保険業法の一部を改正する法律案要綱

最近における保険業を取り巻く厳しい経済社会情勢の変化に対応し、保険業の継続が困難となる蓋然性のある保険会社について、保険契約者等の保護の観点から、契約条件の変更を可能とする手続等の整備を行うこととする。

一 契約条件の変更

  • 1. 契約条件の変更の申出

    • (1)保険会社は、その業務又は財産の状況に照らしてその保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合には、内閣総理大臣に対し、保険金額の削減その他の契約条項の変更(以下「契約条件の変更」という。)を行う旨の申出をすることができることとする。

    • (2)保険会社は、上記(1)の申出をする場合には、契約条件の変更を行わなければ保険業の継続が困難となる蓋然性があり、保険契約者等の保護のため契約条件の変更がやむを得ない旨及びその理由を、文書をもって、示さなければならないこととする。

    • (3)内閣総理大臣は、上記(1)の申出に理由があると認めるときは、その申出を承認するものとすることとする。

      (保険業法第240条の2関係)

  • 2. 解約に係る業務の停止等

    内閣総理大臣は、上記1.(3)の承認をした場合において、保険契約者等の保護のため必要があると認めるときは、当該保険会社に対し、期限を付して当該保険会社の保険契約の解約に係る業務の停止その他必要な措置を命ずることができることとする。

    (保険業法第240条の3関係)

  • 3. 契約条件の変更の限度

    • (1)契約条件の変更は、契約条件の変更の基準となる日までに積み立てるべき責任準備金に対応する保険契約に係る権利に影響を及ぼすものであってはならないこととする。

    • (2)契約条件の変更によって変更される保険金等の計算の基礎となる予定利率については、保険契約者等の保護の見地から保険会社の資産の運用の状況その他の事情を勘案して政令で定める率を下回ってはならないこととする。

      (保険業法第240条の4関係)

  • 4. 契約条件の変更の決議

    • (1)保険会社は、契約条件の変更を行おうとするときは、上記1.(3)の承認を得た後、契約条件の変更につき、株主総会(相互会社においては、社員総会(総代会を設けているときは、総代会。以下同じ。))の特別決議を経なければならないこととする。

    • (2)保険会社は、株主総会等の招集通知において、契約条件の変更がやむを得ない理由、契約条件の変更の内容、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項、経営責任に関する事項その他の事項を示さなければならないこととする。

    • (3)上記(1)の決議を行う場合において、契約条件の変更に係る保険契約に関する契約者配当、剰余金の分配その他の金銭の支払に関する方針があるときは、上記(2)の通知において、その内容を示さなければならないこととする。

    • (4)上記(3)の方針については、その方針を定款に記載し、又は記録しなければならないこととする。

      (保険業法第240条の5関係)

  • 5. 株主総会等の特別決議等に関する特例

    • (1)契約条件の変更に係る株主総会の特別決議は、商法の定足数に係る規定にかかわらず、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって、仮にすることができるとともに、再度の株主総会において出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって上記の仮決議を承認した場合には、その時に特別決議があったものとみなすこととする。

    • (2)契約条件の変更に係る社員総会の特別決議は、保険業法の定足数に係る規定にかかわらず、出席した社員(総代会を設けているときは、総代。以下同じ。)の議決権の4分の3以上の多数をもって、仮にすることができるとともに、再度の社員総会において出席した社員の4分の3以上の多数をもって上記の仮決議を承認した場合には、その時に特別決議があったものとみなすこととする。

      (保険業法第240条の6関係)

  • 6. 契約条件の変更に係る書類の備置き等

    保険会社の取締役は、上記4.(1)の決議を行うべき日の2週間前から下記10.(1)の公告の日まで、契約条件の変更がやむを得ない理由を示す書類、契約条件の変更の内容を示す書類、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測を示す書類、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項を示す書類、経営責任に関する事項を示す書類その他の書類を各営業所又は各事務所に備え置かなければならないこととする。

    (保険業法第240条の7関係)

  • 7. 保険調査人

    • (1)内閣総理大臣は、上記1. (3)の承認をした場合において、必要があると認めるときは、保険調査人を選任し、契約条件の変更の内容その他の事項を調査させることができることとする。

