五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年8月9日(月)17時05分~17時29分)

【質疑応答】

問)

一般論で結構なのですけれども、決算期末で仮に自己資本比率の健全基準を割ってしまった場合。例えば直近で9月期末で割ってしまったというようなことが認められるというときには、早期是正を促す措置があるわけですけれども、ペイオフ解禁を控えたなかで現実問題として、こういう仕組みによって市場や預金者等に安心感を与えることができて、金融危機を引き起こす恐れを生まないという対応が十分可能であるというふうにお考えでしょうかということと、主要行において8%を割ったとしても増資などの計画がしっかりあれば国際業務等も継続できて、国による資本増強の措置とかも不必要なものとして考えておいていいのかどうかということをちょっとお伺いしたいのですが。

答)

まず直接的なお尋ねの決算期末のお話をしてみようと思います。早期是正措置命令は色々な仕組みが組み合わさっていますので後でちょっと解説をする必要がありますが。

まず決算期末に例えば国際統一基準行が8%を割って、そしてそうした内容の決算状況表が当局に提出されたと、こういうケースを一般論で想定してみます。こういうケースですとこれも一般論ですが、これは早期是正措置のルールで定められた計測時点の一つである決算状況表の提出、その時点で自己資本比率が健全性の基準を割っているということになりますのでルールに則って早期是正措置に基づいた経営改善計画等の策定を求める命令というのが出るということになります。そこでお尋ねは、そういった命令を出すことによって現実問題として市場や預金者等に安心感を与えることができて金融危機はおこさないというような、そういう恐れのない対応となるかということなのですが、この点については旧ガイドライン、今監督指針と呼んでいますけれども、この監督指針に定めがございます。内容から申しますと例えば国際統一基準行である場合は、少なくとも一年以内、原則としては翌決算期までに自己資本比率が8%以上の水準を回復するための計画、こういったものが策定されていれば国際業務等の業務を継続できる旨の取扱いが定められています。この趣旨は、監督指針を見ていただくと分かるのですが、そのなかに改善までの期間という項目があって、目処としては原則一年以内に自己資本比率が健全性の水準を達成する4%以上、国内基準行ですね、4%以上の水準を達成する計画であることということなのですけれども、銀行が策定する経営改善のための計画等が、これは以下監督指針の記述ですが、「当該銀行に対する預金者、投資家、市場の信任を維持、回復するために十分なものでなければならないというのは言うまでもない。したがって、当該銀行の市場との関係の程度等によっては、市場の信任を早急に回復する必要があるため、上記の期間」すなわち一年以内ですね、この期間「を大幅に縮減する必要がある。例えば国際統一基準適用銀行であれば、少なくとも一年以内(原則として翌決算期まで)に自己資本比率が8%以上の水準を回復するための計画等である。」ことが必要である。今、例として4%のときに申し上げたのは原則一年以内に4%以上の水準を達成するということを申し上げましたが、ここで少なくとも国際統一基準行の場合には原則として翌決算期までとういうより短い期間が設定されているということです。ただしこれは第一区分に関わる命令の場合で、例えば第二区分に関わる命令のときは、この一般原則は自己資本比率は原則と一致して一年以内に少なくとも2%以上の水準を達成するための措置とするということですから、2%を切っている場合には一年以内には回復するということが少なくとも求められるということが第二区分に関する措置の内容になっているわけですが、国際統一基準行の場合には原則として翌決算期、少なくとも一年以内に自己資本比率が8%以上の水準を回復すると、こういう計画であることが必要だということですから上記の期間を大幅に縮減していると、こういうことになるわけです。考え方は市場、投資家、預金者の信任を回復すると、或いは維持するということとのために必要な内容として当局の認識としては少なくとも一年以内、原則として翌決算期までに自己資本比率が8%以上の水準を回復するための計画であること、まあこういう一種の定量的な基準で、これで信任は回復できる、維持できるはずだという判定をしてこうした決まりを作ってあるということになります。長くなりましたがお尋ねに対しては、従ってこういうような計画が仮に例に挙げられた国際統一基準行8%の例で言えばこういう内容の計画が出ていれば、それで私は市場や預金者の信任が維持できるというふうに考えています。ただしこれは当局はそう理解していますが、当該銀行においてはそれで計画を出して「あぁよかった」では困るわけでして、もしそういう事態になった場合にはその命令を受けるときに同時にどれだけ確実に且つ迅速に健全性を回復できるのか、その回復の現実性というのはどの位確かなものなのかということをきちんと預金者、投資家、或いは市場に向かってアナウンスをする、分かりやすく説明をするということは欠かせないことだろうというふうに考えています。これは是非やってい頂かなければいけないというふうに思います。

