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高木金融庁長官記者会見の概要

(平成15年9月8日(月)17時01分~17時19分)

【質疑応答】

問)

先週の債券市場ですが、長期金利が乱高下して1.6何%まで行くなど、ちょっと不安定な動きになっていますが、長期金利の急激な上昇が銀行財務に与える影響について現時点でどう判断しておられるか、お願いします。

答)

一般論として申し上げますと、長期金利が上昇するということは国債価格等が低下するということで、銀行の財務にマイナスの影響があるわけであります。他方で、ご承知のように株価は上昇しております。これは銀行財務にプラスの影響があるということで、そういったいろいろな要素がございますから、一般的に明確に影響を申し上げるということは難しいと思います。

ただ、前も申し上げましたけれども金利上昇に伴ういわゆる市場リスクですか、これにつきましては各金融機関、先物等によるヘッジをするとか、或いは入れ替え等で残存年数を調整するとか、いろいろリスク・コントロールに努めているというふうに承知を致しております。

いずれに致しましても金融庁としては、金利を含め市場の動向については十分注視して、金融機関の一層の健全性確保に努めたいと思っております。

問)

先週もお伺いしましたが、業務改善計画と言いますか経営健全化計画なのですけれども、その精査状況と公表の見通しについて、出来れば先週よりは具体的にお話いただければと思うのですが。

答)

本当に恐縮なのですが、8月29日に提出を受けております。それで現在、正に引き続き精査をしているということでございます。精査が終われば、それは経営健全化計画の方に織り込まれていくということであります。織り込まれた経営健全化計画につきましては金融庁に提出されますし、各金融機関から公表され、また金融庁としても取りまとめて公表するということであります。提出・公表の時期なのですが、今、申し上げましたように現在まだ業務改善計画について精査をしているという段階でございますので、今日のところ、その時期等について申し上げられる段階にないということをご理解いただきたいと思います。

問)

埼玉県の上田知事が一部報道のインタビューの中で、埼玉りそな銀行に出資を検討したいというようなことを述べているのですけれども、その辺りについて長官の所見等を聞かせてください。

答)

新しい埼玉県知事のご発言に関する報道については承知しているのですが、正式に発表されたものでもございませんので、当局としてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしても現在、りそなグループは新しい経営陣の下で新経営理念だとかビジネスモデルの見直し等について検討中であり、いろいろグループの再生に向けて検討・努力されている最中だと思います。ですから出資、報道に拠りますと出資ということのようですけれども、出資する側がどういうことで出資されるか、また出資を受けるりそなグループがどう考えて行くかという問題だと現時点では思っております。

問)

IMFが先週の金曜日に出した日本の金融に対する審査報告書のFSAPについていろいろあると思うのですが、評価、受け止め方を仰っていただけますでしょうか。

答)

IMFの報告書ではいろいろIMFとしてのご意見も付いておりますが、基本的には金融再生プログラムに基づく金融改革が進んでいるということで、前向きなご評価をいただいているというふうに考えております。そういうことで金融庁としても引き続き金融再生プログラムの着実な実施に最大限努力して参りたいというふうに思っております。

問)

FSAPの中で、地域金融機関に対する政府の監督強化等について、必ずしも金融庁の方向性と同じでないような記述もあるようですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか。

答)

どの部分を指されているのか・・・。

問)

国内で業務する銀行に対しても、8%の自己資本比率を求めるという記述もあったかと思うのですがどうでしょう。

答)

IMFの報告では、漸進的に8%へ国内基準行も上げて行くべきだというふうなご意見も入っております。ただ、いずれにしても他方で我が国経済は非常に厳しい状況が続いているわけで、その金融機関の貸出姿勢に与える影響も他方で考慮する必要もあるという状況であります。

そういう考え方も踏まえながら、ご承知のように金融庁としてはリレーションシップ・バンキングの機能強化に関するアクションプログラムというものを策定いたしまして、16年度までの集中改善期間に中小企業の再生と地域経済の活性化を進めると、それで不良債権問題の解決を目指すということでやっているわけでございます。これによって金融機関の経営の健全性を確保し、強固な金融システムの構築を目指すということで、我々としてはこういう観点からこのアクションプログラムの着実な実施に最大限努力して行きたいというふうに思っております。

問)

その関連なのですけれども、16年度までにリレーションシップ・バンキングのアクションプログラムに基づいて機能強化、健全化を果たした暁には、その後、ある程度スパンを置くかどうかは別としまして、自己資本比率は国内基準行も含めてやはり8%必要な方向なのか。りそなは国内基準行でも12%、ボーンと入れましたけれども、そういう長期的な展望はいかがでしょうか。

答)

基準の話ですから。りそなは12%ですけれども、基準としてどう考えるかというと、16年度までの集中改善期間、その間アクションプログラムの実施に全力を挙げたいと思っています。その後の状況とか、更に新BIS規制の動向等を踏まえながら、慎重に検討したいというふうに思っています。

問)

ヤミ金とかの反社会勢力が開設している預金口座についてなのですけれども、都道府県の一部で強制解約を金融機関に求めるというのが最近ありました。ただ、都道府県というのは監督権限を直接持っていないので、実効性にやや疑問があると思われるのですが、金融庁も業界団体などを通じて適正な業務についていろいろと要請しているということは良く存じているのですが、今後、社会的な関心も高まっていることですから、もう一工夫ですね、こうした問題について何か取組みは考えられないのか、お考えをお聞かせください。

答)

