高木金融庁長官記者会見の概要

(平成14年10月7日(月)17時05分~17時26分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

株価なのですが、8,688円とバブル崩壊後の最安値を更新しましたが、これが銀行の経営に与える影響、また経済全体への波及効果みたいなことについて、長官はどのようにお考えかお願いします。

答)

株価が下がると、まあご承知のように経済の実体面と、今仰ったように金融機関にも影響を与えるのは当然ですね。その実体面では景気の先行きへの信頼の低下と言いますか、そういう事だとか、あるいは資産のデフレ効果ということもありますから、個人消費だとか設備投資等の、いわゆる最終需要ですか、そういうものが低下するおそれがあるとか、あるいは端的に言うと企業の資金調達もやりにくくなるとか、そういった面があると思いますね。

それから、金融システムの方の話で言うと、これはもう自己資本比率にある程度影響を与える事があるということだと思います。ただ、いずれにしても株価は基本的には景気の動向だとか企業業績だとか、逆の事のようですけれども、実体経済の動向を反映して、また変動するものだと思うのですね。そういうことですから、現在、政府は構造改革へ取り組んでいますけれども、こういった取り組みを一層促進して、新規需要だとか雇用の創出といったことを通じて、経済成長を促して行くと。ひいては株式市場にも好影響を与えるということが期待されていると思うのです。

我々としても当然前から申し上げていますが、株式市場の動向については十分注視して行きたいと思っていますし、同時に証券市場、金融システムの構造改革に全力で取り組みたいというふうに思っております。

問)

公的資金投入の関係なのですが、一部報道で資本不足に陥った銀行に対して強制注入をするというような報道がありますけれども、これについて金融庁としてそういう方向で検討が進んでいるのか、その辺について事実関係をお願いできますでしょうか。

答)

そういう事はないです。いずれにしても竹中大臣が言われていますように、資本注入をするかどうかはそれ自体が目的ではなくて、資産査定等の、まあ大臣は3つの原則と仰っておりますけれども、それを中心に議論をして行くと、そういった中で何が必要か、あらゆる可能性を視野に入れて幅広く検討して行くという事だと思うのですね。今仰ったような話を具体的に検討しているという事は全くありません。

問)

長官のお考えとして、まあこれはちょっと仮の話になるかもしれませんが、現行法の枠組みの中で強制的な注入という事が可能というふうにお考えなのか。その辺の法理論的な事についてお願いします。

答)

現行の枠組みは現行の枠組みとして法律になっている通りですね。強制注入ということを前提にしているというふうにはなっていないと思いますが。

問)

竹中大臣がクアラルンプールに出張中の会見で、銀行に収益目標を設定することも検討するというようなご発言をされているようなのですが、銀行に収益目標を設定するような事というのを金融庁としてお考えなのか、あるいは長官としてお考えなのか、その辺のお考えをお聞かせください。

答)

今の時点でそういう具体的な事を検討しているという事はありません。ご承知のようにプロジェクトチームを立ち上げて、そこでいろんな観点から幅広く議論がなされていくと思うのですね。金融庁としてもそういった議論を踏まえながら、参考にしながら幅広く議論して行くという事だと思っています。

問)

竹中大臣が今回の不良債権処理の3原則の1つとして、資産査定の厳格化ということを掲げているかと思うのですが、これは長官はどのように受け止められ、どういう絵を描いて資産査定の厳格化と捉えられているのか、その辺のイメージについてお願いします。

答)

これは、大臣と我々と言いますか私とイメージに違いはないと思います。これは私が説明してもしょうがないと思うのですが、大臣が記者会見で仰っているのを見るに、3つの原則を仰っていますね。その中の1つとして、1つは資産査定が厳格に行われているだろうかというふうに仰っていますね。そういった観点から議論を進めたいということで、その事自身、査定が厳格に行われているだろうかということについては、当然我々もきちっと議論するという事は重要だと思っていますから、その時に大臣は同時に仰っていますけれども、議論が重要だという事について誰も異論はないというふうに記者会見でも申し上げていると思うのですね。もちろん資産査定が、その時も大臣は仰っていますけれども、資産査定は厳格に行っているという説明も同時に発言する人もいたわけですけれども、いずれにしてもそういうふうに資産査定が厳格に行われているかどうかという事は重要な問題ですから、これからいろいろ議論がなされて行くというふうに思っております。

