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森前長官・高木新長官記者会見の概要

(平成14年7月12日(金)17時01分~17時26分)

  • 問) まず最初にご退任される森長官と、それから新しく就任される高木長官にそれぞれご挨拶をお願いします。まず森長官の方から。

  • 森前長官) 本日退任の承認をいただきまして、退官することになりました。思い返せば、平成10年12月15日に金融再生委員会の事務局長を拝命いたしまして、爾来、3年半あまり、記者の皆様に大変お世話になり、叱咤激励され、また厳しいご質問をいただき、大変鍛えていただいたというふうに思っておりまして、心から感謝申し上げる次第であります。今、退任の感想ということでございますけれども、平成9年秋から平成10年秋にかけて、ご承知の通り極めて厳しい金融危機の状況にありまして、そんな中で平成10年の金融国会におきまして、金融再生法と金融早期健全化法が成立致しまして、金融再生委員会はまさにこの2法を運用する時限的な機関として創られたわけでございます。そういう意味におきまして、私が金融再生委員会での2年間というのはこの2法の運用によって、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行といった大きな銀行の破綻処理、譲渡までを含めまして、あるいは平成11年3月の主要行への資本注入に始まりまして、その後の地方銀行への資本注入、そういうことに追われたわけでございます。

    1府12省庁になりました平成13年1月6日に金融再生委員会がいわばドアを閉めまして、それと同時に、はからずも金融庁長官を拝命いたしたわけでございます。そこから数えれば1年半、その間ご承知の通り非常に厳しい環境の中で、金融行政に注目が集まり、いろいろご批判も受けながら今日まで来たわけでございます。正直申しまして、平成10年12月15日以来、今日でちょうど1,306日になるわけでございますけれども、1日たりとも心休まる日はございませんでした。懸命にもがきながら今日まできたわけでございます。金融危機は何とか乗り越えても、まだまだ磐石というところまでには来ていないわけでございます。ただ、当時と比較すれば、やはり金融検査マニュアルに則った検査局のしっかりした検査によって、日本の金融機関の不況に対する抵抗力というものは格段に上がっている、向上していると思います。それはやはり、平成10年から基本的に早期是正措置の導入を初め、検査において引当金までしっかり見るというところ、すなわち検査手法がそれ以前と格段に違うものになり、そして金融検査マニュアルによる検査を当庁所管の全ての金融機関に対しまして、既に1巡あるいは2巡している、そういうものを経て、金融機関の抵抗力は強いものになっているというふうに思います。

    ただ、今年の4月1日からペイオフが解禁されまして、さらなる体力強化が今求められているわけでございまして、日本の金融機関にはここが収益力強化という意味で正念場を迎えていると思っております。そういう時に、金融庁といたしましても今回の異動で人心一新をし、長官の若返りを図り、組織の活性化を図ったと思います。私はフォワードルッキングであり、判断がスピーディーであり、さらにアグレッシブな高木新長官の行政手法に期待したいと思いますし、高木新長官の下で金融庁が求心力をもって金融行政が進められていくことを信じております。どうぞ私同様高木新長官をよろしくお願い致します。長い間本当にありがとうございました。

  • 高木新長官) 森長官の後任として金融庁長官を拝命致しました高木でございます。なにとぞ森さん同様よろしくご指導、ご支援をお願いしたいと思います。長官に就任致しまして、皆さんご承知のような大変厳しい状況の中で、とにかく全力投球しなきゃいかんな、というふうに思っております。具体的には小泉内閣の構造改革を実現するために、柳澤大臣のご指導の下、金融分野の抜本的な構造改革に全力で取り組みたいというふうに考えています。細かい点はともかく、今、森前長官からもお話がございましたけれども、今回の人事異動を契機に致しまして、大臣と一体となって「新しい金融庁」という気持ちで金融分野の構造改革に取り組んでいきたいと思います。その覚悟といたしましては、とにかくいろんな課題があるわけですが、前向きで積極的に、また迅速に、さらに果敢に取り組んで行きたいというふうに考えております。これは語呂合わせではないのですけれども、就任にあたっての私の考えた心構えと致しまして、「FSAの精神」というふうに考えております。具体的にはフォワードルッキング(Forward-looking) で、スピーディー(Speedy)で、アグレッシブ(Aggressive)に取り組んでいきたいということでございます。何卒、ご指導、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

