平成22年6月25日
金融庁

株式会社ビックカメラ役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載事件に対する違反事実がない旨の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、株式会社ビックカメラ役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告(課徴金額1億2073万円)を受け、平成21年6月26日に審判手続開始の決定(平成21年度(判)第14号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後、審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法第185条の6の規定に基づき違反事実がない旨の決定案が提出されたことから、本日、下記のとおりPDF決定を行いました。

1 決定の内容

主文:被審人に対する本件審判事件について、金融商品取引法第178条第1項第2号に該当する事実を認めることはできない。

2 本件審判事件の概要

  • (1)本件審判事件は、被審人が所有する株式会社ビックカメラ(以下「ビックカメラ」という。)株式の売出しに係る目論見書の虚偽記載に関する事案である。本件審判事件の対象事実である審判手続開始決定書記載の課徴金に係る金融商品取引法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。)の要旨は次のとおりである。

  • (2)ビックカメラは、平成14年8月23日、特別目的会社を活用した不動産流動化(以下「本件不動産流動化」という。)を行ったところ、ビックカメラとともに当該特別目的会社が組成した匿名組合への出資を行った株式会社豊島企画(以下「豊島企画」という。)は、その出資、融資等の実態からビックカメラの子会社に該当することになるため、本件不動産流動化におけるビックカメラのリスク負担割合は約31パーセントとなる。

    したがって、平成19年10月22日の本件不動産流動化の終了に伴い、ビックカメラに匿名組合からの匿名組合清算配当金が発生することはなく、匿名組合清算配当金をビックカメラの特別利益として計上することはできないのであるから、ビックカメラの第27期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書の連結財務諸表の重要な後発事象の注記における匿名組合清算配当金4920百万円が発生している旨の記載、及び、第28事業年度中間連結会計期間に係る半期報告書の中間連結損益計算書における連結中間純損益が匿名組合清算配当金の計上等により7145百万円の利益である旨の記載は虚偽であるところ、ビックカメラは、これらの記載がある報告書を参照書類とする目論見書を使用した。

    ビックカメラの代表取締役であった被審人は、当該目論見書に虚偽の記載があることを知りながら目論見書の作成に関与し、目論見書に係る売出しにより、平成20年6月10日、被審人が所有するビックカメラの株式8万株を60億3680万円で売り付けた。

    なお、本件不動産流動化は、ビックカメラの資金調達の手段として行われたものであり、ビックカメラが所有する不動産を信託譲渡し、これにより取得した信託受益権を特別目的会社に290億円で譲渡するというものである。この特別目的会社に対しては、匿名組合出資として豊島企画による優先匿名組合出資(75億5000万円)と、ビックカメラによる劣後匿名組合出資(14億5000万円)がなされた。

    ビックカメラは、匿名組合出資によるリスク負担割合が不動産流動化に係る会計処理の実務指針に定められた基準の範囲内(おおむね5%)であるとして、売却処理(オフバランス処理)を行った。

  • (3)証券取引等監視委員会は、違反事実が金融商品取引法第178条第1項第2号に該当するとして、平成21年6月26日、金融庁長官に対し課徴金納付命令を発出するよう勧告を行い、同日、金融庁長官は、同法第178条第1項の規定に基づき、被審人に対する審判手続開始の決定を行った。

  • (4)これに対し、被審人は、大要、(a)目論見書には虚偽の記載がない、(b)被審人は目論見書に虚偽の記載があることを知らなかった、(c)被審人は目論見書の作成に関与していない旨を主張して違反事実を否認し、審判手続開始決定書記載の納付すべき課徴金の額(1億2073万円)を争う旨の答弁をした。

3 本件審判事件の経緯

平成21年6月26日 証券取引等監視委員会が課徴金納付命令の勧告
  金融庁が審判手続開始決定
7月13日 被審人が答弁書提出(違反事実を争う)
9月25日 第1回審判期日
10月21日 第2回審判期日
12月 2日 第3回審判期日
平成22年1月14日 第4回審判期日
2月10日 第5回審判期日
3月17日 第6回審判期日

4 本件審判事件の争点

本件の争点は、以下3点である。

  • (1)ビックカメラの第27期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書及び第28期事業年度中間連結会計期間に係る半期報告書を参照書類とした目論見書に虚偽の記載があると認められるか(以下「争点1」という。)。

