平成22年6月28日
金融庁

第3回コーポレート・ガバナンス連絡会議 議事要旨

1. 日時:

平成22年6月16日(水曜日)15時00分~17時15分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

エンフォースメントの観点からの会社法関連の問題

(証券取引等監視委員会からの報告)

監視委員会による事後チェックだけではなく、未然予防も含めて全体としての市場の監視が重要。その担い手は当局だけではなく、取引所、自主規制機関、証券会社、発行企業、弁護士・会計士の役割も重要と考えている。我が国では、民間同士のエンフォースメントや市場監視が十分とはいえない。

監視委員会は流通市場を監視しているが、不公正ファイナンスの問題の根幹は、規制緩和が進んでいる会社法が主に発行市場において悪用されているところにあることが多い。会社法の世界でも何らかの対応が必要。

株主権の希釈化を伴うファイナンスに際して、社外監査役の存在を強調したり、監査役による意見提出、弁護士による意見提出等が行われるケースがあるが、実質的には独立した観点での判断がされているとは思えない事例もある。

近時、不公正ファイナンスの当事者企業は、現在では東証一部・二部上場の名門企業の事例もあり、金融機関がこうしたファイナンスの当事者になるという事例すらある。数の問題だけでなく質的にも深刻化してきている印象。

取締役会が形骸化した「箱」企業が利用されるなど、コーポレート・ガバナンスが機能していないことが不公正ファイナンスの原因となっており、海外のようにコーポレート・ガバナンスが機能しているのであれば、不公正ファイナンスを行うことを取締役会が認めないのではないか。また、海外では、不公正な取引に対して弁護士、会計士等から軽々にオピニオンがでないのではないか。当局からの制裁、民事責任による制裁等による市場の規律が存在し、不公正ファイナンスが抑制されていると認識している。

監視委員会は、事後チェックの機関であるが、金商法違反の摘発という段階まで来たというのは、既に市場に大きな問題が起き、被害者が多く存在しているということ。その段階まで放っておいてよいのかという問題意識を有している。

(証券取引等監視委員会からの報告に関する意見交換)

会社法の規制緩和なり会社法の悪用については、独立社外取締役の導入の義務付けと20%以上の希釈化の場合に株主総会による承認を必要とすることの二つが有効ではないか。

独立性の高い取締役がチェック機関として入ることは不公正ファイナンスの抑止に効果があると考えられるが、それだけが解決策というわけではなく、例えば大株主の少数株主に対する責任というアメリカ法にあるような考え方を導入する等のそれ以外の方法も含めて分析や検討を進めていくことが必要である。

日本では上場企業に対するブランドイメージが極めて高い。そのイメージを悪用する事例もある。

不公正ファイナンスの問題について、不正な処理が繰り返され、相当程度、問題が悪化した状況に至ってしまうと、もはやガバナンスのしようがないが、もう少し前の段階であれば、財務諸表への注記や会計監査人と企業の議論等を通じて改善を図ることも不可能ではなく、法制度によって対応することが意味を持ってくる。

会社法に、内部監査部門の設置義務を明記すべき。

株式の経済価値の希釈化、株主権の希釈化に関して、大体10%以上の希釈化がなされる場合は、株主の承認を得るというのがグローバルスタンダード。不公正ファイナンスという視点だけでなく、既存株主の権利の希釈化についても議論すべき。

現物出資された不動産の鑑定評価額の相当性の問題や第三者割当増資による希釈化の問題については、制度論として新株発行に際して株主総会の承認を求める方向での解決のほか、エンフォースメントの強化という方向もある。前者の問題については、例えば金商法での対応策として、弁護士等が出す現物出資の証明書を有価証券届出書の添付書類にすれば、虚偽記載について金商法上の刑事罰の対象とすることができるし、課徴金の対象にもなる。

一律に制度論として株主総会の承認を求めるべきかについて、慎重な考慮が必要。金商法の中でのエンフォースメントの強化として議論すべき問題も含まれている。

株式対価の公開買付け(現物出資規制)