  • 問) 新長官に当面の金融庁の課題についてどのようにお考えになられているのかということをお尋ねしたいと思います。

  • 高木新長官) それは先程申し上げた通り、一言で言いますと小泉内閣の構造改革の実現に向けて金融分野の抜本的な構造改革に取り組んでいくということが、もう何よりも重要な課題だというふうに考えております。その中身としてですね、どういうことがあるかと言いますと、まあいろいろある訳でございますけれども、とにかく不良債権処理を一層加速していくということは引き続き最重要課題だというふうに考えております。もちろん不良債権に限らず的確な検査監督をするということは当然のことでございますが、とにかく不良債権処理を抜本的に進めて行きたいというふうに考えております。

    それから更に今日、ビジョン懇の報告が公表されておりますけれども、それを踏まえてですね、金融の将来像を展望する中期ビジョンを早急に作成して、将来に向けた金融のあり方を早急に整理していくということも大変重要な課題だというふうに考えております。そういう金融の将来展望に関する中でいろいろ議論がなされる訳ですけれども、そういった議論も踏まえながら更に具体的な課題に取り組んでいきたいというふうに思っております。

    まあその中身としては、大きく申し上げて一つは活力があって安定した金融システムを確立していくと、まあ具体的中身としては合併等の促進といったものも含まれてくるというふうに考えております。

    それからもう一つの大きな具体的な中身と致しましては、直接金融市場の抜本的な改革があるというふうに考えております。これは証券市場の構造改革ということでもある訳ですが、その中身として市場の信頼性向上のためにどういうものがあるかと、あるいは市場との関係における発行体のあり方だとか、市場を仲介している担い手と言いますか、そういう人たちのあり方はどう考えるべきか、更に市場のインフラと言いますか、そういったものの一層の整理だとか、更にはこれは直接金融というよりも間接型金融ではありますけれども、投信だとか保険だとかそういった、いわゆる市場で資金を運用していく資金運用事業者と言いますか、そういうもののあり方を含めてですね、広く抜本的な改革を検討して行きたいというふうに考えております。

    幸い私、実は、大変珍しいことではあるのですが、今で言います市場課長を3年やっておりますし、それから発行側であります国債課長も経験しております。そういうことで市場原理に則った行政と言いますか、そういう感覚で課題に取り組んで行きたいと思っております。市場の感覚と言いますと、まあ一言で言えば透明性が高く、透明性と公正性と言いますか、この二つが極めて重要なのですが、そういう感覚を大切にこういった課題に取り組んで行きたいと、こういうふうに考えております。

  • 問) 改めてなのですが、来年4月のペイオフの全面解禁については与党あるいは経済界から延期すべきだという声が高まっておりますが、改めて新長官のご見解をお聞かせ下さい。

  • 高木新長官) いろいろなご意見があることは当然私も承知いたしておりますが、ペイオフというのはやはり預金者が自己の責任と判断で行動すると、それを前提に金融機関は緊張感を持ってですね、そういう預金者の信頼を勝ち得て行くという、そのための努力をするということになってくる訳ですから、いわば金融の構造改革として極めて重要な政策だというふうに思っております。そういうことで基本的には、そういうペイオフは予定通り進めるべきだというふうに考えております。もちろん預金の動向とか、そういったものについては十分注視をして行かなければいけないというふうに思っておりますが、現在の状況で何か考えなくてはいかんといった状況にはないというふうに考えております。

  • 問) 一昨日ですが、金融庁が地域金融機関の合併促進策というものをまとめられましたけれども、この中で公的資金の再注入というようなことが検討手段となるということなのですが、これは、これまでの金融庁の方針が、金融行政の方針転換ではないかというご指摘もあるのですけれども、これについて長官はどのようにお考えでしょうか。

