということまで言える段階には来ておりません。

問)

今の件なんですが、3月のいずれかの時点で発表するものというのは、最終的な数字だと考えてよろしいのでしょうか。それと、竹中大臣は、それをもって公的資金注入の決断をすべきだと言っているのですが、そういった重大な決断が出来るだけのものが3月中に出て来ると考えてよろしいのでしょうか。

答)

特別検査だけが全てではないわけでございまして、当然通常検査を今やっているところもございますし、特別検査を含む諸々の検査結果というものが3月末の決算に反映されるわけですね。そういうことから考えますと、特別検査の結果だけで銀行の健全性が出て来るわけでもないわけでございまして、その他の諸々の検査結果及び銀行の自己査定と相まって銀行の健全性というものが出て来るわけでございまして、当然その必要があるならば、法令に照らして必要があるならば、金融危機を起こさないあらゆる措置をとると申しますか、そういう必要あらばの判断というのは、当然そういうものが全部出て来た後になろうかと思います。

問)

話は変わりますが、週末の一部の報道で、ペイオフに合わせて普通預金金利に上限を設けるという報道があったのですけれども、これは実際に検討されているのかどうか、されているのであれば、その狙いというのを教えて下さい。

答)

実はこれは今の話というのは、金融審議会の答申にまで遡るわけでございますけれども、御承知の通り、預金保険法改正を金融審議会にかけて審議して頂く、そしてその答申が出たのが確か平成11年の、冬に近い頃だったと思うのですけれども、その時に金融審議会の答申の中で、どういうふうに言われていたかと申しますと、「できる限りモラルハザードの発生を抑えることが必要であり、例えば全額保護される流動性預金を付利されない預金に限る」、つまり、普通預金は無利子だと。「あるいはその普通預金の金利に上限を設けるべきだ」というのが金融審議会の答申でございました。これは平成11年12月でございます。

そしていよいよペイオフが解禁されるまでに1カ月半まで来たわけでございまして、この金融審議会の答申を踏まえまして、我々は行動を起こさなければいけないと思ったわけです。即ち、預金金利に上限を設けるためには、まず金融庁長官及び財務大臣が日銀政策委員会に対して発議を致しまして、そして日銀政策委員会が、金融審議会金利調整分科会へ諮問致しまして、答申を受けると。そうした上で、基本的には日銀政策委員会が決定した金利の最高限度を政府が告示すると、こういう手続き、つまり金融庁長官と財務大臣がまず日銀政策委員会に預金金利の上限についての発議をし、上限規制と言うのでしょうか、それについて発議する。そして日銀政策委員会が金融審議会金利調整分科会に諮問して答申を受けて、その上で日銀政策委員会が金利の最高限度を決定し、そして政府が告示すると、こういう順番になっているわけです。

その発議に当たりまして、実際に金融機関の金利の実態を把握する必要があるわけですので、つまり現在、普通預金金利と定期預金金利の関係はどうなっているか各銀行について調査しなければいけないわけで、現在それを調査しているというのが今時点の状況でございます。

問)

先週末、朝日生命が抜本的なリストラ策というものを発表したのですけれども、それに対する評価についてどのように考えておられますでしょうか。

答)

御承知の内容の抜本策を発表され、我々もその説明を聞き、報告を受けております。

私から申しますと、その抜本策の評価と申しますのは、結局基本的に我々がどう評価するというよりも、朝日生命の契約者の皆様がどう評価するかということが一番重要だと思うのでございます。そういうふうに我々も朝日生命側にも言って、契約者の信頼回復を勝ち得るような抜本策というのを、やはり考えるべきではないかということを金融庁は示唆していたわけでございまして、それに応えて頂いたものでありますけれども、この内容について我々としては、契約者の皆様の信認を勝ち得るようになることを強く期待しております。

問)

週末に山崎自民党幹事長がRCCの簿価買取りについて言及したのですけれども、金融庁の見解をお聞かせ下さい。

答)

そういう内容の報道はよく承知しております。ただこの議論は、前の臨時国会におきまして、金融再生法が改正された際に、いろいろ国会で議論されたところでございまして、その結果として時価、マーケットプライスということで法律が改正されているわけでございます。これが簿価というか、実質簿価というか、いわゆる「原債権額-引当金」というものを実質簿価と呼ぶとするならば、実質簿価の買取ということになりますと、二次ロスを誰が負担するのかという問題とか、そもそも銀行側にモラルハザードが起きないかとか、いろいろな問題も生じてくるのだろうと思いますけれども、いずれにしても、現在の金融再生法の健全金融機関からの不良債権の買取と申しますのは、時価買取ということで法律上決まっているわけでございますので、そういう前提に立って、総理の御指示の下で当方としてはRCC及び金融機関に働きかけまして、是非とも積極的な活用を図っていきたいと。事実、入札にもRCCは積極的に参加をし始めておりますし、相対の交渉も活発化しているという認識でございます。

さらに、信託機能の活用、あるいは企業再生ファンドの設立等、今、いろいろ動きが出ていると思いますので、そういう動きを今後一層、推進していきたいというふうに思っております。

問)

株式取得機構の方ですが、これは2兆円と2兆円で4兆円というふうになっていますけれども、銀行の株式が切り離されるというのは、保有制限で決められている期日よりどんどん前倒しになるというふうにお考えでしょうか。

答)

これも総理の御指示がございました通り、取得機構の積極的活用ということを銀行に呼びかけていきたいというふうに思っております。

ただ、いくらの簿価の株をいくらで売るかというのは、やはり銀行の経営判断の問題もございますので、そういう理解の下で、当方と致しましては取得機構の活用、せっかく法律を作ってまで出来て、この2月15日に特別株式の買取を開始しまして、4月26日までという一応の期限を切って集中的に今やろうとしているところでございますので、大いにその活用をお願いしたいというふうに思っております。

(以上)

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