広報コーナー 第10号
 

平成13年4月25日(水)、「財務局長会議」にあたって挨拶を述べられる柳澤金融担当大臣(中)、村井副大臣(当時)(左)。
 

<財務局長会議の開催について>
 
 4月25日、金融庁は本事務年度第4回目の財務局長会議を開催した。会議においては、柳澤金融担当大臣、村井金融担当副大臣(当時)からのご挨拶の後、各財務局長から預金保険制度に係る広報活動への取り組み状況や今後の同活動への意見等についての報告があり、当庁各局からは不良債権問題、銀行の株式保有の制限、証券市場の構造改革を主な内容とする緊急経済対策や金融審議会の状況等についての説明、検査のあり方等についての意見交換が行われた。


金融担当大臣挨拶

 財務局長会議の開催に当たり、一言ご挨拶をさせていただきます。
 明日、新内閣が発足するとのことですが、まずは、金融担当大臣の職務遂行にあたり、財務局長の皆様には大変お世話になりましたことを、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
 せっかくの機会ですので現下の金融行政について一言申し上げますと、我が国の金融システムは一時期と比較してかなりの程度安定を取り戻してきております。しかし、アメリカ経済の減速に伴って景気の改善に足踏みが見られる中で、株価が軟調に推移し、金融機関に対する様々な影響が取り沙汰されている状況にあります。
 こうした中、私どもは、我が国金融機関に対する預金者や市場からの信頼を揺るぎないものとするためには、金融機関が不良債権を間接処理するに止まらず、これをできる限りオフバランス化することが必要であると力説してまいりました。不良債権のオフバランス化により金融機関の収益力を増強し、同時に貸出先企業の不稼働部分を除去することにより、産業の再生ひいては経済全体の再活性化につなげることが重要であるという私どもの考えは、多くの方々の理解を得られてきているのではないかと思っております。
 去る4月6日に取りまとめられた緊急経済対策においても、金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的な解決を図るという観点から、不良債権の抜本的なオフバランス化のための施策が盛り込まれており、金融庁としても、本施策の迅速かつ着実な実施を推進していく必要があると思います。また、同対策には銀行の株式保有制限の導入も盛り込まれております。これについては、株式保有に伴うリスクを減少させることにより銀行経営の健全性を確保するとともに、株式持合いの縮小を通じて我が国株式市場の構造改革及びコーポレート・ガバナンスの改善に寄与することが期待されるため、可及的速やかに成案を得るべく検討を進めているところです。ただ、本件は、我が国経済構造の根幹に関わる問題であるだけに、関係各方面の意見等も十分聞きつつ、ショック・アブソーバーとしての一時的な株式買取りのスキームとともに、慎重に取りまとめていくことが必要であると考えております。
 さらに、来年4月に迫ったペイオフ解禁については、我が国金融システムの安定化を象徴するものであることから、万全の体制で迎えていただくことを
 財務局長の皆様方に対しても改めて要望したいと思います。また、私たちの金融行政全般の対応について一言申し上げれば、今後は、市場の変化のスピードを十分踏まえ、創造的で迅速な対応をしていくことが肝要であると考えております。財務局長の皆様方におかれましては、地域金融の安定を図るという重要な責務を有しておられることを肝に銘じ、金融庁と引き続き密接な連携を取りながら、検査・監督・監視事務の円滑な遂行に最善を尽くしていただきたいと思います。
 最後になりましたが、財務局職員の方々のご健闘とご健康を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。

