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森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年7月1日(月)17時02分~17時27分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

まず、与党内を中心にペイオフの来年の全面解禁について延期論を中心に様々な議論が出ているのですが、改めて今、どうお考えになっているかお願いします。

答)

今の記者の方が仰った事は報道等で承知しておりますけれども、金融庁としての立場は、先週金曜日に柳澤大臣が会見で申し上げた通りでございますし、また、その事は先週の私の定例記者会見でも申した通りでございまして、要するにこの4月1日からペイオフを解禁いたしまして、今は金融機関どこも預金者の信認を得られるように懸命な努力をしている時でございまして、流動性預金部分について、来年4月からどうするこうするということを検討するような時ではないというふうに認識しております。

問)

また、このペイオフとも絡むのですが、地域金融機関の合併促進策として、現在、金融庁の方でいろいろと検討されていると思いますが、その中で、合併を条件にペイオフの払い戻し保障額の上限を引き上げるという議論と、合併を条件に公的資金を入れても良いのではないかという議論が出ているように聞いているのですが、そこについて、現在どのような感じになっていますか。

答)

これは前から申し上げています通り、4月12日に特別検査の結果について公表いたしました際に、今後、地域金融機関の更なる強化という観点から合併促進策を検討して行くと、こういうことも同時に大臣から公表させていただいたわけでございます。そしてそのやり方としては、特に地域金融機関に焦点を当てた施策でございますので、地域金融機関のニーズを幅広く聴取いたしまして、かつ、必要に応じて関係省庁とも協議しながら検討して行くということもかねがね申し上げて来ている通りでございます。

そういうことから、いろいろな施策が遡上に上っているわけでございますけれども、一方において、それを絞り込んで、これだけのものをやって行こうというところまで絞り込むような状況には現在はまだなっておりません。

他方におきまして、大臣が今事務年度中にはその概要は発表したいということを皆様方にも仰られておりますし、我々にもそういうご指示が来ておりますので、取り組むべき施策の広がりが分かるような中間的な取りまとめの作業を、今やっているところでございます。まあ、出来るだけ早くこれは公表したいと思うのでございますけれども、要するに具体的な個々の施策というところまでの絞り込みは出来ないのですが、こういう範疇でこのような事を考えたいというようなことは皆様に分かるようなものと、こういう中間的な取りまとめを今、作業しているところでございます。以上です。

問)

その中間的なまとめですが、現在、今日、7月1日で、本来であれば事務年度が変わる事になると思います。中間的なまとめ自体をいつ頃までにというようなお考えはあるのかどうかお願いします。

答)

まあ出来るだけ早くということしか申し上げられないわけですけれども、基本的には実質的な事務年度の変更までにはというふうに考えております。

問)

すみません、その実質的な事務年度の話にまた戻ってしまうのですが、事務年度の交替、つまり人事について、幹部クラス等々、現在どのようなお考え、見通しになっていますでしょうか。

答)

これは正直申しまして先週の定例記者会見で申し上げた状況と変わりございません。即ち、国会開会中でもございまして、長官人事につきましてはまだ大臣から何もご指示はございません。

問)

一般事業会社に信託業務を認めるということを検討なさっていると思うのですが、現在の検討状況と信託業務の適用範囲の拡大の狙いについてご認識をお聞かせ願いたいのですが。

答)

これは正確に申しますと、既に金融審議会のテーマとして、言わば検討をお願いすることを決め、事実検討をし始めております。第1回の会合は6月5日に金融審議会の金融分科会第二部会の下に「信託に関するワーキンググループ」というものを設置いたしまして、6月5日に第1回会合を開催してございます。なお座長は神田秀樹・東京大学教授にお願いしてございます。

そういうことで、正式にと言いましょうか、金融審議会で議論を始めたばかりでございますので、それ以上のコメントは差し控えるべきだと思いますけれども、要するに、現在の信託業務は個々の特別法で信託業務を解禁しているものを除きますと、いわゆる金融機関に兼営法で信託業務を認めて行くということしかしていないわけですね。それを本来、大正11年に出来た信託業法という法律が、もう少し現在の状況を踏まえた使いやすいものであるならば、その信託業法を直接使って信託業務をいろいろなところに解禁出来る、こういう観点から、この信託業法の改正ということを視野に入れながら先程申し上げたワーキンググループでご検討いただいていると、こういうことでございまして、まだその先行きについてコメントするには時期尚早かというふう思います。

問)

