平成23年2月9日
金融庁

第6回コーポレート・ガバナンス連絡会議 議事要旨

1.日時:

平成22年10月18日(月曜日)17時00分~19時10分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室

1.ガバナンス機構の在り方

現在行っている議論は、雑誌などの巷の議論の寄せ集めに過ぎない。これでは、議論を重ねている意義が全くない。とりまとめをするのであれば、こういう意見をどういう者が言って多数だった、という形でやらないと、意味がない。極めて問題だと思う。

会社法の議論の集結はまだ先なのに、監査委員会設置会社を創設するなどの妥協的な議論をするのはおかしい。これでは投資家の納得は到底得られない。独立した者の導入を議論する上で、独立取締役の効果が実証されていないといった意見もあるが、今まで監査役や内部統制制度などについて導入の前に実証的な裏付けが行われていなかったのに、独立取締役の機能についてだけ実証的な裏付けが求められることに合理性があるのか。株主は、企業内に独立した者がいることを求めており、独立した者を設置する理由としては株主が求めているということだけで十分ではないか。

コーポレート・ガバナンスの議論については、ここ10数年間同じことの繰り返しであるが、パフォーマンスや、投資家の評価が向上する決定的な方策がないことが理由。議論を前に進めるために、もう少し議論の対象を絞っても良いのではないか。

なぜ、日本でコーポレート・ガバナンスが進まないのか、その一因としてファイナンスの問題があげられる。日本の企業は、一般論として従来から銀行借入れに頼ってきたため、資本市場からの資金調達の必要性が乏しく、資本市場からのプレッシャーが少ない。一方で、銀行も最終的には政府が救ってくれるというモラルハザードから企業に十分なプレッシャーを与えるに至っていない。このためコーポレート・ガバナンスの向上が進んでいない。資金調達の構造にまでメスを入れて議論を行うかどうか検討すべき。

投資家の目線からすると、良質な経営、国民経済の発展、国民の信頼確保のため、社外(独立)取締役の導入により効率性についての監督機能を強くすべきことは明らか。

日本IR協会は、株主の利益を考えた経営を行っている会社を毎年表彰しているが、過去3年間のものを見てみると、表彰されている30社のうち社外取締役を置いていない会社は4社のみ。3年間で複数回表彰されている会社は全て社外取締役を置いている。資本市場を意識した企業のほとんどが社外取締役を置いているという状況。

企業の自主性の尊重は重要であるが、経営者に対する監督強化を経営者の自主的取組みに期待することはできない。何らかの形でルール作りが必要。

メガバンクは、消費者金融や証券会社を傘下に入れ、更に社債市場に対しても大きな影響力を及ぼしており、その支配を一層強めている。日本の市場では、ノンバンクが生き残りにくくなっている。資金調達の多様性を図るといっても、銀行中心の体系だと逆方向に動いていくと思われる。

資本市場を向いていると評されている優良な会社の中で、社外取締役は置いていない会社であっても、報酬諮問委員会を設けて半分ほど外部の委員を入れているものもある。純粋に社外がいない会社はごくわずかである。

アメリカではCEOの力が強く、いつ暴走するかわからないからブレーキをかけるためにガバナンスが強くなっている。他方、日本では、執行部門がそこまで強い権限を有しているわけではなくガバナンスが弱くても機能するという実態があった。見識のある経営者が自らガバナンスを強めようとしているところが日本の企業の特徴。

今、会社法を見直そうとしているときに、現行の会社法の問題点の分析だけをしているのはおかしい。会社法のあるべき姿をしっかり提示すべき。

経済産業省が主張しているような監査委員会設置会社は、中途半端であり投資家を混乱させる妥協の策ともいえる。

将来独立取締役の導入が進むように、今ある監査役設置会社と委員会設置会社を統一していこう、その場合に取締役会において必ず独立した者が過半数を占めるようにしよう、監査する人に人事の決定権を付与しようという発想が望ましい。しかし、三つ目の機関設計の選択肢として、妥協策のような監査委員会設置会社の導入の議論をするのであれば、いずれ独立した者を増やすという発想が忘れ去られていってしまう危惧がある。

法制審では、上場・非上場の区別なく会社法制を論じているきらいがあるが、金融庁ならではの視点として上場会社に着目した議論をすべき。社外取締役導入を主張する人も、上場会社を念頭に置いて議論している。

社外取締役導入義務づけという最終的な目的を実現するに際して、まずは現段階において実現可能な措置を行い段階的に目的へ到達するというステップないし工程表的な観点があってもよい。最終的な目標とフィージビリティーの議論は異なりうるものである。

