平成13年8月29日
金融庁

銀行等の株式保有制限及び株式取得機構について

金融システムの構造改革という観点から、銀行等が抱える株価変動リスクを限定するため、株式保有制限を課す。併せて、これに伴う銀行等の株式処分が円滑に進められるよう、市場売却を補完するセーフティネットとして銀行等保有株式取得機構(仮称)を設立する。

銀行等の株式等の保有制限

  • (1)株式保有の上限

    時価で評価した対象株式の保有総額(評価益が生じている場合には、これを控除する)について、自己資本比率規制上の自己資本のうち基本的項目(Tier1)を上限とする。

  • (2)対象となる金融機関

    銀行(信託銀行は原則として銀行勘定に限る)、長期信用銀行、銀行持株会社、長期信用銀行持株会社、農林中央金庫及び信金中央金庫とする(連結ベース)。

  • (3)対象となる株式等

    保有制限の対象は、○子会社・関連会社株式、○未公開企業の株式、○デット・エクイティ・スワップにより取得した株式を除く株式とする。

    また、一部の信託など、個別株式の保有と同等と考えられるものについては、制限対象に含めるものとする。

  • (4)適用開始時期等

    平成16年から適用を開始するものとするが、Tier1を超えて著しく大量の株式を保有している等、一定の要件に該当する者については、その申請に基づき、1~2年の猶予期間を設ける。

銀行等保有株式取得機構

1. 銀行等保有株式取得機構の組織・運営

  • (1)組織形態

    銀行等保有株式取得機構(以下「機構」という。)は、法律に基づき、銀行等からの拠出により設立される認可法人とする。

  • (2)会員

    会員資格を有する者は、銀行(信託銀行を含む)、長期信用銀行、農林中央金庫及び信金中央金庫とし、機構への参加は任意とする。

  • (3)当初拠出金

    当初拠出金は100億円を下回らない額とし、全会員が拠出する(5年間にわたって分割納入することも認める)。

  • (4)運営

    基本的には、銀行界から選出した役職員が行う。また、金融に関して専門的な知識・経験を有する者等で構成される運営委員会を設置し、機構の業務運営に関する重要事項を審議する。

  • (5)経理

    機構の運営経費は、当初拠出金(その運用益を含む)を充てる。

    機構には、一般勘定(ETF等の組成等のための買取を行うための勘定)と特別勘定(セーフティネットとしての買取を行うための勘定)を設け、経理を区分する。

  • (6)国の関与

    国は、機構の設立の認可、役員の選任・解任の認可等、所要の監督を行う。

2. 株式の買取等

  • (1)買取期間

    機構による買取期間は、平成18年9月30日までとする。

  • (2)買取価格

    時価とする。

  • (3)手数料

    株式を売却した会員は、株式の保管・処分に要する経費に充てるため、手数料を機構に納付する。

3. 一般勘定による買取

  • (1)買取のスキーム

    ETF等を組成する証券会社又は自己株式の取得を希望する事業会社の依頼に基づき、機構が会員に対して株式の売却を勧誘する。会員がそれに応じて、機構に対して株式の売却を行う。

  • (2)買取資金

    機構による買取資金は株式を売却する会員が負担し、政府保証は付さない。

  • (3)株式の処分等

    機構は買取後ごく短期間のうちに証券会社又は事業会社に株式を売却することとするので、基本的には機構に損益は発生しない。仮に機構に損益が発生した場合には、全て株式を売却した会員に帰属させる。

4. 特別勘定による買取

  • (1)買取のスキーム等

    機構は会員の申込みに応じて、会員の保有する株式を買い取り、信託銀行に委託して保有する。なお、買取の開始については、運営委員会が、会員のニーズ、会員の株式処分の進捗状況、市場動向等を勘案して議決する。

    上記により機構が買い取った株式については、運営委員会が策定する処分方針に基づいて、信託銀行が処分を行う。

  • (2)買取対象株式

    買取対象株式は、国内上場株式又は店頭登録株式であって、あらかじめ指定した格付機関からBBB-格相当以上の格付けを取得している企業(無格付であっても同様の信用力があると認められる企業を含む)が発行したものに限る。また、各会員が平成13年3月末時点で保有していた各銘柄の株式数を限度とする。

  • (3)買取資金

    買取資金は民間金融機関からの借入れ又は債券の発行により調達し、当該借入れ又は債券には政府保証を付することができることとする。

  • (4)買取限度額(政府保証枠)

    当面2兆円を予定する(機構設立後の銀行等の市場及び機構への株式売却動向等を踏まえ、必要があれば見直しを行う)。─14年度予算要求

  • (5)売却時拠出金

    特別勘定に株式を売却した会員は、売却額の8%に相当する金額を、当初拠出金とは別に、売却の都度、機構に拠出する。

  • (6)株式の保有等

    機構が買い取った株式の管理は、信託銀行に委託する。

    当該株式の議決権については、機構が議決権行使に関する基本的考え方を示し、それに基づいて信託銀行が策定するガイドラインに従って、信託銀行が行使する。なお、信託銀行は機構に対して議決権の行使状況を報告することとする。

5. 機構の解散等

  • (1)機構の存続期間

    機構の存続期間は、設立後10年とする。なお、買取期間経過後、買い取った株式をすべて処分した場合においても解散する。

  • (2)残余財産の分配

    機構の解散時において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、次の順序に従って会員に対する財産の分配を行う。

    • 当初拠出金の返還

    • 売却時拠出金の返還

    • 当初拠出金の拠出者に対する配当(当初拠出金額を上限とする。)

    • 売却時拠出金の拠出者に対する配当(売却時拠出金額から機構の運営に費消した額の2倍を控除した額を上限とする。)

    上記により会員に対して残余財産を分配してなお余剰があるときは、国庫に納付する。

  • (3)債務超過の際の取扱い

    機構の解散時において、その財産をもって債務を完済することができないときは、その不足額を政府が補填する。

6. その他

  • (1)税制上の措置

    機構に係る欠損金の繰越し等の措置について、検討する。

  • (2)商法の特例

    事業会社が機構から市場価格のある自社株を買い受ける場合には、株主総会の特別決議に代えて、普通決議で足りることとする。

今後の予定

次期国会に、銀行株式保有制限及び株式取得機構に係る所要の法律案を提出し、来年1月の機構設立を目指す。

連絡・問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局信用課迫田(内線3551)、宮田(内線3561)、若原(内線3575)

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