先日、RCCの鬼追社長が政府の中小企業の保護と不良債権のオフバランス化のこの二つの政策が、いささかバッティングするのではないかというコメントをされまして、現在金融庁としてどういう考えをお持ちかということをお伺いしたいのですけれども。

答)

鬼追社長がどういう観点からそういうコメントを出されるのか、良く私は承知しておりませんけれども、一見バッティングしているような面もありますけれども、一方においてRCCの企業再生機能というものが、抜本的に今回向上することになっているわけで、事実、企業再生実績もどんどん出て来ている状況にございます。

そういう中にあって、中小企業向け債権がRCCに移ったとしても、そういうバッティングを起こさないような形での解決というのは可能なような状況になって行くのではないかと、こういうふうに金融庁としては考えております。

問)

合併なのですが、地域金融機関の合併を金融庁が強調されますと、かつての護送船団の行政のようなことも思い浮かべるのですが、これは1行たりとも潰さないという目的の下でやっているのか、あるいはペイオフ解禁後のちゃんとした退出のルール、こちらの方もちゃんと用意されてのことなのか、その辺をお聞かせください。

答)

退出のルールということは、何か生きている、つまり4%以上あるものを、何か退出のルール、そういうことは考えられません。敢えて言えば、退出のルールという意味におきましては、例えば「債務超過になって、もう浮き上がれない」とか、「そういうところは仕方がないですね」というのを退出のルールとするならば、それが退出のルールでございましょう。

一方において、合併促進策が護送船団的ではないかという、ただ今の記者の方のご発言ですけれども、これは誤解のないように申しておけば、我が方からA金融機関とB金融機関があって、「これは合併しないさいよ」というふうにもし言うならば、それは護送船団的でございましょう。我々はそんな事は考えておりません。それぞれの金融機関が、より強固に生き残っていくためにはどうしたら良いかということを、今も正に真剣に考えておりますし、そうした中で、隣の金融機関との合併というのが一つの選択肢として浮かび上がったならば、それを促進するような、合併し易くするような施策を考えておきましょうという事を申し上げているだけであって、逆に言えば、合併が唯一の地域金融機関の強化策とは考えておりません。

ですから合併の必要のないところで、かつまた、リストラ等いろいろ考えて自行の体質を強化して行く金融機関があるならば、それはそれで勿論歓迎でございますし、事実そういうものが多いのだろうというふうに思っておりまして、何も合併促進、あるいは合併が金融機関の唯一の生き残り策という言葉で言っているつもりはございません。

問)

この状態で、まあ債務超過になって破綻する金融機関が現れた場合、これは日銀は特融しないというような事も言っておりますが、この場合はもう預金保険の関係等、ペイオフになってしまうのですか。それとも他の方策を、P&Aとか・・・。

答)

いや、なかなか仮定の議論には・・・。大体今、我々の視野にそのような債務超過になって行くような金融機関はございませんし、なかなか仮定の議論は出来ないわけでございますけれども、基本はやはり自助努力ではないでしょうか。第三者割当増資なり何なり、きちんとそういうリスクが出て来た金融機関は早めにそういう早期改善策を打つべきだというふうに思っております。

問)

ペイオフの関係なのですけれども、信用金庫業界が先日の信用金庫大会で正式に要望をされており、柳澤大臣もご出席されていましたが、これについてどのように対応なさるおつもりでしょうか。それから、信用金庫の経営者の方々にいろいろ聞いてみますと、今現在の預金のシフトについて大手行は増えて、小さいところが減っているということですが、これはそもそも預金者が大手銀行に預けておけば、いざという時も国がきっと潰さないで、あるいは全額保護をしてくれるのではないかという予測に基づいたものであって、必ずしも健全かどうかを選別した動きではないのではないかと。となれば、中小・零細の金融機関にとっては不公平ではないかと、こういう意見を仰る方が多かったのですけれども、これについてはどうでしょうか。

答)

今、記者の方が仰られた前提と言いましょうか、枠組みというのは全て仮定の議論ですね。私は、そういう…こう言っては失礼かもしれませんけれども、そういう一方的な仮定の議論に沿ったことについてコメントは差し控えるべきだと思います。

それから、信金業界が正式に要請と仰られましたけれども、確かに信金大会での会長の挨拶は私も承知していますけれども、一切要請文とか、そういうものは我々は受け取っておりません。そういう意味で、他の業界からも何も来ていないので。私は今、いろいろ皆さんがいろんな場で議論している段階だというふうに思っておりますし、その状況は私は注視していきたいというふうに思っております。