問)

ペイオフの問題なのですが、今日、政府与党の間で2年間延期する方向で合意という報道もあるのですが、これについて、現在の進捗状況とか議論の状況を教えていただけますか。

答)

政府与党で延期について合意した事実はございません。いずれにしてもこの問題は、大臣もお変わりになりましたから、新しい大臣には我々もきちっといろいろご説明もして来ていますが、現時点で大臣から具体的なご指示と言いますか、そういうものはいただいていない状況にあります。

問)

長官として、今現在ペイオフについてはどうあるべきだというふうにお考えでいらっしゃいますか。

答)

これはやはりいろんな議論があると思いますから、新しい大臣ともよく議論して結論を出したいというふうに思っています。

問)

これは既存の、今までやって来た議論もある程度再検討する事も含めてということですか。

答)

大臣がお変わりになりましたから、決めてかからないで、そう時間もないのですけれども、きちっとした議論をした上で決めたいというふうに思っています。

問)

大手銀行の資産査定なのですけれども、まだ足りない部分もあるというお考えでしょうか。改善する余地があるという。

答)

それはいろんな、資産査定ですから会計処理と言いますか、そういう技術的と言うか専門的な部分もありますから、まあPTでもいろいろ議論もされると思いますから、そういう議論も参考にしながらきちっと厳格にやられているかどうかを良く検証しながら考えて行きたいというふうに思っています。

問)

その議論は去年からありましたが、特別検査もやったり、大手銀行には年1回必ず検査に入るとかということで、金融庁として相当厳格にやってきているわけですよね。それでもまだそういう議論があるという事について、長官としてはどうお考えですか。

答)

ですから先程申し上げましたように、PTでもきちっとやっているという意見もありますし、折角民間の有識者も集めて議論しているわけですから、そこでのいろんな議論もあると思うのですね。そういう議論も参考にしながら更に考えてみたいというふうに思っています。はなから何かを排除して考える必要はないというふうに思っています。

問)

公的資金を注入する枠組みとして、金融早期健全化法の復活とか、あるいは新法を制定するとかという案も浮上しているというふうに言われていますけれども、その点についての長官のお考えはいかがなのでしょうか。

答)

その手の議論がいろいろ報道されていますけれども、現状、今そういう具体的な何かを検討しているという事は全くありません。PTを3日に立ち上げたばかりですから、そこでも議論もいろいろあると思いますから、そういうものも参考にしながら大臣と今後判断して行きたいというふうに考えています。

問)

予防注入の場合は新しい法律、今現在ある預金保険法以外のものが必要だというふうにお考えになっていますか。

答)

今の預保法102条の構成要件と言いますか、規定がありますね。あの規定に外れた何かをしようと思えば、当然新しいものが必要ですね。

問)

102条についてですが、ある期間を設けて危機認定をして、ある期間を設けてその間に申請するようにと、それで申請がなければそれはもう認定を取り消すということに条文はなっていますよね。これは強制注入というものか、それとも要請主義というものなのか、どういうふうにご認識なさっていらっしゃいますか。

答)

そもそも、まず条文に書いてあるような要件に該当するかどうかということ、これは厳密に判断する必要がありますね。ただ危機の恐れがあるからということではなく、その危機の恐れがあるということについて条文に沿ってそうかどうかということをきちっと判断する必要がありますね。そしてそれに基づいて認定すれば、今度はそれを受けた金融機関が、何も資本注入しか方法がないわけではありませんから、そういう危機も、何で起こっているかということもありますよね。別に自己資本だけの問題ではないと思います。そういういろいろな考えられる、起こっている危機と恐れがあるという状況であるとすれば、それに対する対応として金融機関はいろいろなことを考える余地はあると思いますから、その個々の状況によって違うと思いますけれどね。それに対して金融機関が対応すれば、当然102条の方の話は必要ないということもあるだろうと思うのですね。

ですからあまり抽象的に議論してもしょうがないと思いますけれども、その時何が起こっているか、それに対して金融機関自身が対応できるのであれば、別に102条で政府が何かする必要はないと、あの条文はそういうことだと思いますけれども。

問)