  • (2)被審人は目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたと認められるか(以下「争点2」という。)。

  • (3)被審人は虚偽の記載がある目論見書の作成に関与したと認められるか(以下「争点3」という。)。

5 審判体の判断(要旨)

  • (1)本件審判事件においては、争点1から争点3までについて、指定職員及び被審人が主張立証を尽くしてきたものであるが、両者の間で最も争われたのは争点2であることから、まず、争点2について判断することとする。

    なお、争点2の判断に際して、争点1及び争点3については、指定職員の主張が認められるものと仮定する。

  • (2)争点2の判断

    【指定職員の主張についての検討】

    • (a)被審人の初回の質問調書

      • ア)被審人が目論見書に虚偽の記載があることを知っていたことに関し、指定職員は、初回の質問調書を直接証拠として位置付けて、その供述内容から被審人は豊島企画の出資の名義借りについて認識していた旨主張する。

        確かに、初回の質問調書では、被審人は、「平成14年7月ころ、当時、ビックカメラの取締役であったBから、不動産の流動化による資金調達のスキームのため、ビックカメラと関係の無い3人が役員兼株主となっている会社を新たに設立する必要があるのですが、実質的には、ビックカメラが業務を行うので、A社長に1千万円を出資して欲しいという依頼を受けました。私は、B取締役にビックカメラの経理関係の業務を任せており、信頼しておりましたので、1千万円を出資することを了解しました」と供述した旨録取されており、かかる内容が真実であるならば、被審人は、被審人による出資を第三者名義にすることの認識を有していたと見ることもできる。

        しかしながら、被審人は、監視委による初回の質問調査の前に、本件不動産流動化の法律面での助言をした弁護士の相談を受けようとしたが、弁護士との面会は実現せず、結局、質問調査において問題となる事項についての把握ができないままに質問調査に臨んだと認められる。加えて、初回の質問調査が、本件不動産流動化の実行から約6年経過した時点のものであること、質問調査が実施された時間(担当調査官による質問調査の時間は約20分程度であったと認める。)などからすると、本件不動産流動化に関する被審人の記憶が十分に喚起された上での供述であるか疑問が残る。

        また、初回の質問調書は、被審人の記憶が喚起された後に詳細な供述を行うことを前提とした暫定的な調書であると考えられ、初回の質問調査の時点で、被審人が、自身やビックカメラに掛けられた具体的嫌疑を十分に認識していたとは認められない。

        このように、初回の質問調書については、その信用性を疑わせるべき事情が少なからず存するのであるから、これにより、被審人が豊島企画の出資の名義借りを認識していたことを認定するのは相当ではないというべきである。

      • イ)仮に、初回の質問調書における被審人の供述内容が真実であったとしても、当該供述は、被審人が実質的には新会社の出資をするが、株主の名義は第三者にすることを被審人が認識していたことを示す内容にとどまるものであり、被審人が新会社である豊島企画の出資者になると本件不動産流動化において会計上売却取引が認められなくなるという認識を被審人が有していたことをうかがわせるような内容となっていない。

        そうすると、初回の質問調書における被審人の供述内容が真実であったとしても、被審人が、目論見書に虚偽の記載があることを認識していたと認めることはできないというべきである。

    • (b)本件不動産流動化がビックカメラの経営上最重要課題であり、豊島企画の出資の名義借りが本件不動産流動化の実現を左右する最重要事項であって、当然に被審人の了承の下で実行されたという点

      • ア)平成14年当時のビックカメラにおける本件不動産流動化の位置付けと被審人の認識

        本件不動産流動化は、ビックカメラの資金調達手段として平成14年8月23日に実行されたものであり、不動産信託受益権の売却額は290億円に上った。そして、本件不動産流動化の背景事情として、平成14年当時のビックカメラは、取引銀行から借入額の圧縮を強く求められていたことや、ビックカメラの子会社整理に伴い生じる特別損失を補うための資金を必要としていたことが認められる。特に、ビックカメラの取引銀行に対しては、本件不動産流動化により調達した資金でビックカメラの借入金を返済することを約束しており、その期限が、銀行の上期決算期である平成14年9月末とされていた(ビックカメラの主取引銀行の担当者は、Bに対し、本件不動産流動化により調達した資金により借入金をどれだけ返済するのか回答を迫ったこともあった。)。