  • 高木新長官) 方針転換というのは今一つ良く理解できないのですが、いずれにしても早期健全化法で資本注入という制度がございましたですね。そしてそれが無くなって、今は預金保険法102条でシステミックリスクの場合に資本注入可能という制度があるわけですね。ただ基本的にこれは何と言うか、金融機関が単独でいろいろな収益力の向上なり、いろいろな努力をすることは当然のことであって、そういう金融機関に対して資本注入する制度があったというのは、やはりそれは97年、98年以降の金融システムに不安があった状況の下での制度だったと思うのですね。今のような、ある意味で平時の状態の中で、そういう当然の努力をすることに対して資本注入をするといったことは考えられないというふうに私は考えているのです。

    ただ、金融が経済のインフラとして極めて重要な役割を果たしておりますから、そういったことを踏まえますと、金融機関がより有力な収益力の向上、あるいは経営の安定のためにより有力な手法として合併等に踏み切って行くというご判断をされた時に、合併ということになりますといろいろな合併に伴うコストもかかることもございますから、そういった点も踏まえて、ある種インセンティブとしてそういう制度があってもいいかもわからないということで、検討の対象から排除する必要はないというふうに考えております。

  • 問) 今回の人事につきましては、長官が大変若返られるということで、長官としては非常にお年が若いのではないかという声もあるようですが、この辺について高木長官はどのようにお考えでしょうか。

  • 高木新長官) とにかく何と言いますか、人事は人事権者が決めることですから、私がちょっとコメントするのもどうかというふうに思いますので、差し控えさせて頂きたいと思いますが、いずれにしても我々の世界はどういう仕事であれ、与えられればそれを全力で期待された役割、あるいは職責を果たして行くということに尽きるというふうに理解をしております。

  • 問) 高木長官に伺います。先程、ビジョン懇の報告書を出した蝋山座長の方から、現状の金融の評価は全て落第点だということを伺いました。報告書の中にも金融行政のあり方についても少し厳しい部分もありましたけれども、なぜ金融行政がこれまで信頼されていないのかという部分、なぜだと思われますか。それが1点とですね、信頼されるものになるには何をしなければいけないのか、何を変えていかなければいけないのかというこの2点をお願いします。

  • 高木新長官) 厳しいご意見は厳しいご意見として真摯に受け止めて、蝋山先生を初め、皆さんの信頼が得られるように最大限の努力をして行きたいというふうに思っております。実際にもそれなりにいろいろ問題があったのかも分かりません。それは全力で努力して来たつもりなのですが、更に一層努力しなければいかんなと思っておりますが、同時に、やはり一つの反省として、我々森長官の下で必死に取り組んで来たわけですけれども、それを何と言いますか、十分皆さんにご理解いただけるような努力も併せてしただろうかというふうな反省も致しております。そういうことで実質的にも同時に、何と言いますか皆さんのご理解をいただくという面でも、両面で全力で努力したいというふうに考えております。

  • 問) 森さんの方にお伺いしたいのですが、日野さんがかつてお辞めになる時に、休みの日も何回か出てきて大変だったというこぼれ話を仰っていたことを憶えております。まあ、一日として心安まる日がなかったということのようですが、特に再生委員会からこれまで、印象に残ったことを差し支えない範囲で言っていただけますでしょうか。

  • 森前長官) 3年半のことは今の記者の方のご質問を受けますと、走馬灯のようにいろいろなことが思い出される訳でございますけれども、あまりにもいろいろなことが思い出されるものでございますので、こういう席ではコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

    先程の質問にもございましたけれども、何とか金融行政の信頼を得るべく、最大限の努力はしてきました。今、高木新長官が仰ったように、金融行政の対象は金融機関でございますので、いろいろな風評のリスクを抱えておりますので、どうしても説明が慎重になる面もあって、いろいろ世間に誤解を与えた面もあったかなというふうに反省は致しております。そういうことで、今、高木長官が仰ったように、これからは金融アカウンタビリティーの面でもより腕を磨いていく必要があるのかなというふうに思っております。

  • 問) 高木長官に対してですが、柳澤大臣から特に指示を受けたというか、何かあるのでしょうか。

  • 高木新長官) 特に具体にまだ、今日頂いたばかりですし、バタバタしていますからございませんが、ただ一言「思い切り頑張ってくれ」という話は承っております。

(以上)

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