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高木金融庁長官記者会見の概要

(平成14年7月15日(月)17時04分~17時26分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

今日、三井住友銀行の方でATMの障害が起きたということなのですが、金融庁の方にはどういった報告、説明が上がって来ていますでしょうか。

答)

今日の朝9時から9時50分ですか、三井住友の東日本地域のATM約1,500台が止まったという事で、その後、全て正常に稼動しているという事のようです。

原因は通信機器のハードウェアに障害が生じたという事なのですが、詳しい原因は今、調査中でございます。いずれにしても、三井住友の場合、通信機器が二重化されていますから、片方のハードウェアに障害が生じても、もう一方の方に切り替えるという事で、速やかに復旧が出来たということであります。

三井住友自身、詳しい原因究明は現在やっている最中のようでございますから、金融庁としても今後詳しくヒアリングを受けて、徹底した再発防止を求めて行きたいというふうに考えております。

問)

日曜日の日に、ペイオフに関して与党の方で「9月にはペイオフについて方針を決定したい」というような事を言っているのですが、改めまして来年4月のペイオフ全面解除について現在どのような方針で臨まれるかをお願いします。

答)

先週の金曜日にも申し上げましたけれども、そういういろんな議論があることは我々は十分承知をしております。現時点でどうかと言いますと、今の「予定通り実施する」という考え方を変えなくてはいけないような状況にはないのではないかというふうに思っております。

まあいずれにしても、今後の預金の動向については十分注視して行きたいと思っています。前回も申し上げましたけれども、やはりペイオフというのは、金融分野の構造改革として重要なものでありますから、そういう事も念頭に置きながら、他方で預金の動向等も十分注視して行きたいというふうに思っております。

問)

アメリカの方で、不正会計処理等々の話もありまして、ニューヨークの株式市場が下落しているということですが、日本の方でもこのところ株価が下がって来ているのですが、現在の株価水準が銀行の経営に与える影響についてどうご覧になっているかお願いします。

答)

そもそも主要行で保有している株式の14年3月末の時価総額が24兆円くらいあるのですが、その内、外国株式というのは2,000億円ぐらいですから、アメリカの株と言いますか、外国の株が多少下がったからと言って、主要行の自己資本比率に与える影響というのは、もうほとんど全く軽微なものだというふうに理解をしております。

アメリカの株式市場の影響を受けて日本の株が下がったらどうかという事なのですが、これも前長官も多分申し上げてると思うのですが、例えばTOPIXが1割下落して、それに銀行保有株の下落が100%連動して、やはり1割下落するという仮定で機械的に試算しても、自己資本比率は0.4%の低下に留まりますから、そういう事を考えても現時点で主要行の経営に与える影響は、そんなに問題になるようなものではないというふうに思っています。

問)

先週金曜日の日に、金融の中期ビジョンという事で、金融相の私的懇話会の方で報告があったのですが、その報告について長官の方はどのような感想を持たれているか、また、今後の具体的なスケジュールについてどのように進めて行くのか教えていただけますでしょうか。

答)

ビジョン懇の報告ですが、これも先週の金曜日にちょっと申し上げたような気がしますけれども、いずれにしても報告書の内容は、基本的に、価格メカニズムが有効に働く、またそれによって円滑な資金配分が可能となる、そういった市場機能の役割を重視するという考え方ですね。それによって、そういう変化の中で、そういう方向で金融システムとか、金融仲介ビジネスがどうあるべきかという観点から報告を頂いたというふうに理解しております。

まあいずれにしても、まさに私もそういう基本的な部分では報告書の仰る事は極めて重要だと思っていますから、この懇話会の報告を基礎として、金融審議会に諮りながら早急に中期ビジョンを取りまとめたいというふうに思っておりますが、現状で「いつまで」というところまではまだ申し上げられない状況にあります。出来るだけ早く取りまとめたいというふうに思っています。

問)

三井住友でシステム障害があったようなのですが、その報告はあったのでしょうか。

答)

そういう報告が事実上すぐにあったという事なのですが、それによってそういう報告を良く聞いて、法律に基づく報告徴求をするのかしないのか、その辺も含めて早急に検討したいと思っています。

問)

三井住友から事態の報告があって、それを判断した上で24条報告を求めるということですか。

答)

その中身にもよると思うのですね。

問)

三井住友なのですけれども、昨日も同様のトラブルがあったという事ですけれども、その件については金融庁に対して、非公式でも良いのですが、三井住友側から昨日報告はあったのでしょうか。

答)

昨日の件も報告が来ているようです。

問)

将来ビジョンなのですが、金融行政に対しても提言と言いますか、そういう内容のものが含まれていたと思うのですが、これはやはり政府のビジョンとしてまとまってから金融の行政も変わって行くのか、その部分は先取りして、行政の部分はそういった提言というのを早め早めにとって変わって行くのか、どちらでしょうか。

答)

基本的にはビジョン懇の報告書は私的懇話会の報告ですから、それを元に政府として中期ビジョンを作成して行くわけですから、最終的な形というのはそこでまとまると思うのですね。

だけれども、いろんな重要課題が山積していますから、それまで検討しないという訳には行きませんから、そういった証券市場の構造改革とかいろいろ考えて行く中で、当然その懇話会での議論も踏まえて検討して行く事になるというふうに思っています。

問)

検査についてお聞きしたいのですけれども、新事務年度に入って金融機関の検査がこれからということですが、特に大手銀行については今度から新しい手法を導入されると聞いているのですが、これによって前事務年度までの検査とどういう違いがあるのか、姿勢にどういう変化があるのか、・・

答)

