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高木金融庁長官記者会見の概要

(平成14年9月9日(月)18時34分~18時54分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

今日、政府・与党で議論になったと聞いているデフレ対策について二点お聞きしたいのですけれども、その中の議論で、整理回収機構が不良債権を買い取る価格を引き上げたらどうかという議論と、ETFの購入を年金、公的資金を使って進めたらどうかという、二点のアイデアが出ているようなのですけれども、これについて現時点で金融庁としての見解をお聞きしたいと思います。

答)

その話は与党でいろいろなご議論がなされているということは承知しておりますけれども、与党は与党のご議論として、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしても政府として、今後政府部内で、いろいろな角度から議論がなされるというふうに考えています。

問)

RCCの買取価格は、既に時価という見直しをつい最近やっているのですけれども、それでも尚、見直し論が出ることについては、どう受け止めていらっしゃいますか。

答)

RCCについては今年の1月11日に法律改正を受けて、時価買取であるとか入札に参加出来るとか、そういう改正が施行されている訳です。その後9月までを見ても、確か1兆3千億円位の買取ないし信託という形で、きちっとRCCが対応しているという状況だと思います。過去どういう状況だったかと言いますと、11年4月から13年12月までの計数を見ると、その間で1兆円位の買い取りなのですね。ですからペース的には4倍以上になっていますから、我々としてはきちっとした処理をしているというふうに考えています。

問)

金融安定化に関連して、この前、速水日銀総裁が記者会見で、また資本注入論について言及なさいました。もう一点、今日、諮問会議の民間議員の提言の方で、これも公的資金を使って経営内容が悪い所については再注入して、もう国有化するような案についても言及があるようなのですが、銀行の資本についての不安がまたここに来て広がっている点については、どう受け止めていらっしゃいますか。

答)

不良債権については、13年度中もかなり積極的に処理がなされているのですが、今年の4月に更に具体的な目標も設定し、積極的に処理をしてきている訳です。RCCも先程申し上げたような積極的な買い取り等で対応しているという状況なのです。現状、銀行の中に自己資本比率等で問題があるということはないと思っています。我々の姿勢は従来から申し上げておりますように、不良債権を迅速に確実に処理していくと、その過程で必要があれば公的資本注入も預金保険法102条という制度がちゃんとある訳ですから、それによってきちっと対応するという姿勢に変わりはないということです。

問)

ただ政府の中で、同じ組織ではないにしても諮問会議からそういう意見が出ることについては、一度説明する必要があるのではないかと思うのですけれども。これは大臣なのか長官なのか分かりませんが、近々何らかの場で、諮問会議の議員と意見交換なさるようなお考えはないのでしょうか。

答)

いずれにしてもどういう手順になるか、現時点ではよく承知しておりませんけれども、政府部内でいろいろ議論をしていく中で、そういった点についても、きちっとご説明して行きたいというふうに思っております。

問)

来年4月に予定しているペイオフの解禁ですが、決済用預金の保護について一定の方向性が出ているのですけれども、金融機関の準備状況に配慮して、一定の猶予期間を設けるべきだという声もあるようなのですけれども、これをどの位に設定するかについて、意見交換の中で何らかの方向性みたいなものは出て来ましたでしょうか。

答)

今、総務企画局の方でいろいろ金融機関からお話を承っているところだと思います。いずれにしても、システム対応あるいは顧客対応に混乱のないように実施するために、必要最小限どの程度の移行期間が必要かということについては、よく実態をヒアリングし、判断する必要があるというふうに考えています。

問)

今年の4月から定期性のペイオフを外してから、預金の移動が顕著に見られて、今後決済用預金を保護するにしても同様の動きが強まるのではないかと、それに伴って貸し出しに回しにくい資金が溜まってしまって、金融機関の貸し渋りが一段と助長されるのではないかという心配が金融界等には出ているのですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。

答)

