平成14年5月21日
金融庁

「金融早わかりQ&A」への追加について

現在、金融庁のホームページでは、「金融早わかりQ&A」コーナーを設け、銀行、保険、証券など国民生活に密接に関係する事項について、皆様のご質問、ご疑問にお答えしています。

この度、最近ご質問などを受けることの多かった「特別検査について」と「空売り規制などについて」に関して、新たにQ&Aを作成しましたので、「金融早わかりQ&A」に追加することにしました。

(参考) 主要行に対する特別検査の結果について(平成14年4月12日)
主要13行による平成14年3月期の財務内容の公表概要について(平成14年4月12日)
「より強固な金融システムの構築に向けた施策」について(平成14年4月12日)
柳澤金融担当大臣記者会見の概要(特別検査の結果について)(平成14年4月12日)
空売りへの総合的な取組みについて(平成13年12月21日)
信用・貸借取引に係る制度の見直しについて(平成14年2月1日)
空売り規制の見直しについて(平成14年2月8日)
空売り規制の遵守状況に関する総点検結果等を踏まえた対応について(平成14年2月27日)

【お問い合わせ先】

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局 政策課(内線3182)
〒100-8967 東京都千代田区霞が関3丁目1番1号 中央合同庁舎第四号館
ホームページURL:http://www.fsa.go.jp/


目次

特別検査について

  • Q1. 特別検査の対象(債務者149社、与信額12.9兆円)は十分なのですか。

  • Q2. 特別検査の結果、対象債務者の債務者区分について、いわゆる横串(融資各行の債務者区分が統一されること)は通っているのですか。

  • Q3. 地銀や信金、信組に対しても特別検査を行わないのですか。

  • Q4. 特別検査の結果、債務者区分が破綻懸念先とされた債務者はどうなるのですか。

  • Q5. 株価が100円を切るような会社はそもそも破綻懸念であって、特別検査に伴う債務者区分の変更は十分なのですか。

  • Q6. 特別検査の結果は、銀行の体力を考慮したものなのですか。

  • Q7. 主要行の14年3月期の不良債権処分損の見込みは昨年11月時点の見込み)より増加していますが、特別検査により増加したのはどの程度ですか。

  • Q8. 特別検査によって主要行の14年3月期の不良債権処分損の見込みが増加しましたが、銀行の今までの自己査定は十分だったのですか。

  • Q9. 本来破綻懸念先以下に区分されるべき債務者が、債務の株式化(Debt Equity Swap)によって要管理先などへ引き上げられているのではないですか。

  • Q10. 特別検査はこれからも続けるのですか。

空売り規制などについて

  • Q1. 空売り規制強化により株価上昇を狙ったのですか。

  • Q2. 空売り規制強化により中長期的に市場の流動性が低下しませんか。

  • Q3. 空売り規制強化は十分な準備期間を置かずに実施したのですか。

  • Q4. 空売り規制違反で外資系証券会社を狙い撃ちに処分したのですか。


特別検査について

Q1. 特別検査の対象(債務者149社、与信額12.9兆円)は十分なのですか。
  • 特別検査は、確定決算の事後チェックを行う通常検査とは異なり、株価や外部格付などの市場の評価に著しい変化が生じているなどの債務者に着目して、その状況をリアルタイムに検証するために行ったものです。

    今回の特別検査では、検証を行うことが適当と考えられる一定の客観的条件に該当する大口債務者すべてが対象になっています。

  • 主要13行の特別検査の対象債務者向け与信額は12.9兆円ですが、これは対象債務者のメイン行の与信額です。準メイン行以下も含めた主要行の対象債務者に対する与信額の合計は、概ねその2倍程度となります。

  • 特別検査では、主要行の13年9月期における要管理先債権額8.5兆円のうち3.2兆円を検証しています。準メイン行以下を含めた債権額が2倍程度と考えれば、要管理先の4分の3程度を検証したことになります。

    また、要注意先(要管理先を除く)債権額40兆円のうち6.4兆円を検証しています。準メイン行以下を含めた債権額が2倍程度と考えれば、要注意先の3分の1程度を検証したことになります。

    さらに、それぞれの債務者区分の中でも、市場の評価に著しい変化が生じているなど、区分が下位に変更される可能性の高い債務者が対象となっているので、特別検査として検証すべきものは、十分検証したと言えます。

  • 主要行は、特別検査の趣旨を踏まえ、特別検査の対象債務者以外の債務者についても、厳格な自己査定を行っていると考えています。

Q2. 特別検査の結果、対象債務者の債務者区分について、いわゆる横串(融資各行の債務者区分が統一されること)は通っているのですか。
  • 特別検査は対象となった債務者のメイン行において検証を行いました。これは、通常、メイン行が、その債務者に対して最も多く融資をしており、かつ、その債務者について一番情報を持っているからです。

