平成29年9月22日
金融庁

監査法人及び公認会計士の懲戒処分等について

 金融庁は、本日、アスカ監査法人(法人番号9010405004181)及び公認会計士2名に対し、下記の懲戒処分等を行いました。

1.監査法人

 

(1)処分の対象者

 アスカ監査法人(法人番号9010405004181)(所在地:東京都港区)

(2)処分の内容

・契約の新規の締結に関する業務の停止 3月
(平成29年9月25日から同年12月24日まで)

・業務改善命令 (業務管理体制の改善。詳細は下記4.参照)

(3)処分理由

 アスカ監査法人(以下「当監査法人」という。)の社員である下記2名の公認会計士が、株式会社メディビックグループ(以下「当社」という。)の平成26年12月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。
(根拠条文:公認会計士法(昭和23年法律第103号)(以下「法」という。)第34条の21第2項第2号)

2.公認会計士

(1)懲戒処分の対象者及び内容

・公認会計士 X (登録番号:             事務所所在地:           )
 業務停止3月(平成29年9月25日から同年12月24日まで)

・公認会計士 Y(登録番号:     事務所所在地:    )
 業務停止1月(平成29年9月25日から同年10月24日まで)

(2)処分理由

 上記2名の公認会計士は、当社の平成26年12月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。
(根拠条文:法第30条第3項において準用する同条第2項)

3.事案の概要

 バイオテクノロジー関連事業を営む法人である当社は、経常的に営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっており、平成26年12月期においても第3四半期末時点で売上計画の達成が困難な状況となっていた。
 当社子会社は、平成26年12月期末に、新規売上先であるA社との間で、幹細胞自動培養装置の開発権(以下「開発権」という。)を譲渡する契約を締結し、当期売上高の過半を占める売上を計上した。
 しかし、平成27年1月になって、A社社長から、A社取締役会で開発権の譲受が否決された旨の連絡があり、当社は平成26年12月期の売上の取消を回避するため、当社が見つけてきたB社と当社子会社及びA社の3社間で、当社子会社とA社の間の契約上のA社の地位をB社に譲渡する内容の買主地位譲渡契約を締結した。
 さらに、平成27年2月、当社子会社とB社との間で、開発権を契約締結と同時に譲渡し、B社が当社子会社に対価を支払う内容の契約を締結し、B社から当社子会社に対価が支払われた。
 当監査法人は、上記の開発権の譲渡に関し、A社から当社子会社に発行された「関係書類一式」の納品受領書を確認のうえ、A社による開発権の取得の中止の意思決定はA社社内手続の問題であること、買主地位譲渡契約を当社子会社とA社及びB社の3社間で締結していること、B社から当社子会社に対する入金があったことをもって、平成26年12月期でのA社に対する売上計上を容認した。

 当監査法人は、平成26年12月期の監査手続の中で、上記の開発権の譲渡に関し、期末日近くに当期売上高の過半を占める売上が計上されたこと、開発権を譲渡する契約書の内容と当社の説明が整合していないこと、平成27年1月になって契約締結から短期間で売上先のA社取締役会において開発権譲受が否決されたこと、締結された買主地位譲渡契約の転売先は当社自らが見つけてきたこと、買主地位譲渡契約とは別に当社子会社とB社の間で開発権の譲渡契約が締結されたこと、B社から当社子会社に対価が支払われたことを認識していた。
 このような状況を認識した場合、監査における不正リスク対応基準等に照らせば、本来、当監査法人は、より注意深く、批判的な姿勢で監査に臨むことが必要であり、監査人としての職業的懐疑心を保持・発揮することにより、不正による財務諸表の重要な虚偽表示が行われる可能性があると認識し、本件売上取消の是非を討議し、不正リスクに対応した追加手続を実施すべきであった。
 しかるに、当監査法人においては、このような討議を行わなかったばかりか、業務執行社員が、監査補助者から進捗状況を随時確認する程度に留まり、経営者の主張が合理的と判断した監査補助者に対し、不正リスクの観点から適切かつ具体的な指示を行っていなかった。この結果、当監査法人は、監査における不正リスク対応基準の適用の必要はないという誤った判断を行い、必要な監査手続を実施しないまま、監査意見を表明した。

 また、監査業務に係る審査においては、審査担当社員が、「不正リスクを認識した慎重な対応が必要と識別」していたにもかかわらず、監査チームから提出された審査資料に基づき審査を実施するのみで、監査チームが行った重要な判断を客観的に評価していなかった。その結果、監査チームがより証拠力の強い外部証憑などの十分かつ適切な監査証拠を入手するための監査手続の実施を検討していないことを見落としているなど、監査実施上の問題点を発見・抑制できていなかった。

 以上のとおり、当監査法人は、当社の平成26年12月期において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明したものと認められる。

4.業務改善命令の内容

(1)今回、当社に対する監査において虚偽証明が行われたことを踏まえ、法人としての適切な監査実施態勢を整備すること。

(2)監査手続の実施に当たり、業務執行社員が十分に関与できる体制を構築すること。

(3)監査チームが行った監査上の重要な判断を客観的に審査し、監査手続の不備を発見・抑制できる審査体制を整備すること。

(4)監査実施者が職業的懐疑心を保持し、深度ある分析・検討を行う体制を構築する観点から、監査法人内の人事管理や研修態勢を含め、組織の態勢を見直すこと。

(5)監査実施者に対し、不正リスクに関する研修の充実を図り、教育・訓練を実施すること。

(6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画を、平成29年10月31日までに提出し、直ちに実行すること。

(7)上記(6)の実行後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成30年3月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁総務企画局企業開示課

Tel:03-3506-6000(代表)(内線3654、3813)

サイトマップ

ページの先頭に戻る