        これらの事情からすると、本件不動産流動化は、平成14年当時のビックカメラにとって、経営上重要な課題であったことは明白であり、また、ビックカメラの財務担当であったBとしても、平成14年8月末までに、本件不動産流動化を何としてでも実現させようとしていたことが認められる。

        さらに、本件不動産流動化の対象不動産が、ビックカメラ本部ビルとビックカメラの旗艦店とされる池袋本店ビルといった、ビックカメラの経営上重要な財産でもあった。

        このように、本件不動産流動化による資金調達は、平成14年当時のビックカメラにおいて、経営上重要な課題と位置付けられるものであるから、Bとしても、本件不動産流動化の概要について、被審人に報告していたものである。

        したがって、被審人は、本件不動産流動化を行うこと自体については、Bからの報告により当然認識し、これを了承していた。

      • イ)豊島企画の出資の名義借りに関する報告等の有無

        関係証拠によれば、被審人は、ビックカメラ株式の東証一部への上場に当たり、売出しに係るビックカメラ株式の数量や主幹事証券会社であった日興証券の手数料率等について要望を出していること、ビックカメラグループのみずほコーポレート銀行からみずほ銀行への取引移管交渉に際しては、被審人自らが要請をしていること、その後のみずほコーポレート銀行との交渉の状況について、Bから報告を受けていることなど、ビックカメラの経営において、比較的詳細な事項について自らが関与し、被審人自らの意向を示していた一面を有していたといえる。

        もっとも、平成14年当時のビックカメラの経営体制を見ると、取締役等に広範な裁量権があり、担当する業務に関する権限が包括的に委任されていたと認められる。例えば、Bが管理していた東京計画においては、決算書類の二重作成が行われ、東京計画が債務超過の状態であることが隠ぺいされていたところ、BはDから指摘されるまで二重作成の事実を秘匿していたのであり、取締役が自らの判断で担当業務を遂行していたことがうかがわれる。また、そもそも、ビックカメラにおいては、稟議規定等の社内規程が十分に整備されていなかったことも考慮すると、ビックカメラ及びビックカメラグループの経営事項について、被審人に対する報告の方法は確立されておらず、被審人への報告の方法及びその内容は、実務を担当している各取締役の判断に相当程度任されていたと認められるのであって、経営事項の細部にわたる詳細な事項についてまで、当然に被審人に報告されていたと認めることはできないというべきである。

        そして、指定職員が、被審人自らが関与していたと指摘するみずほコーポレート銀行との取引移管交渉は、取引銀行とビックカメラとの今後の関係にも影響する重要な事項であるといえる(なお、日興証券の手数料率等については、被審人は、最終的にDらに任せるとしており、手数料率の決定に当たり自らが差配していたとまでは言いがたい。)。他方で、本件不動産流動化において売却処理を可能とするために、豊島企画の出資の名義をどのようにするかという点については、適宜専門家の助力を得つつ担当者限りで解決し得る技術的問題であると考えられる。よって、Bが出資の名義借りを重大な問題であると認識しておらず、現場レベルの問題としてしか認識していなかったとの被審人の主張を、直ちに排斥することはできない。

        結局、指定職員が指摘する事情により、被審人が取締役から報告を受け、自ら差配し、被審人自身の意見を及ぼしていたことを前提にしても、本件不動産流動化について、本件不動産流動化の実務担当者であるBから、被審人及びBが供述する内容以上の詳細な説明、報告を受け、被審人の指示、了承の下で実行されたものと推認することはできないというべきである。 

        したがって、被審人に対し、豊島企画の出資の名義借りの報告があったとの推認もできない。

      • ウ)出資の名義借りの必要性・動機の有無

        指定職員が主張するとおり、豊島企画の出資の名義をEらとしたことは、本件不動産流動化のスキームにおいて、被審人が豊島企画の100パーセント出資者であると、会計処理において売却処理が認められないことから、本件不動産流動化の成否を分ける重要事項であるといえる。しかしながら、豊島企画への出資金の額は1000万円であって、平成14年当時の被審人が所有する資産の状況、被審人が当時ビックカメラの代表取締役であったという被審人の社会的地位にかんがみると、被審人以外の第三者(被審人の知人等)に出資を依頼することは容易であったと考えられる。