金融担当副大臣挨拶

 副大臣の村井でございます。
 財務局長会議の開催に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
 金融行政一般につきましては、既に柳澤大臣が触れられておりますので、私からは、これまで私自身がどのような問題意識を持って金融行政に接してきたかをお話しさせていただきます。
 大臣のご提唱されている不良債権のオフバランス化をはじめ、金融に対する世間の関心が高まっている一方で、金融をめぐる様々な問題というのは、専門的、技術的な側面もあり、なかなか国民にご理解をいただくのが難しい面が多々あることを痛感しております。例えば、私が地元に帰りまして支援者の方と膝を交えて話をいたしましても、一体どういうふうに説明したらよいだろうかと悩むこともございます。
 これに関連して、先般の副大臣会議においても、私は、政府広報の重要性について問題提起をし議論をしたところでありますが、その一つの具体策として、この度、金融庁ホームページの中に「金融早わかりQ&A」というコーナーを設け、国民の皆様からの率直な疑問に対して、私自身が自分の言葉でできる限りわかりやすくお答えをしているところです。
 国民の皆様に、またマスメディアの皆様に、私どもが一体何をやっているのか、何を目標にしているのかということをご理解いただく努力、すなわち広報活動の重要性はますます高まってきていると思います。今後とも、この件につきましては、国民に直接接せられる財務局の皆様のお力を借りながら推進していくことが重要です。財務局長の皆様におかれましても、私と同様の問題意識を有していただき、国民の皆様にわかりやすい説明を行っていただくようお願いいたします。
 新年度を迎え、ペイオフ解禁までいよいよ1年を切り、今後は預金保険制度に係る広報についても財務局の皆様にもご協力をいただきながら取り組んでいく必要があると思います。預金保険制度に係る広報については、本日の会議においても、財務局長の皆様からご報告をいただくとのことですので、活発なご議論のほどよろしくお願いいたします。
 最後になりましたが、財務局職員の皆様のご健勝をお祈りして、私の挨拶とさせていただきます。

 

<内部監査・外部監査に関する検査マニュアルの充実について>


.はじめに
 金融庁の検査は、自己責任原則に基づく預金等受入金融機関及び保険会社(以下、「金融機関等」という。)自身の内部管理と、会計監査人等による厳正な外部監査を前提としつつ、これらを補強するものである。また、金融機関等における適切な内部管理態勢を整備するためには、実効性ある内部監査態勢の確立が不可欠である。そのため、金融機関等における実効性ある内部監査・外部監査態勢の確立は重要な課題となっているが、内部監査の担い手である金融機関等の検査部等が、必ずしも検査対象である業務部門から独立していない点、検査部等の検査が、支店を中心とした事務リスク中心の検査にとどまり、比較的リスクの大きい本部の各部門が網羅的に検査対象となっておらず、その手法及び対象が不十分な点など、金融機関等における内部監査・外部監査の現状が必ずしも十分と言いがたいことから、今般、検査マニュアルの「リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト(共通編) III 」の記述を充実させることにより、金融機関等に対し、自己責任に基づく内部監査・外部監査態勢の確立を促すとともに、金融庁の検査の更なる実効性及び効率性の向上を図ることとしたものである。


.内部監査・外部監査ワーキング・グループ
 上記観点から、金融機関等における内部監査・外部監査態勢の問題点を分析するため、各金融機関等からヒアリングを実施することにより、各金融機関等における内部監査・外部監査態勢の現状をより詳細に把握し、これを踏まえて、平成12年8月29日、当庁検査部(現検査局)内に「内部監査・外部監査ワーキング・グループ」を設置し(メンバーは後掲)、検査マニュアルの充実に向けた検討を開始した。
 このワーキング・グループにおいては、計13回にわたる会合を開催し、金融機関等における内部監査・外部監査の現状及び問題点を分析するとともに、(1)内部監査の定義、(2)実効性ある内部監査機能の確保、(3)内部監査対象、内部監査手法等の充実、(4)外部監査の有効性確保等に関して、様々な角度から議論を行った。かかる議論を踏まえ、全国銀行協会等の関係各団体から意見を聴取するなどした上、その成果として、内部監査・外部監査に関する検査マニュアル案を取りまとめ、平成13年2月9日、これをパブリック・コメントに付し、広く一般からの意見募集を行った。パブリック・コメントは、同年3月9日に締め切ったが、多数の方々から貴重なご意見を頂戴したため、再度、これをワーキング・グループで検討した上、検査マニュアル策定作業を進め、同年4月25日、内部監査・外部監査に関する検査マニュアルを最終的に確定し、通達として発出するとともに、これを公表した。