同時に、預金の移動ということを仰られましたけれども、我々もそれを注視しております。今日の日銀の発表では、私も一部の新聞報道で承知したわけですけれども、随分預金の移動も緩和してきているという話もございますし、まあ引続きそういう預金シフト等については、それについても注視していきたい、議論も注視していきたいし、そういうことも注視していきたいと、そういうふうに思っております。

問)

仮定の話だというふうに仰いますけれども、全体に傾向としてそういう現象が現れているわけです。大手行の預金は増えて、中小では預金が減っている業態もあると。これについては、では何故にこういう現象が起きているというふうにお考えなのですか。

答)

まさに分析しているところでございます。いろいろアンケート調査も含めて、大臣の指示を受けて、そういうアンケート調査も含めて、預金者がどういう意識の下で、そう動いているかというのは、大臣の指示を受けて現在いろいろ調査をしているところでございます。

問)

確認なのですけれども、先日の信金大会で会長が柳澤大臣の前で、ああいうことを仰ったということ、それ自体は要請とは受け止めていないということなのでしょうか。

答)

いや、そうは言っていません。それはその時要請されたおつもりなのでしょう。ただ、今まで一般的に要請というのは必ず要請文が来るんですね。それが来ていないということを言っただけでございまして、まあいろいろご意見があるので、まだいろいろ各業界でとりまとめされている最中かなあと、それは信金だけではなくて他の業態も同じなのではないかなあと、どういうような取りまとめ方をされるのか、それを注視していると、こう申し上げたつもりでございます。

問)

銀行の四半期情報の開示なのですが、今年度から始まると思うのですが、長官ご自身、今回の四半期情報の開示はいつ頃というか、出来るだけ早い方がよろしいかと思いますが、念頭に置いている時期というのはございますでしょうか。

答)

確たる時期はまだ聞いておりませんけれども、やはり四半期が終わって1か月ちょっとはかかるのではないかというふうに認識しております。

問)

そうしますと、8月に入ってしまうような感じでしょうか。

答)

まあ、それぐらいかかるものとですね、例えば不良債権の不良債権残高なども、金融再生法開示基準に従って出すというふうに聞いておりますけれども、そういうものをいろいろクラリフィケイションするのに、それなりの時間がかかるのは止むを得ないのかなあというふうに思っておりますけれども。

なお、銀行につきましては、まあ特に主要銀行につきましては今年の4月から始まる事業年度でするわけですけれども、一方において、いろいろとアメリカでも企業会計のディスクロージャーというのが大きな問題になっておりまして、そういう面では我が国についても重要なのは銀行に限らず、企業会計全体のディスクロージャーを、より頻繁に、より密度の高い形でディスクローズしていくことというのが緊近の課題になっていると思います。

そういう面で事業会社につきまして、来年の4月1日から始まるところから、これは東証は上場会社に限られるわけですけれども、来年の4月に始まる事業年度から、いわば概況についてディスクロージャーが始まる、その次の年からは正に財務会計報告というものが義務付けられると、こういうスケジュールになっているわけですね。そういう形で今後ディスクロージャーがどんどん進んでいくということが必要だと思いますし、好ましいことだと思っております。

問)

銀行経営と株価水準の話なのですが、株価が1万円ちょっと上をうろうろしているわけですけれども、現在の株価水準と、それが銀行に与える影響について長官のお考えをちょっと教えてください。

答)

もちろん時価会計の下では、株価水準というのは銀行の健全性に与える影響は極めて大きいものがあるわけでございまして、そういう意味から日々注意深く見守っております。

ただ、なかなか概括的には…何と言いましょうか、各銀行の持っている保有株式というものはいろいろ変わっていくわけなもので、正確には申し上げられませんけれども、先般今年の3月末の水準がTOPIXで言って1,060ポイントぐらいだったでしょうか、それがつい最近1,000ポイントを若干割るところまで行きましたね。それでも主要行、12行全体での自己資本比率に与える影響と申しますのは、極めて限定的であるということでございます。ただ、だから大丈夫だとかそんなことを私は申し上げているつもりではございませんので、やはり時価会計の下での株価というのは極めて重要でございますし、そういう株価に影響されない銀行の体質を作り上げるには、やはり法律で定められております16年9月でございましたか、そこまででTier1相当というふうに法律上の株式の保有制限はそうなっておりますけれども、それにとらわれることなくもっと前倒しで銀行が株式を持つリスクというものを引き下げていくということが重要だというふうに思っております。

(以上)

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