  • 特別検査で破綻懸念先とされた債務者については、メイン行が準メイン以下の銀行とも協議した上で、債務者との間で経営改善計画の策定などを行うことになるので、協議の過程で各行の債務者区分の認識が自ずと一致することになります。

    また、準メイン以下の銀行においても、特別検査の趣旨や自行における特別検査の内容も踏まえて厳格な自己査定を行っていると考えられます。

    したがって、各行の今年の3月期における自己査定は、既に特別検査の結果に収れんしているものと考えられます。

  • なお、準メイン以下の銀行の自己査定が特別検査の結果に沿ったものとなっているかについては、今後の通常検査でチェックします。

Q3. 地銀や信金、信組に対しても特別検査を行わないのですか。
  • 特別検査は、

    • 株価や外部格付などの市場の評価に著しい変化などが生じている
    • 大口債務者(大手企業など)を対象として
    • メイン行の債務者区分について

    リアルタイムで検証することを目的として実施したものです。大口債務者のメイン行はほとんどが主要行なので、主要行を対象としたものです。

  • なお、主要行以外の地域銀行においても、特別検査の趣旨も踏まえ、厳格な自己査定を行っていると考えています。

Q4. 特別検査の結果、債務者区分が破綻懸念先とされた債務者はどうなるのですか。
  • 昨年10月26日に決定された「改革先行プログラム」において、不良債権の最終処理を促進するため、特別検査で破綻懸念先に区分されるに至った債務者については、速やかに、

    • ( i )私的整理ガイドライン等による徹底的な再建計画策定

    • ( ii )民事再生法等の法的手続きによる会社再建

    • ( iii )RCCなどへの債権売却等

    のいずれかの措置を講ずることが求められていますので、主要行においてこれに沿った対応をすることになります。

Q5. 株価が100円を切るような会社はそもそも破綻懸念であって、特別検査に伴う債務者区分の変更は十分なのですか。
  • 特別検査の対象債務者の選定に当たっては、株価や外部格付などを基準としましたが、そうした基準により選定した対象債務者の債務者区分については、金融検査マニュアルを踏まえて、当該債務者のリアルタイムの業況や財務内容などを基に客観的に判断したものです。

  • 株価は、その企業に対する市場の評価として重要な指標ではありますが、一方で、株価は様々な思惑で変動することがあります。したがって、株価の水準が直ちに特定の債務者区分に結びつくものではありません。

Q6. 特別検査の結果は、銀行の体力を考慮したものなのですか。
  • 特別検査の実施に当たっては、「自己資本や体力を気にせず、金融機関の経営に大きな影響を持つ貸出先について、しっかり検査して処理するようにしてほしい。」との2月14日の総理指示も踏まえて、何ら予断を持つことなく、厳正に行ったものであり、銀行の体力を考慮したなどということは全くありません。

Q7. 主要行の14年3月期の不良債権処分損の見込みは昨年11月時点の見込みより増加していますが、特別検査により増加したのはどの程度ですか。
  • 主要行の14年3月期の不良債権処分損の見通しは約7.8兆円であり、昨年11月時点の業績見通し約6.4兆円に比べ、約1.4兆円増加しています。

  • この増加要因は、主要行へのヒアリングに基づく分析では、

    • 4千億円強程度が特別検査を要因とするもの
    • 1兆円弱程度がその他の要因(債務者の業況悪化や銀行の自己査定の厳格化など)

    となっています。

  • なお、特別検査の対象債務者についての、14年3月期下半期分の不良債権処分損が1.9兆円であるのに、昨年11月時点での見通しと比べ特別検査要因での増加が4千億円強にとどまっているのは、各主要行が、特別検査の実施を踏まえ、既に昨年11月時点で自主的にその影響を織り込んでいたためです。

Q8. 特別検査によって主要行の14年3月期の不良債権処分損の見込みが増加しましたが、銀行の今までの自己査定は十分だったのですか。
  • 特別検査によって不良債権処分損の見込みが増加したのは、

    • 直近の厳しい経済情勢などを反映して、対象債務者の財務状況が一般的に悪化しているといった環境の中で、
    • 株価や外部格付などに著しい変化が生じているなど、債務者区分が変更される可能性の高い債務者を対象として、
    • リアルタイムの情報に基づいて、当局、銀行及び監査法人の3者協議によって適正な債務者区分を検証した

