平成18年7月26日
金融庁

日本生命保険相互会社に対する行政処分について

  • 1.日本生命保険相互会社から、顧客からの照会をきっかけとして、本社の給付金支払査定担当社員(以下「事故者」)による以下のような不正な事務処理が発覚した旨の不祥事件届出書の提出を受けた。

    • (1)告知義務違反により会社が保険契約を解除できる期限を経過したにもかかわらず、事故者が解除期限日を改ざんし、解除期限後に保険契約を不正に解除していたこと。

    • (2)保険金・給付金に係る遅延利息の起算日を事故者が改ざんし、遅延利息を過少に支払ったこと。

  • 2.本件届出を受け、当庁として、保険業法第128条に基づき、同社に対し、このような不祥事件の発生原因及び不正な事務処理が発見できなかった理由並びに事故者以外について同様の不正な事務処理が行われていないかの点検等に関し報告を求めた。

  • 3.上記報告により、以下のような事実が確認された。

    • (1)約款に違反し、解除期限経過後に保険契約を不正に解除した事案が事故者に関して過去9年間(平成9年から平成17年)にわたり105件認められた。なお、問題発覚後これらの全契約について、顧客に対し解除前の契約内容に戻すかどうかを確認したところ、解除後に新たな保険事故が発生しており、結果として保険契約を復旧のうえ保険金・給付金を支払った契約が少なからず(29件(28名)、2億429万円)あった。

    • (2)約款に違反し、支払給付金に係る遅延利息が過少払いとなっている事案が事故者に関して過去4年間(平成14年から平成17年)で多数(303件、553千円)認められた。また、事故者以外の支払担当者においても、遅延利息が過少払いとなっている事案が過去3年間(平成15年から平成17年)で散見(35件、32千円)された。

  • 4.当庁として、上記報告を検証した結果、以下のとおり、同社については、保険金等支払管理態勢及び経営管理態勢等に欠陥があることが認められた。

    • (1)支払査定担当者は、契約解除などの難易度の高い案件を単独で査定及び決裁処理することができるものとなっているが、上位管理者を含む第三者によるチェックが行われておらず、内部牽制機能が発揮されていないこと。

    • (2)支払件数の増加、商品・特約の種類の多様化・複雑化に伴う業務量の増加等に対応したシステム投資に係る適時・適切な経営資源の配分を怠っていること。

      さらに、このような状況にもかかわらず、適切な人員配置が行われていないほか、十分な査定人材の育成・確保がなされていない状況にあること。

    • (3)適切な人事ローテーションが確保されておらず、事故者については16年間にわたり同一部署の同一業務に従事させているなど、事故防止のための適切な措置が講じられていないこと。

    • (4)検査部検査及び監査役監査については、支払管理態勢に関して実効性のある検査及び監査が行われていないこと。

    • (5)告知義務違反により解除を行う場合の顧客に対する通知文書に関しては、約款の根拠条文の記載が無いほか、解除理由に関する説明が不十分なものとなっていること。

      また、保険金等の支払に係る通知文書については、遅延利息の算定根拠となる起算日が明記されていないなど、利用者保護上問題のある取扱いとなっていること。

    • (6)取締役会等においては、保険金等の支払に係る適切な業務運営が行われるよう経営資源が配分されているか等の検証は行われておらず、また、支払管理が適切に行われているかどうか把握していないなど、経営陣のガバナンス機能の発揮は不十分となっていること。

  • 5.以上を理由として、本日、同社に対し、保険業法132条第1項に基づき、下記の内容の業務改善命令を発出した。

    • (1)支払管理態勢の検証・見直し

      • 保険契約の解除及び保険金等に係る遅延利息の支払を含めた支払事務工程・システム・規程等の支払事務に係るプロセス全体の検証を行った上、必要な見直しを行うこと。

      • 保険契約の解除を行う場合には、適用理由及びその適用の基礎とした根拠(入手方法も含む。)などについて、保険契約者等に対して十分に説明を行い得る態勢を整備すること。

      • 保険金等の支払に関して遅延利息を支払う場合には、算定根拠となる起算日などについて、保険契約者等に対して十分に説明を行い得る態勢を整備すること。

      • 適切な支払査定を行うための支払査定担当者に係る人材育成策を策定するとともに、支払査定能力を維持・向上させるための方策・態勢を確立すること。

    • (2)経営管理(ガバナンス)態勢の改善・強化

      • 適切な業務運営を確保するための内部牽制が有効に機能を発揮するよう、例えば以下のような点に留意し、経営陣が率先して体制の整備を図ること。

        • ア.内部監査について、内部監査部門の独立性を確保した上で、全ての部署の全ての業務に内部監査を適切に実施すること。

        • イ.各部署において、定期的に実効性のある自主的な点検を実施すること。

        • ウ.特定の職員を長期間にわたり同一部署の同一業務に従事させないように、適切な人事ローテーションを確保すること。

      • 業務量の増加等に的確に対応した経営資源の重点的配分や事務処理の効率化による適切な業務運営の確保を図りうるよう、例えば以下のような点に留意し、経営陣が率先して体制の整備を図ること。

        • ア.各部署の事務量及び事務処理能力を定期的に把握し、必要に応じて適切な対応を図るための指示等を行うこと。

        • イ.将来見込まれる事務量を的確に把握し、人材育成、システム投資、事務処理態勢の整備等の計画を策定し実施すること。

    • (3)上記の業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。

    • (4)上記(1)から(3)に係る事項に関して、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を平成18年8月25日までに提出すること。

    • (5)上記(4)の実行後、業務改善計画の実施完了までの間、計画等の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、3ケ月毎に報告すること。

(以上)

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