なお、冒頭で少し解説が必要だという話ですが、一つだけ申し上げておきますと、幾つか必要ですが一つだけ代表的な例を申し上げますと、これは決算状況表で健全性基準を割っている、そういう状況表が出てきているというケースですが、もう一つ良くあるケースでは決算では健全性基準はクリアしていたと、それを上回る決算であったということですが、事後的にある時間がたった後、例えば当局が検査をしたといったときにそこに不良債権の認識の不足等があって、追加的な不良債権処分損を実は計上していなければいけなかった、その結果としてそれを加味すると、その検査対象となった何ヶ月か前の決算は健全性基準を下回っているというようなことが明らかになるケースというのもあるわけですね。こうした場合にはその時点において公認会計士、監査法人等と協議をしていただいて、検査結果等を踏まえたその時点における、そういうことが明らかになった時点における自己資本比率というものを提出をしていただく、計算をして頂いて直近四半期末、或いは直近の月末ですとか、そういうことになります。この場合は検査対象になった決算期から、実際に検査であることが明らかになったときまでに時間が経っています。その間に例えば、不良債権処理等もしておられるでしょうけれども、逆に業務純益が期間損益で、業務純益が上がっていたり、或いは場合によるとその間に資本政策が採られているようなケースもあるかもしれません。そういうようなケースはその期間で色々な要因でこの自己資本比率というものは動いていますから、単に検査の結果、直近決算期末で健全性基準を自己資本比率が下回っていたということだけをもって早期是正措置が打たれるということはなくて、直近の時点を確認をした上で是正措置の発動が必要かどうかが検討されるとこういうことになります。長くなりましたがそういうことでございます。

問)

今の関連なのですけれども、決算の状況表が提出されるのは、通常決算がまとまって決算短信が出せるぐらいですね。そうすると不良債権処理等リアルタイムで、期末で例えば8%割れが起きているとか、起きているのではないかと市場の不信感が高まっているときに、例えばオフサイトモニタリングか何かで報告してくださいということはあるのですか。

答)

今のお尋ねは決算期末から決算状況表が提出されるまでの間においてということですか。

問)

はい。

答)

その間というのは疑問があるような金融機関であれば決算内容に関するヒアリングを通常は行いますからそこで把握はできます。その限りにおいてですね。決算状況表が出るまで何もせずに手をこまねいて待っている必要は、必ずしもないということになります。

もちろんその間において、24条において決算期末日とは別の日で時点を切って、改めて自己資本比率を計算してもらう必要があるような状況があるという判断があればそういうことで24条報告で更なる確認をするということもあり得ますけれども、ルール化されているわけではありません。

問)

UFJの業務改善命令というのは4つ出ていて、内3つ改善計画が出ましたねと、色々な内容が多岐に渡っているので、これからUFJという銀行は四半期に一度、色々なテーマに渡るフォローアップを受けていくということになると思うのですが、一応経営統合をするのだということになっていて、経営統合をした後どのような銀行になるのかということは、どこと統合するか分からないので分かりませんけれども、統合後の銀行がフォローアップの対象に基本的にはなるのでしょうか。

答)

業務改善命令を受けた銀行が経営統合をしたと・・・。

問)

