平成30年9月26日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、平成30年5月18日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、監査法人アヴァンティア(法人番号3010005012953)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。
 

1.処分の概要

  • (1)処分の対象

    名称:監査法人アヴァンティア(法人番号3010005012953)

    事務所所在地東京都千代田区

  • (2)処分の内容

    業務改善命令(業務管理体制の改善)

  • (3)処分理由

    別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容

  • (1) 法人代表及び品質管理部長は、組織的に監査の品質を確保するために、審査会の検査において指摘された不備の原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証を行うなど、実効性のある品質管理のシステムの構築に向け、当監査法人の業務管理態勢の強化に主体的に取り組むこと。

  • (2) 法人代表及び品質管理部長は、品質管理担当部署を有効に機能させるとともに、監査契約の新規締結時における十分かつ適切なリスク評価、業務執行社員による監査補助者に対する適切な指示・監督や監査調書の査閲、審査担当社員の職責の明確化、定期的検証担当社員による実効性のある検証などを実施できる態勢を強化し、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。

  • (3) 現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(被監査会社の事業や取引の理解を踏まえた監査リスクの適切な評価、被監査会社の主張に対する批判的な検討、重要な構成単位の重要な勘定科目に対する実証手続の実施、関連当事者に関する会計基準の適切な解釈など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

  • (4) 上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、平成30年10月末日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (5) 上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、平成31年2月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線3654、3813)

 

 

(別紙)

監査法人アヴァンティアの運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

  • 1 業務管理態勢

       当監査法人は、前回の公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)検査において、法人代表が組織的に監査の品質を確保することを軽視し、品質管理に関する管理全般を品質管理担当責任者に任せきりにしていること、業容の拡大に見合った適切な人員や体制の構築に向けた具体的な取組を十分に講じていないことなどの指摘を受けている。
     このような状況を踏まえて、法人代表は、社員の職位及び職責や審査制度の見直しなどの改善策を実施したとしているが、社員の職位及び職責の見直しについては単に社員の職階を再区分した形式的なものとなっており、不備の原因を十分に分析しないまま改善措置を講じている。また、法人代表は、品質管理業務への関与が低く、品質管理の改善を品質管理部長に一任しているため、品質管理態勢が実効的なものとなっていないことを把握していない。
     品質管理部長は、監査契約の新規受嘱等に時間をかけ、品質管理業務に十分に関与していない。また、改善措置を講じるに当たって不備の原因を十分に分析していないため、改善策は対症療法的なものとなっており、個々の監査業務に依然として不備が多く生じている状況を放置している。
     さらに、品質管理部長は、品質管理部が十分に機能していないことを認識していたにもかかわらず、品質管理態勢の構築に必要な措置を講じていないなど、品質管理担当責任者としての職責を果たしていない。
     法人代表及び品質管理部長は、監査業務を実施する上で必要な適性や能力を有する監査実施者を十分に確保できていないにもかかわらず、リスクが高い会社の監査業務の新規契約を複数締結し、法人の業務拡大を先行させている。
     
     このように、法人代表及び品質管理部長においては、組織的に監査の品質を確保するという意識が依然として不十分であり、当監査法人の監査業務の現状を踏まえた実効的な品質管理のシステムを構築していない。
     

  •  品質管理態勢

     (前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況)

       品質管理部長は、前回審査会検査等で指摘された個々の不備を研修で周知しているものの、対症療法的な改善策を指示するのみで、不備の原因にまで踏み込んだ改善策を検討していない。さらに、品質管理部長は、自らが関与する監査業務や審査等を通じて、監査補助者の職業的懐疑心が不足していることを把握していたにもかかわらず、そのような状況を法人全体の品質管理態勢の問題として捉えていない。
     また、品質管理部長を補佐するために配置された社員2名は、いずれも品質管理業務に関与する時間がとれる状況になく、監査チームにおける監査の品質に係るモニタリングが実施できていないなど、品質管理部は十分に機能していない。
     この結果、今回の審査会検査においても多数の重要な不備を含む、広範かつ多数の不備が認められている。
     

     (監査契約の新規締結)