株式対価の公開買付けは現行の現物出資規制等の下では、利用しにくい状況にあり、制度改正が望まれる。具体的には、第一に、市場価額のある有価証券を現物出資する場合、現物出資財産としての価額については、決定時の価額を定めればよく、その後の値下がりの責任を生じさせないようにする。第二に、現物出資規制自体の存続、要件について、再検討する。第三に、簡易株式交換と同様の要件で、有利発行の株主総会決議を不要とする。第四に、払込期間前日までの通知の制度を上場会社については廃止する。

株式対価の公開買付けを推進するのであれば、子会社の親会社株式取得規制の例外を増やすといった方法も考えられ、正面から現物出資規制の改正を行うという方法以外の対応策も考えるべき。

株式対価の公開買付けについて最も障害となっているのは税金の問題。組織再編税制の合理化の論点も認識すべき。

公開買付規制違反等に対するエンフォースメントの複線化

議決権の停止によるエンフォースメントについては、会社の経営支配権争奪に際しての公正さの確保に関する諸規制(公開買付規制、大量保有報告規制、委任状勧誘規制、第三者割当増資等に関する規制及びインサイダー取引規制等)の実効性確保のため、それに違反した場合に、共益権全体を停止(凍結)する制度として構築すべき。

少なくとも、公開買付規制違反、委任状勧誘規制違反及び第三者割当増資等に関する規制等への違反があった場合には、当該違反行為によって取得された株式についてのみ、その違反状態が除去されるまで(又は+1~2年程度)、当該株式についての共益権を停止すれば足りるのではないか。

大量保有報告規制違反に関しては、「違反行為による取得」ということを観念しにくいので、フランスと同様、関連する閾値を超える部分の議決権等を、例えば違反状態が除去されてから2年間停止することでどうか。

会社、他の株主及び証券取引等監視委員会(又は金融庁)は、裁判所に対して、その者の有する議決権等の全部又は一部の行使を最大5年間停止するように申し立てることができることとしてはどうか。

共益権が停止されることとすれば、違反者による議決権等の行使に対しては、議決権行使禁止の仮処分が「自動的に」下されることとなり、株主総会決議取消の訴えは、裁量棄却がされない限りは認められることとなる。

大量保有報告規制に関しては、子会社である運用会社が保有している株式について、子会社が独自に議決権行使の決定をしているといった事情があることも考慮して検討すべきである。

実務上、過失により大量保有報告書の提出が遅れてしまう事例は必ずしも少なくなく、議決権行使の停止について故意・過失を考慮すべき。

大量保有報告書の提出遅延等でいきなり刑事罰や課徴金が課せられるよりは、議決権の停止という私法上のサンクションを課すことがマイルドな手段といえるのではないか。

大量保有報告書の提出主体は実質株主が基準となり、議決権行使の主体は名義株主が基準となる。実態的には実質株主が違反を行っているのに、名義株主について議決権を停止するのかという問題があるのではないか。

大量保有報告規制について諸外国の中ではフランスの規制が厳しいようであるが、フランスの方針は自国の企業を守っていく意識がアメリカやイギリスに比べて強いことが背景にあるのではないかと思われる。

我が国についても、表立って買収防衛策を導入するよりも、エンフォースメントを厳しくすることによりクラウンジュエルを守っていくという方針の方が納得感があり、公開買付規制違反に対する議決権停止は有効な手段ではないか。

公開買付規制違反や大量保有報告規制違反の議決権について、会社の裁量によって、議決権を停止したり、停止しなかったりすることを認めると、友好的な買収者が違反した場合は何も言わずに、敵対的な買収者が違反した場合にだけ議決権停止の取扱いをするということも考えられてしまう。

議決権行使の差止めや停止等の措置について、後日、議決権を否定したことを前提とする株主総会決議が取り消されるリスクがあり、それによる萎縮効果のため、会社が自主的に規制違反を認定し、議決権行使を停止するというのは難しい。事実上、裁判所の手続を経ることにならざるを得ないのではないか。

議決権の停止自体は、会社法上多様な議論を招くため、一般論としては立法できないとしても、最低限たとえば公開買付規制違反については金商法上差止めの手続を準備する等の形でのエンフォースメントも考えるべき。