経営統合をしたと、合併なり譲渡なり何らかの形で、それは要するに統合後の銀行がフォローアップを受けていくということになるわけですか。

答)

一般論で申します。業務改善命令を受けて、業務改善計画を提出した銀行があると、その業務改善計画に対するフォローアップが例えば四半期に一度行われている中で、その銀行が別の銀行と合併をして新しい銀行になったというケースですね。他と合併したことだけで自動的にその業務改善計画に対するフォローアップが終了するわけでもないし、逆に当然にその業務改善計画に対するフォローアップが引き継がれるわけでもないというふうに申し上げるのが多分正確だろうと思います。統合を行う、例えば合併をするという時点において、当局は合併認可という行為が必要になるわけですね。その認可は当局の権限において幾つかの認可の要件が満たされているかどうかを確認をするわけです。その中には、統合の後の業務が健全かつ適切に運営される、そういった体制になっているかどうかということも重要な要素になっていますから、そうした点を確認していく中で、どちらか一方に対する過去の業務改善命令に対するフォローアップというようなものが、引続き何らかの形で必要であるのかどうかということは判断をされていくということになると思います。だけど一般的に言いますと、合併認可ということをするのであれば、よく私一般論で合併によってお互いのチェック機能が働いて、良いところが活かされて、悪いところが改善されて企業統治なり経営の効率が高まるということを期待するというふうに申し上げています。認可の審査にあたっても、当然その業務改善計画のフォローアップを受けているようなケースについては、統合後、そのフォローアップが必要なくなるような、そうした経営体制というものが確立できるのかどうかということは関心を持って見ることになるというふうに考えています。

問)

最後のお話は、見ることになるので、それがうまく統合後の姿がチェック機能が働いて、経営効率が高まるような状況になっていると判断されれば、対象ではなくなると。

答)

ケースによるので、今一概に申し上げることは難しいと思うのですけれども、基本姿勢はそうしたフォローアップの必要のないものになっていることを確認した上で認可をするというのが基本姿勢であろうと思います。ただし、色々なケースがあり得ると思いますので、業務改善命令といっても様々な種類のものがございますから、それからその経営統合の形によっても色々な形が想定されますから、断言するのはちょっと危険だと思いますので、そういう言い方にさせていただきます。

問)

冒頭の質問に関連して伺いますけれども、早期是正措置を打つかどうかという話ですけれども、業績修正をして8%を割れるという発表をするケースがあると思います。過去にもあったと思いますけれども、多くの銀行はそれほど間抜けではないので、その時に信用保管の発表をされると思うのですけれども、その内容を見て打つかどうかを判断すると、自動的にその業績修正のあるやってあったから打つわけではないと、こういう考え方でよろしいのでしょうか。

答)

例えば、業績修正で健全性基準を下回っている時に計画が発表されたと。つまり、健全性基準を回復するための計画が発表されたけれども、その計画の実行はこれからだというケースを想定してみますと、そういった場合は原則として命令をやはり打った上で計画をオフィシャルに、対外的に発表なさった計画はそれとして、当局に対してコミットしていただくオフィシャルな計画というものをいただいて、それをフォローアップするというのが原則だろうと思います。

問)

ではやはりそこで一旦打つわけですね。

答)

計画しか出てきていない場合は。ただし確認をして、その間の時間の経過で回復が既にしてしまっているというような事実として回復してしまっているという場合は、これはちょっと慎重に考えないといけなくて、多分、業務改善命令を打つ実益はないのではないかと思いますね。

問)

過去、全てそういう原則でやっていますか。要するにその計画が出ても、時間的なところなのでしょうけれども、業績修正で割ると、基準を割れると、とにかく計画が出たと、それでもですね、打たなかったケースはあるのではないかと思うのですけれども。

答)

ちょっとその個々のケースを全部知っているわけではないのですが、原則としては、業績予想修正でその前の決算期が健全性基準を割れているということを発表しても、その間の幾つかのアクションによってその時点、つまり業績予想修正発表の時点では、前決算期の自己資本比率が健全性基準を回復している、その後の時間の経過で回復しているということが確認されれば、それは必ずしも命令を打つ実益はないのではないかということなのですよね。ちょっとそれ一つ一つ見てみないと分からないのですが、仰っているケースが特定できればそれどういう場合だったか調べてみたいと思いますが。

