五味金融庁長官記者会見の概要

(平成17年12月26日(月) 17時02分~17時13分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

先週末に、投資サービス法制定に向けた金融審議会の最終報告書が、金融庁に提出されました。改めて、投資サービス法制定の意義と、それから今後の法案提出等を含めたスケジュール感、それからまだ省庁間の調整が残っている部分があるのですが、これについての金融庁の対応についてお願いします。

答)

金融審議会の第一部会で22日に「投資サービス法(仮称)に向けて」という第一部会報告を取りまとめていただきました。この投資サービス法(仮称)の制定の意義ということになりますが、金融投資サービスに関する包括的かつ横断的な法制であります投資サービス法(仮称)の早期の法制化というものは、金融資本市場の構造改革を一層促進し、活力ある金融システムを創造していく上で、喫緊の課題であると考えています。要するに一定の法的な枠組みの中で、金融商品や金融サービスを提供する人達にとっては国民的に認知された、そうした枠組みの中で、多様な商品やサービスを提供できるようになるということ、同時にそうしたサービス・商品を利用する利用者の皆様にとっては、自らの置かれた状況、或いは自らがさらされるリスクの状況、こういったものに応じた適切な保護を受けながら、しかしそれぞれの大方のニーズに応じた多様なサービスや商品にアクセスすることが可能になるということであります。これによって貯蓄から投資へという方向が一層促進されて、国民の金融資産というものがより効果的、効率的に運用され、或いは国民経済に活用されていくと、こういう利点が非常に強い、期待できる、そういう法制であると思います。従ってこれに対する取組みというのは喫緊の課題であると考えています。

それから、法案提出等のスケジュールの話ですが、この法改正は極めて大掛かりな改正になる見込みでございますけれども、金融庁としては与党とも勿論よく相談させていただきながら、次期通常国会への法案提出、これを目指して全力で取り組んでいきたいと考えています。

なお省庁間の調整というお話がございましたけれども、この他省庁との調整が引続き必要となる商品としては、現在想定されておりますのは商品ファンド、不動産特定事業、商品先物取引、こういったものがございます。これらの商品につきましては、金融審議会の報告では、いずれもリスク、リターンという考え方からは投資性がある商品であるとされております一方で、これらについては、他の業法において各商品の実態や特性に着目した規制が行われていること等もあって、こうした点も考慮しつつ投資サービス法との関係を整理することが適当だと、こうされております。私共はこのような第一部会報告の考え方を踏まえて、関係省庁と今後調整を更に進めていきたいと考えております。

問)

今日が年内最後の長官会見になると思いますが、今年を振り返って、行政処分で言うと例えば明治安田生命であるとか、東京証券取引所であるとか、かなりの処分案件もあったわけですが、そうした状況を踏まえて今年一年の金融行政について、長官御自身はどのように位置付けておられるかをお願いします。

答)

この一年は金融行政にとりましては、不良債権問題の正常化に向けた仕上げの時期であったと同時に、その後の金融行政の青写真を描く重要な節目の時期でもあったと感じております。主要行の不良債権問題については、「金融再生プログラム」の諸施策を強力に推進いたしました結果として、不良債権比率の半減目標が達成されて問題の正常化が図られました。また、中小地域金融機関についても地域密着型金融の機能強化が進められました結果、その成果が着実に各指標等に表れてきております。こうした中で、今年4月にはペイオフ解禁も混乱無く予定通り実施されたという、こういう状況でございました。

このように日本の金融システムを巡る局面が不良債権問題の緊急対応から、いわゆる平時へと移行していくという状況にあったわけでございますが、そうした中で目についた事柄としては、今お話にございましたが、行政処分ということがございました。外国為替証拠金取引、或いは保険金の不払い問題等、利用者保護という観点から重大な問題が発生していると、こうした不良債権問題ですとか、金融の安定を目指す財務的な足腰の問題とは別に、一番大切な利用者保護という面で重大な問題が発生し、それに対して厳格な監督上の対応を実施させていただいたと、こういうことでございました。

また更に西武・コクド、或いはカネボウ等の上場企業による開示書類の虚偽記載、或いは上場企業の敵対的買収等、証券金融市場、或いは証券取引所を巡っての様々な課題が次々に生じております。また金融というものへの信頼の、ある意味で根幹をなしますコンピューターシステムについても問題が生じたというようなことがございました。課題は次々と生じているという状況でございます。

今後でございますけれども、将来の望ましい金融システムを目指すという未来志向の局面に転換していく中では、多様な金融商品・サービスを国民が身近に利用できるシステムを構築していく、これが大切でございまして、そのために利用者保護というのは基本的な柱になります。従って今後とも金融投資サービスに関する包括的、横断的法制である投資サービス法等の早期法制化に向けた取組等、利用者保護に向けた法制面での対応、或いは市場行政体制の整備・強化、こういったことを図っていく、それでそうしたことを行いつつ、実際の執行面については利用者保護上問題のある事案に対しては適時適切に、迅速かつ厳格な監督上の対応というのを講じていきたいと、年の終わりにあたって考えますのはこのようなことでございます。

問)

保険の損保ジャパンの一部支店で、顧客の印鑑を確認しないまま押すといったような事案があったと認識しているのですが、この辺の事実関係の把握状況や今後の対応についてお伺いしたいのですが。

答)

いつものことで申し訳ないのですけれども、報道がございました。ただ本件は個別会社に関する事案でございますから、現段階でのコメントというのは差し控えさせていただく必要があります。いずれにしましても本件に限らず一般論でございますが、保険契約者保護の観点から検査・監督を通じて様々な事案には適切に対応してまいります。

問)

埼玉縣信用金庫で盗撮によるものと思われる預金不正引出しで、かなり被害が出ているようですが、この問題に対して監督当局としてどのような対応をとっていかれるのかをお願いします。

答)

ATMの盗撮についてはUFJ銀行の事件を契機として、各金融機関について、ATMやその周辺について確認・点検を行っていただくように、またATMコーナーの日常的な確認・点検等の管理態勢といったものを検証していただくことによって、必要な対応を行うように要請させていただいたところであります。そうした中で今般このような事件が発生したということは誠に遺憾であると考えております。埼玉縣信用金庫の案件そのものにつきましては、現在捜査中というようなこともございますから、具体的なコメントは控えさせていただきますが、全国信用金庫協会等を中心として早期に情報共有というものを図っていただきたい。それによって金融業界全体として適切な対応を図っていただきたいと考えております。

(以上)

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