議決権の停止のエンフォースメントについては、会社法ではなく金商法で規律すべきではないのか。エンフォースメントという点では、金融庁の対応に期待したい。

エンプティ・ボーティング等

「裸の議決権」のみを保有する者は、企業価値の向上と無関係な自らの利益のみを図る可能性が高いため、その議決権行使は「株主共同の利益」に反するおそれが高い。これに鑑みると、「裸の議決権」のみを株式に関する経済的権益から分離して行使することが合理性を有するような特段の事情が存しない限り、「裸の議決権」の行使は会社法上正当な議決権行使とは認められないとする余地があるのではないか。

「裸の議決権」を作出するスキームによっては、公開買付規制や大量保有報告規制との関係で問題が生じる可能性もある。例えば、公開買付規制との関係でいえば、開示を伴わないまま、突如大株主になるようなデリバティブ取引を用いることで、コントロール・プレミアムを支払うことなく会社支配権を取得することが可能となり、株主・投資家への適切な情報開示や売却機会の付与という公開買付規制の趣旨が没却される可能性がある。また、開示を伴わないデリバティブ取引により、上場株券等の保有状況に関する情報を株主・投資家に提供するという大量保有報告規制の趣旨が没却される可能性がある。

エンプティ・ボーティングの具体的な弊害が明らかではない。世の中の経済活動においてエンプティ・ボーティング的なものは多く利用されている。そういった場合にどこまで外縁を捉えて規制の対象にするのかについて慎重に議論しないと様々な経済活動に影響が出てくる。我が国だけ先走って立法することは妥当ではない。

資本市場を通じた規律を高めるという観点でいうと、日本の場合は、株主が経済的な観点から議決権行使をしていないのではないかというのが問題。一番の問題は、いわゆる持合株主という形で議決権を行使していることではないか。

実質株主の取扱い

わが国の株式会社の株主権の行使をめぐり問題となりうる状況について、(実質的な株主による)株主権の行使が阻害されずに確実にこれを行うことができるように制度整備を図るべき。

実質株主の権利行使の制限につながる事項の定款での規定は禁止されることを法律上明記すべき。

名義株主を通じて保有している実質株主の株主総会への出席の拒否やその他の権利の行使が拒否されることがないように、実質株主の権利行使が阻害されるべきではないことを会社法上明文で規定すべき。

実質株主の確認・確定方法についてルール化すべき。

振替株式制度上の参加者による証明を通じた実質株主の確定とその権利行使を確実化するための手続を導入すべき。

実務的には、発行体の方で、実質株主が誰かどのように確認をすればよいのかという問題の方が大きい。短期間に大量処理、事務処理が要求されるし、会社側としても権利行使を認めようとすると厳格な本人確認が要求されている。

制度的に、権利行使の基準日現在の実質株主が誰であるか会社側が自動的に知ることのできる仕組みを構築することが必要ではないか。

そもそも実質株主の利益をどこまで保護する必要があるかについて、直接株式を保有するのではなく、名義株主を通じて株式を保有することの合理性も検証して、検討すべき。

ライツ・オファリング関連

ファイナンス期間が長期になるほど、政治経済イベントの発生や投機的な取引の介入の可能性が増すことから、株価の不安定性が増し、妥当な行使価格の設定が難しくなる。ノンコミットメント型の場合は、発行会社の資金調達の不確実性が増し、コミットメント型の場合は証券会社のマーケットリスクが増すため、コミットしづらくなる。このため、できる限り、ファイナンス期間は短い方が望ましい。

会社法上、新株予約権の株主割当てについては、権利行使期間開始日の2週間前までに通知が必要とされるが、株式の株主割当てと同様に行使期間の最終日から2週間前の通知にできないか。

新株予約権の無償割当てに際して目論見書をwebで公表した場合は、目論見書の交付を原則として不要とし、個々の株主に求めに応じて目論見書を送付すればよいことにできないか。

無償割当てにより取得した新株予約権は特定口座への受け入れ不可。一方、上場後に取得した新株予約権は特定口座への受け入れ可能とされているが、税制との関係で、区別なく受け入れ可能とすべき。

ライツ・オファリングに伴う証券会社の新株予約権・株式の取得について、一定の要件のもと、公開買付規制の対象から除外することが認められないか。

ライツ・オファリングについては会社法の改正を待たずに資本市場の問題として早急に対処してほしい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課・企画課調査室(内線3814、3510)


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