        そうすると、被審人が、豊島企画の出資を被審人以外の者により行う必要があるとの報告を受けたのであれば、なにゆえ、第三者に実際に出資してもらうなどの無難な方法を取らずに、出資の名義借りといった本来許されない方法を取ったのか疑問が残るところである。

    • (c)被審人が、自身が豊島企画の出資者であることを認識していたという点

      • ア)東京計画の帳簿処理

        • (ア)帳簿処理の内容

          豊島企画の株式払込金の払込みに当たっては、東京計画の預金口座から引き出された1000万円が使用された。そして、この1000万円の帳簿処理については、Bがビックカメラ経理部の担当者に指示をしたことにより、平成14年7月31日付けで被審人に対する短期貸付金として処理された。

        • (イ)事実経過から見た不自然性

          被審人が豊島企画に出資をすると、売却処理が認められなくなることについては、被審人に対する短期貸付の処理が行われる前である平成14年6月26日にK会計士から指摘され、Bは認識していた。その上で、豊島企画の株式払込金に関しては、あえて、東京計画から被審人に対する貸付処理とし、実質的に被審人が豊島企画に出資した形が取られている。仮に、被審人が、Bからの報告、説明により、自らへの貸付処理とされていること、及び、それによる会計上の問題を認識していたならば、例えば、東京計画から直接出資する形を取る、第三者から出資してもらうなど、他の方法を選択するのが合理的である。それにもかかわらず、実質的に被審人が豊島企画に出資した形が取られたことは、むしろ、被審人が自らへの貸付処理や会計上の問題を認識していなかったことを推認させるものというべきである。

        • (ウ)貸付処理とした時期からの検討

          東京計画から被審人への貸付処理については、平成14年7月31日にBの指示により東京計画の口座から1000万円が出金された後、Bが、ビックカメラ経理部担当者から東京計画の帳簿処理の方法を問われ、当該担当者に指示して被審人への貸付けとして帳簿処理をさせた(なお、同年8月1日には豊島企画が設立されている。)。このように、ビックカメラ経理部担当者の指摘を受けたことにより東京計画から被審人への貸付処理が行われたという貸付処理の時期及び経緯からすると、東京計画の口座から1000万円を出金する時点で、Bが、東京計画から被審人への貸付処理とすることを明確に決定していなかった疑いがある。

          そうすると、豊島企画の設立前の時点で、被審人に対し、豊島企画の出資については東京計画の資金を使用する旨説明した際、被審人への貸付処理の説明があったかについても疑わしい。

      • イ)新会社の概要についてのペーパー

        指定職員は、平成14年6月4日、BがK会計士に対して新会社の概要を説明した際に使用したペーパー(甲1・資料6)の「10~30M(代表100%)」との記載は、被審人による100パーセント出資を意味するものであり、したがって、被審人の認識としても、豊島企画への出資はすべて被審人の個人資金で行われると認識していた旨主張する。この点、確かに、ペーパーの記載内容からすると、被審人による100パーセント出資を前提にしているようにも見える。そして、これに先立つ同日のBの被審人に対する説明に際して、同じ内容の説明ペーパー(甲1・資料5)を使用したことを前提にすると(Bは、被審人に対し、甲1・資料5を用いて説明をしていない旨陳述する。)、被審人は、豊島企画への出資が自己の資金から出されるとの認識があったとも考えられる。

        しかしながら、平成14年当時、ビックカメラは被審人が実質100パーセント出資に係る会社であったことからすると、新会社の設立のための資金をビックカメラ、東京計画等の被審人の100パーセント出資に係る会社、あるいは、被審人自身のいずれの資金から拠出したところで、被審人からしてみれば、経済的実質に変わりがない。そして、実際には、新会社である豊島企画の設立に必要な1000万円が、東京計画の口座から引き出され、出資金に充てられていることからすると、平成14年6月4日のBによるK会計士への説明に際し、新会社は被審人の100パーセント出資であるとの説明があったとしても、その説明の時点で、Bが、被審人の個人資金を新会社の出資に用いることを明確に決定していたとまでは言いがたい。また、同月4日当時は、会計の専門家の説明においても、ビックカメラと資本関係がある会社でなければ、被審人の100パーセント出資に係る会社の資金であっても会計処理上問題はないという前提で、本件不動産流動化のスキームは検討されていた。