今年の4月に定期性預金についてペイオフを解禁した訳ですね。それで普通預金にかなりシフトが起きたと。ただ決済用預金も普通預金も要求払いで性格は同じですから、その時点にならないと分かりませんけれども、更に預金のシフトが起こるということは、理屈の上からはそういうことは基本的にはないのではないかと思っています。4月以降、今は9月ですから、この間、定期性預金のペイオフ解禁に伴う預金者の行動が相当程度行われたと、そしてそういうシフトが起こっている訳ですけれども、政府として決済用預金を全額保護すれば、普通預金が全額保護されている状況よりも、要求払い預金の割合が増えるといいますか、より一層そこにシフトするということは、理屈の上ではそういうことはないのではないかと、そういうふうに思います。

問)

貸し出しへの影響はいかがですか。

答)

ですから貸し出しについては、確かに原資が短資化する訳ですが、それは今の金融情勢、あるいは普通預金の保護ということも関係していると思いますけれども、別にそれぞれの金融機関からよそへ大きく資金が移動しているという訳でもない訳ですね。そういう状況の中で、確かに金融機関もいろいろリスク管理等に細心の注意は必要だと思いますけれども、そういうことを前提に、金融機関は適切な融資が継続されるというふうに思いますし、またそういう期待をしているということでございます。

問)

RCCの件ですけれども、不良債権の買取価格が現状の時価のままでも、不良債権の処理は今後順調に進んで行くというご見解なのでしょうか。

答)

もう少しご説明しますと、不良債権については具体的な処理目標を設定し、迅速な処理を求めている訳です。その具体的な処理目標は、1年で5割以上、2年で概ね8割以上の処理を求めている訳ですね。更にその目標達成を担保するものとして、RCCの活用も位置付けている訳です。そういう枠組みの中で、RCCが現実にどの位買い取っているか、あるいは信託を含めてやっているか、そういう状況を見ると、9月までで1兆3千億円ということですから、従来の4倍以上のペースということで、十分その機能を果たしているということです。その枠組み全体の中で、不良債権は迅速に完全に処理されるというふうに我々は考えています。

問)

銀行の資本の質について、一年余り議論がありましたが、公的資金や税効果で嵩上げされているのだとか、だからもう一度公的資金を入れてしっかりやった方が良いのではないかという議論があるのですけれども、そこはどうお考えですか。

答)

今のご質問について言えば、そもそも公的資金について言えば、公的資金を除いて考えて公的資金を入れるというのは、論理矛盾だと思うのですね。やはり公的資金は自己資本充実のために注入している訳ですから、それを除いて考えるのは私はおかしいと思います。全体の自己資本の議論について言えば、これは一つの国際的なルールですから、そのルールに則っているかどうかということについて、我々は極めて厳格に注視もし、チェックもしなければならない、またそういうふうにやってきているわけです。そのルールを見直すかどうかということについては、現在BISでいろいろな議論がなされていますけれども、それについては我々も積極的に取り組んでいますし、いろいろな意味で積極的に取り組んで行きたいと考えています。

いずれにしてもルールとして決められたものに則って、現行の各金融機関の自己資本比率は厳格にはじかれている訳ですから、それでその自己資本比率に現状、特段の問題はないと考えています。改めて先程も申し上げたのですけれども、そういう不良債権処理等を積極的に確実に進めますけれども、そういう中で自己資本比率に問題が出る等々、金融システムが預金保険法102条に該当するような状態になれば、我々は従来から申し上げておりますように、そういう必要があれば当然、102条に基づいた対応というものも躊躇なく実行するということに何ら変わりはありません。

問)

自己資本比率がどのような状態になれば102条に該当するのでしょうか。

答)

自己資本比率だけで判断するものでもないと思います。システミックリスクの恐れといいますか、そういうことですから自己資本比率も一つの大きな要素だとは思いますけれど、それのみで判断するものではないと思いますし、ケース・バイ・ケースで、その状況毎に判断すべき問題だと思います。

問)

例えば、どのような要件が、というのは長官の頭の中にあるのでしょうか。

答)