問)

もう一つ伺いたいのですけれども、UFJの統合交渉に関して、民民の問題であるということでやってらっしゃると思うのですけれども、それは銀行監督上ではそういうことなのだろうと思いますけれども、その一方でかなりの金額の優先株を持っていて、その優先株の返済、公的資金の返済とか、確実性、時期ですね、統合に大きく遅れるとかそういうことも理論的にはないわけではないと思うのですけれども、そういうその公的資金を投入し、それを管理している立場としては、どういうふうにこういう問題に関心をお持ちになるのでしょうか。

答)

統合が決まってない段階でなかなか物が言い難いところはありますね。一般論で申し上げるしかないのですが、統合が行われて、その時点でどちらかの一方、あるいは両方でも良いのですが、公的資金を注入された状態のままであるというのであれば、その統合の時点における経営健全化計画というものはどうなるのかということで、統合によって経営健全化計画の出し直しをしていただくということになります。これは過去の統合においてもそうした扱いをしているのですね。その新しい経営健全化計画を公表することでパブリックプレッシャーに晒して、そして確実な資金の回収ということを心掛ける。もしそれがそうならないというような幾つかのガイドライン上の基準によって疑問が生ずれば、必要に応じて業務改善を命ずるというやり方になるということです。銀行同士の統合について、公的資金の回収の見通しに対する影響を根拠にして、その統合を認める、認めないというそういう権限はないと思います。

問)

それは銀行法上ないということは分かるのですけれども、実態として健全化勘定を管理されているわけで、そこに回収見通しに何らかの不安があるということであれば、何か物を仰るというのは私は自然な行為ではないかと思うのですけれども、それはどういうルールになっているのか、或いはルールがないのか、どういうことなのでしょうか。

答)

統合が経営の健全性を妨げるような内容になるということが明らかであれば、それは統合を認可する時の認可基準の面で問題になるわけです。そこで当然法的には権限が生ずることになるということになります。もちろん、実際の統合の色々な絵姿について御相談があったり、或いはこちらヒアリングをしたりする中で、疑問があればその疑問をもちろん問い質すということはいたします。「好きで良いから何も知らない、何も聞かないし、当局は何も知らないで良い」という、そういう姿勢で臨むつもりはありませんが、権限行使という意味で言えば、統合によって健全性が後退するというようなことが認識されれば、それは認可をする時点で当然アクションが出てきます。

問)

一旦統合が決まったり、合意が発表されたり、或いは交渉中であってもそれが白紙に戻ったりする、その場合には、やはり市場の信認に不安が生じる場合があると思いますけれども、そういう場合は金融当局はどのような対応があるのでしょうか。

答)

市場の信認と言いますか、信用システムに重大な障害が起こる、或いは金融不安が起こるような恐れが生ずるというようなケースであれば、それはそれを当然のことながら銀行法の一般的な当局の任務ですから、その一般的な任務、権限に応じて行政的な指導をするなり、是正を慫慂するなりということはいたします。

問)

それは公的資金の返済ということも大体セットになって出てくると思うのですけれども、市場の信認と。返済に対する不安というのも同時に生じるケースがあると思うのですけれども、その場合も何らかの指導なり何なりということが可能だというふうに考えて良いのでしょうか。

答)

これはもう少し一般論に敷衍する必要があって、ですから、公的資金の返済が別々であれば予定通りできるのに、一緒になるとできなくなるかもしれない。そういう統合だとすれば、それはその統合自体に何か問題があるはずですね、公的資金に限らず。それは一般の株主に対する配当であっても、或いは民間の優先株主に対する配当なり償還期限の遵守においても同じ問題が生ずるはずですから、そういう視点から当然問題視せざるを得なくなります。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る