102条でする必要がない場合もあるというのは、認定をその時点でしないということもあるということですか。

答)

いや、認定はしているということでしょう。その上で、ということです。

問)

認定してしまうと対応会議を開くわけですから、それだけで不安を煽るということもあるかと思うのですが、その辺りはどういうお考えでしょうか。

答)

抽象的議論をしてもしょうがないのですけれども、条文の構成要件はきちっと厳密に良く見て判断する必要があると思いますね。それでそれに対して、先程も申し上げましたように、不安を煽るというか、仮定の話をしてもしょうがないとは思いますけれども、政府は何か対応する用意があるから認定をしている訳でしょうね。ですから政府が対応してくれるか、あるいは銀行自身が対応するかということではないでしょうか。

問)

今回の株安の原因の一つに、竹中大臣がいろいろとご発言をされていることが伝わって、市場にマイナスインパクトを与えているという見方もあるのですけれども、金融行政のトップが株式市場を混乱させるようなご発言をされている、その責任についてはいかがお考えでしょうか。

答)

私は大臣が個々どういうご発言をされたかよく聞いておりませんけれども、大臣からは「報道にあるような発言をしたことはない」と聞いておりますから、それ以上のコメントはございません。私自身その場に立ち会った訳ではありませんので。

問)

今日、みずほの方が、証券と銀行の共同店舗ということで開始したようなのですけれども、それについてのコメントと、今、株式市場がちょっと株安になっていますけれども、金融庁が取った政策はどういうふうに盛り上げていくかということを聞かせてください。

答)

みずほの対応は前向きで良いのではないでしょうか。新しいビジネスモデルと言いますか、いろいろ考えていただく必要がありますから、それはそれで非常に評価したいと思います。

元々、株式市場に与える影響といいますか、要は証券市場の構造改革を進めるということで、幅広い投資家に参加していただくということを大きな柱の一つにしていますから、そういう観点からも望ましいことではないかなというふうに思いますけれども。

問)

資産査定の厳格化ということで、大臣が何回か繰り返し仰っているのが「検査はしっかりやっているというふうにいろいろ聞いている。ただその検査の結果を監督に活かす、『ものさし』の部分を見直したい」と仰っているのですけれども、高木長官は監督局長をされていたので、大臣の仰っていることのもう少し詳しい意味等をご存知だと思うのですが。先程会計基準の辺りの見直しとか仰っていたかと思うのですけれども、もう少し分かり易く説明していただけますか。

答)

先程私が申し上げたのは、大臣の記者会見を見てその発言されている通りを申し上げたのであって、資産査定が厳格かどうか、それから自己資本が十分であるのかどうか、銀行のガバナンスは十分かと、この3つの原則の下にいろいろ広く議論してみたいと仰っている、それをその通り受け取っているということなのです。

問)

「検査の結果を監督に活かすのに、『ものさし』の部分を見直したい」と仰っていることは、そういう話は大臣からお聞きになったことはないのでしょうか。

答)

大臣とは細かい話はしていないのですけれども、とにかくそういった観点から幅広く議論していこうと。そういうことでプロジェクトチームを立ち上げている訳ですから。これから時間もそうないですけれども、みんなで広く議論して行きたいと思っておりますが。

問)

そうすると現時点で、監督と検査の間の評価に齟齬はなかったし、今もないというふうに認識されているのでしょうか。

答)

いずれにしても検査を受けて、検査の結果を変えるということはありえませんから、それは監督は検査の結果をその通り受け取って、それを基に監督を行っている訳ですね。

問)

例えばある企業の自己査定の評価を巡って、検査局と銀行の見解が相違するということはよくあると思うのですけれども、そういった場合にどうするか見直したいということについても大臣は仰っていると思うのですが。

答)

ご質問の趣旨がちょっと良く分かりませんけれども、いずれにしても検査に入って、見解が相違した場合には異議申し立てという制度もありますね。そういうことで改めて検査局の中で精査されるという仕組みになっていますから。そういう中で解決されて行っているというふうに思いますけれども。

問)

議論した結果、やはり今、検査は厳格だということもありえるのでしょうか。

答)

いずれにしても予断を持っていないということを申し上げているのですが。広く議論して行こうということで、そういう取り組みをしたいというふうに思っているということですね。

(以上)

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