五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年1月23日(月)17時02分~17時19分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

東証が今日、システムの増強を前倒し的に行いまして、約定件数を50万件増やしました。これに対する評価はいかがでしょうかというのが一点目。二点目は、先週の金曜日だったと思うのですけれども、東証の西室社長がシステムの増強後も取引時間の30分短縮措置について、一部の市場参加者から好評であるという理由で、そういった措置を恒久化することも検討するという発言もされていますが、それについての御所見をお願いします。

答)

まず、今日から東京証券取引所の処理件数の50万件増という点についてでございますが、これは、これまでのシステムを増強することで50万件増の対応ができるお話でございまして、金融庁としては、いずれにしても証券市場の運営が円滑で安定的だということ、これがとても大事なことだと考えています。ですから、勿論この50万件の増というのは、当然やっていただいて結構な対応でございますけれども、東京証券取引所、そして決済を行います日本証券クリアリング機構、こちらにおかれましては、市場の動向を引き続きよく注視していただいて、これからも適切な対応を取るように、十分意識を持っておいていただく必要があると思っています。

それから30分短縮の件でございます。お話がありましたように、20日に西室社長から今御紹介のあったような御発言があったと聞いておりますが、この時間短縮は、18日に起こりました事態を踏まえて当分の間、取引時間の短縮などの取扱いを行っておられているということで、これらについては、できるかぎり早期に正常化をされることが望ましい、私はそう考えております。ただ勿論一方で、事情があって短縮した話でございますから、この取扱いを解除するにあたっては、これは色々な見地から十分に検証を行ったうえで判断をしていただく必要があると、こういう認識でおります。

問)

与謝野大臣が昨日の報道番組などで、証券取引等監視委員会について、アメリカと比べて人数も少なく、調査や捜査の能力をもう少し与えた方が良いという発言をされました。加えて政府・与党内でも、証券取引法の改正など市場の法規制のあり方について検討すべきだという意見もあります。それについて、御所見と今後の対応等お考えをお願いいたします。

答)

証券取引等監視委員会の権限、体制などについてのお話でございますけれども、この証券取引等監視委員会は、その権限として、一つは証券取引などに係る犯則事件、刑事事件ですが、この犯則事件について捜索、差押えといったような強制捜査権限が与えられており、また検察官に直接刑事告発する権限もあるわけでございます。また、この刑事以外の分野におきましても、市場仲介者であります証券会社についての検査権限、これは勿論でございますけれども、他に有価証券の発行体であります事業会社等について有価証券報告書などについての検査権限、或いは報告徴求権限を持っていて、これを独立した形で行使をすることができる機関でございます。例えば有価証券報告書の権限ですとか、或いは今申しあげませんでしたが、有価証券報告書虚偽記載に係る課徴金についての権限ですが、こういったものについては、最近付与されたということでありまして、市場の公正を守る意味で必要な独立性ですとか、或いは調査権限ですとかいうものは、累次これを強化してきているとこういう現状にあります。

権限面ではそういうことですけれども、実際そこで働いている人達の人材面での問題については、非常に複雑化・高度化していますから、それに対応できる人材を用意しておく必要があるため、民間等からも大量の登用を行ってきているということもございます。今月の23日現在で91人を、法曹関係者ですとか公認会計士ですとか、或いはデリバティブなどの民間の専門家ですとか、こういったような人達を登用しております。

後は御承知のとおりですが、定員ですとか機構ですが、これも年々整備をされてきています。こうした厳しい状況の中でも、18年度予算案では監視委員会19人の増員ということで、金融庁発足時の12年度112人という体制が18年度では318人、5年で3倍という、現在の公務員の削減という流れの中で、大変異例の扱いをしていただいている。或いは、機構面でも18年度は、これまでの2課3室体制を5課1官体制ということで強化をする。必要に応じて、こういった強化を進めてきているという流れであろうと思います。つまり、強化が必要だということです。これは、市場の規模とか取引の複雑化、或いは高度化こういったものが進展しますから、これからも状況をよく見ながら、関係者の御理解を得て、色々な面で機能や体制を強化することを真剣に検討し続ける、そして実行していくことが必要なことであろうと思っています。