今お話のあったのは、長野県でヤミ金融業者に利用されている疑いのある口座について、金融機関に対して調査を依頼したと、それで必要な場合には、口座の閉鎖等の適切な対応を求めたと、いうことがあります。それを受けて9月4日に長野県がその結果を公表しております。我々としては、その公表と言いますか、その中身について至急良く勉強してみたいというふうに思っております。で、それを踏まえて金融庁としてどういう対応が可能か、良く検討してみたいというふうに考えております。

問)

中身を勉強するというのは、どういう意味でしょうか。

答)

それは中身というと変ですが、口座の閉鎖等ということで、実は長野県の方の対応の結果ですね、確か39口座について金融機関に対して調査を要請したようなのですね。その結果、その39口座のうち、金融機関の方で対応したものとして、これは長野県の公表ですけれども、凍結と言いますか、取引停止、入出金不可能という凍結にしたのが19口座、それから閉鎖したのが1口座、任意の解約、これは預金者の申出による口座解約ですがこれが4口座、あと引続き調査中というのが15口座ということなんですが、その中身ですね、凍結は凍結でいいのですが、そのどうして凍結という措置になったのか、どういう行為と言いますか、どういうことが確認されたからそういう対応をしたのかといった中身についてですね、至急財務局を通じて勉強したいというふうに思っております。

問)

長野県というのは直接の監督官庁ではないので、全国的に何かやろうとかですね、やはり限界があると思うのです。今までの金融庁の取組みというのも私はよく理解しているつもりなんですが、長野県みたいにですね、もう少し踏み込んでですね、きちんとした報告を金融機関に求めて全国的な実態を調べるとかですね、日頃の監督行政でもう少し踏み込んで指導するとかですね、何かこれまでとは違う新たな展開を考えられないのかなと、その点はどうですか。

答)

まだ検討していませんから、何とも言えないのですが、可能性として正にそういうこともですね、今お話にあったようなことも当然可能性としてあるわけです。その前に、いずれにしても、中身がどうかということを至急勉強してですね、それで必要があれば全国的にですねどういう形かとにかく何らかの対応を考えるとか、そういう意味でまず中身の勉強をして検討をしたい。中身を良く調べて、その上で検討したいということを最初に申し上げたつもりです。

問)

確認なんですが、今、全国的な実態、いわゆる反社会勢力の開設している預金口座ですが、オフィシャルな統計とかデータとか手持ちは一切ないわけですよね。

答)

これは登録業者の大部分が都道府県の登録業者ですから、それに関する情報の一部は金融庁にあると思うのですが、やはり大部分は地方公共団体の方にあるのじゃないかと思うのです。ですからこういう事例も勉強しながら、情報交換もしながらどういう対応ができるか検討したいということだと思います。

問)

今日、自民党の総裁選が始まりまして、政権公約4候補出揃いました。あまり金融関連の話というのは出てこないと思うのですけれども、一部候補は不良債権処理は強行しないとかですね、中小金融機関の自己資本比率は維持すると、検査であまり無理強いをしないと、現金融行政について若干批判的な公約が並んでいる候補がいらっしゃるのですが、これは誤解でしょうか、それとも真っ当な指摘でしょうか。

答)

選挙公約と言いますか、今きちっとそれを承知しておりませんので、的確なコメントは差し控えさせていただきたいと思うのですが、いずれにしても、昨年10月に金融再生プログラムを公表して、その実施に着実に取り組んでいるわけであります。我々としては、引続き再生プログラムの確実な実施を通じて、より一層健全な安定した金融システムの構築に向けて努力したいというふうに考えています。

問)

ヤミ金の件で、弁護士会か弁護団かは忘れましたが、被害者弁護団から、四大メガバンクだけでヤミ金業者が使っている口座は2,200口座あるという話もあります。先程の話は、都道府県とも連絡を取り合っていろいろ勉強したいということでしたが、例えばそういった被害者弁護団とか、そういった辺りも今後連携してやって行こうというようなお考えはありますか。

答)

先程、検討したいと申し上げたので、現時点であまり詰めて申し上げられる段階にはないと思いますが、広く勉強して適切な対応を検討したいというふうに思います。

問)

長期金利の話なのですが、お答えいただいた中で、リスクコントロールをしているというふうに承知されているというお話だったのですが、個別ではいろいろな所があると思うのですが、金融システムの健全化、全体の健全性という観点から見てですね、今現在、金融機関全体的に見てですね、十分リスクコントロールというのはできているのか、それともまだそういったところで努力の余地があるのか、どうご覧になられていますでしょうか。

答)

金融庁としては、検査等を通じてそういったいろいろなリスク管理についてチェックをしてきているわけで、基本的にリスク管理には特段の問題と言いますか、それは問題があればその都度指摘もしておりますから、しっかりしたリスク管理に努めていただいているというふうに思います。

ただ、リスクを全てヘッジなり何なりで管理するというのは、それはそれで株でもそうですけれども、必ずしもリスクをゼロに出来るわけでもありませんから、例えば先程申し上げましたように、国債について言えば入れ替え等で残存年数を調整するとかということは、それはいろいろやっていると思うのですけれども、ただ、それによってリスクは小さくなることは事実ですけれども、リスクはゼロになるわけではないと思うのです。そういう前提の下で金利の上昇とか、あるいは株価の上昇とか、そういったものがどの程度銀行の財務に影響を与えているかということについて、一般的に明確に申し上げるのはなかなか難しいと思います。

ただ、監督行政をやっている中で、今、金利の上昇、同時に株価も上昇しているわけですが、そういう状況の中でそういうことによって特段の問題が生じているという認識は持っていないということであります。

(以上)

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