.検査マニュアル充実のポイント
 主なポイントは、以下のとおりである。
 
(1)  従来の検査マニュアルにおいては、「内部検査」という用語を用い、これを「検査部門による本部検査、各業務部門又は営業店等による自店検査である。」と定義付けていたが、検査の内容を具体的に定義していなかった上、内部管理の一環である自店検査を内部検査の範疇に含めるなど、その機能が必ずしも明確でなかった。そこで、今般の検査マニュアルの充実により、従来の「内部検査」を「内部監査」という用語に統一するとともに、これを内部管理態勢等の適切性・有効性を検証するプロセスであると定義付け、原則として、内部管理の一環として被監査部門等が実施する自店検査等を含めないこととし、その機能を明確にした。
 また、内部監査が有効に機能するためには、経営陣がリスクの種類・程度を理解し、適切なリスク管理態勢を確立する観点から、内部監査の重要性を十分認識し、内部監査部門を被監査部門等から独立させるなどの態勢の構築が不可欠である。従来の検査マニュアルにおいても、「検査部門の重要性の認識」、「検査部門の独立性の確保」というチェック項目を設けていたが、その記述が必ずしも具体的でなかったため、今般の検査マニュアルの充実により、以下のように、より具体的なチェック項目等を設けることとした。
 まず、内部監査部門を「企業収益の獲得及び適切なリスク管理に不可欠な部門」と位置付け、代表取締役及び取締役会が内部監査規程等により内部監査の目的を適切に設定しているかを確認する項目を設けるとともに、内部監査機能を十分発揮するための態勢の構築、内部監査機能の有効性の確認等に関する項目を設けた。
 特に、内部監査部門が、その機能を十分発揮するためには、内部監査部門の独立性確保が不可欠となるため、内部監査部門を専担する取締役の選任をベスト・プラクティスとする一方、取締役に内部監査部門と被監査部門等とを兼担させる場合、内部監査部門の独立性を確保するための措置を講じているか確認する項目を設けた。さらに、内部監査部門が監査業務を遂行するに際しての独立性を確保するため、被監査部門等から不当な制約を受けていないか、監査業務以外の業務に従事していないか、職務上必要とされる全ての資料等を入手できる権限を有しているかなどを確認する項目を設けた。
(2)  既に述べたとおり、金融機関等の検査部の検査は、その手法及び対象が必ずしも十分でなかったことから、この点に関する記述を充実させることにより、内部監査の手法及び対象を明確にし、効率的かつ実効性ある内部監査の実施を企図した。
 まず、従来の検査マニュアルにおいても、金融機関等の全ての業務を内部監査の対象としているかを確認するチェック項目を設けていたが、金融機関等が抱えるリスクは、必ずしも金融機関等本体が抱えるリスクに限定されるものではなく、関連会社等が抱えるリスクも含まれることから、連結対象子会社、持分法適用会社及び外部に委託した業務に関しても、一定の範囲で、これを内部監査部門が適切に監査しているかを確認する項目を設け、内部監査の対象をより明確化した。
 次に、現行の検査マニュアルは、金融機関等の抱える各種リスクの管理状況を、各リスク区分ごとに確認する体裁となっていることから、これらのリスク管理状況をチェックする内部監査においても、各種リスクの特性を考慮しないで全ての被監査部門等を同じ条件で監査するのではなく、被監査部門等が抱えるリスクの種類・程度に応じて、頻度及び深度等に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案し、これに基づいた監査を実施しているかを確認する項目を設け、監査手法等の充実を図った。
(3)  従来の検査マニュアルにおいては、内部監査部門と外部監査人との関係に関する記述は存しなかったが、内部監査部門と外部監査人とが、必ずしも密接に情報交換等を行っておらず、内部監査と外部監査との連携が十分に機能していない現状に鑑み、経営者が外部監査の重要性を認識することを前提に、取締役会が、内部監査部門と外部監査人との協力関係に配慮しているかを確認する項目を設けた。


.適用にあたっての留意点
 検査マニュアルの適用にあたっては、各金融機関等の規模や特性を十分に踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮することは、従来と同様である。


.今後のスケジュール
 本検査マニュアルについては、今後、各検査官に周知徹底を図るとともに、本年7月以降に実施する検査において適用することとしている。


(内部監査・外部監査WGメンバー)
 
