平成21年7月31日
金融庁

カブドットコム証券株式会社に対する行政処分について

カブドットコム証券株式会社(以下「当社」といいます。)元社員によるインサイダー取引事案について、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第56条の2第1項の規定に基づく命令に対する同社からの報告書や、同社が設置した特別調査委員会の報告を踏まえ検討した結果、以下の状況が認められました。

  • 法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況

  • (1)当社元社員は、平成19年3月5日に公表された三菱東京UFJ銀行による当社株式公開買付け(以下「第1回TOB」という。)に関して、その公表前に当社システム内の共有フォルダを探索し、ホームページ掲載用に作成・保存されていた原稿のファイルを発見して、インサイダー取引を行った。

    また、平成19年11月14日に公表された三菱東京UFJ銀行による当社株式公開買付け(以下「第2回TOB」という。)に関して、その公表前に当社取締役代表執行役社長から当該事実が明記された電子メールを受信し、インサイダー取引を行った。

  • (2)本件に関して、当社には以下の問題が認められる。

    • (a)第1回TOBの際には、全社員が閲覧可能な共有フォルダに重要事実を含むファイルが保存されており、法人関係情報に係るフォルダやファイルに対するアクセス権限が定められておらず、ファイル名やパスワードの設定方法についての社内ルールも設定されていなかった。

    • (b)第2回TOBについては、取締役代表執行役社長をはじめとする経営陣が、重要情報の伝達の相手先・内容・タイミングの判断を適切に行わず、結果として、取締役代表執行役社長による電子メール送信が、行為者によるインサイダー取引を誘発することとなった。

    • (c)インサイダー取引の未然防止のための社内ルールについても、整備が不十分な点があった。

  • (3)また、本件の背景として、当社の経営管理態勢・内部管理態勢に関して、以下のような点が認められる。

    • (a)当社の業務運営は、取締役代表執行役社長に実質的な権限が集中しており、取締役会や各委員会による業務執行部門に対する監督が不十分であった。

    • (b)当社においては、リスク・コンプライアンスの管理部署が整備されていないなど、内部管理のための体制が不十分であった。また、内部監査部門も体制が弱く、十分に機能していなかった。各種の社内ルールに対する役職員の理解が十分ではなく、その理解向上のために必要な研修等も実効性に欠けていた。総じて、各種の社内ルールの適切な運用を確保する内部管理態勢が整備されていなかった。

証券会社は、市場仲介者としての公共的な役割を担うものであり、他の市場参加者以上に、適切な経営管理の下で十分な内部管理態勢を整備し、適切な業務運営を確保する必要がある。市場の透明性・公正性に対する信頼を向上する観点からも、法人関係情報を含む情報セキュリティ管理の徹底や、役職員による不正行為の防止に向けた職業倫理の強化等に取り組むことが求められる。

しかしながら、上記のとおり、当社の経営管理態勢・内部管理態勢には不十分な点が認められ、そのため、元社員によるインサイダー取引事案を生じさせたことは、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第5号に規定する「その取り扱う法人関係情報に関する管理(中略)について法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況」に該当するものと認められる。

以上のことから、本日、当社に対し、以下の行政処分を行いました。

  • 金融商品取引法第51条に基づく業務改善命令

    • (a)本件の背景にある経営管理上の問題点も踏まえ、経営陣の責任の所在の明確化を図るとともに、経営管理態勢の強化を図ること。

    • (b)適切な業務運営を確保する観点から、内部管理部門および内部監査部門の体制を整備し、その十全な機能発揮の確保に取り組むこと。

    • (c)情報セキュリティ管理をはじめとする内部管理態勢の状況を検証し、必要な整備を行うとともに、その実効性確保のために必要な措置を講じること。

    • (d)役職員の職業倫理の強化及び情報セキュリティ管理に対する意識の向上等を図る観点から、教育・研修のあり方を見直し、経営陣が率先して適切に実施すること。

    • (e)上記(a)~(d)への対応状況について、平成21年8月31日(月)までに、書面で報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局証券課(内線2661、3723)

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