それはやはり、「常駐的」な検査と言っていますけれども、要は、決まった一定のチームが同一グループの検査を担当するという事で、整合性の取れたきちっとした検査が出来るようになるというふうに期待をしているわけです。同時に、確か監査については横断的にやるという事で、その専担チームとそういう横断的なチームで非常にきめの細かい厳格な検査が実施出来るのではないかというふうに期待しています。

問)

中小企業向けの融資に対しては、金融庁の検査が足かせになっていないのかというような批判が政治家の間では多いのですけれども、その点に関しては状況に変化はあるのでしょうか。

答)

金融庁の検査はあくまで債務者区分と言いますか、債権を分類する作業ですから、不良債権と言いますか、それぞれの区分に応じて的確に分類していくということに尽きるんですね。ただより実態に即した的確な債務者区分ができるように、ああいう中小企業向けの別冊マニュアルも作っているわけですから、従来以上にきめ細かい検査ができるようになるとは思っています。いずれにしても中小企業向けの融資の話と検査における債務者区分はまた違った話だと思います。

問)

直接金融市場の抜本的な改革、これは就任会見のときにも仰いましたけれども、これについてはヒアリングを進められているそうですが、スケジュール的にはいつ頃までにまとまるのでしょうか。

答)

これはまだそこまで煮詰まっていないのですが、いずれにしても喫緊の課題ですから、つまりビジョン懇の報告書の考え方、市場メカニズム・市場原理が働く金融市場というのが基本ですから、そういう観点からすると、間接金融だけではそういう原理というのは上手く働きませんね。直接金融がきちっと機能して初めて、間接金融も市場原理が働くようになるわけですから。そういう意味で喫緊の課題でありますから、今お話にあったようなヒアリングを踏まえながら、これも現状ではとにかくできるだけ早く検討を進めたいというふうに考えているということです。

問)

アメリカの今の金融市場の混乱をちょっと分析していただきたいのですが。今のところ会計制度の問題とか、不正な会計の問題というのがクローズアップされていますけれども、そもそもシステム全体としては有効なものだというふうにご認識でしょうか。と言いますのはビジョン懇の報告が割と今のアメリカの市場型間接金融と言いますか、それに近いものを示しているような気がしますので、あのシステムは今混乱を起こしていますが、もともとのものは大丈夫だけれども、一部の不正とか会計の問題があるだけで今混乱しているだけというふうにご認識でしょうか。

答)

アメリカの状況がどういうことかというのは良く勉強したいと思いますけれども、不正な経理も大きな要因だと思いますけれども、他にもいろいろあるのだと思うんですね。市場に影響を与えるものとしてはいろいろな要素がありますから。そういうものもこれから良く勉強して考えたいと思いますが、アメリカ型と言うと何ですけれども、いずれにしても市場原理が働く直間のバランスの取れた市場というのは、その基本的な考え方というのは正しいんだと思うんですね。ですからアメリカのマーケットがどうかということ、それはそれで勉強しますけれども、基本的な考え方はビジョン懇の考え方でいいのではないか思っていますから、そういうことを踏まえながらいろいろな問題について検討して行きたいと思っています。

問)

ペイオフの話で、預金の動向を注視して行くというお話がありましたが、今後例えば預金の動向に何らの変化があった場合には、全面解禁のスケジュールというのは見直すお考えがあるのでしょうか。

答)

確かに定期性から流動性預金へシフトし、また業態別にも多少の移動は生じていますけれども、そもそも預貸率という面から見てもそんなに問題のある状況ではありませんし、ある意味で言うと今年の4月にペイオフが基本的な部分が解禁されて、それに対応して預金者が正に健全に対応している過程と言うのでしょうか、そういう意味で今の状況に不安を持つ必要はないと思います。さはさりながら、どういう事態が起こるかということについては更に今後とも良く注意して見て行きたいと思っています。

問)

週末の報道で、信金・信組の合併促進策の一環として優先出資証券の上限を緩和するというものがありましたが、これは金融庁で実際に検討はされているのでしょうか。

答)

この前、10日だったでしょうか、中間の検討状況を確か公表したと思うのですが、現状はあそこに書いてある話です。確か資本増強の部分についても、方策について検討するということになっていたと思うのですけれども、その検討の中身について何か限定して今考えているということはありませんから、制度面も含めて広く検討することになるというふうに思っております。

問)

それも含めて、広く検討されると。

答)

「それも含めて」と言いますか、「それ」と具体的に「あれ」を指して「それも含めて」と言うことでもないんですね。ああいうものも含めて広く検討することになるだろうと思っております。

問)

三井住友の件ですが、法律に基づいて報告徴求をして行かなければならない状況というのは例えばどういうことなのですか。

答)

基本的には法律に基づいた報告徴求をかけるというのが基本だと思います。ですからまず、事実関係の報告を受けて特段の問題がなければ、それに留めるということもあるかもわかりませんが、基本的には法律に基づく報告徴求をきちっとかけて、それで報告を受けると。それ以上のアクションを取るかどうかはともかく、そういう法律に基づいたきちっとした処理をして行くというのが基本だと思いますね。

問)

先週BISの年次報告で、邦銀と大手生保の資本の持ち合いについて非常に批判的な文章が盛り込まれて、システミックリスクも強まるとか、そういう表現もあるのですけれども、これについては長官はどのようにお考えでしょうか。

答)

保険と銀行はリスクの性質も違いますから、必ずしもああいうふうに同一のリスクとして認識しているかどうかはともかく、今までの取り扱いというのはリスクの性格が違うので、持ち合っているからどうだという、ダブルギアリングと言うのでしょうか、つまり除外するという取り扱いはしていないんですね。それで保険の資本の充実という問題についても、今後状態に応じて勉強し、絶えず見直しをしなければならないと思います。現時点ではリスクの性質が違うということで、除外しないという取り扱いになっていますね。

(以上)

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