座  長 野村 修也 中央大学法学部教授、金融庁検査局参事(非常勤)
メンバー 木戸 久男 検査局検査監理官
  佐々木清隆 検査局検査企画官
木村 耕三 検査局検査指導官
小林謙太郎 検査局総務課課長補佐(指導1係)
樋口 茂雄 検査局総務課課長補佐(指導2係)
原田 義久 検査局総務課課長補佐(地方1係)
石村 幸三 検査局総務課課長補佐(国際調整係)
安藤 浄人 検査局総務課課長補佐
氷見野良三 総務企画局国際課企画官
多賀谷 充 総務企画局企業開示参事官室課長補佐
篠原  真 総務企画局企業開示参事官室主任企業会計専門官
堀本 善雄 監督局総務課課長補佐
小野  孝 監督局銀行第1課課長補佐
住澤  整 監督局銀行第2課課長補佐
重藤 哲郎 監督局保険課課長補佐
高橋  浩 検査局金融証券検査官(公認会計士)
松浦 美歌 検査局金融証券検査官(公認会計士)(第4回から)
頼廣 圭祐 監査法人太田昭和センチュリー 公認会計士
大森  茂 監査法人トーマツ 公認会計士

 
<主な出来事>(4月)
     
2日(月) 入庁式
3日(火) 事務ガイドライン改正(証券会社等関係)
金融トラブル連絡調整協議会開催(第4回)
シンプレクス・アセット・マネジメント(株)及び三菱商事・ユービーエス・リアルティ(株)に対する投資信託及び投資法人に関する法律第6条の規定に基づく認可
6日(金) (・「緊急経済対策」発表)
企業会計審議会第一部会開催(第7回)
企業会計審議会第二部会開催(第16回)
金融庁「公益法人に対する監督に関する事務処理規程」及び「公益法人の設立許可及び指導監督基準に当たっての留意事項について(事務ガイドライン)」の公表
だいしん信用組合及び加賀信用組合に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)の概要の公表(パブリック・コメント)
「株式会社イトーヨーカ堂及び株式会社セブン−イレブン・ジャパンの産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について」発表
11日(水) 金融審議会金融分科会特別部会開催(第2回)
12日(木) 顧問会議開催(第10回)
財務局検査監理官等会議開催
13日(金) 金融審議会金融分科会第二部会開催(第2回)
企業会計審議会固定資産部会開催(第7回)
内外からの規制緩和要望等に対する検討状況(中間公表)[改訂版]発表
カナダ・コマース銀行東京支店に対する行政処分
16日(月) 金融審議会金融分科会特別部会(第3回)・割賦販売分科会個人信用情報小委員会合同会議開催
20日(金) 金融税制に関する研究会開催(第6回)
信用組合京都商銀に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
23日(月) 企業会計審議会固定資産部会開催(第8回)
石川商銀信用組合に係る管理を命ずる処分の取消しについて
「株価指数に連動する現物出資型上場投資信託(ETF)の導入について」発表
25日(水) 財務局長会議開催
金融審議会金融分科会第二部会開催(第3回)
「株式会社岐阜銀行の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について」発表
「株式会社近畿大阪銀行の産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について」発表
神奈川県信連に対する信託兼営認可
バンカ・インテーザ・エッセ・ピー・ア東京支店に対する外国銀行支店の免許
「預金等受入金融機関及び保険会社に係る検査マニュアルの充実について」に対するパブリック・コメントの結果公表
「証券会社に係る検査マニュアル(案)について(証券検査マニュアルワーキンググループとりまとめ)」公表
株式会社アイワイバンク銀行に対する銀行業の免許
ソニー銀行株式会社に対する銀行業の免許
26日(木) 「緊急経済対策関連等に係る検査マニュアルの整備について」公表(パブリック・コメント)
27日(金) 企業会計審議会第一部会開催(第8回)
企業会計審議会第二部会開催(第17回)
研究者(常勤職員)及び研究補助者(非常勤職員)の募集
「証券取引法施行令の一部を改正する政令」(案)及び「会社関係者等の特定有価証券等の取引規制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)の概要の公表(パブリック・コメント)