        そうすると、「代表100%」の記載も純粋に被審人の個人資金のみを指しているのではなく、東京計画のような被審人の100パーセント出資に係る会社からの資金をも意味すると考えられる。

    • (d)被審人が豊島企画の出資の名義借りを認識していたという点

      • ア)豊島企画の出資に関する確認書の存在

        Bは、Eらから、豊島企画の出資に関する確認書を徴し、被審人とEらとの間の株主権に関する権利の帰属関係を明確にしている。しかし、Bは、Eらから当該確認書を徴するのみで、被審人に報告せずに当該確認書をビックカメラ社内に保管していたのであって、果たして、出資の名義借りをBが重要な問題であると認識していたかは疑問である。むしろ、社会一般の会社の実態として、出資の名義借りが少なからず見受けられることからすると、出資の名義借りが重要な問題ではないなどと考え、被審人に報告していなかったことも十分に考えられるところである。

        そうすると、当該確認書に被審人の署名、押印等がなく、被審人が当該確認書の内容を確認した形跡がないことからしても、豊島企画の出資は実質的には被審人の出資であり、これを第三者名義に偽装しているとの認識が被審人にあったとすることはできないというべきである。

      • イ)豊島企画の役員就任の声掛け依頼

        指定職員は、被審人が、Bから、Cに対する豊島企画の役員就任の声掛けを依頼された際、より重要性の高い出資の名義借りについても報告、説明を受けたはずであると主張する。

        しかし、出資の名義借りは、社会一般の会社の実態として少なからず見受けられるものであって、役員の名義借りと比較した場合、相対的にリスクが高く、報告すべき重要な事項とまでは直ちに認められないのであって、Bの被審人に対する豊島企画の役員の名義借りの説明があったことを理由として、豊島企画の出資の名義借りの説明があったはずであるということはできない。

    • (e)本件会計ルールの認識

      指定職員は、被審人は本件会計ルールにつき相当程度の認識を有していたはずであると主張するが、関係証拠を見ても、Bらから説明、報告を受けるなどして、本件会計ルールを認識していたと認めるに足りる証拠はない。

      すなわち、Bは、平成14年6月26日のK会計士の指摘により、豊島企画の出資と銀行借入れについての担保提供を被審人が行うと、売却処理が認められないと初めて認識したものであるが、このような緊密者による出資と担保提供を行った場合の会計上の問題に関し、Bが、被審人に対して、報告、説明をしたとまでは証拠上認められないのである。

    • (f)その他の指定職員の主張

      • ア)上場審査における虚偽説明

        指定職員は、ビックカメラが東証一部に上場する際の上場審査において、Dが、審査役に対して、豊島企画の株主はEらであり、豊島企画の銀行借入れは無担保であるなどと虚偽の説明を行ったことから、被審人に出資の名義借りの認識があったと主張するが、これは、Dの認識に関わるものであり、これにより被審人の認識を推認することはできない。

      • イ)被審人による本件不動産流動化の説明の機会

        指定職員は、被審人は本件不動産流動化についてワンマン経営者として種々説明を求められる機会が多々予想される立場にあり、その際に最も重要であった事項は豊島企画に関する説明であったことから被審人に出資の名義借りの認識があったと主張するが、現実に被審人が豊島企画に関する説明を求められたこと、又はそのような事態が予想されたことを認めるに足りる証拠はない。

      • ウ)その他

        指定職員は、さらに、豊島企画の銀行借入れにつき、銀行と折衝をし、被審人が担保提供をして融資を受けたのであり、被審人は豊島企画の内実を十分に承知していたことを指摘して、被審人に出資の名義借りの認識があったと主張するが、豊島企画の銀行借入れについて、折衝を行っていたのはBであり、被審人自身が銀行との間で融資の折衝を行ったとまでは認められない。

        さらに、指定職員は、被審人の平成14年分所得税確定申告書添付の「財産及び債務の明細書」では、被審人が保有する財産として豊島企画の株式が除外されており、これは、被審人が、豊島企画の内実を十分に承知し、出資の実態を秘匿しなければならなかったことの証左である旨指摘するが、この点についても、被審人が豊島企画に出資していることの認識がなかったがために、豊島企画の株式が記載されなかったとの説明も可能であるから、豊島企画の出資の名義借りを被審人が認識していたと推認することはできないというべきである。