それはその状況でないと分かりません。自己資本比率も一つの重要な要素だと思いますけれど、後はやはりシステミックリスクになる可能性が十分あると判断される場合だと思いますけれど。

問)

RCCの実質簿価買取の話ですが、これはRCCを経由して実質公的資金を入れるに等しいお話ですが、以前、国会答弁等で大臣は、公的資金を入れる際に、銀行側から入れたり、RCC側から入れたりと、双方から入れるのは好ましくないということを仰っていましたが、高木長官はそのことについてどうお考えでしょうか。

答)

答えにならないかもしれませんけれども、今の不良債権処理の基本的な枠組みは、一つは不良債権を徹底的に洗い出して行くということですから、判定基準を厳格化したり、或いは特別検査を実施したり、今年度では通年・専担検査で厳しくチェックして行くということがまず一つです。もう一つは、把握した、判明した不良債権については、迅速に処理して行くということで具体的な処理目標を設定して、それに則って不良債権を完全に処理して行くということです。

その中で金融機関と債務者が不良債権になったものについて、その企業の実態と言いますか、再生可能性を議論・分析して、再生、或いは清算といった処理方法を判断して行く訳ですね。つまり民の力と言いますか、市場原理に基づく企業の再生と言いますか経済の構造改革をするということも併せてやっている訳です。

それで、そういった処理目標を担保する仕組みとしてRCCによる買取等が、いわば目標達成の担保措置でもある訳で、そういうことを全体として不良債権処理を確実に、迅速に処理して行くという基本的な枠組なのです。

要約しますと、今申し上げたような仕組によって、処理目標に沿った不良債権の迅速・完全な処理を図るということです。それから他方で企業の再生の可能性があるものについては、的確に再生して行くというようなことによって、経済の構造改革や活性化も図っていくということを実現しようとしている訳です。

ですから、RCCによる簿価買取とはどういうことを仰っているか、詳しく聞いた訳ではありませんので、コメントは出来ませんけれど、いずれにしても、今申上げた基本的な枠組が不良債権の完全処理、それから経済の構造改革の両面から見て適切な枠組だというふうに考えています。

問)

先程の質問の繰返しになってしまうのですが、今持っている枠組で十分目標は達成できるということでよろしいのでしょうか。

答)

当然、目標達成に向けて最大限努力していますし、繰返しになりますけれども、単に目標を設定しているだけではなくて、同時にRCCによりその目標を担保するという仕組にはなっている訳ですから、これによって不良債権処理の迅速かつ完全処理という目標は達成出来るというふうに考えています。

問)

経済財政諮問会議では、いわゆる「Bad-Bank」と「Good-Bank」という二つの分類がありまして、かなり踏み込んだ感じがしますが、それだけに市場の評価がありまして分かり易いという感じらしいのですが、そういうふうに分けた方がシステムリスクに波及しないという考え方のようですが、それについてはどうお考えですか。

答)

「Good-Bank」と「Bad-Bank」という二類型に分けられるものでもなくて、我々は個々の金融機関の内容についてきっちりと注意深く見ている訳ですから、そういう中で、金融機関毎に内容を精査した上で、必要な状況になれば、先程も申し上げたように当然きっちりと対応するということを申し上げている訳で、概念上は分かりますが、単に「Good-Bank」と「Bad-Bank」というよりももっと仔細に、注意深く、我々は金融機関の状況を見ているということであります。

問)

例えば業務純益の金額と不良債権の処理額が、あまり何年にも亘って不良債権の処理額が多くなるというふうなことであれば、当然、自己資本が毀損して来るのでまずい状態だと思うのですが、例えばそういったような指標とか、そういうことは考えられますか。

答)

指標と言いますか、その中身について、我々は当然、注意深く見ているということなのですが。

問)

業務純益を上回る不良債権処理が何年も続くといったようなことは考えておられないということですか。

答)

不良債権問題を早期に解決すべく、先程申し上げたような基本的な枠組の中で、今、積極的に取組んでいるということです。

(以上)

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