       監査契約の新規受嘱を申請する業務執行社員予定者及び新規受嘱の承認を行う社員会のメンバーは、不正により決算を訂正している会社や内部統制上の不備を開示している会社など、リスクが高い会社の監査契約の新規受嘱にもかかわらず、考慮すべきリスク要因に対して十分かつ適切なリスク評価を実施していない。
     また、社員会のメンバーは、新規受嘱の承認を行うに当たって、監査業務を実施するための適性、能力及び人的資源について検討することとしているにもかかわらず、それらの事項について具体的な検討を実施しておらず、リスクが高い会社の監査業務において、業務執行社員に主査を兼務させることで着手したものや、監査補助者の多くが新規採用者や新規契約した非常勤職員で構成されているものがみられる。
     

     (監査補助者に対する指示、監督及び監査調書の査閲)

       今回の審査会検査で検証した個別監査業務においては、監査補助者の職業的専門家としての能力の不足によって、監査補助者が実施した監査手続に、重要な不備を含む、広範かつ多数の不備が認められている。
     このような状況にもかかわらず、業務執行社員は、監査補助者の能力を適切に把握することなく、監査補助者に監査業務を任せ、適切な指示、監督及び監査調書の査閲を実施していない。
     

     (監査業務に係る審査)

       当監査法人では、前回審査会検査での指摘を踏まえ、審査体制を合議制からレビュー・パートナー制に変更することで、審査担当社員の責任を明確にしたとしている。
     しかしながら、審査担当社員は、初年度監査における期末の監査意見形成のための審査を実施するに当たり、十分な関与ができていない。また、赤字店舗の固定資産のグルーピングを全社資産に変更することの妥当性について、十分かつ適切な監査証拠を入手していない事案に関して、審査で必要となる監査調書を確認し、監査チームから説明を受けていたにもかかわらず、問題点を指摘できていない。
     このように、審査担当社員は、適切に監査意見が形成されているかを確かめるという審査の職責を果たしておらず、当監査法人の審査態勢は十分に機能していない。
     

     (品質管理のシステムの監視)

       当監査法人では、品質管理レビューで限定事項が付されたことを踏まえ、実効性ある定期的な検証を実施するよう改善を図ったとしている。
     しかしながら、定期的な検証の担当社員は、監査チームからの説明を受けるのみで監査調書を直接確認していないため、重要な構成単位の実証手続や、特別な検討を必要とするリスクとして識別した関係会社株式及びのれんの評価等において重要な不備を看過しているなど、その職責を果たしていない。また、今回の審査会検査で指摘した不備のほとんどを定期的な検証において指摘できていないなど、当監査法人の定期的な検証は実効性のあるものとなっていない。
     
     このように、当監査法人の品質管理態勢において、多数の項目で重要な不備が認められ、著しく不十分である。
     

  • 3 個別監査業務

       法人代表及び品質管理部長を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計及び監査の基準の理解並びに職業的懐疑心が不足している。
     このようなことから、期末近くの利益率の異常値を把握したにもかかわらず、被監査会社の説明を聴取するにとどまり十分かつ適切な監査証拠を入手していないなど、被監査会社の事業や取引の理解を踏まえた監査リスクを適切に評価していない事例、関係会社株式及びのれんの評価の検討において、実績が計画を下回っている状況が継続しているにもかかわらず、将来事業計画の達成可能性を検討していないなど、被監査会社の主張を批判的に検討することなく受け入れている事例、また、重要な構成単位の重要な勘定科目に実証手続を実施していない事例、さらに、関連当事者注記について会計基準の解釈を誤り、注記が漏れている事実を見落としている事例などの重要な不備が認められている。
     このほかに、被監査会社が売価還元法を採用しているにもかかわらず、売価変更に関する内部統制の理解及び運用状況の評価手続を実施していない事例、被監査会社の作成した情報の信頼性を評価していない事例、棚卸資産評価損に関する十分かつ適切な監査証拠を入手していない事例など多数の不備が認められている。
     
     このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められるなど、当監査法人の個別監査業務は著しく不十分である。
     

以上

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