コーポレート・ガバナンス連絡会議の場で何を議論すれば成果がでるのか、法制審議会の会社法の議論をなぞっていても仕方がない。会社法と金商法の境目の議論あるいは金商法の議論に焦点を当てるべき。

金商法においてガバナンスに対して何ができるのかを正面から議論すべき。会社法制の議論の中でも、本来であれば、金商法で議論した方がよいものもこれからでてくる。金商法の使い勝手はまだある。当然産業界からは反対の意見も出るだろうが、金融庁の研究会として、昨年のスタディ・グループ報告の延長として議論するのであれば、金商法を軸にして考えるべき。

金商法と会社法の境目の議論について、これを曖昧にしておくと、公開会社法というような、双方の問題点を混在させて議論するようなことになってしまう。金商法と会社法のどちらの問題なのかをしっかり整理して欲しい。

投資顧問業協会の会員向けアンケートの調査結果によれば、72の会員が議決権行使のガイドラインを持っており、そのうちの44社が社外取締役の独立性を取締役選任基準にしている。この比率は徐々に増えており、投資家サイドとして社外取締役への期待は大きく、判断基準としての比重は増している。実際も、取締役選任議案において、54社が反対票を投じているが、そのうちの37社が社外取締役の独立性を根拠にしている。しかし、企業側から独立性についての判断が開示されていなくて、議決権行使の場においてはその点がハードルになっている。

2.今年の株主総会の特徴について

―プレゼンテーション―

<総論>

今年6月の株主総会について、6月総会開催日の特定日への集中率は減少し、株主総会招集通知の発送が早期化。株主総会の場では、会社による丁寧な説明が行われる傾向が続く。来場株主数は引き続き増加傾向で、発言株主も増加傾向。

株主提案の件数は増加傾向が続いており、提案にはコーポレート・ガバナンス論の核心に触れる内容のものがみられた。

独立性の基準について機関投資家の間からは企業との考え方の相違を指摘する声もある(特に金融機関出身者を対象)。

<国内機関投資家の動向>

企業年金連合会は取締役の独立性判断を厳格化。その他国内投資家も社外取締役の有無、独立性などコーポレート・ガバナンス体制に注目している。社外者への報酬等には厳しい見方をとり、その考え方は海外投資家に似ている。

公的年金などスポンサーによる自発的な議決権行使は限定的。ヒアリング等を通じ、運用委託先の議決権行使に影響力を行使する傾向は変わらず。

海外投資家は、取締役会の機能をモニタリング機能・アドバイザリー機能と考えており、業績については執行者が責任を負うべきものと考えているため、取締役会に対してはその責任を問わない。他方で、国内投資家は、取締役会を業務執行機関と見ているため、業績や資本効率性についても取締役会が責任を負うべきものとして介入してくるという特徴がある。また、企業不祥事をリストアップ、個々の取締役・監査役の役割にも注目する傾向が強まっている。

<海外機関投資家の動向について>

大半はISS等外部の議決権行使助言会社の考え方に沿っている。社外取締役が少ないことが議決権行使の争点となっている。社外取締役がいない会社に対し社長・代表取締役等へ反対票を投ずる傾向が顕著になった。

社外監査役や委員会設置会社における社外取締役のように、義務化された制度における社外役員の独立性に注目している。しかし、監査役設置会社の社外取締役の独立性には甘い。これは、監査役設置会社については一人でも良いから社外取締役をおいて欲しいという意思表示の表れ。

配当性向に注目。海外の企業がそれを目標として公表するようになったためと思われる。

<海外の株主総会における特徴>

アメリカの株主総会において、選任につき機関投資家の反対が多かった取締役の特徴としては、独立性、特定取引に関する情報開示が不十分、過剰兼務等が挙げられる。

欧州では「Comply or Explain」原則を遵守する会社における議案支持率は高水準。また、役員報酬に関する議案も関心を引いている。

<国内外の株主総会が示すコーポレート・ガバナンスの方向性>

「Comply or Explain」規範を持つ国では、安定株主比率が低くとも議案支持率は高い。機関投資家がこの規範を支持するため、会社による遵守宣言がある場合には賛成票の増加につながりやすい。規範のないアメリカでは株主提案が多発し、これが相当の支持を得ていることから、コーポレート・ガバナンスへの取り組みが拡散し、企業も個別の対応に追われる傾向がある。