    【その他証拠から認められる事実からの検討】 

    • (a)本件不動産流動化に関する被審人の認識

      関係証拠から認められる、被審人による本件不動産流動化への関与の状況等を基にすると、本件不動産流動化当時、被審人が認識した事実及び関与した事実は、少なくとも以下のとおりであったと認められる。

      • 平成14年5月17日ころのBから受けた報告によると、不動産流動化スキームは、東京計画等の既存の会社を利用するものであること。
      • その後、スキームの変更により、優先匿名組合出資の引受法人として新会社を設立すること、設立する新会社はビックカメラからの出資や役員派遣のない会社とする必要があること。
      • 新会社はビックカメラからの出資がないものの、ビックカメラ側がコントロールできる会社とする必要があること。
      • 豊島企画の銀行借入れの担保として、被審人が所有するビックカメラ株式を担保提供すること。
      • 当該担保提供に当たり、三井住友銀行の担当者と面談し、担保提供の内容を了承したこと。
      • 豊島企画の銀行借入れにつき、大和銀行に対して、被審人名義で定期預金を作成し、これを担保として提供したこと。
      • Cに対し、豊島企画の役員就任の依頼をしたこと。
      • 豊島企画への出資に東京計画の資金を使用すること。

      これらの本件不動産流動化に関する被審人に対する報告や、被審人の関与は認められるものの、これらによって直ちに豊島企画への出資が被審人自らの出資であるとの認識があったといえるのか疑わしいというべきである。

    • (b)被審人の個人資産の管理について

      本件不動産流動化当時、被審人の個人資産の管理は、Gが行っていた。

      豊島企画の設立に際し、豊島企画の出資金の1000万円については、東京計画から被審人に対する短期貸付金として会計処理がされているが、Bは、東京計画から被審人に1000万円を短期貸付した事実をGに報告していない。

      さらに、被審人の個人資産からの出金が必要となる場合は、Gが被審人に出金のための決裁書類への署名を求めるところ、豊島企画への出資に関しては、Gが被審人に対して、出金のための決裁手続を行っていない。

      そうすると、被審人の個人資産の管理の状況から見ても、被審人としては、そもそも豊島企画の設立に当たり、自己の個人資金が豊島企画の出資に用いられたと認識する契機がなかったというべきである。

    • (c)株式の売出しまでの被審人の認識について

      本件不動産流動化が実行された平成14年8月以降、平成20年6月のビックカメラの株式の売出しに至るまでの間に、被審人が、豊島企画の出資が名義借りとされていたことや本件会計ルールを認識したと認めるに足りる証拠はない。

      関係証拠によれば、平成19年7月ころ、ビックカメラに対し東京国税局の調査が行われ、その際、Dは、豊島企画の真の出資者が被審人であることを認識したことが認められるが、豊島企画の出資者が被審人であるにもかかわらず、Eらに偽装されているとの報告、説明が被審人にされたと認めるに足りる証拠はない。また、そもそも、被審人に対し、本件会計ルールを報告、説明したことは証拠上うかがえない。

      さらに、東京国税局は、本件不動産流動化に係る会計処理自体については、問題点を指摘しなかったことからしても、ビックカメラ社内において、本件不動産流動化に係る会計処理に問題があるとの認識を持ちようがないといえる。

      そうすると、目論見書の作成より後の平成20年6月の株式の売出しの時点においても、被審人の認識は、上記(a)で認定した認識のままであることが認められる。

    【争点2の結論】

    以上からすると、指定職員が指摘する事情、その他関係証拠から認められる事情を見ても、被審人が、目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたと認めることはできない。  

    よって、違反事実に関する争点のうち、争点2については、これを認めることはできない。

  • (3)その他の争点について

    上記(2)で検討したとおり、仮に目論見書に虚偽の記載があり、かつ、被審人が目論見書の作成に関与したとしても、被審人が目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたとまでは認められない。

    そうすると、その他の争点を検討するまでもなく、本件審判事件において、金融商品取引法第178条第1項第2号に該当する事実は認められないこととなる。

  • (4)結語

    よって、本件審判事件において、被審人に違反事実がないと認めるので、金融商品取引法第185条の7第16項の規定により、主文のとおりの決定をするのが相当と判断する。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室(内線2397、2401)

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