    ためと考えられます。

  • したがって、特別検査の結果から、直ちにこれまでの銀行の自己査定が甘かったということを意味するものではありません。現に、銀行自ら、年明けの第一次査定段階で下位変更していた債務者も相当数ありました。

  • しかしながら、昨年9月期において債務者の実態把握が不十分であったと思われる例があったことも事実であり、各行において、さらに厳格な自己査定を行うことが求められています。

Q9. 本来破綻懸念先以下に区分されるべき債務者が、債務の株式化(Debt Equity Swap)などによって要管理先などへ引き上げられているのではないですか。
  • 債務者が債務の株式化などの金融支援策が盛り込まれた経営改善計画を策定し、債権者である銀行がそれに同意した場合、その債務者の債務者区分を判断するに当たっては、債務の株式化を含め経営改善計画の合理性や実現可能性を厳格に検証することになります。

  • したがって、債務の株式化といった金融支援策がまとまったからといって、債務者区分を上位に変更するのではなく、あくまでも経営改善計画全体の合理性や実現可能性が認められた場合に限り上位変更されることになります。

Q10. 特別検査はこれからも続けるのですか。
  • 4月12日に金融庁が発表した「より強固な金融システムの構築に向けた施策」において、主要銀行グループに対する通年・専担検査を導入することにしています。

    今回のような特別検査と銘打った検査を今後も継続することは考えていませんが、金融・経済情勢を踏まえたリアルタイムの情報に基づく検査については、この通年・専担検査の枠組みの中で対応することになります。

空売り規制などについて

Q1. 空売り規制強化により株価上昇を狙ったのですか。
  • 空売り規制などの強化は、一部証券会社において空売り規制違反の事例が見られたことなどから、金融庁が昨年8月に発表した「証券市場の構造改革プログラム」を踏まえ、個人投資家の証券市場への信頼向上のためのインフラ整備を更に徹底する観点から行ったものであり、株価への影響を意図したものではありません。

  • 空売り規制などの強化は、市場における不公正な取引の防止に一定の役割を果たしたと考えていますが、引き続き、市場において不公正な取引が行われていないかどうか、市場における取引状況などを監視する考えです。

  • なお、市場において、2月下旬以降の株価上昇の要因として、空売り規制などの強化が、株価を意図的に下げる「売り崩し」の防止などを通じて市場のセンチメントを変化させ、株価において一定の影響を与えた可能性が指摘されていることは承知していますが、これは、内外の景気動向などの様々な株価上昇要因の一つにすぎないことに留意する必要があります。

Q2. 空売り規制強化により中長期的に市場の流動性が低下しませんか。
  • 証券市場の活性化にとって、市場の流動性の確保が重要であることはいうまでもありません。

  • 空売りには、市場に流動性を供給しその厚みを増すというプラスの側面がある一方、相場操縦的な行為に利用されるおそれがあるというマイナスの側面もあり、その規制等にあたっては、両者のバランスを十分考慮しながら行っています。

    昨年末以降、一部証券会社が空売り規制に違反し、また相場操縦的な行為を行うなどにより、極めて重い処分を受けています。これらを踏まえ、金融庁としては、市場における不公正取引を防止し、市場に対する投資家の信頼向上を図るとの観点から、米国の例も参考に、空売りの価格規制の強化などを行ったものです。

  • なお、株式売買動向をみる限り、今回の空売り規制などの強化により市場の流動性が低下しているという事実はないと考えています。

Q3. 空売り規制強化は十分な準備期間を置かずに実施したのですか。
  • 金融庁では、2月8日に「空売り規制の見直しについて」を発表し、空売りの価格規制の強化案(従来の「直近の価格未満の空売り禁止」を原則「直近の価格以下の空売り禁止」に改正)をパブリックコメントに付した上で、3月6日から実施しました。

  • この改正は、一部証券会社が空売り規制を潜脱する方法で作為的相場形成を行っていた事例が認められ、こうした不公正な相場操縦的行為を防止する観点から、早急に実施する必要があったものです。

  • その際には、金融庁として、取引所のシステム対応が完了するまでの間の運用基準を示すなど、取引が円滑に行われるよう十分配慮しました。

  • なお、この改正について取引所のシステム対応は、5月13日に整備されております。

Q4. 空売り規制違反で外資系証券会社を狙い撃ちに処分したのですか。
  • 昨年12月以降、空売り規制違反などを理由として証券会社に対して12件の行政処分(業務停止命令又は業務改善命令)を行っていますが、これは、証券市場への信頼を損う法令違反行為に対して厳正に処分を行ったものであり、処分対象に国内証券会社2社が含まれていることからも明らかなとおり、処分に際して、内外の証券会社を区別して取り扱ったことは全くありません。

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