「Comply or Explain」規範は企業を対象とする行動規範であるため、企業みずからが現状を踏まえて制定することが望ましく、これを株主・機関投資家が評価・支持し、さらに遵守状況についての説明を開示義務とすることで実効性が高まる。あわせて、機関投資家も規範のメリットを享受するとともに、自らも受託者責任を認識した行使およびその開示に努めることが求められる。

―以上、プレゼンテーション―

信託各社でも、今年の8月に本年度の議決権行使の結果を公表している。信託各社とも取締役選任については高いところでは3割強の反対をしており、企業年金連合会の6月の行使状況と近似。議決権行使の判断のポイントは、社外取締役の独立性、業績配当ないし株価の低迷の責任、社外取締役の兼務数についての問題があるか否かという点。これらを踏まえた結果、2~3割の反対票を投じることになっているという状況。

大きな方向性として、社外取締役とか独立性は、投資家から見ても必要性が高い。それに向けてのアクションプランを考えるという観点では、企業の自主性に委ねるのではなく、企業がインセンティブを持つようなやり方も方法論としてはあると思う。その一つが「Comply or Explain」原則。受託機関としても、機関投資家の意向を受け、企業側に説明を求め、必要に応じ反対票を投じるなどの投資行動を通じて、企業経営の動機付けを経営陣に行っている。

会社法と金商法の役割分担について、金商法の武器は情報開示であり、情報開示を活かすということも検討すべき。

行政当局と投資家サイド双方において、市場の活性化、投資者保護の観点から現状に危機感を抱いており、資本市場の地盤沈下を食い止めなければならないという根本認識を共有している。あとはやり方の話。最終的に目指す方向性として、モニタリング・モデルの推進がある。

法制審議会において、議論を否定する理由として立法事実の有無を強調した言い方が頻発されている点には危機感を抱いている。

海外投資家は、一般的に日本の企業への関心・評価が低い。これを是正するための議論が本来行われるべきなのにない。日本企業に興味を示さない投資家等の意見を踏まえた制度になれば、海外からも投資家は集まってくる。日本に対して投資を行っていない人を呼び寄せるにはどうすべきか、という視点での議論が必要。

各国の制度の実情を見ながら、海外投資家の期待を踏まえ、我が国ではどういった部分を見直せばよいのかを考えることが重要。モニタリング・モデルを採用する場合に、現行の会社法制が厳格過ぎて機能しない部分があり、そうした箇所を洗い出すことが重要。例えば、社内の事情がわからないとできないこと等、社外者ではワークしない部分を抽出した上で、会社法に反映させることが考えられる。定款自治、附属定款、取締役会規則等による会社の自主的な取組みが、会社法により妨げていることについて、問題提起すべき。その場合には、会社法のこの部分を変えればそれ以外の部分がどう変わっていくか、というダイナミズムを意識すべき。

取締役会において少人数だけで情報を共有してじっくり議論して決定されることに株主・投資家は安心感を覚える。株主総会によるモニタリングも重要であるが、株主が常に監視しなければならない制度には限界がある。取締役会を見直すと、株主総会を通じたガバナンスに影響が生じるということも踏まえバランスを考えて制度の議論をすべき。

株主・投資家を向いた経営について、日本企業の対応は千差万別。真剣に向き合っているところもあればそうでないところもあり、二極分化している。そういった中、法律により最低限のスタンダードを決めて日本市場の底上げを図ることが重要ではないか。

連絡会議のメンバーの多数は、(1)経営と監督の分離、(2)監督機能の実効化のために監督者に取締役会における議決権を付与及び(3)監督者は経営と独立した立場で行うべきという考えを支持しており、そのことを法制審議会に伝えるべき。また、結論、方向性自体はすでに固まっているのであるから、金融庁には、上記考え方を実現する対策を示して欲しい。経済産業省はスタンスを明確に打ち出しているのに、金融庁が何を考えているのか、全く分からない状態は困る。

社外(独立)取締役の具体的導入手段を考える場合、ルールに従うという日本の国民性を考えると、会社法において導入を義務付けるという方法による方がよい。

コーポレート・ガバナンスの議論をする上で、会社法上の全ての会社を対象とするのではなく、上場会社だけに着目すべき。

金融庁において、コーポレート・ガバナンスの議論をする上では上場会社だけに着目すべき。その上で、あるべき姿を提示すべき。

企業経営者のなかでも意見は多様。TOPIX100・500構成銘柄でいうと社外取締役を導入しているところが多数を占めている。実際に経営者団体のなかでも経済同友会や取締役協会等から色々な意見がでている。そういった意見を踏まえていけば、企業としての対応についても議論できるのではないか。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課・企画課調査室(内線3814、3514)

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