それから、様々な制度の面で見直しという二つ目の話ですが、こういった点はどうかということでございますけれども、これまで思い出していただければ、一昨年、西武コクドの問題から端を発して、様々な市場を巡る問題が出て参りまして、その都度、必要な制度の整備に、或いは法律という制度の整備でなくても自主規制機関による対応等、こういったものが必要になる都度、これを迅速に手当てをしてきておるつもりであります。また今度、証券取引法の改正法案を国会に提出いたしますけれども、その中でも問題になりました大量保有報告制度の話ですとか、ディスクロージャーの信頼性ということで財務報告に係る内部統制の強化ですとか、米国のサーベンス・オクスレー法に類似する制度、或いは四半期開示、所謂投資サービス法とは別の分野でも、これまで議論されてきた話を一つ一つ丹念に拾い上げてきているつもりではございます。やはりただ、今回のライブドア事件の捜査の進展によって何か新たな事実が明らかになってくるとか、或いはマーケット自体どんどん変化を遂げていっているわけですし、その参加者も様々な考え方で色々な取引をなさるわけですから、そうした市場の変化というものは、これからもよくチェックをしながら、必要な制度の整備なり、或いは自主規制機関の連携なり、そういうことが出てきたとなれば、今までやってきたように、真剣に一つ一つ対応して、できるだけ迅速な対応に心掛けたいと思っております。

問)

今日、一部報道で東京証券取引所のあり方について、昨日与謝野大臣が発言されていた、あり方について論議する懇談会を、金融庁が大臣の直轄の組織として週内にも立ち上げて、一回目の会合を開くという報道があったのですが、現段階の進捗状況等お聞かせいただけないでしょうか。

答)

大臣御自身が、直接有識者の皆様から御意見等を伺える懇談会というのを設けたいと、こういう内容の御指示が私にございました。それで今どのように具体化するかということを急ぎ検討しておりまして、できるだけ早く大臣に御相談し、またこれだけ皆様の御関心のことでもありますから、できるだけ早期にその概要を発表させていただきたいと考えています。

問)

ライブドアの堀江社長が任意で事情聴取という報道がされておりますが、このことについて長官の御所見をお願いします。

答)

報道は見ておりますけれども、これは捜査のお話でございますから、所見を述べるというのは控えさせていただきます。

問)

証券取引等監視委員会についてですが、日本版SECと言うのでしょうか、その定義も曖昧ですけれども、そういったものが例えば必要だという、独立とか権限を強化するとか、仮に処分や規則制定権を付与するような、3条委員会になるようなことがあった場合、メリット、デメリットについて長官の御所見を教えていただけますか。

答)

犯罪捜査に関しては先程申し上げましたように、強制捜査権限と告発権限を持っておりますから、これは所謂8条であっても3条であっても変わらないということであろうと思います。それ以外の部分については、所謂3条委員会に変えるというのが具体的にどういう形をお考えのお話かが分からないので、ごく大雑把なお話しかできませんけれども、金融庁は全体として銀行行政なり、或いは信託会社のようなものなり、それから当然証券会社もそうですが、こういう国民の資産運用、投資は勿論、投資を含む国民の多様な資産運用を横断的に監督できる、こういう体制になっているわけでございます。国民から見れば非常に分かり易い形であろうと思います。そうした中で、資産運用の道具立てというのは、これはどんどん高度化なり複雑化しておりまして、例えば一つの有価証券の流れというものを追っていく中で、その有価証券の流れに関与するものというのが単純なものではなくて、例えば信託会社が間に入り、或いは銀行も関与するというようなこともありましょう。勿論証券会社であったり、投信、投資顧問であったり、色々な所が一つの取引の流れの中で関与してくるということがありまして、こうした流れ全体を有機的に捉えて、そうして現場の検査からその結果に基づく監督、或いはそうした所から明らかになる制度上の整備の必要性、こういったようなものを業態横断的に有機的に連携させて投資家なり国民を保護していくと、この機能というのはやっぱり全体が一つになっていると非常に効率的で実効性があると私は思います。経験から述べている部分もあります。かつて検査部長をしておりました時に、外資系の銀行が免許の取消という事態になったことがございましたけれども、あの際の損失先送り商品、そしてそれに基づく銀行を初めとする金融機関の一部における不適切な経理処理、こういったものも証券、銀行、そして信託、こういったもの全体をチェックしていく中で初めてその商品の実態というものが明らかになり、実際にその商品を購入することによって、実はリスクは遮断されていないという流動化商品だったわけですが、そういうことが明らかになり、それを調査していく中で非常に不適切な行為が明らかになり、また違法行為も出てきたというようなことであったわけです。こうした有機的に各機能が連携して護るべき人達、つまり投資家、或いは預金者、こういったものを護っていくと、こういうのはやっぱり一つの組織で必要な部分では独立性を保持しながら、しかし有機的に連携をしていく、私はこれは大変効果的であろうと思います。勿論国によりその金融機関の監督なり市場監督の歴史というものが違いますから、これが唯一の方法だというようなことはないと思いますが、日本の場合は現在の金融庁、そして証券取引等監視委員会のこの適切な独立を維持しながら、しかし活動を充分な連携をとっていくというものは極めて有効に機能していると思いますので、特段これを変更するという必要はないのであろうと思います。

(以上)

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