    • (2)内閣総理大臣は、保険調査人が調査すべき事項及び内閣総理大臣に対して調査の結果を報告すべき期限を定めなければならないこととする。

    • (3)内閣総理大臣は、保険調査人が調査を適切に行っていないと認めるときは、保険調査人を解任することができることとする。

    • (4)保険調査人に係る費用及び報酬は被調査会社の負担とすることとする。

    • (5)保険調査人は、被調査会社の取締役、執行役、監査役及び支配人その他の使用人並びにこれらの者であった者に対し、被調査会社の業務又は財産の状況につき報告を求め、又は被調査会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができることとする。

    • (6)保険調査人は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないこととする。

      (保険業法第240条の8~第240条の10関係)

  • 8. 契約条件の変更に係る承認

    • (1)保険会社は、上記4. (1)の決議があった場合には、当該決議の後、遅滞なく、当該決議に係る契約条件の変更について、内閣総理大臣の承認を求めなければならないこととする。

    • (2)内閣総理大臣は、当該保険会社において保険業の継続のために必要な措置が講じられた場合であって、かつ、上記4.(1)の決議に係る契約条件の変更が当該保険会社の保険業の継続のために必要なものであり、保険契約者等の保護の見地から適当であると認められる場合でなければ、上記(1)の承認をしてはならないこととする。

      (保険業法第240条の11関係)

  • 9. 契約条件の変更の通知及び異議申立て等

    • (1)保険会社は、上記8. (1)の承認があった場合には、当該承認のあった日から2週間以内に、契約条件の変更の主たる内容を公告するとともに、変更対象契約者(契約条件の変更の対象となる保険契約者をいう。以下同じ。)に対し、株主総会等で決議された契約条件の変更の内容を通知しなければならないこととする。

    • (2)上記(1)の通知には、契約条件の変更がやむを得ない理由を示す書類、契約条件の変更の内容を示す書類、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測を示す書類、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取扱いに関する事項を示す書類、経営責任に関する事項を示す書類その他の書類を添付するとともに、変更対象契約者で異議がある者は一定期間内に異議を述べるべき旨を付記しなければならないこととする。

    • (3)上記(2)の期間は、1月を下ってはならないこととする。

    • (4)上記(2)の期間内に、変更対象契約者総数のうち10分の1を超える者から異議が述べられ、かつ、当該異議を述べた変更対象契約者の保険契約に係る債権の額に相当する金額が変更対象契約者の当該金額の総額の10分の1を超えるときは、契約条件の変更をしてはならないこととする。

    • (5)上記(4)の異議申立てが成立しない場合には、変更対象契約者全員が当該契約条件の変更を承認したものとみなすこととする。

      (保険業法第240条の12関係)

  • 10. 契約条件の変更の公告等

    • (1)保険会社は、契約条件の変更後、遅滞なく、契約条件の変更をしたことその他の事項を公告しなければならないこととする。契約条件の変更をしないこととなったときも、同様とすることとする。

    • (2)契約条件の変更後3月以内に、変更対象契約者に対し、変更後の保険契約者の権利及び義務の内容を通知しなければならないこととする。

      (保険業法第240条の13関係)

  • 11. 特定契約の範囲の見直し

    合併等における契約条件の変更において、契約条件の変更の対象として定めることができない保険契約(特定契約)の範囲から、上記2.の命令により支払が停止している保険契約を除くこととする。

    (保険業法第250条関係)

二 基金及び基金償却積立金の取扱い

  • 1. 基金に係る債務の免除を受けたときは、その免除を受けた金額に相当する金額を、基金の総額から控除し、基金償却積立金として積み立てなければならないこととする。

    (保険業法第56条関係)

  • 2. 相互会社は、社員総会の特別決議により基金償却積立金を取り崩すことができることとし、この場合においては、保険株式会社の資本の減少の規定を準用することとする。

    (保険業法第56条の2関係)

三 罰則

所要の罰則規定の整備を行うこととする。

(保険業法第316条、第318条、第318条の2、第321条、第328条、第333条関係)

四 その他

  • 1. 施行期日

    この法律は、公布の日から起算して1月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

  • 2. その他所要の規定の整備を行うこととする。

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